異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第15章 戦間期編2

第18話 人類諸国初の戦闘機、その名は『AFー44』。

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 ・・18・・
 僕の視線の先に姿を現したそれは、人類の叡智の結晶が一つの空を飛ぶ機械。飛行機だった。
 飛行機、というと前世ではライト兄弟が発明をしたのはよく知られている。初飛行が一九〇三年。それから僅か十五年で戦争に使用され武器を搭載するまでに至っている。速度一つ取っても黎明期に比べ第一次世界大戦後期には時速約一八〇キロにまで進化している。武装についても大戦初期は偵察のみに使用されていたからすれ違うとパイロット同士が手を振る事もあったけれど、ピストルでの撃ち合いやレンガを落としたりから、すぐに機関銃を搭載するまでになった。
 魔法の無い前世では実用化は二十世紀初頭だったけれど、この世界では十九世紀半ばでの実現となったんだ。
 ただし、初登場にしてここにある飛行機は既に第一次世界大戦期のフォルムにまで洗練されていた。

「皆様! こちらが我等が連合王国の魔法と科学の技術の粋を結集した飛行機、魔液駆動式魔法科学エンジン搭載の『AF―44』です!!」

 ノイシェン技術大佐が飛行機に手を向けて自信満々に語る飛行機は、エンジン部分以外は前世の航空機のそれとほとんど変わらなかった。
 人類諸国初の飛行機、というよりかは戦闘機の『AFー44』。
 僕はこの飛行機の諸元については前持って情報を貰っている。持ってきた軍務鞄にも入っているので、それを取り出すと僕は目を通していく。
 諸元は以下の通りだった。

『AFー44』
 〇開発・製作:アルネシア連合王国王立工廠新兵器製造部門(呼称:AF開発局)
 〇全長:6.52メーラ
 〇全高:2.71メーラ
 〇動力:魔液駆動式魔法科学エンジン『アルヴィース1型エンジン(AF01エンジン)』
 〇最大速度:時速225キーラ
 〇運用上昇限界:高度2500メーラ
 〇航続距離:250キーラ
 〇搭乗員:2名(操縦士・攻撃担当魔法能力者)
 〇武装:DHMG1842航空機搭載改造型(口径8ミーラ・装弾200発)・後部座席搭乗員魔法能力者による魔法もしくは魔法銃


 この世界では初めての飛行機にも関わらずいきなり第一次世界大戦後期クラスの戦闘機が誕生したのは、流石に僕もびっくりした。
 僕はこの計画には本格的には携わっていなくて、召喚士飛行隊をきっかけに召喚士の動物以外も飛ばせるようにと動き始めていた部門に対して前世の知識を話してみただけなんだ。簡単なイメージ図は僕には出来ないから、エイジスに書いてもらって渡しただけ。確かそれが、特別教官をしていた頃の話だ。
 そうしたら当時は中佐だったノイシェン技術大佐のやる気に火がついただけでなく、王立工廠所属のドワーフやら研究者やら、さらには参謀本部所属で召喚士飛行隊設立の頃から航空部門に強い関心と類い稀な才能を持つ参謀まで集まり、様々な人物まで巻き込んだらいつの間にかこうなっていた。初の開発故に試行錯誤はあったけれど、今こうして作り上げられたわけなんだ。
 なんというか、異世界チートって別に転生者じゃなくても出来るんだよねって典型な気がする。ドワーフの技術力は恐るべしだし、研究者達の執念も凄まじいよね。
 その『AFー44』。当然ながらお披露目されるとこの場にいた全員は強く注目していた。
 最初に口を開いたのは、マーチス侯爵だった。

「オレは飛行機については余り知識がない。ノイシェン技術大佐、説明を頼む」

「はっ! このAFー44ですが、多くの方々の知識と技術の結晶の末に産まれたものですが、まず注目すべきは搭載しているエンジンになります!」

 ノイシェン技術大佐は戦闘機に搭載されているエンジンについて言及を始めた。難しい話を始めたからか、リオはキョトンしていたかと思うと手持ち無沙汰からかウトウトし始めていた。

「本機に搭載されているエンジンですが、これまでの動力源になっていた魔石ではなく魔液を使用したものとなっております」

「ほう。魔液というと、魔力のある液体だったな。魔石と違い魔力の再充填が出来ず消費すると魔法粒子となって消えるが、莫大な埋蔵量が確認されているとも。だが、数十年前までは実用化に届かなかった。だったか」

「魔液は取り扱いが難しかったと聞いてるわ。でも、課題は片付いて実用化出来たって」

「その通りにございますマーチス元帥閣下、リイナ准将閣下。これまでは魔液内の魔力を動力転換する技術開発が難しかったのですが、A号改革以降の開発予算の増加や、協商連合との技術提携、さらには昨今の協商連合情勢に嫌気がさした研究者が連合王国にも流入しておりまして開発が加速しました。開発最終段階がスムーズに進んだのも、協商連合技術者の協力があってこそでした」

「協商連合にとっては皮肉な結果だが、此方としては有難い事だな。それで、エンジンが出来上がったというわけだな」

「はい。エンジンは魔法研究所、王立工廠、ドルノワ工業と官民の叡智を結集した結果こぎ着けました。戦闘機の造形に関してはアカツキ中将閣下にご協力頂き、さらに参謀本部作戦参謀航空部門担当のウォーリナー中佐にも携わって頂きました」

「参謀本部所属航空部門作戦参謀、ケビン・ウォーリナーです。階級は中佐。皆さん、どうかよろしくお願いします」

 敬礼をしたのは、精悍な顔つきで明るい茶髪のウォーリナー中佐。僕が来た時に目が合ってすぐに敬礼をしてくれたのは彼だ。
 僕とウォーリナー中佐とはだいぶ長い付き合いになる。
 僕がA号改革以降、召喚士飛行隊設立をした際のスターティングメンバーの一人にも彼はいて、驚愕に値するほど当時から空への概念に理解があった。
 僕が召喚士飛行隊の活用方法などをいち早く理解し、しかもこの世界に最適化された今の形に落とし込んでいる。そして今回の戦闘機開発についても彼はこれまでの知識と経験を活かして『AFー44』の開発にも携わっているんだ。
 正直、空軍の使い方を前世レベルで把握している人物が数少ない中で前世の黎明期から大戦期水準の知識を持ち合わせているのには、まさかこの人は転生者なんじゃないかと思ったけれど、そうではなかった。違和感ない程度かつ転生者じゃないと理解出来ない小ネタを挟んでも反応しなかったからだ。某ファーストフード店の名前を出しても、「新しく王都に出来た店名ですか?」って言われちゃったし。
 閑話休題。
 ともかく、ウォーリナー中佐はこの世界において先進的な視点を持った軍人で今後も不可欠な人物でもあるわけだ。

「ウォーリナー中佐はこれまでの開発だけでなく、再戦時以降の本機の作戦使用に携わられます。ウチの子を頼みますね」

「任せてください。パイロットの育成についても現在順次進めております」

「おお、それは頼もしいな。ウォーリナー中佐であれば安心して任せられる」

「はっ。ありがとうございますマーチス元帥閣下」

「話を戻します。本機ですが、性能については皆様のお手元にある諸元表にある通りです」

「時速二二五キーラとは凄まじく早いな。召喚士飛行隊の時速の二倍ではないか」

「現在の技術水準では時速二五〇キーラの壁は高く到達は出来ませんでしたが、本機は少なくとも妖魔帝国でも編成されつつあるでしょう召喚士飛行隊の追随を許さない速度を実現致しました。そして何より、武装面については圧倒的です」

 ノイシェン技術大佐の言う通りだ。
 召喚士飛行隊の召喚動物では時速一〇〇キーラがやっとだからだ。エイジスも限定解放しないと二〇〇キーラは越えられないから、純粋な魔法科学技術だけで時速二〇〇キーラの壁を越えて時速二五〇キーラに近付いたのは飛躍的な進歩だといってもいいよね。
 ただ、戦闘機は速度だけじゃない。武装やそもそもの前提として運用の際のパイロットと攻撃担当者の環境も重要になる。

「僕から質問いいかな」

「どうぞ、アカツキ中将閣下」

「まずは戦闘機運用に関わるパイロットと後部座席の搭乗員について。実用高度二五〇〇メーラという事は山脈の山並みの高さになるけど、対策は? 低酸素環境はパイロットには過酷だと思うけど」

「対策としては、二つあります。まず一つ目に防寒具。これは冬季戦の防寒具を転用しました。次に高高度順応ですが、アルシュプラットにて順応訓練をして対応します。また、酸素供給に関して従来から存在している山岳戦闘を想定し開発された術式、酸素供給術式を用います。よって、パイロットも後部座席搭乗者も魔法能力者に限られますね……」

「となると、育成段階初期では人も選ばれる訳だね。貴重な人員になるから簡単に失うわけにはいかなさそうだ」

「仰る通りです、アカツキ中将閣下。ですので、パイロットは二名としました。攻撃も担当する後部座席搭乗者の負担は増えますが、魔法障壁の展開自体はパイロットにもさせます。少なくともこれで複数方向の防御力は確保されるかと」

「なるほど。確かに二人共展開すれば、生存性は高まりそうだ」

 こういう部分は魔法が存在するからこその生存性確保だよね。
 前世では魔法は無いから、防御面については機体の強度を上げるか回避性を向上させるしか無かった。
 だけどこの世界には魔法があって能力者達の命綱にもなっている魔法障壁がある。強度や枚数は能力者のランクに依存する所があるけれど、魔法障壁の存在はかなり大きい。今回も起こりうる空戦や対空攻撃に対しては魔法障壁は必要不可欠な存在だ。
 ただし、課題もある。パイロットは操縦に集中しないといけないけれど自身の酸素供給術式と魔法障壁を展開したり再展開するだけだから負担は比較的マシだけど、後部座席搭乗者の能力者は酸素供給術式だけでなく攻撃、防御の両面が必要になる。
 そうなると人選が限られる。既にウォーリナー中佐が選定をしているけれど、やはりと言うべきか沢山はいなかった。
 となると、早急に酸素供給術式ではなく酸素供給術式を魔法科学の装置で実現するのが最良なんだけどこっちは開発途上。恐らく再戦後の実用化が精一杯ってとこだろうね。

「――次に武装面。武装はDHMG1842を搭載するけれど、これの携行数は四〇〇発となります」

「搭載スペースの関係もあり、装弾二〇〇発の二回分が限界でした。またこちらは非魔法武装なので、魔法武装としては従来の魔法銃を使用します。能力者自身の魔法も視野に入れております」

「現段階では十分な火力だと思うよ。ただ、妖魔帝国が光龍皇国の光龍族を投入してくるとなると、様々な面でこの戦闘機ですら不足面があるかもしれないね……」

「申し訳ございません……。私も十分に懸念をしておりますが、現代の魔法科学ではこれが限界です。ですので、要求水準を満たした武装・防御面に近付けました。少なくとも打ち負けるような戦闘機ではないと自分は自信を持っています」

 前世の戦闘機の歴史と比較して何段階もすっ飛ばして完成した『AFー44』。
 しかし、それでもなお光龍族の真の姿たる光龍と比較して速度面に劣るという。
 これは実際に光龍族であるココノエ皇女陛下や護衛の者達に聞き取り――あれからずっと行動制限はあるものの、皇女陛下含め人類諸国言語を不自由無く使えるようになったんだよね。――したんだけれど、光龍族の真の姿の最大速度は時速約三〇〇キーラ。現行のAFー44では速度面においては遠く及ばない。連合王国最先端の技術の結晶ですら、だ。
 でも、悪いことばかりではない。

「ここにいる全員は機密事項を知っているから話すけど、光龍族が妖魔帝国に使役されたとしても、どうやら数は多くないみたいだからね。つまり、こちらがそれ以上の数を投入すれば制空権は確保出来るってわけさ」

「確か光龍皇国における光龍族は私達で例えるなら貴族人口の一部くらい少ないものね」

「リイナ様に肯定。光龍皇国光龍族は元来人口が少なく、戦争において相当数が戦死したとワタクシも情報を保有しております。仮定、妖魔帝国がもし光龍族を洗脳等して投入した場合でも最大数は一〇〇〇程度」

「ええ。もし光龍族が万単位で投入されたら地獄ですが、そうでないのには安堵しました」

「とはいえ総数一〇〇〇は十分過ぎる脅威です。休戦期限まで最短一年半、最長だったとしても三年半。急ぎパイロットの育成を進めてまいります」

「うん。よろしく頼むねウォーリナー中佐」

「はっ!」

「他にご質問のある方はいらっしゃいますでしょうか? 無ければこれより実働飛行に移ります」

 ノイシェン技術大佐の問いに質問を出すものはいなかった。ここまでの会話でだいたいは把握出来たからだろう。
『AFー44』は初飛行を無事に終えていて、しかし大勢の前で初めての飛行のようでテストパイロットと後部座席搭乗者の二人は現れるとかなり緊張していた。
 準備は着々と進んでいき、搭乗も完了。エンジンもふかし始めた。

「いい音だね」

 前世では動態保存されているレシプロ機のエンジン音しか聞いたことはないけれど、久しぶりに耳にした音に懐かしさを感じる。前世のそれに比べると少し音が澄んでいる気がするけれど、覚えのある音だ。

「では、離陸を始めましょう」

「んん、んぅ……」

「リオ、もうすぐパパの言っていた飛行機が飛ぶよ」

「ひこーき……。ひこうき!」

『AFー44』はゆっくりと動き始め、滑走路へと向かう。その頃にはリオも再び目を覚まして目を輝かせる。マイペースな子だ。
 滑走路の端までたどり着くと、スロットルを上げてエンジンの音がおおきくなると加速。
 そして、ふわりと浮かび飛んだ。

「おおおお!!」

「飛んだぞ!!」

「偉大な一歩だ!!」

「ひこーき!! おそらとんだ!!」

 集団からは歓声と拍手が巻き起こる。マーチス侯爵も興奮を抑えられない様子だった。リオも初めて見る飛んだ『AFー44』の姿に興味津々で楽しそうだ。

「戦闘機、凄いわね。それに、とても綺麗だわ」

「うん。とても綺麗だ」

 空を華麗に舞う『AFー44』の姿に、リイナは素直な感想をこぼす。
 確かにその姿は、綺麗でとても美しかった。
 こうして人類諸国初の戦闘機『AFー44』は、僕達軍高官の前で披露され人類諸国の大きな一歩を感じさせたのだった。
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