You Could Be Mine 【改訂版】

てらだりょう

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そのなな

そのなな-6

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「た、尊が、ヤンキー……」

あの、尊が?

ドSで変態やけど。

でも、甘えっ子の。

尊が。

「写真あるわよ。あの子が我が儘言った時、見せると大人しくなるから、いつも持ってるの」

そう言って、瞳子さんは手帳から写真を出した。

「げっ!!」

思わず、口から声が出た。

「10年くらい前のだけど」

こ、これはっ! 

短ランで、ポケットに手、突っ込んで。

髪キンキンのツンツンで、ピアスいっぱいつけて、眉毛、鉛筆で描いたみたいで。

のけ反って、メンチきってる、すんごい悪そーな、くそがき。

顔、子供っぽいけど、確かに尊だ。

「13くらいから、タバコは吸うし、酒飲むし。ケンカなんか、毎日だし。よく、警察に引き取りに行ったわぁ」

瞳子さんは、遠い眼をした。

「まあ、お金はあるから、カツアゲはあんまりしなかったみたいだけど」

はあ。

「それに、顔だけは良いから、女の子なんか日替り」

それは、なんとなく想像が。

「高校なんとか出たのはいいけど、家出して、水商売に入って。そんな仕事、やめろって私とケンカになって」

それから、瞳子さんは尊の子供の頃の事を話してくれた。

尊がまだ、5歳の時にご両親が離婚なさった事。

瞳子さんが、アパレルの会社を興して、海外の買付やお店の事が忙しくて中学生まで、おばあ様のお家に預けられていた事。

おばあ様は、厳しい方で尊が甘える事を許さない育て方をされたそうで。

瞳子さんが、尊に会うのは月に何度かくらいで、子供の尊とはあまり話もしてやれなかった、と、瞳子さんは言った。

「いつの間にか、思い通りにならないと、暴力で人に言う事聞かせる様になっちゃって」

「………」

「周りの人間なんか、全然信用してなかったわ」

「……………。」

「私は反対したけど、水商売もまあ、厳しい世界だから。ずいぶん、大人しくはなったわね」

瞳子さんは、お猪口をクイっ、と飲み干した。

「人を好きになる、なんて、みのりちゃんが初めてなんじゃないかしらね」 





「……みのりさん…」

ベッドで、横向きになって背中からあたしを抱き締める、尊。

「……ん?」

少し、眠たそうな声。

「好き……」

愛情を、忙しさにかまけて与えてあげられなかった。

瞳子さんは寂しそうに、言ってた。

「尊って、ヤンキーやったんや……」

「ふふ……母さんに聞いた?」

「写真見た」

みのりさんに見られたの、ちょっと、恥ずかしい。

尊は、そう言って笑った。

子供の頃の、尊は寂しくなかった?

甘えっ子の、尊。

今は、寂しくない?

あたしがいたら、寂しくなくなる?

「尊……」

「……どうしたの?」

「誕生日プレゼント、何がいい?」

みのりさん。

また、そう言った。

違うん。

そうやないん。

「尊に、何かしてあげたいん」

「うん……」

尊は、少し考えて。

「じゃあ、ピアスがいいかな。最近、してないから」

て、言った。

「どんなのがいい?」

「みのりさんが選んでくれるなら、どんなのでも嬉しいよ……」

眠たそうな声は、寝息に繋がっていった。





あたしはジュエリーショップで、尊の為にピアスを選んだ。

細い、ゴールドの小さな輪っか。

そして、あたしは尊の為に出来る事、をもう一つ計画した。 

そして、尊の誕生日。

尊は、いない。

朝からお客さんと約束あって、今日は分刻みのスケジュールらしい。

まあね。

水商売してりゃあね。

自分の誕生日なんて、一年で最大の一大イベント、稼ぎ時やしね。

仕事、わかってて、付き合ってるワケやしね。

会えないからって、騒ぎ立てるほど、お子様ではございませんの。

あたくし。

大人ですから。

背は、ちっちゃいけどね。

そんなワケで、自分ん家にいるあたし。

明日の朝、迎えに行くし。

プレゼントは、明日、あげるし。

あたしは、自分の計画を速やかに遂行しよう。

と、思ってんやけどね。

「みのり!アンタ、いい加減にしぃ!!」

おかんが、キレた。

台所で、あたしの隣に仁王立ちして。

鬼の形相、て、まさにこんな感じやろな。

「さっきから、掻き卵なん皿作ったら気が済むん!!」

テーブルの上には、ぼそぼその掻き卵。

しかも、五皿。

「玉子焼きの一つも作れんなんて、育て方、間違うたわ!!」

うう。

育てられ方、間違えました。

「ホント、この年で料理一つ出来んなんて」

言いながら、おかんは冷蔵庫を開けた。

失礼な。ラーメンくらいは、作れるよ。

「みのりっ!!卵、全部使ったん!?」

鬼、いや、おかんが、怒鳴った。

「卵、10個も無駄にしてっ!!誰が食べるんっ!お父さんとお母さんのコレステロール値上げて、早死にさせる気かっ!!」

おかんが、ブチギレた。

卵、買って来い!!

て、おかんが、言うんであたしはスーパーに行った。

ついでに、トイレットペーパーと、お徳用ティッシュも買わされた。

ただの、パシリやん。

おかあさま。 

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