220 / 428
第二百二十話 明智対上杉
しおりを挟む
城から一部隊がすでに私達の動きを察知して、待ち構えていました。その数は千人ほどです。千人の部隊はやはり脅威です。とても大勢で巨大に見えます。
ノブ君の目は見開かれ、手が震えています。
十人や二十人くらいなら今の私達なら何とかなるのでしょうけど、さすがに一度に千人の相手は無理です。
私たちが向かって行っても、数人の相手が限度でしょう。相手をしていない者が女性たちに襲い掛かれば被害が出ます。最悪死者が出るかもしれません。
無防備な女性達を無傷で守り切ることは無理だと思います。
「お前達の負けだ。観念しな!」
旗には十の文字があります。
新政府軍十番隊で間違いありません。
副隊長でしょうか小柄ですが、人相の悪い男がニヤニヤ笑っています。
私達は戦う事をあきらめて、うなだれました。
「うぎゃー!」「ぐあーー!!」
城の南から、叫び声が聞こえ始めました。
「おーーい!! 冨田ー!!」
城の方から、声がします。
「何ですかー! 辻隊長」
「城の南へ行けーー!!」
「えっ!? し、しかし、こいつらは?」
「そんなことはどうでもいい! さっさと行くんだーー!!」
冨田と呼ばれた男は渋々、城の南へ移動を始めました。
とても悔しそうです。
何かよからぬ事でも考えていたのでしょうか。
きっと、シュウ様がこちらの動きを見て、攻撃の手を強めてくれたに違いありません。
さすがは、シュウ様です。
「ノブ君、今のうちです尾野上隊長のところまで急ぎましょう」
「シュウさんが、敵を引きつけてくれたんだね」
「そうよ。だから早く」
ノブ君は、先頭を元気よく目を輝かせて走り出しました。
このまま、尾野上隊長のところまで逃げられれば、後は尾野上隊長が、守ってくれます。
尾野上隊長は橋の前まで出て、私達を迎え入れようと待ってくれています。なんとか、任務は達成出来そうです。
「桃井組頭、報告してきました」
大阪城にむかって、明の旗印の軍が淀川の橋を渡るのを見つけて、部下に大殿へ報告させました。
その部下が戻ってきました。
「ちゃんと、出来たのでしょうね」
「も、もちろんです。『古賀忍軍、い組、桃井組頭配下若園! 大殿に至急知らせたいことがあります』ちゃんと言えましたよ」
この子は新たに正規メンバーになったばかりです。
心配していましたが、どうやら初任務は無事終ったようです。
「で、大殿はどうされましたか?」
「はい、上杉様に伝令を出されました。私と同じタイミングで通天閣を出ましたので、間もなく陣に着く頃かと」
若園ちゃんが言い終わると、上杉軍が動き始めました。
大阪城のまわりはすでに何も建物はありません。
それは、北側も同じです。ただ、南や東ほど進んでいませんので、全体が見渡せるビルが、比較的近くまで残っています。
私はその上に登り配下四人と明軍が建物の間を抜けて荒野に出てくるのを、かたずを呑んで今か今かと待ち構えます。
「きたーー!! 明軍だーー!!」
「桃井組頭! あれは織田家明智軍だと、ミサ様と大殿が話していました」
「なんでわかるのーー?」
「ですよね」
どうやら若園ちゃんも歴史は苦手のようです。
明の一文字で、何でそんなことが解るのかがわかりません。
上杉様は大阪城の北西へ移動し、明智軍を待ち構えるようです。
「桃井様、見えました!」
別の隊員がいち早く見つけて、指をさしました。
舗装道路の中央を綺麗な隊列を組み、建物を抜けてきます。
前面に千人程の日本の甲冑を着けています。
映画とか美術館でしか見た事の無いあの甲冑です。
鎧の部品がぶつかる音があたり一面に鳴り響きます。
「すごい!!」
部隊全員が荒野に姿を出すと、思わず声が出てしまいました。
恐らく隊長が几帳面な方なのでしょうか、整列した姿が美しい。
明智軍は、前面に甲冑隊が千人、その後ろに足軽隊、その後ろは、三千人ほどが長い布の袋に入った者を持っています。何でしょうか。
そして、そこから五百メートル程先に上杉軍が整然と整列をして待ち構えます。
「おおおぉぉぉ」
明智軍から地鳴りのような低いどよめきが起りました。
「ロボだ。ロボだー!」「自衛隊はあんな新兵器を開発していたのか。まるでアニメじゃねえか」
続いて、ザワザワと騒々しくなりました。
その気持ちはわかります。まるで漫画です。はい。
「うろたえるなー! みっともない! どうせ見た目だけだ。張りぼてに決まっている。戦いが始まればすぐに解る。ところであれはどこの軍だ? 天地海山? 武田信玄の風林火山じゃあるまいし、誰かわかる者はいないかー」
明智軍の一番後ろで威張っている人が言います。
あれが大将明智さんでしょうか。
上杉軍は旗に天地海山と書いています。
上杉家は、天地海山教徒です。ですから旗印もそれにしている様です。
「明智様、あれは越後の上杉軍です」
「なに、上杉謙信か。なぜ、こんな所に? 間違いないのか?」
「はっ、越中での戦いで見てきた者がいます」
「なるほど、柴田に負けた上杉か。戦国時代の上杉とは違う、恐るるに足らずだ。だが、まさか俺達の動きを読んで待ち構えるとはたいしたもんだ、そこだけは褒めてやる」
いいえ、読んでいません。
たまたまです。偶然同じ日になっただけだと思います。
交通事故みたいなものですね。
「さてと、上杉軍の度肝を抜く時間がやって来た。全軍準備しろ」
「はっ!!」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! な、なんなんだあれはーー?」
上杉軍から驚きの声が上がりました。
ノブ君の目は見開かれ、手が震えています。
十人や二十人くらいなら今の私達なら何とかなるのでしょうけど、さすがに一度に千人の相手は無理です。
私たちが向かって行っても、数人の相手が限度でしょう。相手をしていない者が女性たちに襲い掛かれば被害が出ます。最悪死者が出るかもしれません。
無防備な女性達を無傷で守り切ることは無理だと思います。
「お前達の負けだ。観念しな!」
旗には十の文字があります。
新政府軍十番隊で間違いありません。
副隊長でしょうか小柄ですが、人相の悪い男がニヤニヤ笑っています。
私達は戦う事をあきらめて、うなだれました。
「うぎゃー!」「ぐあーー!!」
城の南から、叫び声が聞こえ始めました。
「おーーい!! 冨田ー!!」
城の方から、声がします。
「何ですかー! 辻隊長」
「城の南へ行けーー!!」
「えっ!? し、しかし、こいつらは?」
「そんなことはどうでもいい! さっさと行くんだーー!!」
冨田と呼ばれた男は渋々、城の南へ移動を始めました。
とても悔しそうです。
何かよからぬ事でも考えていたのでしょうか。
きっと、シュウ様がこちらの動きを見て、攻撃の手を強めてくれたに違いありません。
さすがは、シュウ様です。
「ノブ君、今のうちです尾野上隊長のところまで急ぎましょう」
「シュウさんが、敵を引きつけてくれたんだね」
「そうよ。だから早く」
ノブ君は、先頭を元気よく目を輝かせて走り出しました。
このまま、尾野上隊長のところまで逃げられれば、後は尾野上隊長が、守ってくれます。
尾野上隊長は橋の前まで出て、私達を迎え入れようと待ってくれています。なんとか、任務は達成出来そうです。
「桃井組頭、報告してきました」
大阪城にむかって、明の旗印の軍が淀川の橋を渡るのを見つけて、部下に大殿へ報告させました。
その部下が戻ってきました。
「ちゃんと、出来たのでしょうね」
「も、もちろんです。『古賀忍軍、い組、桃井組頭配下若園! 大殿に至急知らせたいことがあります』ちゃんと言えましたよ」
この子は新たに正規メンバーになったばかりです。
心配していましたが、どうやら初任務は無事終ったようです。
「で、大殿はどうされましたか?」
「はい、上杉様に伝令を出されました。私と同じタイミングで通天閣を出ましたので、間もなく陣に着く頃かと」
若園ちゃんが言い終わると、上杉軍が動き始めました。
大阪城のまわりはすでに何も建物はありません。
それは、北側も同じです。ただ、南や東ほど進んでいませんので、全体が見渡せるビルが、比較的近くまで残っています。
私はその上に登り配下四人と明軍が建物の間を抜けて荒野に出てくるのを、かたずを呑んで今か今かと待ち構えます。
「きたーー!! 明軍だーー!!」
「桃井組頭! あれは織田家明智軍だと、ミサ様と大殿が話していました」
「なんでわかるのーー?」
「ですよね」
どうやら若園ちゃんも歴史は苦手のようです。
明の一文字で、何でそんなことが解るのかがわかりません。
上杉様は大阪城の北西へ移動し、明智軍を待ち構えるようです。
「桃井様、見えました!」
別の隊員がいち早く見つけて、指をさしました。
舗装道路の中央を綺麗な隊列を組み、建物を抜けてきます。
前面に千人程の日本の甲冑を着けています。
映画とか美術館でしか見た事の無いあの甲冑です。
鎧の部品がぶつかる音があたり一面に鳴り響きます。
「すごい!!」
部隊全員が荒野に姿を出すと、思わず声が出てしまいました。
恐らく隊長が几帳面な方なのでしょうか、整列した姿が美しい。
明智軍は、前面に甲冑隊が千人、その後ろに足軽隊、その後ろは、三千人ほどが長い布の袋に入った者を持っています。何でしょうか。
そして、そこから五百メートル程先に上杉軍が整然と整列をして待ち構えます。
「おおおぉぉぉ」
明智軍から地鳴りのような低いどよめきが起りました。
「ロボだ。ロボだー!」「自衛隊はあんな新兵器を開発していたのか。まるでアニメじゃねえか」
続いて、ザワザワと騒々しくなりました。
その気持ちはわかります。まるで漫画です。はい。
「うろたえるなー! みっともない! どうせ見た目だけだ。張りぼてに決まっている。戦いが始まればすぐに解る。ところであれはどこの軍だ? 天地海山? 武田信玄の風林火山じゃあるまいし、誰かわかる者はいないかー」
明智軍の一番後ろで威張っている人が言います。
あれが大将明智さんでしょうか。
上杉軍は旗に天地海山と書いています。
上杉家は、天地海山教徒です。ですから旗印もそれにしている様です。
「明智様、あれは越後の上杉軍です」
「なに、上杉謙信か。なぜ、こんな所に? 間違いないのか?」
「はっ、越中での戦いで見てきた者がいます」
「なるほど、柴田に負けた上杉か。戦国時代の上杉とは違う、恐るるに足らずだ。だが、まさか俺達の動きを読んで待ち構えるとはたいしたもんだ、そこだけは褒めてやる」
いいえ、読んでいません。
たまたまです。偶然同じ日になっただけだと思います。
交通事故みたいなものですね。
「さてと、上杉軍の度肝を抜く時間がやって来た。全軍準備しろ」
「はっ!!」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! な、なんなんだあれはーー?」
上杉軍から驚きの声が上がりました。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
最強の英雄は幼馴染を守りたい
なつめ猫
ファンタジー
異世界に魔王を倒す勇者として間違えて召喚されてしまった桂木(かつらぎ)優斗(ゆうと)は、女神から力を渡される事もなく一般人として異世界アストリアに降り立つが、勇者召喚に失敗したリメイラール王国は、世界中からの糾弾に恐れ優斗を勇者として扱う事する。
そして勇者として戦うことを強要された優斗は、戦いの最中、自分と同じように巻き込まれて召喚されてきた幼馴染であり思い人の神楽坂(かぐらざか)都(みやこ)を目の前で、魔王軍四天王に殺されてしまい仇を取る為に、復讐を誓い長い年月をかけて戦う術を手に入れ魔王と黒幕である女神を倒す事に成功するが、その直後、次元の狭間へと呑み込まれてしまい意識を取り戻した先は、自身が異世界に召喚される前の現代日本であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる