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64話 一夜明ければ
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次の日。
僕は木と木の間にかけたハンモックの上で、両腕を上げて伸びをする。
「ふはぁー。よく寝たー」
僕は目を擦る。
昨日の疲れは完全に取れた。代わりにお腹は空いた。
あの後、結局何にも食べられずに僕は持って来ていたハンモックで一人寝ていた。
流石に男一人に対して女の人三人となると、僕は肩身が狭い。
リーファさんは、「大丈夫ですよ」と言ってくれたけど、流石に倫理的にまずい気がすると、僕から率先して外に出たんだ。
おかげで一人の時間を有意義に過ごせた。
代わりにヴァンプコヨーテの酷い血の臭いが、僕の鼻をつんざく。
結構苦しい。
と言うか、ずっと興奮状態でまともに眠れなかった。
ほんと、この精神状態はいまいち治せない。
僕は自分が鬱陶しくならないようにしながら、ハンモックを速やかに片付けると、三人の元に向かった。
するとそこには、三人の姿。
お鍋を見ているチェリムさんに、髪を解くリーファさん。それから何故か精神統一をしているクロッサちゃんがいた。
「おはようございます。何か手伝って方がいいですよね?」
「必要ないニャアよ。それよりお疲れだと思うニャアから、ゆっくり休んでて欲しいニャア」
チェリムさんはそう言ってくれるけど、お鍋の中が気になる。
一向に灰汁を抜かない。
お鍋の中には猪系の肉が入っていて、ジビエ鍋なのはわかるが、灰汁が固まって、黒い。
もう少し、火加減落として欲しい。でないと、美味しくなくなる。
「リーファさんは、何を作っているの?」
「私はサラダですよ。それより本当にお体はもうよいのですか?」
「あ、うん。この通り」
僕はガッツポーズをしてみた。
するとリーファさんは心配した表情を少しだけ緩めてくれる。それよりも気になるのは、やっぱり、クロッサちゃんの方だ。
「クロッサちゃん、もう体はいいの?」
「あっ、天月お兄ちゃん! うん。もう平気だよ」
天月お兄ちゃん? あまり言われないことに驚いて、一瞬固まる。
しかしすぐに表情を朗らかにして、少女の顔を覗き込んだ。
「精神統一かな。心の影をコントロールするには、いいと思うよ」
「ほんとー?」
「うん。僕もやったことがあるから。それより、これからどうするの?」
僕は少女に厳しいことを言った。
すると周りからの目が痛く、視線が集まる。
だけどどのみちこれから先のことは決めないといけない。
そのための道標はするけど、どの結末を追うのかは、僕が決めることじゃないし、誰にもその権利はない。あるのは本人のみだ。
「私、町に行く。そこで冒険者になる」
「冒険者? じゃあ僕たちと同じギルドにするの?」
「ううん。遠くのぎるど。そこでじうりょくをつけて、いつか商人としてお店を開くの!」
凄い夢だ。僕は圧巻した。
背筋を伸ばさざる追えなくて、その夢を聞いて僕は止める気もなければ助言をする気もない。だって少女の瞳に迷いはなく、その結末は自分の手で掴み取るのが見えたから。
「そっか。じゃあその時は、僕もお店に寄らせてもらうね」
「はい!」
「おっ、いい返事」
「いつか私、世界一の商人になってみせます」
僕は朗らかな顔を少しキリッとさせた。
それから頭を撫でようとする手を引っ込めて、チェリムさんに一言。
「チェリムさん、そのお鍋少し火加減落としましょう」
僕は切り替えていた。
それから、迷いのない少女の気配を辿ると、昨日とは違いもやはなく、僕たちの間には絶え間ない普遍な風が吹いていた。
僕は木と木の間にかけたハンモックの上で、両腕を上げて伸びをする。
「ふはぁー。よく寝たー」
僕は目を擦る。
昨日の疲れは完全に取れた。代わりにお腹は空いた。
あの後、結局何にも食べられずに僕は持って来ていたハンモックで一人寝ていた。
流石に男一人に対して女の人三人となると、僕は肩身が狭い。
リーファさんは、「大丈夫ですよ」と言ってくれたけど、流石に倫理的にまずい気がすると、僕から率先して外に出たんだ。
おかげで一人の時間を有意義に過ごせた。
代わりにヴァンプコヨーテの酷い血の臭いが、僕の鼻をつんざく。
結構苦しい。
と言うか、ずっと興奮状態でまともに眠れなかった。
ほんと、この精神状態はいまいち治せない。
僕は自分が鬱陶しくならないようにしながら、ハンモックを速やかに片付けると、三人の元に向かった。
するとそこには、三人の姿。
お鍋を見ているチェリムさんに、髪を解くリーファさん。それから何故か精神統一をしているクロッサちゃんがいた。
「おはようございます。何か手伝って方がいいですよね?」
「必要ないニャアよ。それよりお疲れだと思うニャアから、ゆっくり休んでて欲しいニャア」
チェリムさんはそう言ってくれるけど、お鍋の中が気になる。
一向に灰汁を抜かない。
お鍋の中には猪系の肉が入っていて、ジビエ鍋なのはわかるが、灰汁が固まって、黒い。
もう少し、火加減落として欲しい。でないと、美味しくなくなる。
「リーファさんは、何を作っているの?」
「私はサラダですよ。それより本当にお体はもうよいのですか?」
「あ、うん。この通り」
僕はガッツポーズをしてみた。
するとリーファさんは心配した表情を少しだけ緩めてくれる。それよりも気になるのは、やっぱり、クロッサちゃんの方だ。
「クロッサちゃん、もう体はいいの?」
「あっ、天月お兄ちゃん! うん。もう平気だよ」
天月お兄ちゃん? あまり言われないことに驚いて、一瞬固まる。
しかしすぐに表情を朗らかにして、少女の顔を覗き込んだ。
「精神統一かな。心の影をコントロールするには、いいと思うよ」
「ほんとー?」
「うん。僕もやったことがあるから。それより、これからどうするの?」
僕は少女に厳しいことを言った。
すると周りからの目が痛く、視線が集まる。
だけどどのみちこれから先のことは決めないといけない。
そのための道標はするけど、どの結末を追うのかは、僕が決めることじゃないし、誰にもその権利はない。あるのは本人のみだ。
「私、町に行く。そこで冒険者になる」
「冒険者? じゃあ僕たちと同じギルドにするの?」
「ううん。遠くのぎるど。そこでじうりょくをつけて、いつか商人としてお店を開くの!」
凄い夢だ。僕は圧巻した。
背筋を伸ばさざる追えなくて、その夢を聞いて僕は止める気もなければ助言をする気もない。だって少女の瞳に迷いはなく、その結末は自分の手で掴み取るのが見えたから。
「そっか。じゃあその時は、僕もお店に寄らせてもらうね」
「はい!」
「おっ、いい返事」
「いつか私、世界一の商人になってみせます」
僕は朗らかな顔を少しキリッとさせた。
それから頭を撫でようとする手を引っ込めて、チェリムさんに一言。
「チェリムさん、そのお鍋少し火加減落としましょう」
僕は切り替えていた。
それから、迷いのない少女の気配を辿ると、昨日とは違いもやはなく、僕たちの間には絶え間ない普遍な風が吹いていた。
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