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第2章 改革と戦争の足音編
第6話 研究所視察で待ち受けていたのは……〜改革特務部のお仕事その3〜
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・・6・・
4の月6の日
午前10時20分
アルネセイラ旧市街中央区
ドルノワ工廠アルネセイラ工場視察の次の日は事務仕事と連合王国で今一番苦労しており、裏の功労者である財務省の幹部クラスとの会談があったから視察は無く一日を過ごし、その翌日。
金の曜日という事もあって改革特務部のメンバーは休日の土日を控えての仕事で雰囲気はいくらか和やかだった。仕事量も相まって火曜から早速残業気味になっていたからだ。出勤時からしばらくして耳にした会話では同僚同士で飲みに行く話も上がっていて円滑なコミュニケーションをそれぞれが図っているようで上司としては一安心というところだった。
ただ、僕はというと朝に届いたノイシュランデからの速達の手紙によって今後についてを考えざるを得なくなっていた。
その手紙とは週明けにマーチス侯爵と話していた件についてで、魔法無線装置で連絡したところ正式な手紙で伝えると返信があった。
その内容がこうなんだよね。
「マーチス侯爵の令嬢、リイナ・ヨークとの婚約に関して反対する理由なし。アカツキにとってもノースロード家にとっても良い縁なので、その旨をこの手紙をもってリイナ令嬢とマーチス侯爵にお伝えするように」
予想の範囲内だけど、こんなにもあっさりと話が進むとは思わなかったしなんと言っても手紙の形式だ。家紋がついた印に連名の署名として父上母上だけでなくお爺様やアルヴィンおじはんの名前まであった。つまり、親族一同で賛成ってこと。
さて、その手紙だけど出勤してから向かっている視察先の馬車の中でリイナに見せたわけだけど……。
「これでご両親に親族の方々までのお墨付きね! 晴れて公認! やった! やったわ! 愛してるわ旦那様!」
それはもう本人は大喜びだった。向かい側には今日同行する情報改革課のキャロル魔法大尉がいると言うのに、リイナは僕に飛びつくかのように抱きついてきて離してくれない。おいおい、分別はするものって言って軍務中は敬語にしている仕事モードはどこにいったんですかね……。
「あの、リイナ少佐」
「もう! 奥さんって呼んでくれていいのよ?」
「リイナ少佐、今は仕事中。ここ、馬車の中。キャロル魔法大尉もいるんだけど……」
「ドウゾオカマイナクー」
ほらみろキャロル魔法大尉がドン引きの棒読みでこっちを見てるじゃないか!
「あぁ、お父様にお伝えするのが楽しみだわ! 手紙の中身は今日中には伝えるのよね?」
「視察が終わってからね。既に軍務大臣秘書官には伝えてあるよ」
「流石は旦那様! 間違いなくお父様は喜んでくれるわ!」
「うん、分かった。分かったからそろそろ離してくれないかな? キャロル魔法大尉の視線が痛いから……」
「もう、旦那様ったら恥ずかしがり屋なんだから。けどそうね。これ位にしましょう。アナタの事になるとつい我を忘れてしまうわ。キャロル魔法大尉もごめんねさいね?」
「これは嫌味じゃないので気にしないで欲しいっすけど、リイナ少佐に謝罪されると毒気ぬかれちゃうっすねー。まさかあたしの前で繰り広げられるとは思わなかったっすけど」
目の前でイチャイチャしているのを見せつけられたというのに、キャロル魔法大尉はさっきと違って微笑ましそうに僕達を見ていた。
あれ、なんか予想していた反応と違う。
「どうしてなんだい、キャロル魔法大尉」
「いやぁ、あたしも既婚者で、結婚したばかりの頃はアツアツでしたし? 今もっすけど」
「既婚者!?」
「あなた結婚していたの?!」
「あれ、知らなかったっすか? 履歴書にも書いてあるはずっすけどー」
僕とリイナ、二人して驚愕。
そういえばそうだった! キャロル魔法大尉の年齢からしたら結婚しててもおかしくないし、記載されてたよ!
「……ちなみに旦那さんはどういう人なんだい?」
「至って普通の研究者っすよ? 以前の職場が同じだったのがきっかけっす」
「さては同類だね!?」
「やだっすねー。あたしも旦那もちょっと研究にお熱で、研究と同じくらい愛してるくらいっすよー。それは毎日炎系統魔法のように――」
「だー! アウトアウト! ちくしょうナチュラルに惚気られるとは思わなかった!」
「上には上がいたわね……」
きゃ、と照れてみせるキャロル魔法大尉に僕とリイナは呆気に取られる。
「まー、あたしの話はこれくらいにして仕事の話にするっすかねー」
「話題転換がいささか強引だけど、よろしく……」
「ええ、そうしましょう……」
このままだと午前中だというのに酒場やパブでのオトナすぎる会話に大脱線してしまうので、僕もリイナも頷いて話を仕事についてに戻すことにした。思わぬ伏兵とはキャロル魔法大尉の事を言うんだろうね……。
「まず、今向かっているというか統合本部からそう離れていないのでもうすぐ着くと思うっすけど、視察先は『連合王国軍魔法研究所』っすね。連合王国における魔法及び魔法科学研究の中枢を担う研究所っす」
「新しい魔法の開発から魔法と科学の融合たる魔法科学武器の研究開発まで手広くやっている大規模研究施設ね」
「魔法科学って言うと、やっぱり代表的なのは魔法無線装置にあとは魔法銃。一番メジャーなのはライフル型魔法銃、M1834かな」
M1834とは、見た目は非能力者が使うライフルと変わらないけれど僕の持つ『ヴァルキュリユル』のように魔法弾を撃てる銃だ。しかし、メジャーとは言ったものの生産数は現在僅かに二千丁。理由は、僕や僕の部下が使っていた銃型召喚武器を参考にM1834は開発されたんだけど魔力を銃に伝導する触媒が近年までブラックボックスの中身が如く謎に包まれていた上に、苦労して判明させたら必要なのは希少資源のマギカライト――魔力を通せる特殊な石。魔法銃の場合だと粉末状にしてライフリング内に入れると不思議な事に融合する――というオチ。強力な魔法弾は撃てるけど一丁あたりのコストが馬鹿みたいに高くなり、当たり前だけど銃弾は弾倉から供給なので効率はイマイチ。だから僕も今回の改革にこの銃は対象としなかったんだよね。だってこれ一丁でD1836を二十丁製造出来るんだもん。
「その通りっす。召喚武器は国防の要っすけど、扱える人は限られています。ランクの低い召喚武器でも結局は召喚っす。その召喚には高価値の召喚石が必要っすからね。顕現にいる個人認証を外して国を経由しギルド登録員や余裕があって官給品以外を使いたい軍人がランクの低い所謂ダブり品を私費購入してますけど、これも絶対量が少ないっす」
「召喚武器は高い、少ない。だから国としては魔法能力者用の、汎用系の武器や魔法杖(まほうじょう)も一応は作っておかないと魔法能力者は手ぶらになるって事で研究もしてるわけだね。科学の発展と魔法が融合したのは、科学の発展が著しい最近からだからまだ歴史が浅いけれど」
「けれど、魔法科学は今や研究所にとっても欠かせない研究分野っす。魔法はかなり研究が進んで高威力化と詠唱短縮などくらいしか今は無くて頭打ちになりつつあるっすけど、魔法科学はまだまだ発展途上っす。けど、アカツキ大佐もご存知の通り国防の要が召喚武器に偏っているので予算配分は恵まれて無かったんすよ。研究って金食い虫っすから、彼等が思うように自身の研究課題に取り組めなかったのがこれまででした」
「ところがだんなさ、アカツキ大佐が改革を提案して実行に移った事で研究所にも予算が追加投入された。研究所としては諸手を挙げて喜ぶ状況ね」
「そうっす。なので到着したらめちゃくちゃ歓迎されると思うっすよー。あたしが事前打ち合わせに行った時に所長直々にすっごい感謝されたくらいなんで。あまりの勢いに引いたっすけど」
「今まで出なかった予算が出たんだもの。研究者にとっては水を得られた魚だから歓迎するのも納得だわ」
「僕としては白い目で見られるより歓迎の方がずっといいよ。今後の視察や会談、情報共有もスムーズに出来るし」
「それもそっすねー。おっと、到着みたいっす」
キャロル魔法大尉が窓をちらりと見た同じタイミングで御者をしている兵からも着いた旨が伝えられる。
僕達が馬車から降りると、これまでの出迎えと違ってとんでもない光景がそこにはあった。
『ようこそ連合王国軍魔法研究所へ! アカツキ王宮伯爵閣下!』
僕の眼前に広がるは、二百名以上の軍服に白衣を纏った研究者達。全員が一糸乱れぬ礼をする様はまるで病院の理事長が現れたかのような雰囲気と景色だった。
え、えええええ、なにこれ……。
4の月6の日
午前10時20分
アルネセイラ旧市街中央区
ドルノワ工廠アルネセイラ工場視察の次の日は事務仕事と連合王国で今一番苦労しており、裏の功労者である財務省の幹部クラスとの会談があったから視察は無く一日を過ごし、その翌日。
金の曜日という事もあって改革特務部のメンバーは休日の土日を控えての仕事で雰囲気はいくらか和やかだった。仕事量も相まって火曜から早速残業気味になっていたからだ。出勤時からしばらくして耳にした会話では同僚同士で飲みに行く話も上がっていて円滑なコミュニケーションをそれぞれが図っているようで上司としては一安心というところだった。
ただ、僕はというと朝に届いたノイシュランデからの速達の手紙によって今後についてを考えざるを得なくなっていた。
その手紙とは週明けにマーチス侯爵と話していた件についてで、魔法無線装置で連絡したところ正式な手紙で伝えると返信があった。
その内容がこうなんだよね。
「マーチス侯爵の令嬢、リイナ・ヨークとの婚約に関して反対する理由なし。アカツキにとってもノースロード家にとっても良い縁なので、その旨をこの手紙をもってリイナ令嬢とマーチス侯爵にお伝えするように」
予想の範囲内だけど、こんなにもあっさりと話が進むとは思わなかったしなんと言っても手紙の形式だ。家紋がついた印に連名の署名として父上母上だけでなくお爺様やアルヴィンおじはんの名前まであった。つまり、親族一同で賛成ってこと。
さて、その手紙だけど出勤してから向かっている視察先の馬車の中でリイナに見せたわけだけど……。
「これでご両親に親族の方々までのお墨付きね! 晴れて公認! やった! やったわ! 愛してるわ旦那様!」
それはもう本人は大喜びだった。向かい側には今日同行する情報改革課のキャロル魔法大尉がいると言うのに、リイナは僕に飛びつくかのように抱きついてきて離してくれない。おいおい、分別はするものって言って軍務中は敬語にしている仕事モードはどこにいったんですかね……。
「あの、リイナ少佐」
「もう! 奥さんって呼んでくれていいのよ?」
「リイナ少佐、今は仕事中。ここ、馬車の中。キャロル魔法大尉もいるんだけど……」
「ドウゾオカマイナクー」
ほらみろキャロル魔法大尉がドン引きの棒読みでこっちを見てるじゃないか!
「あぁ、お父様にお伝えするのが楽しみだわ! 手紙の中身は今日中には伝えるのよね?」
「視察が終わってからね。既に軍務大臣秘書官には伝えてあるよ」
「流石は旦那様! 間違いなくお父様は喜んでくれるわ!」
「うん、分かった。分かったからそろそろ離してくれないかな? キャロル魔法大尉の視線が痛いから……」
「もう、旦那様ったら恥ずかしがり屋なんだから。けどそうね。これ位にしましょう。アナタの事になるとつい我を忘れてしまうわ。キャロル魔法大尉もごめんねさいね?」
「これは嫌味じゃないので気にしないで欲しいっすけど、リイナ少佐に謝罪されると毒気ぬかれちゃうっすねー。まさかあたしの前で繰り広げられるとは思わなかったっすけど」
目の前でイチャイチャしているのを見せつけられたというのに、キャロル魔法大尉はさっきと違って微笑ましそうに僕達を見ていた。
あれ、なんか予想していた反応と違う。
「どうしてなんだい、キャロル魔法大尉」
「いやぁ、あたしも既婚者で、結婚したばかりの頃はアツアツでしたし? 今もっすけど」
「既婚者!?」
「あなた結婚していたの?!」
「あれ、知らなかったっすか? 履歴書にも書いてあるはずっすけどー」
僕とリイナ、二人して驚愕。
そういえばそうだった! キャロル魔法大尉の年齢からしたら結婚しててもおかしくないし、記載されてたよ!
「……ちなみに旦那さんはどういう人なんだい?」
「至って普通の研究者っすよ? 以前の職場が同じだったのがきっかけっす」
「さては同類だね!?」
「やだっすねー。あたしも旦那もちょっと研究にお熱で、研究と同じくらい愛してるくらいっすよー。それは毎日炎系統魔法のように――」
「だー! アウトアウト! ちくしょうナチュラルに惚気られるとは思わなかった!」
「上には上がいたわね……」
きゃ、と照れてみせるキャロル魔法大尉に僕とリイナは呆気に取られる。
「まー、あたしの話はこれくらいにして仕事の話にするっすかねー」
「話題転換がいささか強引だけど、よろしく……」
「ええ、そうしましょう……」
このままだと午前中だというのに酒場やパブでのオトナすぎる会話に大脱線してしまうので、僕もリイナも頷いて話を仕事についてに戻すことにした。思わぬ伏兵とはキャロル魔法大尉の事を言うんだろうね……。
「まず、今向かっているというか統合本部からそう離れていないのでもうすぐ着くと思うっすけど、視察先は『連合王国軍魔法研究所』っすね。連合王国における魔法及び魔法科学研究の中枢を担う研究所っす」
「新しい魔法の開発から魔法と科学の融合たる魔法科学武器の研究開発まで手広くやっている大規模研究施設ね」
「魔法科学って言うと、やっぱり代表的なのは魔法無線装置にあとは魔法銃。一番メジャーなのはライフル型魔法銃、M1834かな」
M1834とは、見た目は非能力者が使うライフルと変わらないけれど僕の持つ『ヴァルキュリユル』のように魔法弾を撃てる銃だ。しかし、メジャーとは言ったものの生産数は現在僅かに二千丁。理由は、僕や僕の部下が使っていた銃型召喚武器を参考にM1834は開発されたんだけど魔力を銃に伝導する触媒が近年までブラックボックスの中身が如く謎に包まれていた上に、苦労して判明させたら必要なのは希少資源のマギカライト――魔力を通せる特殊な石。魔法銃の場合だと粉末状にしてライフリング内に入れると不思議な事に融合する――というオチ。強力な魔法弾は撃てるけど一丁あたりのコストが馬鹿みたいに高くなり、当たり前だけど銃弾は弾倉から供給なので効率はイマイチ。だから僕も今回の改革にこの銃は対象としなかったんだよね。だってこれ一丁でD1836を二十丁製造出来るんだもん。
「その通りっす。召喚武器は国防の要っすけど、扱える人は限られています。ランクの低い召喚武器でも結局は召喚っす。その召喚には高価値の召喚石が必要っすからね。顕現にいる個人認証を外して国を経由しギルド登録員や余裕があって官給品以外を使いたい軍人がランクの低い所謂ダブり品を私費購入してますけど、これも絶対量が少ないっす」
「召喚武器は高い、少ない。だから国としては魔法能力者用の、汎用系の武器や魔法杖(まほうじょう)も一応は作っておかないと魔法能力者は手ぶらになるって事で研究もしてるわけだね。科学の発展と魔法が融合したのは、科学の発展が著しい最近からだからまだ歴史が浅いけれど」
「けれど、魔法科学は今や研究所にとっても欠かせない研究分野っす。魔法はかなり研究が進んで高威力化と詠唱短縮などくらいしか今は無くて頭打ちになりつつあるっすけど、魔法科学はまだまだ発展途上っす。けど、アカツキ大佐もご存知の通り国防の要が召喚武器に偏っているので予算配分は恵まれて無かったんすよ。研究って金食い虫っすから、彼等が思うように自身の研究課題に取り組めなかったのがこれまででした」
「ところがだんなさ、アカツキ大佐が改革を提案して実行に移った事で研究所にも予算が追加投入された。研究所としては諸手を挙げて喜ぶ状況ね」
「そうっす。なので到着したらめちゃくちゃ歓迎されると思うっすよー。あたしが事前打ち合わせに行った時に所長直々にすっごい感謝されたくらいなんで。あまりの勢いに引いたっすけど」
「今まで出なかった予算が出たんだもの。研究者にとっては水を得られた魚だから歓迎するのも納得だわ」
「僕としては白い目で見られるより歓迎の方がずっといいよ。今後の視察や会談、情報共有もスムーズに出来るし」
「それもそっすねー。おっと、到着みたいっす」
キャロル魔法大尉が窓をちらりと見た同じタイミングで御者をしている兵からも着いた旨が伝えられる。
僕達が馬車から降りると、これまでの出迎えと違ってとんでもない光景がそこにはあった。
『ようこそ連合王国軍魔法研究所へ! アカツキ王宮伯爵閣下!』
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