オーバーリンカー/OVER-LINKER

水定ユウ

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第3章:親友のスタンス

■17 水霊、降臨

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 私のターンになった。
 ダメージは5対3。追い詰められてはいないけど、不利な状況に置かれているのは私の方だった。

「私のターン。ドロー。えっと、〈使い魔 白猫のミィ〉をコール。条件を満たしているので1枚ドロー。あっ!」

 私の引いたのは〈無色の魔術師 アルル〉だった。
 よし、このまま一気に攻めるぞ!
 私は早速〈アルル〉にOverLinkし、手札をコストにした。

「へぇー、それが〈アルル〉ね」
「うん。でもまだこれだけじゃないよ。【色彩魔術】を発動。この効果で、私は〈赤色の魔術師 アルル・フレイム〉を重ねる」

 こうして私は真っ赤な炎を揺らめかせる〈アルル〉を呼び出す。
 その効果で美咲ちゃんの盤面を崩しにかかる。

「効果で、美咲ちゃんの〈アクアドルフィン〉を破壊」
「おっ!」

 私は美咲ちゃんの前列中央をこじ開けた。
 さらに続け様に私はユニオン達をコールする。

「〈魔獣 バーンウルフ〉を2枚。それから〈火の魔術師 ファイア〉をコール!〈ファイア〉の効果で“相手のパワー2000以下のユニオン1枚を選んで破壊”!」
「マジ?」

 美咲ちゃんは苦い顔をする。

「彩葉のデッキって破壊系が多いんだね」
「そうみたい」
「でも、それだけじゃ私には勝てないよ!」
「言われなくてもわかってるよ。まずは〈ファイア〉で攻撃!」

 私は〈火の魔術師 ファイア〉で攻撃した。
 美咲ちゃんにダメージが入る。
 続けて〈バーンウルフ〉。さらには〈アルル〉でも攻撃する。

「〈赤色の魔術師レッド・マジシャン アルル・フレイム〉で攻撃!」
「その瞬間手札から〈スプラッシュバリア〉を使うね」
「えっ!?」

 知らないカードだ。
 でもバリアってことは多分防御系のマジック。

「“手札を1枚捨てることで、次に受けるダメージを-2する」
「えっ!?」

 せっかくの攻撃がほとんど空振りに終わった。
 しかも受けたダメージから出現したのは◆のカード。こっちも知らない。

「〈スプラッシュドロー〉。山札から3枚引いて、2枚捨てる。または青のカード1枚を選んで捨てる」
「強っ!」
「でしょ。多分次制限かかると思うんだよねー」
「そうなんだ」

 まあ私にはそう返すしかないんだけどね。
 正直、カードの強さとかイマイチだし。だけど多分このカードは強い。何となくそう思った。

「じゃあ私のターンね。ドロー。ダメージは6点か。ちょうどいいや」
「ちょうどいい?」
「そっ、ちょうどいいの。じゃあ見せてあげるね、このデッキのエースってやつ」
「エース?」
「一番強いカードだとかまあこの場合キーカードなんだけど」
「キーカード?」

 頭の中ではポワーンとカード型のキーが思い浮かんでいたけど、美咲ちゃんはそんな私に気にせずカードを使う。

「〈水霊 スプラ〉をOverLink!」

 美咲ちゃんが使ったのはコスト5の青のユニオン。
 青い髪と青い優雅な服に身を包んだ背の高い女性の人型ユニオンだった。
 だけど……

「ブレイク1、パワー5000」
「そっ。まあ見た目的にはそんなに強そうじゃないだろうけど、本番はここから。〈水霊 スプラ〉のOverスキル発動!」

 美咲ちゃんは掌を私に向ける。
 気合が入っていた。

「“自分の手札を3枚捨て、ドロップゾーンから3枚回収”」
「えっ!?(なに、その効果)」

 あわあわする私。
 しかし美咲ちゃんの動きはまだ止まらない。

「さらに“こうして手札に加えたカードがの場合、ターン終了時までパワー+3000”!」
「えっ!?ん。えっ?」

 私は拍子抜けしてしまった。
 ブレイクは上がらない。つまり負けに直結しないのだ。
 真顔の私に対して美咲ちゃんは不敵な笑みを浮かべながら私に回収したカードを見せびらかす。

「〈スプラ〉の効果、確かにパッとしないよね。でーも、こう言う使い道がある。私は手札に加えた〈黒羽九雀〉の効果」
「えっ!?(戻した時が条件)」
「“このカードを相手に見せることで、私の場のブレイク数が1以下のユニオン1枚を選び、このターン終了時までブレイク+1する。なおこの効果解決後、このカードは山札の下に戻る”」

 そんなカードあり?
 困惑する私。だけどさっき〈スプラ〉の効果で加えたのって確か……

「気づいてると思うけど、私がさっき加えたのって」
「〈黒羽九雀〉?」
「そう言うこと。条件は満たしている。そしてこの効果は“1ターンに3回まで使える”。だから全て使い。〈スプラ〉のブレイク数をさらに+2することで、合計ブレイクは4。さらに〈アクアドルフィン〉を2枚コールして、これでピッタリ11点!」

 気づけば私は窮地に立たされていた。
 圧倒的なまでの破壊力。カードを知らなすぎた私の敗因だ。ってまだ負けてないじゃん!諦めるのって嫌だな。

「まあこれだけじゃ届かないからね。ついでに〈アクアラッシュ〉。これで“青のユニオンのパワー+3000”。じゃあ行くよ。〈アクアドルフィン〉2枚で攻撃!」
「うわぁ!」

 ダメージゾーンにカードが2枚追加された。
 どちらも普通のカードだ。

「これで終わり。〈スプラ〉!」

 美咲ちゃんは〈スプラ〉のカードを横にした。
 だけど私だってただで負ける気はない。防御マジックの出番だ。

「私は手札から〈ホワイトバリア〉。この効果で条件無視して、ダメージ-1するよ」
「なっ!?」

 私は何とか耐え抜いた。
 だけどダメージは10点。こんなの勝ち目なんてほとんどない。

「私のターン、ドロー。ん?」
「来たっぽいね」

 美咲ちゃんは呑気に答える。
 まるで予見していたみたいだ。私の引いたカードは〈落城の魔術師〉。このカードを使うには絶好の馬が既に用意されていた。
 
 
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