161 / 599
◇161 足元には注意せよ
しおりを挟む
アキラたちは毒沼を目指していた。
森を歩こうとすると、湿地帯と言うこともありじめじめしている。
全身が重たい。足下はぬかるんでいる。
と言うわけで、とてもじゃないがスムーズには歩けない。
「歩き難いわね。さっきから足下が取られちゃってる」
「そんなものだ。湿地帯は湿度も高いからな」
Nightはぶつくさと答えていた。
歩く度にブーツが沈み込んでしまい、底はドロドロになっている。
潔癖症の人にはたまったものじゃないだろうが、生憎ここにはいない。
しかしNightはムカついていた。
「くそっ、どうしてこんな損な役回りばかり」
「そんなことないよ」
「そんなことあるだろ。こんな酷い場所に送り込まれて、文句を言わない奴がいるのか!」
「うーん、ここにいるよ」
「ん? 私は湿ったところは嫌いじゃないわよ。だけど足のぬかるみがちょっとね」
ベルは大人びた態度だった。
その様子を見ていると、アキラとNightは頬けてしまう。
「どうしたの?」
「ベルって大人だよね。口調とかちょっと当たり強い時はあるけど、棘がそんなにないから」
「雷斬に比べたら私なんてそうでもないわよ。これも昔からの癖だから」
「癖でそんな喋り方ができるの?」
「それはそれで怖いものだな。雷斬のようにフラットな口調も取れないなんてな」
Nightはベルを憐れむようだった。
しかしベル自身も、大人びた態度を崩さない。
「そんなことないわよ。こほん……Night、貴女は少しアキラに対する辺りを弱くしたらどう?」
「はぁっ!?」
「そんなに怒っていないのに、アキラに当たり強いのはもしかして……」
「うっ! そんなことないだろ!」
「ほら。またやってる」
アキラは2人のやり取りを見ているだけだった。
ベルの一方的な展開で、Nightが気圧されている。
明らかに動揺の色が見えるが、それでも姿勢は崩さない。
けれどいつものような噛みつきが足りない。
「まあまあ、2人ともそんな話いいじゃんか」
「誰のせいでこうなっていると思っているんだ!」
「えっ、ここに来て私が怒られる流れなの! 何で、ねえ何で!」
「アキラは別に悪くないと思うけど……まあ今回はそういうことにしましょ」
「どうしてそうなるの!」
アキラは納得がいかなかった。
とは言え、それで話が丸く収まるのならそれでもいい。
正義のヒーローでも悪役ヴィランでも関係ない。
「まあいっか。それで、これからどうするの?」
「何の作戦もないのか」
「あるわけないよ! それを考えるのは、Nightの役目でしょ?」
「お前なぁ……まあいい、感覚派には感覚を研ぎ澄ませてもらおう」
何故かすんなり受け入れられてしまった。自分の役目がわかっている証拠だ。
アキラは何も考えていない訳じゃない。
ただ考えるよりも先に体を動かしてしまっている。
考えながら体を動かす。意識の先行が優先順位を心の赴くままに左右させていた。
「それで、ドクハナに関してだが。まずは中央の毒沼に行くのが必須だな。とりあえず、このまま突っ切るぞ」
「へぇー、突っ切ってもいいんだ」
「知らん。この場所の知識は私にはないからな。それより、ソウラから攻略の糸口は聞いていないのか?」
「えっと、ちょっと待って……確かメモがあったはずなんだけど」
インベントリの中からメモを探す。
指でスライドさせると、『ソウラメモ』と書かれたアイテムを見つけた。
ソウラから貰ってメモをすぐさま取り出し、アキラは四つ折りにされていた紙を開いた。
「どうしてそんなに小さい紙きれを四つ折りにしているんだ」
「いいでしょ。このまま渡されたんだもん。えーっと何々、『真ん中に毒沼があるよ。でも気を付けてね、毒の一帯は吸い込んだらダメージのある毒が蔓延しているよ。それから毒に感染したモンスターもいるよ。足下には注意してね』だって」
「何だその箇条書きのメモは! それに危険すぎるだろ」
「どうやらこちらはハズレみたいね」
「あはは、そんなこと言わないでよ」
アキラは笑って誤魔化していた。だけど「ミスった」と心の中では後悔している。
そんな表情をひた隠していると、ふいに異変を感じた。
何かが近づいている。と言うか、地面から音がする。
耳を澄ましていると、突然Nightの背後に何か現れた。小さなモグラみたいなものがいて、その口から勢いよく液体が吐き出された。
「Night、危ない!」
「はっ?」
Nightは振り返った。しかし時すでに遅かった。
紫の異様な液体が撒かれた後で、空中に散布されていた。
森を歩こうとすると、湿地帯と言うこともありじめじめしている。
全身が重たい。足下はぬかるんでいる。
と言うわけで、とてもじゃないがスムーズには歩けない。
「歩き難いわね。さっきから足下が取られちゃってる」
「そんなものだ。湿地帯は湿度も高いからな」
Nightはぶつくさと答えていた。
歩く度にブーツが沈み込んでしまい、底はドロドロになっている。
潔癖症の人にはたまったものじゃないだろうが、生憎ここにはいない。
しかしNightはムカついていた。
「くそっ、どうしてこんな損な役回りばかり」
「そんなことないよ」
「そんなことあるだろ。こんな酷い場所に送り込まれて、文句を言わない奴がいるのか!」
「うーん、ここにいるよ」
「ん? 私は湿ったところは嫌いじゃないわよ。だけど足のぬかるみがちょっとね」
ベルは大人びた態度だった。
その様子を見ていると、アキラとNightは頬けてしまう。
「どうしたの?」
「ベルって大人だよね。口調とかちょっと当たり強い時はあるけど、棘がそんなにないから」
「雷斬に比べたら私なんてそうでもないわよ。これも昔からの癖だから」
「癖でそんな喋り方ができるの?」
「それはそれで怖いものだな。雷斬のようにフラットな口調も取れないなんてな」
Nightはベルを憐れむようだった。
しかしベル自身も、大人びた態度を崩さない。
「そんなことないわよ。こほん……Night、貴女は少しアキラに対する辺りを弱くしたらどう?」
「はぁっ!?」
「そんなに怒っていないのに、アキラに当たり強いのはもしかして……」
「うっ! そんなことないだろ!」
「ほら。またやってる」
アキラは2人のやり取りを見ているだけだった。
ベルの一方的な展開で、Nightが気圧されている。
明らかに動揺の色が見えるが、それでも姿勢は崩さない。
けれどいつものような噛みつきが足りない。
「まあまあ、2人ともそんな話いいじゃんか」
「誰のせいでこうなっていると思っているんだ!」
「えっ、ここに来て私が怒られる流れなの! 何で、ねえ何で!」
「アキラは別に悪くないと思うけど……まあ今回はそういうことにしましょ」
「どうしてそうなるの!」
アキラは納得がいかなかった。
とは言え、それで話が丸く収まるのならそれでもいい。
正義のヒーローでも悪役ヴィランでも関係ない。
「まあいっか。それで、これからどうするの?」
「何の作戦もないのか」
「あるわけないよ! それを考えるのは、Nightの役目でしょ?」
「お前なぁ……まあいい、感覚派には感覚を研ぎ澄ませてもらおう」
何故かすんなり受け入れられてしまった。自分の役目がわかっている証拠だ。
アキラは何も考えていない訳じゃない。
ただ考えるよりも先に体を動かしてしまっている。
考えながら体を動かす。意識の先行が優先順位を心の赴くままに左右させていた。
「それで、ドクハナに関してだが。まずは中央の毒沼に行くのが必須だな。とりあえず、このまま突っ切るぞ」
「へぇー、突っ切ってもいいんだ」
「知らん。この場所の知識は私にはないからな。それより、ソウラから攻略の糸口は聞いていないのか?」
「えっと、ちょっと待って……確かメモがあったはずなんだけど」
インベントリの中からメモを探す。
指でスライドさせると、『ソウラメモ』と書かれたアイテムを見つけた。
ソウラから貰ってメモをすぐさま取り出し、アキラは四つ折りにされていた紙を開いた。
「どうしてそんなに小さい紙きれを四つ折りにしているんだ」
「いいでしょ。このまま渡されたんだもん。えーっと何々、『真ん中に毒沼があるよ。でも気を付けてね、毒の一帯は吸い込んだらダメージのある毒が蔓延しているよ。それから毒に感染したモンスターもいるよ。足下には注意してね』だって」
「何だその箇条書きのメモは! それに危険すぎるだろ」
「どうやらこちらはハズレみたいね」
「あはは、そんなこと言わないでよ」
アキラは笑って誤魔化していた。だけど「ミスった」と心の中では後悔している。
そんな表情をひた隠していると、ふいに異変を感じた。
何かが近づいている。と言うか、地面から音がする。
耳を澄ましていると、突然Nightの背後に何か現れた。小さなモグラみたいなものがいて、その口から勢いよく液体が吐き出された。
「Night、危ない!」
「はっ?」
Nightは振り返った。しかし時すでに遅かった。
紫の異様な液体が撒かれた後で、空中に散布されていた。
11
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる