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23話 新緑の森③
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僕の教えは師匠からのものだ。
その教えを元に、僕なりに落とし込んだのが、今の僕の中にある。
僕とリーファさんは、ステゴラスを追った。
目印のマーカーを刺しておいたからか、すぐに見つけることができた。
赤いヒラヒラを絶え間なく揺らしながら、追った傷などものともせずに、生えている草を食べる。
だけど問題はその草。
赤紫色をした、明らかに毒草。
名前はアカドク草。僕の故郷の言葉に変えれば、赫い毒持つ草。
僕はそれを見て絶句した。
本当になんでも食べるんだ。
ステゴラスは古代種。
つまり長い年月を生きてきた。
その理由はなんでも食べるから。
その理由は未だにわかっていない。
だけど、胃の中に石ころが入っていて、どんなものでもすり潰すことができるとか、細胞がそうさせているんじゃないかとか、色々言われているそう。
リュウラン師匠によれば、古代種には龍の血族が多く、その影響で、身体的にも強いのでは? と考察されている。
でも僕からしたら、どうでいい。
言葉も通じないし、人の言葉も喋らない。
あれはただの獲物でしかない。
「リーファさん。僕が仕留めるから、前に立って注意を引いてくれる?」
「わかりました」
一番危険な役割を任せてしまった。
男の子としてどうなんだ、とか言われそうだけど、僕はタンク役には不向きだ。
けど、リーファさんも別に向いている訳じゃない。
背は高いけど、華奢な体つきだ。
腕も細いし、ジャンプ力がある。
もっと軽快な動きの方が、本来得意なはずなのに、どうしてか自身ありげな様子。
「では行ってきますね。ちゃんと背後を取ってください」
「わかった。でも、気をつけてね」
「はい」
リーファさんはステゴラスの前に出た。
それから何をするでもなく、剣を構える。
ミスリルの剣。煌めいて、細い刀身を顕にする。
「かかってきてください。今度は、油断しませんよ」
そう言うと、声に反応したんだろう。
ステゴラスの棘が、シュパッ! と、発射された。
カキーン!ーー
だけど今回は違った。
触れそうになった途端、左右に飛び散った。
まるで空気の壁に阻まれたみたいに、棘が触れそうになったら、急にリーファさんから弾かれる。
激しい音だけを発し、火花なんかは出ていない。
一体どんな魔法だろう。
「凄い……って、見惚れてたら怒られちゃうね」
僕は言われた通り、背後に回った。
それから適当なお店で、また新しく仕入れた、安い剣を握り、後ろからステゴラスに音もなく近づく。
別に魔法は使ってない。
気配と音を慎重に消して、空気に溶け込む。
するとあら不思議。相手は気が付かない。
これぞホズキ師匠に教わった、音を消す歩き方。
それからファイ師匠に言われた、染み込んだ体だ。
後は簡単。
速やかに近づくと、
グサっ!
僕は首を切断した。
ステゴラスは四肢を広げて、崩れる。
リーファさんはそれを目の当たりにして、目を見開くも、僕が顔を上げると、胸を撫でる。
「終わったよ。早速とろっか」
「わかりました」
ここまでの動作は決めていたこと。
あー、でも簡単じゃないよ。
僕が師匠たちに何度も何度も叩きのめされて、やっとのことで会得した、考えを一瞬で凝縮して、体をスムーズに動かす技。
それこそが、僕の使った、分割思考と凝縮運動の理屈だった。
だからこそ、魔法は使わないんだ。
その教えを元に、僕なりに落とし込んだのが、今の僕の中にある。
僕とリーファさんは、ステゴラスを追った。
目印のマーカーを刺しておいたからか、すぐに見つけることができた。
赤いヒラヒラを絶え間なく揺らしながら、追った傷などものともせずに、生えている草を食べる。
だけど問題はその草。
赤紫色をした、明らかに毒草。
名前はアカドク草。僕の故郷の言葉に変えれば、赫い毒持つ草。
僕はそれを見て絶句した。
本当になんでも食べるんだ。
ステゴラスは古代種。
つまり長い年月を生きてきた。
その理由はなんでも食べるから。
その理由は未だにわかっていない。
だけど、胃の中に石ころが入っていて、どんなものでもすり潰すことができるとか、細胞がそうさせているんじゃないかとか、色々言われているそう。
リュウラン師匠によれば、古代種には龍の血族が多く、その影響で、身体的にも強いのでは? と考察されている。
でも僕からしたら、どうでいい。
言葉も通じないし、人の言葉も喋らない。
あれはただの獲物でしかない。
「リーファさん。僕が仕留めるから、前に立って注意を引いてくれる?」
「わかりました」
一番危険な役割を任せてしまった。
男の子としてどうなんだ、とか言われそうだけど、僕はタンク役には不向きだ。
けど、リーファさんも別に向いている訳じゃない。
背は高いけど、華奢な体つきだ。
腕も細いし、ジャンプ力がある。
もっと軽快な動きの方が、本来得意なはずなのに、どうしてか自身ありげな様子。
「では行ってきますね。ちゃんと背後を取ってください」
「わかった。でも、気をつけてね」
「はい」
リーファさんはステゴラスの前に出た。
それから何をするでもなく、剣を構える。
ミスリルの剣。煌めいて、細い刀身を顕にする。
「かかってきてください。今度は、油断しませんよ」
そう言うと、声に反応したんだろう。
ステゴラスの棘が、シュパッ! と、発射された。
カキーン!ーー
だけど今回は違った。
触れそうになった途端、左右に飛び散った。
まるで空気の壁に阻まれたみたいに、棘が触れそうになったら、急にリーファさんから弾かれる。
激しい音だけを発し、火花なんかは出ていない。
一体どんな魔法だろう。
「凄い……って、見惚れてたら怒られちゃうね」
僕は言われた通り、背後に回った。
それから適当なお店で、また新しく仕入れた、安い剣を握り、後ろからステゴラスに音もなく近づく。
別に魔法は使ってない。
気配と音を慎重に消して、空気に溶け込む。
するとあら不思議。相手は気が付かない。
これぞホズキ師匠に教わった、音を消す歩き方。
それからファイ師匠に言われた、染み込んだ体だ。
後は簡単。
速やかに近づくと、
グサっ!
僕は首を切断した。
ステゴラスは四肢を広げて、崩れる。
リーファさんはそれを目の当たりにして、目を見開くも、僕が顔を上げると、胸を撫でる。
「終わったよ。早速とろっか」
「わかりました」
ここまでの動作は決めていたこと。
あー、でも簡単じゃないよ。
僕が師匠たちに何度も何度も叩きのめされて、やっとのことで会得した、考えを一瞬で凝縮して、体をスムーズに動かす技。
それこそが、僕の使った、分割思考と凝縮運動の理屈だった。
だからこそ、魔法は使わないんだ。
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