オーバーリンカー/OVER-LINKER

水定ユウ

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第3章:親友のスタンス

■16 新たなカードを入れて

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 私が受け取ったカード。
 そのカードの名前はちょっとインパクトがあった。

「〈落城の魔術師 ヴェルデンモート〉?」
「そっ」
「って、コストもパワーも桁違いなんだけど!」

 私は渡されたカードのコストやパワーの桁違いさを見て声を上げてしまった。
 コストは8。パワーは10000。おかしい。だけど注目すべきはその効果欄だ。シンプルだった。

「このカードって……」
「フィニッシャーにはよくない?」
「フィニッシャー?ああさっき言ってた勝ち筋ね。まあ確かに強いけど、扱い難しい気が……」
「いや、〈魔術師〉使うんだったらこれぐらいやらなきゃ」
「う、うん」

 小声になる私。
 美咲ちゃんはそんな私にさらに言ってくる。

「本当は〈雷光〉とか〈春風〉とか欲しいカードは色々あるんだけどね。そんなに一気にごっそり変えちゃったらデッキが崩壊するかもだし、まずはそれから入れてみなよ」
「うん」

 私はとりあえず使わなそうなカードを抜くことにした。

「どれどれ」

 美咲ちゃんも覗き込むようにしてみる。

「あっ、これなんか使わなそうじゃない?」
「えっ、それは駄目かな」
「なんで?噛み合ってないじゃん」
「えっと、なんとなくかな?」

 私は美咲ちゃんのアドバイスを無視。
 別のカードを直感的に抜いて、新しく〈落城の魔術師〉のカードを入れた。
 じゃあ早速対戦!だけど、今からカードショップに行くのも時間的に遅いし如何しよ。

「じゃあ私とやろっか」
「えっ、美咲ちゃんと?」
「うん。ってか、そのために渡したんだし。ちょっと待ってねー」

 美咲ちゃんはそう言って準備を始めた。
 プレイシートを用意して広げる。それから自分のデッキを持ち込む。
 その間、私はアルルに小言で話をしていた。

「ねえアルル。アルルってなんだか変わってるよね」
「変わってるって?」
「カウントブレイクを使わずに、手札をコストにするってこと」
「うーん。効果のことについては私はよくわかんないよ。そんなことよりもさ彩葉!」
「なに?」
「楽しみだね。美咲のデッキ、どんなのか」
「うん」

 それには同感だった。
 ってそんな話をしている間に美咲ちゃんの準備は整っていた。

「じゃあやろっか」
「うん」

 私と美咲ちゃんはそれぞれのデッキをシャッフルし、お互いに交換する。
 半分ぐらいでカットしてもらい、返されたデッキの上から手札のカード5枚を引く。2枚ぐらい交換して、ゲーム開始だ。

「じゃあ行くよ」
「うん」
「「Let's OVER LINKER」」

 私達は同時にアバターカードをひっくり返す。
 私は依然として白。対する美咲ちゃんのは……

「青?」
「そっ。じゃあ始めるよ。私のターンから。うーんでもそうだなー。なにもせずターンエンド」
「なにもしないの?(レオの時もそうだっけど)」

 私はポワポワしていた。

「0コスで使えるカードってそんなに多くないの。ほらほら彩葉のターン」
「う、うん。えっと、〈見習い魔術師〉をコール。ターンエンド」
「ターンエンドね。じゃあ私の番、ドローっと。おっ、これはいいカード。私は〈ブラックアブゾーブ〉を発動」

 美咲ちゃんが繰り出したのはなんと黒のカード。だけど黒のカードはダメージゾーンに黒のカードがないから使えないはずだけど。

「このカードは“自分のアバターカードの色が黒か青の時、色条件を無視して使える”んだよ。その効果で、私はダメージ1」
「えっ、自分からダメージ!?」
「そう言うこと。ただしこの時、◆の効果は使えないけどね」

 そう言いながら美咲ちゃんは山札の上から1枚目をダメージゾーンに置く。黒のカードだ。
 ってことはこれで美咲ちゃんは青と黒のカードが使えることになる。って、そう言うことじゃん!

「あっ彩葉にもわかった?じゃあ早速行くよ。私は〈黒羽鴉〉をコール。コール時効果で、手札を1枚捨て1枚ドロー!」

 美咲ちゃんが出したのは鴉のカード。ちょっと不気味だ。
 
「じゃあ〈黒羽鴉〉で攻撃!」
「うわぁ」

 私はダメージを受けなかったけど、先制したのは美咲ちゃんだった。
 美咲ちゃんのデッキはよくわかんない。だけど奥深そうだった。そう直感的にささやく。

「私のターン、ドロー!ターンエンド」

 使えるカードがない。
 私は渋々ターンエンドするがそれにより流れは完全に美咲ちゃんペースに傾く。
 そんなこんなであっという間に私のダメージは5点。対する美咲ちゃんは3点。私の方が負けていた。
 

 
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