異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第23章オチャルフ要塞決戦編(前)

第7話 チェスティーとウェルダーの奮闘

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・・7・・
午後1時40分
トルポッサ市街地から東7キーラ地点
統合軍トルポッサ第2防衛線

 ザレッツ中佐とチェスティーやウェルダー達の活躍により、彼等はこの数時間よく防衛出来ていた。
 しかし質的低下をし始めたとはいえ膨大な後方予備戦力を保有し、飽和攻撃を仕掛けてくる帝国軍は途絶える事無く兵力を投入。人的資源を豊富に持つ軍としては王道の戦略で突き進む帝国軍と、兵力こそ劣勢であるものの火力は帝国軍に引けを取らず練度では上回る統合軍による出血強要戦術のぶつかり合いは今日も繰り広げられている。
 午前中からの戦闘は午後にもなって続き、死傷者も出始めた一一連隊の将兵は苦しい戦いを強いられていた。

「帝国軍第四波侵攻鈍化を確認!   ただしザレッツ中佐からの情報では既に第五波の侵攻を確認!」

「この数日でだいぶんぶっ殺したのに、まだ来るのかよー!    僕もう疲れたんだけどー!」

「仕方あるまい。黒い津波の名は伊達ではないからな」

「だけどさー!    ボク達が言えた義理は無いけどさー、連中は命が惜しくないかよー!    今日だけで何人殺したと思ってんの!」

「人海戦術の正しい使い方だ。有能ではないが無能ではない指揮官なら、これが最適解と判断しているのだろうな。しかし、チェスティーの言う通り苦しいな。援軍を要請するか?」

「まずは自前でだね。コルトのとこに繋げよっか」

「通信兵、コルトに繋いでくれ」

「はっ。了解しました」

 通信兵はコルトとレイリアの第二〇一大隊に無線を繋げた。

「コルトー!   こっちは厳しいよ!   そっちから一個小隊でいいから寄越せない?」

『馬鹿言うな。こっちもギリギリだ。メイリーの大隊に言ってくれ』

「あそこは治療で精一杯だし、戦闘可能戦力はメイリー含めてさっき南側が危うくなったから出たばっかりだって!」

『クソッ、連隊の予備兵力は底をつきかけてるのか。連隊本部付の一部すら前に出ているからな。悪い、こっちは無理だ』

「了解ー。仕方ないしなんとか踏ん張ってみるよ!」

『ああ、健闘を祈る』

「そっちもね!」

 チェスティーはコルトとの無線を切ると大きくため息をついた。
 連隊内での支援に頼れないとなると、手持ちの兵力だけでこの担当区域を引き続き守らなければならない。
 少しだけ戦線を下げる?    いや、今のタイミングで後退すると後が苦しいよね。
思案してみるものの、あと一時間ないし二時間は現状維持しかないと結論付ける。
 なんとかするか。と、またチェスティーはため息をついてそろそろぐっすり寝たいな。ふかふかのベッドで寝られればなあ。と今は叶わない夢を頭に過ぎらせていると、良くない報告が入った。

「緊急通報!   第一二連隊担当区域が一部食い破られました!   コルト中佐の大隊だけでなく、こちらにも一部流れてくるとのこと!」

「もーちくしょー!   敵兵のおかわりなんていらないってのー!」

「どうする、チェスティー」

「ボクとウェルダーでやるしかないでしょ。さっきの戦闘から少し経って、魔力回復薬の効果でほんの少しずつだけど回復はしてるし」

「致し方ない、か」

「そゆこと」

 比較的まだ余裕のある自分とウェルダーに、彼等と行動してる兵士達ならば食い止められると判断したチェスティー。それからの行動は早かった。
 推定で数分後には第五波と併せて襲来する敵に備える為、速やかに準備を終える。
 チェスティーの残存魔力は六割強。ウェルダーの魔力は六割弱。最低限残す魔力を含めてもまだ余裕はあるはずだと計算を終えたチェスティーとウェルダーは、二人の大隊の態勢を整え終え、その頃に第五波と一二連隊の戦線の一部を突破した帝国軍将兵が現れた。
 その数、約一個連隊規模。

「距離約六〇〇。とっておきの魔法をぶつけてやらないとね。――闇よ呑み込め。平らげろ。食らった糧は、爆ぜてゆく。『闇喰爆破(カオスイート・エクスプロージョン)』」

 狙いを定めたチェスティーは闇属性上級魔法『闇喰爆破』を発動。範囲内にいた不幸な兵士達は漆黒の球に呑み込まれ、喰われた兵士達の魔力と生命を糧に膨張した黒い球は爆ぜた。巻き込まれた帝国兵は多くいたが、それでも彼等は進撃を止めない。

「次は俺がやる。――降り注げ、大地。土塊は不埒な輩を圧殺す。『石礫流星(ストーングラブル・メテオ)』」

 ウェルダーが発動した土属性上級魔法『石礫流星』は帝国兵の頭上に降り注ぎ、多数の兵士を貫通するか押し潰す。だが生き残った兵士も多く、大地の流星を逃れた帝国兵は迫ってくる。

「まあこんなもんだよね」

「上級魔法のみで帝国兵が全滅するのならば、苦労などしまい」

「言えてる。さあ、総員近接戦闘用意!    帝国兵共を蹴散らしちまえ!」

「目標前方一個連隊。ここを抜かれれば計画以上の後退を強いられる。守り抜くぞ」

『はっ!!』

 ウェルダーとチェスティーの計二個大隊の将兵は二回の斉射の後、掻い潜ってきた帝国兵と近接戦闘へ移る。
 チェスティーが闇の剣を放ち、ウェルダーは地面から土の槍で帝国兵を串刺しにすると、次はチェスティーが討ち漏らしの兵士を魔法剣で切り伏せる。
 チェスティーに隙が生じればウェルダーが土の壁で守り、ウェルダーの背後に帝国兵が襲いかかればチェスティーが魔法剣で一刀両断し、さらに闇魔法で薙ぎ払う。
 完璧な連携により、何人足りとも寄せ付けない二人だが、さすがにこの状況が長く続くと二人の表情にも疲労が滲み出てきた。

「きっつ、きっつい!!   ウェルダー、残存魔力は!」

「半分を切った!    このまま一時間となったら厳しいぞ!   チェスティー、お前はどうだ!」

「ボクも半分切っちゃったよ!    あと闇の副作用がそろそろ来そうかな……!    眠気が、ね……」

「なるべく抑えておけ!    意識が落ちたら最後だぞ!」

「分かってるって!」

 闇魔法使いにとって副作用は付き物だ。チェスティーの場合は闇魔法を行使すればするほど意識レベルに支障が生じ、限界を迎えると気絶をしてしまう。チェスティーがここしばらく眠たそうにしているのは決して体質ではなく、この魔法による副作用が原因なのだ。
 二人の大隊にも戦死者と負傷者が続出し始める。戦死者は少ないが、負傷者はすなわち戦線離脱者となるか最悪二度と戦線から戻れない。また、復帰可能な者がいたとしていくらメイリー達が優秀とはいえ、すぐに戦線復帰が出来る訳では無い。
 苦しい展開かつ、即援軍は来ない。
 これは後退もやむなしか。二人に選択肢が過ぎった時、悪い報告が入った。
 それは一時的に戦闘が落ち着いた時で、ザレッツ中佐からの通信だった。

「――はい、こちら第三〇一大隊本部。ザレッツ中佐ですか。なんですって!?   了解しました!!」

「こんな時にどうしたのさ!」

「東より洗脳化光龍が接近!  数は推定五!   当区域に到着までおよそ二分!」

「このタイミングで?!   最悪じゃんかもう!」

「畜生、やっと今相手してる連中を減らせたっていうのに。航空支援は得られるか?」

「ザレッツ中佐の緊急要請で近接空域から四機なら!   それも間に合うか分かりません!」

「だーもー!!    対空警戒厳として!!」

「いくら上から一日あたりの使用弾数が無制限だったとしても、補給しなければ意味が無い。先の戦闘でだいぶ減ったぞ……」

「あるものでやるしかないじゃん!   ウェルダー、防御は頼んだよ!」

「任せておけ」

「――了解しました!   コルト中佐より連絡あり!   一二連隊立て直し完了!   少なくとも他方からの帝国兵追加は無いと!」

「有難い!   これなら我々で対空攻撃に多少なりとも対処が出来る!」

 コルトから不幸中の幸いとなる通信が入る。
 だが、あくまで最悪は回避出来たというだけで根本的な解決にはならない。
 上空の敵を地上からは迎撃、もしくは撃破など不利極まりない。ましてそれが絶大な攻撃力を持つ洗脳化光龍ともなれば尚更だ。

「間もなく洗脳化光龍到達!   見えました!」

「全く持って忌々しい……!   迎撃用意!」

 チェスティーもウェルダーも、恐らく少なくない損害を受けるだろうと覚悟を決める。
 その時だった。

「チェスティー少佐、ウェルダー少佐!   緊急連絡です!    ザレッツ中佐からです!    どうぞ!」

「このタイミングで?!  ――何さザレッツ中佐!」

『朗報だぞ!   陛下が!   陛下が援軍に来られる!』

「陛下?!   ココノエ陛下が?!」

『そうとも!!   すぐに!!  ああ今来たぞ!!』

 喜色に溢れるザレッツの声と、洗脳化光龍が彼等に狙いを定めた時。そして、ココノエ達が現れたのほ同時だった。
 洗脳化光龍が口から光龍独特の光線型法撃を放とうとした瞬間、それ以上の高度にいたココノエ達の横薙ぎの光線型法撃が洗脳化光龍に直撃する。
 洗脳化光龍が全騎撃墜。まさに一瞬の出来事だった。
 地上からはチェスティーやウェルダーを含め統合軍将兵の歓声が、絶望が滲み出た叫び声が帝国軍将兵から発せられる。
 空からは光龍の姿のココノエが翼を振り、その後帝国軍将兵を光線型の法撃をさらに放つ。
 ただココノエは他の戦域も担当しなければならないのか、すぐに南の方へと移っていった。

「よーし、今のうちに一撃を加えたら後退するぞー!」

「長居は無用。斉射後、すぐの後退だ」

『了解!!』
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