異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第19章ドエニプラ攻防戦2編

第1話 背後の一刺しの為に準備は進む。

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  ・・1・・
 10の月21の日
 午後2時20分
 オルジョク市街
 人類諸国統合軍前線司令部


 僕も深く関わっている、参謀本部主導の『シェーコフの庭荒らし作戦』が成功して一週間が経過した。
 この作戦が上手くいったことにより、計画からの遅延日数は約十日程度まで短縮出来たけれど僕達は未だにドエニプラ市街地外郭部付近にしか辿り着けていない。
 一番中心市街地から近い戦線で約一三キーラ。これが東側を除く半包囲網の現状だ。
 帝国軍はこれまでに推定で最初期の兵力から四割にまで減ぜられたけど、まだ多くの兵力がドエニプラを守っている。戦線が縮小した事により密度が上がった分向こうも守りやすくなったのか、そろそろ物資全般が怪しくなる頃だろうにまだまだ頑強な抵抗を続けていた。
 帝国軍だけじゃない。僕達人類諸国統合軍も無傷では無かった。
 昨日までに統合軍全体の死者は二五〇〇〇を越えた。負傷者も約三六〇〇〇。戦線復帰可能者を除けば約一割の将兵が戦闘不能になったってわけだ。
 幸いなのは助攻の南部ホルソフ方面の軍が比較的順調に攻略している事だろうか。
 本国からオディッサを経由して続々と予備兵力が届いているから今は問題ないけれど、敵帝都に近付けば近付くほど抵抗が激しくなることが必須な来年のことを考えると、展望は明るいとまでは言えなかった。
 とはいえ、勝っているのに違いはない。僕は努めて明るく振る舞い、今日も午前中にオルジョクにある司令部から前線に視察へ赴いて前線の兵士達を鼓舞するとついさっき再び司令部に戻っていた。
 ただ、僕とリイナとエイジスは僕の執務室にはいない。とある人物を迎えてから前線司令部付近の視察を行って、これから僕の執務室に向かうとこなんだよね。
 そのとある人物ってのは、マーチス侯爵の事だ。

「マーチス元帥閣下、本日は前線司令部にお越し頂きありがとうございました」

「何、普段は後方の総司令部にいてばかりだからな。たまには前線司令部の様子も見ておきたかった。前線も思ったより将兵の顔が良く安心したといったところか」

「兵站線は機能しているので、兵站部は命をかけて戦う兵士達の食事面には特に配慮しているようです。一昨日も嗜好品の配給がありましたから、不満はある程度抑えられているかと」

「来年はより厳しくなると考えると頭が痛いが、士気が保てているのならばいい」

「ええ。ドエニプラの戦いも間もなく佳境に入ると言っても過言ではありませんから」

「予定では今月末までに占領だったけれど、流石に厳しそうね。けれど、来月中旬には果たせると私も思うわ。この頃には間違いなく雪の降る冬になっているだろうから、ギリギリね」

「うむ」

 僕達は護衛の兵士を伴いながらマーチス侯爵と一緒に歩を進める。
 もうすぐ僕の執務室に到着といったところで、マーチス侯爵は口を開いた。表情はさっきより明るい。良い話なんだろう。

「お、そうだ。実は総本部に手紙が届いていてな。運ばせるよりオレが持っていった方が早いから鞄の中に入れてある。アカツキ、リイナ。務室に着いたら渡そう」

「手紙ですか。どちらからですか?」

「オレも思わず顔が綻んだ。ノイシュランデからだ」

「ノイシュランデ! リオや父上達からですね!」

「ああ」

「手紙は定期的に届くけれど、やっぱり嬉しいわね。それもリオから尚更ね」

「封筒の中身からして手紙以外にも写真が入っている可能性が高そうだぞ」

「写真! それはいいですね!」

 写真が上流階級を中心に普及して久しくなったけれど、まだまだ庶民には贅沢品の類だ。だけど貴族のノースロード家なら定期的に何枚も撮れる。たぶんここ暫く撮影した物を送ってきてくれたんだろう。見るのが楽しみになってきた。
 執務室に着くと、部屋の外にいる護衛も人払いさせて僕達とマーチス侯爵だけになる。
 早速彼の軍務鞄から封筒を受け取った。手紙だけを入れるには大きい封筒だ。
 中には、両親と祖父からの手紙。それとリオが描いた絵と皆やリオが写っている写真が十何枚か入っていた。
 全員が表情を緩ませる。軍人ではない、私人として家族としての顔だった。
 しばらくの間はコーヒーを飲んだりクッキーを食べながら団欒のような時間を過ごした。
 しかし、マーチス侯爵も僕達も雑談しにここにいるわけじゃない。話は変わって、今後の作戦についてになった。

「アカツキ、リイナ、エイジス。既に知っているだろうがドエニプラの戦いを終わらせる為にも市街地突入のタイミングで、妖魔諸種族連合軍工作員による例の作戦が軍議の結果正式に決まった。投入部隊も事前の打ち合わせ通りだ」

「『最初の大隊』ですか。彼等なら確実に果たしてくれるでしょう」

「精強無比の大隊だし、破壊工作にも長けているものね」

「うむ。アカツキのアレン中佐とは少し性格が変わる部隊だが精鋭に違いない。外見での偽装にも優れているし、何より祖国解放が目的故に士気もすこぶる高い」

 今月の上旬に報告があった諸種族連合共和国軍提案の精鋭特殊部隊、『最初の大隊』が投入される作戦が軍議の結果昨日正式に作戦許可が降りた。
 現状、ドエニプラ攻防戦の最終段階たるドエニプラ市街戦は週明けには開始の予定なんだ。
 ここまでに敵兵力を大幅に減じさせた上、前世で例えるならば機甲戦力たるソズダーニアも、銃砲兵型が残り一割から二割、ココノエ陛下から報告のあったアジンの改良発展型もあと一体か二体程度しか残存していないだろうという状態で、虫の息になっている。
 こうなれば、後は純粋に歩兵と歩兵のぶつかり合いの様相になる。当然こっちは航空攻撃とゴーレム搭乗魔法兵の諸兵科連合になるし、あっちも残存兵力全てをぶつけてくるだろう。まさに激戦だ。
 だからこそ互いに出血量は尋常ではない。帝国軍の損害が大きくなる分には構わないけれど、統合軍は極力損害を抑えたい。冬の訪れもあるしつまりは早いとこ終わらせたいんだ。
 そこで投入されるのが、敵地真っ只中のドエニプラ中心市街地で破壊工作を担う諸種族連合共和国軍の『最初の大隊』だ。
 作戦は以下のように行われる。

 □作戦名『背後からの一刺し』概要
 決行日:11の月7の日
 投入部隊:妖魔諸種族連合共和国軍特殊大隊『最初の大隊』及びドエニプラ包囲軍全体

 1,事前段階として妖魔帝国軍支配地域に『最初の大隊』を潜入。破壊工作にあたり準備行動をさせる。

 2,作戦決行必須条件として包囲網を破壊工作地域から最短距離で約五キーラまで狭めておくこと。箇所は問わない。

 3,作戦結構までに帝国軍重要施設へ魔石爆弾を設置。可能であれば要人クラスの暗殺も構わないものとする。ただし、シェーコフ大将のみ非対象とする。

 4,破壊工作にて帝国軍を混乱に陥れ同時に空爆と地上軍が一挙攻勢をする。

 5,本作戦を持ってしてドエニプラ攻防戦を終結させ本年までの大枠の作戦計画を完了させるものとする。

 6,本作戦は最高機密につき一部将官級と作戦当事者及び関係者を除き味方にも秘匿する。


「この作戦はまず我々がドエニプラ市街に対する包囲網を狭めなければ成り立ちませんからね。表面上は攻勢強化としましょう」

「賛同。ワタクシも可能な限り敵地観測を行って状況を注視します」

「あえて目を逸らす為にも私達が出るのも有りでしょうね」

「ああ、そうだな。ここまで散々消耗させられた帝国軍がアカツキやリイナにエイジスまで出てきたとなれば自ずと注意がそちらへ向かう。あのシェーコフ大将だと裏を読んでくるかもしれないが、包囲網は完全ではないものの物資遮断は順調で決行日の頃は奴自身も判断力が鈍ってくる。しかしそれまでは純粋な戦力と戦力の殴り合いになる。頼んだぞ」

「了解しました、義父上」

「分かったわ」

「サー」

 トドメの一刺しになるこの作戦。
 準備は着々と進んでいく。厳冬期を迎えるまでに終わらせる為にも。
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