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8章
第80話 イシクイ鳥
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俺とエクレア、それから脅しを受けたショコラの3人はイシクイ鳥が現れるという河辺の森にやって来た。
どうやらここにイシクイ鳥がいるらしいが、未だにそれが何かわかっていない奴らが2人。もちろん俺を除いてなので、答えは自ずと見えてくる。
先導を歩いているエクレアとショコラを見た。
「ねえねえショコラちゃん。私とお話しよ」
「ふん」
「ねえねえしようよー。ねえってばー!」
「う、ウザい」
ショコラもわかってきたらしい。エクレアというめちゃくちゃにウザい人間の心理が。
ショコラの無表情で白い肌に、エクレアは頬を擦り合わせている。
エクレアなりの過度なスキンシップなのだが、コイツのヤバいところはそれを平然とやってのけて、相手がウザいと思わせて来るところだ。
その癖、一度手中に納まった相手は決して逃がしてくれない。
まるで蛇のようでもあるのに加えて、他人の気持ちを1つにしてしまうカリスマ性を秘めていた。
「カイ、エクレアがしつこい」
「諦めろ。如何やらお前は気に入られたらしい」
「気に入られた? 私は孤高。それでいい」
「もう、カイ君みたいなこと言わないの。それとも私のこと嫌い?」
「うっ……まだわからない」
賢明な答えだ。賛成するわけでも否定するわけでもない。どっちつかずの答えを提示することで、自分の意思が相手にとって最高であり最低であると意思表示することができる。
「便利な奴」
俺はショコラのエクレアへの回答札に感嘆とした。
しかしそれ以上でも以下でもなく、コイツにそんな意思表示は伝わるわけがない。
「もう! それじゃあ、これから仲良くなっていこうよ」
「むっ。今回の依頼が済んだら私はソロに戻る」
「えー。そんなのつまんないよー」
「ふん。私を引き止めたいなら実力を見せて欲しい」
「実力?」
いや、実力ならもう見せているだろ。
俺もエクレアもお前に持てる武器の一部を見せてやったはずだ。
けれどまだ満足できないらしく、ショコラの表情は硬かった。
「わかったよ。それじゃあ、イシクイ鳥? 初激は私の技を見せてあげよっかな」
「技?」
「そうだよ。もちろん見せるだけね」
その言い方だと仕留める気はないと見た。
お前はそれでいいのかとツッコミどころがあるが、今回は黙っておく。
「そう。それじゃあ楽しみにしておく」
「うんうん。って、私イシクイ鳥ってよく知らないんだ」
「向こうにはいなかった」
「向こう?」
「北の大陸にはイシクイ鳥はいないからな。そもそもが小型の鳥だ。羽毛も薄く、飛行能力に突出しているせいで寒さには弱い」
俺は話が進みそうにないので少しだけ情報を教えてやった。
するとエクレアの目がピカッと輝いて、俺の顔を見てニヤニヤする。
「何だ。気持ち悪いぞ」
「カイくーん。もしかしてイシクイ鳥って知ってる?」
「当たり前だ。食べたことがあると言っただろ」
「そうだっけ? うーん、ねえもう少しヒントとかない?」
「ヒントだと? そうだな。色合いは黒に青。翼の部分は蜉蝣のように薄く、水面を切ることができる。だがその真の性質は石を食うことだ」
「そんなの食べて美味しいの?」
「知らん」
ショコラの問いには真っ向から無視。もとい、俺ではわからなかった。
とは言えエクレアにはわかるらしく、「確かに食べられる石はあるよ。岩塩とか、チョコストーンとかは食べられて栄養価も高いからね」と1人頷いていた。
「しかも旨い」
「食べられる? それならやる気が出てきた」
ショコラはじゅるりと舌を鳴らした。
「よーし。それじゃあ張り切って行ってみよう!」
「いや、その必要はなさそうだぞ」
「「えっ?」」
俺がそう口にすると、エクレアとショコラは立ち止まった。
振り返って「どういうこと?」と言いたそうな顔色を浮かべる。
「目の前を見てみろ」
「目の前って、木があるよ。大きな木」
「上だ上。枝のところに青白い線が見られるだろ。アレがそれだ」
エクレアは目を凝らした。確かに青白い線が見える。
しかも自然にないような濃い色合いで、もしかしたらと思いエクレアは早速魔法を使う。
《黄昏の陽射し》を展開。球体が現れて、エクレアの命令に従う。
「それじゃあ景気良く、行ってみよう!」
「何をする? 熱い!」
ショコラは超至近距離だったので、熱さに当てられて一歩下がった。
するとエクレアは気にせずに光のビームを撃ち出し、まるで高出力レーザーのように見えた。
枝に止まっていたイシクイ鳥はビックリして飛び上がったようだ。惜しいとエクレアは指を鳴らす。
どうやらここにイシクイ鳥がいるらしいが、未だにそれが何かわかっていない奴らが2人。もちろん俺を除いてなので、答えは自ずと見えてくる。
先導を歩いているエクレアとショコラを見た。
「ねえねえショコラちゃん。私とお話しよ」
「ふん」
「ねえねえしようよー。ねえってばー!」
「う、ウザい」
ショコラもわかってきたらしい。エクレアというめちゃくちゃにウザい人間の心理が。
ショコラの無表情で白い肌に、エクレアは頬を擦り合わせている。
エクレアなりの過度なスキンシップなのだが、コイツのヤバいところはそれを平然とやってのけて、相手がウザいと思わせて来るところだ。
その癖、一度手中に納まった相手は決して逃がしてくれない。
まるで蛇のようでもあるのに加えて、他人の気持ちを1つにしてしまうカリスマ性を秘めていた。
「カイ、エクレアがしつこい」
「諦めろ。如何やらお前は気に入られたらしい」
「気に入られた? 私は孤高。それでいい」
「もう、カイ君みたいなこと言わないの。それとも私のこと嫌い?」
「うっ……まだわからない」
賢明な答えだ。賛成するわけでも否定するわけでもない。どっちつかずの答えを提示することで、自分の意思が相手にとって最高であり最低であると意思表示することができる。
「便利な奴」
俺はショコラのエクレアへの回答札に感嘆とした。
しかしそれ以上でも以下でもなく、コイツにそんな意思表示は伝わるわけがない。
「もう! それじゃあ、これから仲良くなっていこうよ」
「むっ。今回の依頼が済んだら私はソロに戻る」
「えー。そんなのつまんないよー」
「ふん。私を引き止めたいなら実力を見せて欲しい」
「実力?」
いや、実力ならもう見せているだろ。
俺もエクレアもお前に持てる武器の一部を見せてやったはずだ。
けれどまだ満足できないらしく、ショコラの表情は硬かった。
「わかったよ。それじゃあ、イシクイ鳥? 初激は私の技を見せてあげよっかな」
「技?」
「そうだよ。もちろん見せるだけね」
その言い方だと仕留める気はないと見た。
お前はそれでいいのかとツッコミどころがあるが、今回は黙っておく。
「そう。それじゃあ楽しみにしておく」
「うんうん。って、私イシクイ鳥ってよく知らないんだ」
「向こうにはいなかった」
「向こう?」
「北の大陸にはイシクイ鳥はいないからな。そもそもが小型の鳥だ。羽毛も薄く、飛行能力に突出しているせいで寒さには弱い」
俺は話が進みそうにないので少しだけ情報を教えてやった。
するとエクレアの目がピカッと輝いて、俺の顔を見てニヤニヤする。
「何だ。気持ち悪いぞ」
「カイくーん。もしかしてイシクイ鳥って知ってる?」
「当たり前だ。食べたことがあると言っただろ」
「そうだっけ? うーん、ねえもう少しヒントとかない?」
「ヒントだと? そうだな。色合いは黒に青。翼の部分は蜉蝣のように薄く、水面を切ることができる。だがその真の性質は石を食うことだ」
「そんなの食べて美味しいの?」
「知らん」
ショコラの問いには真っ向から無視。もとい、俺ではわからなかった。
とは言えエクレアにはわかるらしく、「確かに食べられる石はあるよ。岩塩とか、チョコストーンとかは食べられて栄養価も高いからね」と1人頷いていた。
「しかも旨い」
「食べられる? それならやる気が出てきた」
ショコラはじゅるりと舌を鳴らした。
「よーし。それじゃあ張り切って行ってみよう!」
「いや、その必要はなさそうだぞ」
「「えっ?」」
俺がそう口にすると、エクレアとショコラは立ち止まった。
振り返って「どういうこと?」と言いたそうな顔色を浮かべる。
「目の前を見てみろ」
「目の前って、木があるよ。大きな木」
「上だ上。枝のところに青白い線が見られるだろ。アレがそれだ」
エクレアは目を凝らした。確かに青白い線が見える。
しかも自然にないような濃い色合いで、もしかしたらと思いエクレアは早速魔法を使う。
《黄昏の陽射し》を展開。球体が現れて、エクレアの命令に従う。
「それじゃあ景気良く、行ってみよう!」
「何をする? 熱い!」
ショコラは超至近距離だったので、熱さに当てられて一歩下がった。
するとエクレアは気にせずに光のビームを撃ち出し、まるで高出力レーザーのように見えた。
枝に止まっていたイシクイ鳥はビックリして飛び上がったようだ。惜しいとエクレアは指を鳴らす。
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