溺愛社長とおいしい夜食屋

みつきみつか

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冬の話

一 嫉妬(※)

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「っ、ルイスさん、俺、もう……」

 レンはサイドテーブルの目覚まし時計を見る。午前四時。冬なので夜は長いが、季節が夏ならば夜明けまであと少しともいえる時間帯だ。
 さいきんはレンの身体の負担を考えて挿入する時間を短くしているルイスだが、今夜は長い。中に入れたまま、レンを三回ほど射精させてもまだ終わろうとしない。横向きに寝て、背後からレンを抱き、後ろから犯している。
 ゆっくりした動きだ。レンの雄を激しく扱き、レンは挿入されたまま自分だけ射精するのを繰り返している。レンは涙目になって懇願するが、ルイスはやめない。レンがくたくたになっても構わない。

「ルイスさん、もう怒らないで、ください」
「怒ってないです。レンの交友関係をとやかく言うつもりはありません」
「……っ、また出る……」

 ルイスの手は執拗にレンを弄ぶ。緩急をつけ、弱い部分を的確にいじめる。レンが痛みに強く、そういう風にされると好きなことを知っている。

「っ、んんっ」

 ルイスはティッシュをとって、レンが出したものを受け止める。レンも追加でティッシュをとり、残滓を拭った。

「はあ、はあ……」

 ルイスは腰を動かし続けている。浅くしたり深くしたりとしつこい。レンにとって快感を覚える位置を擦られると、レンの身体はどうしても反応してしまう。中でするとき、ルイスはレンを傷つけないようにしっかり慣らすので、快感しかない。
 ルイスはレンのうなじや襟足を舐める。

「ルイスさん……いきすぎて、もう……、あっ」

 レンは甘い鳴き声をあげる。
 可愛いとルイスは思う。
 自分以外にもレンのことを可愛いと思って狙っている人間がいることは、ルイスにとって脅威だ。
 レンは自分で商売をしているので付き合いは自然と広い。それはわかっている。
 近所の経営者たちに可愛がられたり、男性客にも女性客にもレンくんと呼ばれているのも許すほかない。
 営業中のよぞらに行くと、レンは、ルイスに向ける笑顔とそう変わらない笑顔で接客をし、やさしい言葉を投げかけたり、仲良く談笑しているので、ルイスは独占欲を刺激される。そこまではまだいい。一緒に自宅に戻れば、レンは、ルイスの前でしか見せない顔をするのだから。乱れても可愛いことをルイスだけが知っている。
 と思っていた。
 ルイスは腰の動きを止めず、小刻みにレンを攻める。あちこちにある性感帯を触ったりつまんだりしながら、レンがふたたび勃起するのを促す。
 レンの身体は若くて元気だ。性格が落ち着いているので同年代かと思いきや、七つも年下だった。こんな年の離れた子に夢中にさせられるなんて、とルイスは内心穏やかではない。

「あっ、あ、あっ」
「レン、おいで」
「あっ、ごめんなさい、あ、あ」

 ひどくすればいいのだろうか。そのほうがレンを縛ることができるのだろうか。自分なしには生きていけないように、忘れがたい快感を与え、他では味わえないような技で責めたら、この腕の中でレンを狂わせることができるのか。
 そんな爛れた関係を求めているのではない。
 多少のひどい扱いはするが、常識の範囲だ。

「あああ……、あ、だめ、だめです」

 大きくなったレンのものを柔らかくリズミカルに扱く。レンは涙声だ。薄い背中を震わせ、耐えている。爪の先で背筋をなぞると、背中が反る。その拍子に臀部が突き出て、挿入しているところを擦るかたちになる。

「あっ」
「うっ……」

 ルイスも思わず唸った。

「ルイスさんっ、あ、あっ、あ、あっ……」

 レンがルイスの手の中で出したのを感じ、ルイスはレンの後孔に深く挿入した。種をつけるように強く押しつける。
 レンの後頭部に顔を埋めながら、ルイスも達した。

「っ……」

 レンからゆっくりと抜いて、身体を起こす。レンは顔を押さえながら荒い息を整えている。頬に伝うのは、汗なのか、涙なのか。

「はあ、はあ……」
「……ごめん、レン」
「はあ……。いいえ、俺が悪いんです……」

 ルイスは手早く後処理をしながら、考えてみる。
 十二月半ば。年の瀬の忙しい中、一ヵ月ぶりに会うことになった。ルイスの仕事は相変わらず落ち着かず、ろくに休みがとれない。
 ルイスは、先祖代々の事業を手伝っている。複数の子会社を任されており、親会社が事業を拡大すれば仕事が増える。ルイスの一存では業務量をコントロールできない。
 そこで自社に人を入れようとしているのだが、良い人材が見つからないまま、忙殺されているうちにまた時間が経った。
 レンと暮らす話も進展しない。恋人だと考えてもいいだろうかという問いに対して、レンは不明瞭な回答しかしない。
 とはいえ、聞いたのは一度きりで、以来、怖くて聞けないでいる。
 関係が壊れるのならば、不明瞭な状態のほうがいい。少なくとも、レンとは一ヶ月に一度程度はこうして会うし、セックスもするし、出掛けたりもする。恋人と変わらない。
 頭を冷やさなければとルイスはベッドから足をおろした。

「先にシャワーを浴びてきます」
「あ、俺も行きます……」
「では、一緒に行きましょうか」

 レンに手を差し伸べるが、レンはルイスの手を取るのを躊躇う。
 ルイスは苦笑した。

「何もしませんよ」
「……すみません」

 レンが身を起こすのを手伝う。レンはくたくたのようだ。眠そうだが、なんとかシャワーを浴びるべく立とうとしている。
 ルイスはレンを支えながら、汗ばむ額に口づけた。

「ただの嫉妬です。僕がみっともないだけなので、レンは気にしないでください。無理させて、すみません」
「無理じゃないです。ルイスさんがしたかったら、俺は……」
「眠たいでしょう。行きましょう。いくらなんでも寝ないといけない」
「はい……」

 不機嫌をレンにぶつけたくない。せっかく会えたのに、レンを困らせたくない。
 今夜は会えると思って嬉しかった。だが、明日はまた仕事なので、翌朝までだ。一晩しか一緒にいられない。あとはもう寝るだけだ。それに、しばらく会えない。仕事の都合でまた海外だ。戻るのは年明けになる。
 いつもと同じように仕事を終えて、レンを店まで迎えに行こうとした。部屋で待っていてもいいのだが、レンに早く会いたいので、いつも迎えに行くようにしている。帰り道も一緒になれる。並んで歩きながら季節を感じたり、他愛もない話をするのが楽しい。
 だが、午後七時に、レンからメッセージが届いていた。レンからだ、珍しいと思って開けたところ、幼馴染が店に来ていて、長引きそうなので、俺がマンションに行きます、という内容だった。
 迎えに来るな、ということを婉曲的に伝えてきていることを察してしまったのである。
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