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3章
第19話 コウモリの大群
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俺とエクレアの道中はまだまだかかった。
その間何も起きない訳もなく、平気でモンスターに遭遇した。
「そりゃぁ!」
エクレアが太陽の聖剣を振りかざし、襲ってきた小鬼のモンスターを切り裂いた。
緑色の体皮をしており、頭には小さな白い角が生えている。
小鬼のモンスターは数いるが、中でも繁殖力が極めて高いのがこのゴブリンと言う種族だろう。
「エクレア。まだまだ来るぞ!」
「わかってるよ。はぁー!」
エクレアは背後から襲い掛かるゴブリンに引きを真っ二つに引き裂いた。
まるで躊躇がないのが怖い。
俺は遠目でそれを確認しながら襲ってくるゴブリンの顔面を殴りつけた。
「エクレアも結構怖いことをするんだな」
「私よりもカイ君の方が怖いよ。って、今目玉が飛び出してなかった!」
「そうだな。それがどうした?」
俺は襲ってきたものの威圧して怯ませたゴブリン目掛けて足を下ろした。
悲鳴を上げながら、ゴブリンが絶命する。
確かにこの状況は一方的な殺戮に見えるだろうが、こっちは襲われた身だ。仮にテリトリーに侵入したとしても見境なく襲われる時点でゴブリンたちもわかっているはずだ。
けれど明らかに俺の戦い方を見たゴブリン達が怯えてしまっている。
どうやら威圧が過ぎたらしい。
「そのせいで俺のところに攻撃しに来ないんだが」
「やり過ぎなんだよ。魔石ばっかり落ちてるよ!」
「そうだな。ここにいるゴブリンを狩りつくせばいくらになるだろうな」
ふと気になったので口にしてみた。
すると言葉を理解したのか、それとも警戒していたために俺の意図を読んだのか、自分達から森の中に散り散りに離散する。
どうやら恐れをなして逃げたようだが、これだけ脅せば当分人間を襲うことはないだろう。
ゴブリンは狡猾で欲望に忠実な種だ。そのため俺も畏怖を込めて少し狂暴になっていたのだが、効きすぎてしまったらしい。
それからしばらくの間、俺達はモンスターに出くわすことはなかった。
しばらく進むと目の前に岩肌の剥がれた山が見えてきた。
どうやらここが西の鉱山らしい。聞いていた通り、ダンジョンとしても巨大だ。
これは楽しめそうだと、少しだけわくわくしていた。
「エクレア、この先にあるのがそうだよな」
「うん。パフィさんから教えてもらった話しだと、鉄鉱石だけじゃなくて珍しい鉱石が埋まっているらしいよ」
「なるほどな。副産物も旨そうだ」
俺はエクレアと共に森を抜けようとした。
西の鉱山に行くには目の前にある一本道の森を突っ切る必要がある。
しかし体が急に危険を察知した。エクレアの腕を掴み、先に行かせないようにする。
「待て、エクレア」
「うわぁ! どうしたの、急に腕を掴んで」
「嫌な予感がする。少しだけ光を照らせるか」
俺はエクレアにそう指示した。
エクレアの持つ固有魔法、《黄昏の陽射し》がどれほど効果を持っているかは知らない。
しかし熱を光を使って自由に操れるのだとしたら試す価値はある。
するとエクレアは特に理由を聞くでもなく、魔法を使ってくれた。
「《黄昏の陽射し》!」
右手をかざすと森の中が眩しくなった。
急に光が放射されたことで、森の中一帯が明るくなる。すると奥からバサバサと凄まじい羽音が聞こえてきた。
「な、何の音!」
「こっちに来いエクレア!」
俺はエクレを抱えると森とは魔反対の方向に逃げた。
エクレアは大人しく、森の中の一本道からはバサバサと音が聞こえていた。
顔を覗き込み、何が来るのかと目凝らしていると大量のコウモリが飛び立っていた。
「コウモリだと? どうしてこんなところにコウモリが……」
「え、えーっと……そのー」
エクレアの歯切れが悪い。
ふと顔を近づけると顔色が悪いのか、赤らんでいる。
俺は膝を抱えて走り出しただけだというのにどうしてこんな表情を浮かべられるのか。人間は些かわからない生き物だった。
俺も人間だが、男と女でここまで違いが出るのは面白い。
その間何も起きない訳もなく、平気でモンスターに遭遇した。
「そりゃぁ!」
エクレアが太陽の聖剣を振りかざし、襲ってきた小鬼のモンスターを切り裂いた。
緑色の体皮をしており、頭には小さな白い角が生えている。
小鬼のモンスターは数いるが、中でも繁殖力が極めて高いのがこのゴブリンと言う種族だろう。
「エクレア。まだまだ来るぞ!」
「わかってるよ。はぁー!」
エクレアは背後から襲い掛かるゴブリンに引きを真っ二つに引き裂いた。
まるで躊躇がないのが怖い。
俺は遠目でそれを確認しながら襲ってくるゴブリンの顔面を殴りつけた。
「エクレアも結構怖いことをするんだな」
「私よりもカイ君の方が怖いよ。って、今目玉が飛び出してなかった!」
「そうだな。それがどうした?」
俺は襲ってきたものの威圧して怯ませたゴブリン目掛けて足を下ろした。
悲鳴を上げながら、ゴブリンが絶命する。
確かにこの状況は一方的な殺戮に見えるだろうが、こっちは襲われた身だ。仮にテリトリーに侵入したとしても見境なく襲われる時点でゴブリンたちもわかっているはずだ。
けれど明らかに俺の戦い方を見たゴブリン達が怯えてしまっている。
どうやら威圧が過ぎたらしい。
「そのせいで俺のところに攻撃しに来ないんだが」
「やり過ぎなんだよ。魔石ばっかり落ちてるよ!」
「そうだな。ここにいるゴブリンを狩りつくせばいくらになるだろうな」
ふと気になったので口にしてみた。
すると言葉を理解したのか、それとも警戒していたために俺の意図を読んだのか、自分達から森の中に散り散りに離散する。
どうやら恐れをなして逃げたようだが、これだけ脅せば当分人間を襲うことはないだろう。
ゴブリンは狡猾で欲望に忠実な種だ。そのため俺も畏怖を込めて少し狂暴になっていたのだが、効きすぎてしまったらしい。
それからしばらくの間、俺達はモンスターに出くわすことはなかった。
しばらく進むと目の前に岩肌の剥がれた山が見えてきた。
どうやらここが西の鉱山らしい。聞いていた通り、ダンジョンとしても巨大だ。
これは楽しめそうだと、少しだけわくわくしていた。
「エクレア、この先にあるのがそうだよな」
「うん。パフィさんから教えてもらった話しだと、鉄鉱石だけじゃなくて珍しい鉱石が埋まっているらしいよ」
「なるほどな。副産物も旨そうだ」
俺はエクレアと共に森を抜けようとした。
西の鉱山に行くには目の前にある一本道の森を突っ切る必要がある。
しかし体が急に危険を察知した。エクレアの腕を掴み、先に行かせないようにする。
「待て、エクレア」
「うわぁ! どうしたの、急に腕を掴んで」
「嫌な予感がする。少しだけ光を照らせるか」
俺はエクレアにそう指示した。
エクレアの持つ固有魔法、《黄昏の陽射し》がどれほど効果を持っているかは知らない。
しかし熱を光を使って自由に操れるのだとしたら試す価値はある。
するとエクレアは特に理由を聞くでもなく、魔法を使ってくれた。
「《黄昏の陽射し》!」
右手をかざすと森の中が眩しくなった。
急に光が放射されたことで、森の中一帯が明るくなる。すると奥からバサバサと凄まじい羽音が聞こえてきた。
「な、何の音!」
「こっちに来いエクレア!」
俺はエクレを抱えると森とは魔反対の方向に逃げた。
エクレアは大人しく、森の中の一本道からはバサバサと音が聞こえていた。
顔を覗き込み、何が来るのかと目凝らしていると大量のコウモリが飛び立っていた。
「コウモリだと? どうしてこんなところにコウモリが……」
「え、えーっと……そのー」
エクレアの歯切れが悪い。
ふと顔を近づけると顔色が悪いのか、赤らんでいる。
俺は膝を抱えて走り出しただけだというのにどうしてこんな表情を浮かべられるのか。人間は些かわからない生き物だった。
俺も人間だが、男と女でここまで違いが出るのは面白い。
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