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第12章 ブカレシタ攻防戦決着編

第16話 ブカレシタ星型要塞停戦会談

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「はい、ステラ、あーん」
「あー…ん……?」

 アシュリー様の手から、スプーンを差し出され、私は訳もわからず、それを口に入れる。

 お、美味しい……!

 アシュリー様のもう一方の手を見れば、グラスの中にキラキラと輝くゼリー。

 これは何のゼリーかしら?ほのかに香る苺が上品かつ、美味しい!

「気に入った? ステラ?」

 ゼリーを口に含み、顔を輝かせていた私に、アシュリー様が優しく微笑む。

 私が勢いよくコクコクと頷くと、アシュリー様は甘い笑顔でまたスプーンを差し出す。

「はい、ステラ、あーん」
「あーん……むぐむぐ」

 お、美味しい……!流石、王宮料理人お手製のデザート!

 じゃ、なかった!!

 王宮の迎賓室の一室。中には立食式で彩り豊かな軽食やスイーツがズラリと並んでいる。

 皇太子であるアシュリー様には、椅子が用意され、アシュリー様だけが座られている。

 私は何故か、アシュリー様のお膝の上に抱え込まれて、「あーん」をされていた。

 これ、どういう状況?!?!?

 話は昨日の、アオイとの魔法の訓練後に遡る。



「ねえ、ステラ、明日お茶会を開くから、来てくれない?」

 魔法の訓練を終えた後、アオイは私に駆け寄ると
、嬉しそうに言った。

「アオイ主催なの?」
「うーん、神官長に人選はお願いしたかな?」
「じ、人選?! 何の?」

 アオイが人差し指を頬に当てながら、可愛く首を傾げて言うも、私はギョッとした。

 この前のテーラーの一件で、教会側の闇が一掃された。

 教会の覇権を野望に持つ神官長により、聖女への信仰心がより強かったテーラーは利用されていたことが明らかになり、神官長は国外追放、テーラーは田舎の教会に左遷された。

 その時の副神官長は伝統を大切にしつつも、時代に合わせて変化していくべき、という考えの方で、私たちの結婚にも賛成だった。

 というわけで、副神官長がそのまま神官長に就任。

 しかし、魔物の脅威から国を守るためには聖女の召喚が必要で。召喚の有無についてはまだ答えが出ていない。

 私とアシュリー様の子の世代のためにも、きちんとしないといけない。

 ……私とアシュリー様の子………。

 まだ先の話だけど、想像しただけでニマニマしてしまう。

 ……じゃなくて!とにかく、古い体質の教会は王家も介入し、新神官長の人選も経て一新された。

 私が聖女であるアオイの教育係をやっていることもあり、教会と王家の関係性は改善されている。

 しかし。新体制となったばかりで忙しいはずの神官長が人選をするお茶会とは?!

 驚く私に、アオイは更に驚くことを言った。

「何って、合コンに決まってるじゃない!」
「えっ……」
「だーかーらー、ご・う・こ・ん!」
「えええええええ?!」

 いけない、つい取り乱したわ。私はもう皇太子妃なんだから、落ち着かないと。コホン。

「合コンって、あの市井で流行っている?」

 私は努めて落ち着きながらアオイと会話を続ける。

「そう! この世界でも合コンってあるのね~?良い男、探すわよ!」

 アオイはガッツポーズでこちらを見た。

「だからって、何で神官長……」

 神官長人選って、神官の集いになるのでは……

 そんな私のツッコミに、アオイは頬を膨らませる。

「だって、ステラ! 全然良い人紹介してくれないじゃない!」

 ああ、魔法の訓練ばっかりしてましたもんね……

 アオイの抗議に思わず遠い目をしていると、彼女は畳み掛けて話す。

「それでぼやいてたら、神官長が人は集めるから、お茶会を開いてはどうかって!」
「ああ、なるほど」

 神官長としては、聖女様と新しい体制になった教会との交友会くらいにしか考えてなさそうだなあ……

「だから、ステラも来て!」
「えっ!」

 ニコニコしたおじいちゃん神官長の顔を思い描いていると、本来の話に戻って、改めて驚く。

「あの~、アオイ? それが合コンと呼ばれるものならば、私が行くわけには……」

 話を聞く限り、アオイの思う合コンとやらにはならなそうだけど、主旨がそうなら、行くわけにはいかない。だって!私には、アシュリー様という人がいるから!きゃっ!

「私、人妻ですので」

 キリリ、とアオイに言えば、彼女の可愛い顔が台無しのジト目をこちらに向けていた。

「惚気、うざーい」
「の、惚……?!」

 た、確かに今のは惚気……になるのかな?!

「はい、ニヤニヤしなーい!」
「はっ!」

 アオイに言われ、緩んだ顔を直す。

 アシュリー様のことを考えるとニヤニヤしてしまう。結婚してもなお、私はアシュリー様が好きすぎるのだ。

「私、女友達なんて、人生でステラが初めてだから……付き合って欲しい」

 きゅるん、と可愛くおねだりされて、女の私でもキュンとしてしまう。

 それに、『初めての女友達』として頼られたら、断るわけにはいかない。

「わ、わかった! 私も参加する!」
「やったあ!」

 そうして私は、アオイ主催のお茶会(?)に参加することになった。
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