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2章
7「…俺、なんかお返ししたかったから」
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「うわーっ!雪!見ろ熊、雪だ雪!」
「元気だね…朝から…」
「うん!だってさ、俺こんな沢山の雪はすごく久しぶりなんだ!」
早朝、彼は寒さと眠さによって体が一回りも二回りも小さくなっている『熊』に構わず雪の中へ手を突っ込んだり倒れ込んだりして存分に遊び、楽しそうな声を上げていた。
「熊!大丈夫か、起きろ!」
「うっ…やったな…?」
明るくなり始めた空の下、雪玉が2人の間を飛び交う。
まだ誰にも触れられていない雪は握りしめると小気味よい音を立てて形になり、その音や感触も楽しくて仕方がない。
ひとしきりそうして遊んでいると、少しだけ残っていた眠気も寒さもどこかへと行ってしまった。
「あっはははっ!熊、お前頭っから全身雪まみれだぞ」
「君もね」
「もう、熊の雪玉は大きすぎるよ!ほとんど避けたのに1個2個当たっただけでこれだぞ!あっはははっ!…はぁ、遊びすぎたかな?そろそろちゃんとやらないと、いつまで経っても終わんないよな」
「うん、そうだね」
「えっと…どの程度やる?全部、地面が見えるまで?」
「うん。だけど扉の前だけで大丈夫、他はまとめてやってくれるから。この屋根の上を落として…あとはそれぞれの扉を順にやろう」
次第に中央広場に面したところに住んでいる他の人々も雪を除けに外へ出てきて、挨拶を交わしながら作業に取り掛かっているとあっという間に表の分は終わってしまう。
裏手の扉の前にとりかかったところで再び雪がちらつき始め、簡単に作業を済ませると今日はもうおしまいにしようということになった。
ーーーーーー
「はぁ、やっぱり大変だな。熊、まさか毎年1人でやってたのか?」
湯浴みなどの寝る支度を整えた後、たいして乾かさずに寝台へ横になった彼の髪を浴布で拭ってやりながら、『熊』は「うん」と答える。
「そんなに大変じゃなかったよ、他にやることもなかったから」
「他に『ヤる』こと?」
彼がいたずらっぽく言うと、『熊』は彼の鼻を軽くつまんで「こら」と叱った。
「君はいつもそういうことを言って。慣れない作業で疲れてるはず、今日はもう休まないとだめだよ」
「もー、ちょっと言い方を変えただけなのに怒るなんて…でもそうだな、たしかに疲れたよ足とかさ。踏みしめてないと危ないからな」
横になったまま伸びをする彼の髪がほとんど乾いたのを確認した『熊』は、足元の方へと移動し、足の裏やふくらはぎを優しく丁寧に揉みほぐし始める。
大きくて温かな手のひらが足先を包み込み、湯浴みをした後で多少冷えてしまっていた彼の体は再びぽかぽかと温まってきた。
「わぁ、熊の手ってなんでこんなに温かいんだ?湯に浸かるよりもずっと疲れが取れる気がする」
「そう?」
「うん。…ありがと、熊」
ぼんやりと灯りに照らされた『熊』は優しく微笑んでいて、それを見ていると彼は心まで柔らかくほぐされてしまう。
それから細々と会話をしていると、彼は強い眠気に襲われて目を開けているのも大変になってきた。
「熊…ありがと、もういいよ…」
「うん」
『熊』は掛け具で彼の体を隙間なく覆うと、自らも横になって今度は彼の手のひらを揉みほぐし始める。
「くま…お前も疲れてるのに…いいよ…」
「僕は大丈夫。おやすみ、お疲れさま」
「ん…くまも…」
『熊』に額へと口づけをされ、彼は薄く微笑みながら眠りに落ちていった。
ーーーーーー
翌朝、窓から雪の降る音が聞こえて彼は目を覚ます。
吹雪というわけではないが、時々風に煽られた雪が窓を叩く音の大きさからすると、外はそれなりの大雪となっているようだ。
(昨日除けたのに…これじゃまた積もってるな?)
すぐ隣で眠る『熊』は掛け具の中で丸まっていて、まったく起きる気配がない。
(結構降ってるみたいだし、今日は作業できないよな?それとも何かやることがあるのか…聞きたいけど起こすわけにもいかないし)
そう考えながら伸びをして体に痛むところがないか確認するも、足も手もいつも通りどころかむしろ軽くなっていて、彼は笑みをこぼす。
(熊のおかげだな…俺、本当に熊に何でもしてもらってばっかりだ。なにか俺も1つくらいしてあげられたらいいんだけど。でも料理…は自信ないな。自信なくても作ってみるべきか?だけどなぁ…)
横になったまましばらく考え込んでいると、微かに『熊』が動き、薄目を開けた。
「ん…あさ…?」
「うん…熊、おはよう」
「おはよ…」
「…なぁ、今日はどうするんだ」
「何もしない…」
「いいのか、それで」
「うん…もう明後日には食堂が始まるから…雪もまた降ってるみたいだし…」
もぞもぞと寝具に包まりながら話す『熊』の話をまとめると、1度きちんと雪を除けているため慌てて作業しなくても後でまたすれば良いということのようだ。
「でもこんな…寝たまんまでいいのかなぁ」
「たまには何もしない日があっても…いいんじゃないの…」
「だけどそのうち…なんか食べたくなったりはするだろ」
「お腹…すいたの…?」
「いや、まだそんなに」
「ん…それじゃまだこうしてよう…あとでまた考えればいいから…」
寝台から身を起こそうとしていた彼は『熊』に抱きしめられて身動きが取れなくなり、結局そのまま再び眠りに落ちていった。
それから2人が目覚めたのは、昼になってからのことだ。
空腹によって寝台から引き剥がされなければ、きっともっと長く眠っていただろう。
「この作り置きの料理をそろそろ食べきらないといけないけど、何品かは作ろうか。何が食べたい?」
「うーん…なぁ、卵ってある?」
「うん、いくつかあるよ。卵料理がいい?」
「あっ、えっと…卵焼きって、どうやって作るんだ…?」
「卵焼き?簡単だよ。見てて、今作ってあげる」
『熊』は手際よく材料や調理器具を揃えると、卵を割り、調味料を入れ、あっという間に美しい焼き目の卵焼きを作り上げる。
焼き上がったばかりの卵焼きはとてもふっくらとしている上に良い香りをさせていて、長時間かけて丹念に作られた菓子のようだ。
「ほら、ね?」
「うん…なぁ、俺もやってみたいんだけど、いい?」
「もちろん。今使ったばかりで熱くなっているから、気をつけて」
彼に場所を譲ると、『熊』は彼の『やってみたい』という気持ちを尊重してか、横からじっと見守り、口を出すのは注意点やコツを教える最小限にとどめる。
彼も先程見た『熊』の動きや作り上げられていく卵焼きの様子を思い出しながら慎重に調理を進めた。
そうして出来上がった卵焼きは『熊』が作ったものと比べると少し見劣りするものだったが、『熊』は「かなり上出来だ」と感心して褒める。
「とても手際が良かったよ、僕が作って見せるまでもなかったね」
「いや…見様見真似…だから」
「見様見真似でも、なかなかこんな綺麗には作れないよ」
よしよし、と頭を撫でてくる『熊』に向かって、彼は「これ…熊に…」と焼き上がったばかりの卵焼きが乗った皿を差し出した。
驚いて固まったまま動かない『熊』に、彼は肩をすくめながら続ける。
「いつもしてもらってばっかりで…俺、なんかお返ししたかったから…」
「……」
「料理が得意な熊にこんなの渡すのって、ちょっと自分でもどうかと思うけど…」
『熊』は彼の手から皿を受け取ると「僕の…ために…?」と半ば信じられないような様子で呟いた。
「僕のために…作ろうって…?」
「そうだよ、熊のため。もうちょっとちゃんとしたのも、そのうち皆から習ったりしてみる…からさ」
「お返しって…」
「熊はいつも俺のために色々してくれるでしょ。料理もそうだし、戸締まり…とか、気を遣ってもらうことが多いじゃん。昨日だって熊が足とか手を揉んでくれたから、俺はこうして動き回れてるんだしさ」
「そんな…それは当たり前のことなのに」
『熊』は受け取った皿の上にある卵焼きに目を落としたままだ。
「僕はただ…君がそばにいてくれるだけで充分で…お返しなんて考えなくても…君が毎日笑顔でいてくれたらそれで…」
「…熊、泣いてるのか?」
「ううん…」
「泣いてるじゃん」
「泣いてない…」
「じゃあなんで声が震えてるんだ?ほらほら、もう泣くなよ、熊」
「泣いてないから…」
泣いていないと頑なに言い張る『熊』を席につかせ、彼はいくつかのおかずを盛った皿とお茶とを用意する。
あの慌ただしかった数日間に皆で拵えた料理はどれも底が見えていて、中にはすでに空になったものもあった。
「なぁ、いつまで見てるつもりなんだよ。それ、一応食べ物なんだけど」
「うん…」
「まったく、ただでさえ仕上がりの良くない卵焼きなんだぞ。冷えたらもっと味が落ちるんだから、早く食べよう」
「…いただきます」
「うん。いただきます」
ようやく『熊』が卵焼きをただ見つめているのをやめたところで、彼も食事を始める。
彼の前には『熊』が焼いた卵焼きがあるが、それは焼き上がってから多少時間が経ってしまっているにもかかわらずふっくらとしていて美味しそうだ。
素朴でありながらも卵の風味を存分に味わえるこの卵焼きは彼の好物の1つであり、彼は1切れを口に運びこむやいなや自然と笑顔になる。
「美味っ…!やっぱりこれだよ、ふわふわしててさ。俺のは…」
「あっ」
「うーん、あんなに色々教えてもらったのになんか違うんだよな?なんでふわふわしてないんだ?」
自分が焼いた卵焼きの1切れを『熊』の前からとって食べた彼は、その違いに首を傾げ、さらにもう1切れとろうとして『熊』に皿ごと避けられてしまう。
「だめ」
「いや…そこまでしなくても」
「これは僕がもらった僕の卵焼き。味見は1切れだけ、他はあげない」
卵焼きの皿を体に寄せて守りながら言う『熊』の姿に、彼は思わず笑い声をあげた。
ーーーーーー
「なぁ熊ぁ。俺、全然寝れそうにないよ」
「うん、そうだね。今日は半日くらい寝てから」
その日の夜、暇を持て余した彼は寝台の縁に腰掛け、戸締まりする『熊』の背中に声をかける。
「ちっとも眠くないんだけど」
「それじゃあ本でも読む?君の興味がありそうなのは…これはどうかな、飾り切りのやり方。もうずっと前からここにある本なんだけど、面白いよ」
「へぇ…そんなのがあるのか」
『熊』は他にも本を薦めてきたが、それらはどれも料理に関するものばかりだ。
「これは…あまり興味がわかないかもしれない」と呟きながら本棚を見ているところを見ると、やはりこの部屋には物語といった類のものはないらしい。
「明日はなんかするのか?」
「うーん…また少し雪を除けるくらいかな。明後日から広場の雪を除ける人達のために食堂が開くんだけど、皆や食材の配達が来れるように前をまた少し除けておくんだ」
「じゃあ、雪が降っててもやるのか?」
「そうだね、あんまり大雪でなければ。でもそんなに大変じゃないから大丈夫だよ、通りとかの道は全部酪農地域から牛とかが来てまとめてやってくれるんだし」
「そっか…」
彼は少し考え込むと、両手を広げて「熊」と呼びかけた。
「何?どうしたの?」
そう言いながらも『熊』は彼のそばへと寄っていき、寝台に腰掛けたままの彼をそっと抱きしめる。
彼が抱きしめ返すと、両腕はちょうど『熊』の腰辺りに落ち着いた。
「体が冷えちゃってる、風邪をひいたらどうするの?寝台にいるなら掛け具をきちんとかけて暖かくしないと」
「ん…熊が温かいからいい…」
「どうしたの、本当に。今日の君は随分と甘えてくるね?」
「そうか…?いつもと変わんないと思うけど…?」
「ううん、僕に卵焼きを作ってくれたでしょ。朝も僕とずっと眠ったし、今日の君は…ちょっと待って、離してくれる?掛け具を…」
「いい。このままで」
「いや、僕が…じゃなくて、このままだと冷えるから、ね?」
肩に手を置いて身を離そうとする『熊』を、彼はより一層力を入れて引き留める。
腰の辺りを抱きしめている彼の口元はちょうど『熊』の下腹部付近にあり、話すたび、呼吸をするたびに『熊』は妙な感覚が広がっていくのを感じていた。
「えっと…その…シたいなら僕を寝台の上にいかせてくれない…かな」
「んん…」
彼が下衣の上から『熊』のものに口づけると、想像していた以上に強い力と声で「だめ」と制止される。
「分かったから、もう横になろう。これはだめ、やめて」
「嫌だって言ったら…?」
「やめる他に選択肢はないよ。こんなことをしなくても僕が『その気』になるって知ってるでしょ。とにかく離して、ほら」
「嫌だ」
「『嫌』じゃない、離して。僕が怒らないとでも思ってるの?…ねぇ、本気で言ってるんだよ、離してって」
いくらか本当に怒気を孕んだ声を聞き、彼は『熊』の顔を見上げた。
「俺が咥えさせられてるのを見たからか?それを思い出すからだめだって言ってんのか」
「……」
「なぁ答えろよ、熊。今、俺はお前のに口づけ『させられた』んじゃない、『やりたくてやった』んだ。お前が見た前の俺と同じか?」
「……僕がその気になると思う?君が苦しむ姿を見て。ありえない」
「想像で話をするなよ、熊。見てろ、俺が本当に苦しむかどうか」
彼は再び顔を下げると、ほんの少し身をかがめて『熊』の敏感な部分に口づける。
大人しくおさまっているその部分は彼が温かな舌で舐めたことで、ようやくわずかに反応を見せた。
それから、彼は時間をかけて下衣の上から舐めたり、口づけたり、吐息を吹きかけて徐々に『熊』のものが形を現し始めるのを待つ。
唾液による染みが大きくなり、吹きかける吐息に合わせてビクビクと動き出したところで、彼はついに『熊』の下衣をはだけさせた。
「よく見てろよ、熊…」
(大丈夫…俺は熊を満足させてやれるはずだ。優しく、ゆっくり…)
先端に口づけ、歯が当たってしまわないよう注意しながら舌の上を滑らせて『熊』のものを口内へと導く。
まだ充分に反応しきっていないにもかかわらず存在感を示しているそれは、きっと喉奥まで挿れると苦しくてたまらなくなるはずだ。
彼はまず中ほどまで挿れては抜き出し、それ以上の深さは最後にとっておくことにした。
「…だめだよやっぱり…離して…」
「どうして…?俺は苦しそうにしてるか?お前のここもすっごく硬くなってきてるけど…?」
「うぅっ…」
片手で根元の袋を包み込み、下腹部や根元を舐めたり、咥えこんだまま舌だけを動かしたりすることで『熊』は漏らす声を増やしていく。
さらにわざと音を立ててしゃぶると、先端から少しの白濁が溢れてきた。
「う、う…んん…」
『熊』の固く握りしめられた手を取り、彼は自らの頬へと当てさせる。
頬の内側を擦るように抜き差しすると、その動きがつぶさに伝わり、『熊』は戸惑いと快感とが入り混じった表情を浮かべた。
(そろそろかな…大丈夫、こいつのは俺を傷つけるものじゃない。きちんと、奥まで受け入れてやれる…)
彼は再び両腕を『熊』の腰に回すと、数回深く呼吸をしてから、勢いよく根元までを口内におさめる。
喉奥にとどく先端は多少の苦しさをもたらすものの、嫌悪感は一切ない。
むしろゆっくりするのではもどかしく、繰り返し何度も頭を動かして喉奥を突かせる。
「あぁっ、あっ、んん…で、出る…もう出る…から…!」
一際大きな喘ぎ声が上がり、ついに彼の喉奥には熱いものが放出された。
それは拍動とともに数秒間続き、飲み込まずに溜めた白濁は口内をいっぱいにしていく。
彼は『熊』の中に残るものを全て吸い出すようにしながら顔を離した。
(熊…お前、すごく沢山出したな。知ってるか?俺はお前を愛してるから、こんなこともできるんだ…)
上気した顔で見下ろしてくる『熊』に向かって彼は舌の上の白濁を見せつけると、次の瞬間、それらを一口で飲み込んだ。
「の、飲ん…!?」
「あっははは…!驚きすぎだよ、お前がくれたものを俺が吐くわけないだろ」
「でもそんなのを…」
彼は寝台の奥へと上がり、『熊』の手をひいて自らを押し倒させると「まだ…できるよな?」と囁いた。
「1人だけ満足して終わるなんて嘘だろ?早く俺のことも気持ちよくさせてよ…な?」
「……」
「なんだ、熊。まさか俺の口が良すぎてこっちじゃ物足りないなんて言わないよな?いくら今のが気に入ったって、まずは比べてみたほうがいいと思うけど…」
挑発するような声と視線を向けられた上、頬を指先でなぞられた『熊』は彼に深く口づけると上衣に手をかける。
素肌を『熊』の吐息が撫でたすぐ次の瞬間には胸へと吸いつかれ、彼は熱い吐息をもらした。
「あぁ…いいね、熊…お前は俺が好きなこと全部知ってるよ…んっ…他はどうだ、うん?俺が『どこ』を『どう』されるのが好きか、分かるよな?」
「……」
胸をしきりに舐める『熊』の手はすでに彼の下衣に伸びていて、その期待通りの行動に彼は満ち足りた気分になる。
浴室で中を洗っていた時から疼いていた彼の後ろは、下衣をすべて脱がされたことで、いよいよ大きなものが入ってくるという期待感に自然と収縮を繰り返す。
「んっ…なぁ熊、早くシようよ…俺、さっきから…」
軽く腰を浮かせてせっついていると、『熊』の手が彼の腰を掴んできた。
(あぁ…早くあの場所を突いてほしい…この大きいので中を擦ってほしい…)
だが、次に起こったのは彼の期待していたものとは違うものだった。
なんと『熊』は彼の中に挿れるのではなく、腰を高く抱え上げたのだ。
「く、熊?何してるんだ…!?」
『熊』は驚きと戸惑いに混乱する彼に構わず、立膝になってしっかりと抱え込んだ彼の腰とその上にある尻に顔を近づけた。
「は、おい、う、嘘だろ熊!やめろ、そんなことするな!」
彼からはほとんど真上にある自らの股と、抱え込む『熊』の腕、そしてその先で見え隠れする『熊』の頭しか見えない。
だが、尻から伝わる感覚が今、一体何が起きているのかを知らせてくる。
「お、おいおい!どうしちゃったんだ!?そ、そんな…や、やめろって言ってるだろ!」
尻の肉の上を舌がなぞっていく感覚が絶えずする中、彼は懸命に身を捩って抗議するものの、まったくうまくいかない。
それどころか、抱え込んでいた両腕は彼の股の間から尻を左右に押しのけ、秘めていた部分をあらわにしてしまう。
突然暴かれた彼の秘部はヒクヒクとしていて、全く初めてのことに動揺しているようだ。
「な、なぁ熊!聞いてんのか!なんで何も言わないんだよ!は、恥ずかしいって!一旦話そう、な?」
なんとか手を伸ばして『熊』の足を叩くと、ようやく尻の感覚はおさまった。
「なぁ、なにがしたいんだ、うん?」
「…ほぐしてる」
「い、いや、熊、これはやめよう、な?俺がどれだけ恥ずかしがるか、お前だって分かってるだろ?これはだめだ、やめよう、な?」
「……僕も『やめて』って言ったけど?」
「い、いや、それとこれとは…お、怒ってるのか?悪かった、悪かったよ!俺が悪かったって…!あっ、や、やめろって…く、熊!熊ぁ!」
懇願する彼の声も虚しく、『熊』の舌は彼の秘部を這い、その味わったことのない感覚に激しい羞恥がわきあがった彼はただ後ろに力を入れて耐え忍ぼうとする。
だが皺の1本1本、穴の中心から周辺に至るまで丹念に舐めるそれは執拗に繰り返され、ついに力を入れ続けていられなくなった彼は力を入れ直すためにふと息を吐いた。
「はぅっ…!!!」
それは一瞬の出来事だった。
彼の力が抜けて秘部が無防備になったのと『熊』が舌を突き刺すのが重なり、なんと彼の中に舌が入り込んできたのだ。
「あ、あぁ…うわ…」
彼は呆然とするあまり力を入れることも忘れ、本当に今起こっていることが現実なのかと目を白黒させる。
しかし、いくら考えても中を動いているのは指でもあのそり勃つものでもない。
『熊』が何をしているのか、何をしようとしているのか、はっきりと見えないことがより一層感覚を鋭敏にさせた。
(う、嘘だこんなこと…現実なわけないよな?い、今俺の中…見られるどころかこんな…しかも…さっきから微妙なところばっかり…)
「んんっ……」
舌は彼の中の敏感な1点ではなく、そのほど近いところばかりを刺激してくる。
彼は抵抗する力も気力も失い、いつしかあの敏感な部分をいじってほしいという願いに支配されていた。
だが、自分から言い出すのはさらに羞恥を重ねることになりそうで、言い出すことができない。
「はぁ、あっ……んん…」
(あぁもう、挿れて突いてほしい…もう言っちゃおうかな…こんなことまでされて、もう恥ずかしいも何もあったもんじゃないよな…だけど今のこいつちょっと…何されるかわかんないし…あと少しだけ待ってみて、それでもこのままだったら…)
だが、一向に『熊』の動きは止まる気配がない。
彼がいよいよ堪えられなくなり「く、くまぁ…」と口を開くと、突然『熊』の片手は尻から離れて彼の硬くなったものを包み込んだ。
「う、うぁぁ…!!」
彼は思うように身動きが取れない中、体全体を大きく震わせる。
中の方に気を取られていたところへ突然前のの強烈な刺激が加わり、彼は激しく反応してしまう。
「はぁ、あっ、ああっ!!ん、んぅ…」
すぐにでも放出してしまいそうになるのをなんとか抑え込もうと、彼は頭を右に左にと振る。
しかし、そこでついに尻から舌が離れ、彼が当初 望んでいた通り中の敏感な1点が強く刺激された。
どうやら『熊』はもう片方の手を使い、彼の中を指で弄り始めたようだ。
腰を高く抱え上げられていて多少の苦しさもあるこの体勢は、彼の真上に自分のものがあって、いやがおうにも擦られ続けるそれをまざまざと見せつけられてしまう。
扱われているのが自分とは信じがたいようなその光景と、執拗に責められ続ける後ろの感覚に彼は何も考えられなくなっていく。
「うぅん…くま…あっ、おれ…あぁ、でちゃう、でちゃうよ…あっ…」
半ばうわ言のように「くま、くま」と呼びかけながら、彼は放った。
強い快感が全身を駆け巡り、ようやく迎えた絶頂に体はぐったりとして力が抜けてしまう。
勢いよく放たれた白濁は彼の頬にぱたぱたと滴り落ちていて、自らのものをこんな形で受けてしまうのは屈辱にも似た感情がわいてしかるべきだが、今の彼はとてもそんなことを気にしている場合ではなかった。
「はぁ…あ、はぁ…」
荒い息を繰り返す彼は抱え上げられていた腰を下ろされると、すぐさま身を捩って体の前面を『熊』から隠すように横になる。
それは彼によるせめてもの抵抗だった。
「……」
『熊』の目の前には艶めかしさの塊のような愛する人がいる。
起伏を繰り返す胸。
滑らかな腹。
放ったばかりの陰茎。
ヒクヒクと開閉する蕾。
そして、白濁を浴びた美しく色づく頬。
上衣を脱ぎ捨てた『熊』は彼に覆い被さると、彼の頬の白濁を丁寧に舐め取り始めた。
「な…なにしてる…」
「綺麗にしてる」
「やめろ…そんなこと…するな…」
「君だって僕のを飲んだ」
「んん…っ…」
元々、彼は今日はこれで充分だと思っていたのだが、彼の耳にはすぐ近くからの淫靡な音が響いてきて、それは首筋にまでかかる吐息や頬を撫でる舌の動きと共に再び『欲』を掻き立ててくる。
それは『熊』も同じようで、彼の体の側面には硬いものが押し当てられていた。
(シたい…けど恥ずかしくってもうだめだ…充分気持ちよかったし、すっかり疲れきっちゃっててこれ以上は…)
彼は本当にこれでおしまいにするつもりで、『熊』へなんと切り出そうかと考える。
しかし、話を切り出す前に『熊』は彼の右足をつかんだ。
「あっ、く、くま…!だめだ、もう今日は…」
「…足りないでしょ」
「いや、でもちょっと待って…あ、あぅ…!!」
『熊』は彼の左足の上に跨り、右足を胸元に抱きよせて自らのものを彼の入り口にあてがった。
恥ずかしい思いを散々させられてしまった彼は真正面から向き合うことができず、顔を伏せ、中を擦られたことで出る叫びのような喘ぎ声をすべて寝具へと吐き出す。
くぐもった喘ぎ声は直接辺りに響くよりも数倍淫らに思えるものだ。
『熊』は抱えた彼の足を折り曲げてより深く腰を打ち付けると、耳元に唇を寄せて囁く。
「なにしてるの…こっちを見て」
「う、あ、あぁ…っ」
「君が言ったんでしょ…顔を見ながらしてほしいって。ほら、僕を見て…君を抱いてるのは誰?君を愛してるのは誰?」
声は極めて優しいものの、動きはまったく容赦がない。
この体勢は正面から抱き合うよりも深く挿し込まれているようで、彼は息も絶え絶えになりながら少しだけ顔を『熊』に向けると、うなじに片腕を回し、深く口づけてから応える。
「くま…くまだよ…おれがこんななるの…くまだけ…」
「うん」
「あっ、あぁくま…おれ、おかしくなっちゃうよ…これ、きもちい…きもちよすぎるの…あぁ…あっ、あっ、うぁ…!!!」
何度か立て続けに大きな喘ぎ声をあげた後、彼は上半身を反らせて果てた。
ーーーーーー
長い間軋んでいた寝台はようやく静かになり、上で抱き合う2人の呼吸もそのうち落ち着きをみせ始める。
「…ごめん、大丈夫…?」
「ん…」
「ついこんな…その、湯を浴びようか。まだ温かいはずだから、とにかく…」
彼は離れていこうとする『熊』を正面から抱き寄せ、掠れた声で囁く。
「うごけない…おれ…」
「…うん、僕が抱きかかえてあげる。その、ごめん…」
「ん…あやまんなよ、くま…おれたち、すごく…きもちよかったじゃん…」
その言葉は『熊』を危険なほどにくすぐってきたが、結局『熊』は軽く頷くだけにとどめ、彼の中から自らのものを抜き去った。
やはり、彼の中からは白濁が流れ出してくる様子はない。
『熊』は彼が浴室へ向かうまでに体を冷やしてしまわないようにと、端の方でぐちゃぐちゃになっていた寝間着を着せる。
だが、彼は大人しく袖を通させるだけで、決して顔をあげようとはしない。
「あのさ…おれたち、いっしょに湯を浴びないか…」
「え…」
突然の申し出に目を丸くする『熊』へ彼は続ける。
「おれが出てからじゃ湯も冷えるし…いくら話しながらっていっても、1人にするのは心配…だろ」
「だけど、君は嫌なんじゃ…」
「う…そりゃあ恥ずかしいけど、でもさっきのに比べたら…それに俺、本当に腰が抜けてて…しばらくちゃんと歩けそうに…なくて…」
「…分かった」
「うん…」
そっと横抱きに抱え上げられた彼は両腕を『熊』の首に回してしっかりと掴まると、「1つだけ頼みがある」と付け足した。
「その…俺を先にして、熊は少し後から入ってきてくれないかな…俺ちょっと、先に洗わして…頼む…これだけは本当に…頼む…」
「元気だね…朝から…」
「うん!だってさ、俺こんな沢山の雪はすごく久しぶりなんだ!」
早朝、彼は寒さと眠さによって体が一回りも二回りも小さくなっている『熊』に構わず雪の中へ手を突っ込んだり倒れ込んだりして存分に遊び、楽しそうな声を上げていた。
「熊!大丈夫か、起きろ!」
「うっ…やったな…?」
明るくなり始めた空の下、雪玉が2人の間を飛び交う。
まだ誰にも触れられていない雪は握りしめると小気味よい音を立てて形になり、その音や感触も楽しくて仕方がない。
ひとしきりそうして遊んでいると、少しだけ残っていた眠気も寒さもどこかへと行ってしまった。
「あっはははっ!熊、お前頭っから全身雪まみれだぞ」
「君もね」
「もう、熊の雪玉は大きすぎるよ!ほとんど避けたのに1個2個当たっただけでこれだぞ!あっはははっ!…はぁ、遊びすぎたかな?そろそろちゃんとやらないと、いつまで経っても終わんないよな」
「うん、そうだね」
「えっと…どの程度やる?全部、地面が見えるまで?」
「うん。だけど扉の前だけで大丈夫、他はまとめてやってくれるから。この屋根の上を落として…あとはそれぞれの扉を順にやろう」
次第に中央広場に面したところに住んでいる他の人々も雪を除けに外へ出てきて、挨拶を交わしながら作業に取り掛かっているとあっという間に表の分は終わってしまう。
裏手の扉の前にとりかかったところで再び雪がちらつき始め、簡単に作業を済ませると今日はもうおしまいにしようということになった。
ーーーーーー
「はぁ、やっぱり大変だな。熊、まさか毎年1人でやってたのか?」
湯浴みなどの寝る支度を整えた後、たいして乾かさずに寝台へ横になった彼の髪を浴布で拭ってやりながら、『熊』は「うん」と答える。
「そんなに大変じゃなかったよ、他にやることもなかったから」
「他に『ヤる』こと?」
彼がいたずらっぽく言うと、『熊』は彼の鼻を軽くつまんで「こら」と叱った。
「君はいつもそういうことを言って。慣れない作業で疲れてるはず、今日はもう休まないとだめだよ」
「もー、ちょっと言い方を変えただけなのに怒るなんて…でもそうだな、たしかに疲れたよ足とかさ。踏みしめてないと危ないからな」
横になったまま伸びをする彼の髪がほとんど乾いたのを確認した『熊』は、足元の方へと移動し、足の裏やふくらはぎを優しく丁寧に揉みほぐし始める。
大きくて温かな手のひらが足先を包み込み、湯浴みをした後で多少冷えてしまっていた彼の体は再びぽかぽかと温まってきた。
「わぁ、熊の手ってなんでこんなに温かいんだ?湯に浸かるよりもずっと疲れが取れる気がする」
「そう?」
「うん。…ありがと、熊」
ぼんやりと灯りに照らされた『熊』は優しく微笑んでいて、それを見ていると彼は心まで柔らかくほぐされてしまう。
それから細々と会話をしていると、彼は強い眠気に襲われて目を開けているのも大変になってきた。
「熊…ありがと、もういいよ…」
「うん」
『熊』は掛け具で彼の体を隙間なく覆うと、自らも横になって今度は彼の手のひらを揉みほぐし始める。
「くま…お前も疲れてるのに…いいよ…」
「僕は大丈夫。おやすみ、お疲れさま」
「ん…くまも…」
『熊』に額へと口づけをされ、彼は薄く微笑みながら眠りに落ちていった。
ーーーーーー
翌朝、窓から雪の降る音が聞こえて彼は目を覚ます。
吹雪というわけではないが、時々風に煽られた雪が窓を叩く音の大きさからすると、外はそれなりの大雪となっているようだ。
(昨日除けたのに…これじゃまた積もってるな?)
すぐ隣で眠る『熊』は掛け具の中で丸まっていて、まったく起きる気配がない。
(結構降ってるみたいだし、今日は作業できないよな?それとも何かやることがあるのか…聞きたいけど起こすわけにもいかないし)
そう考えながら伸びをして体に痛むところがないか確認するも、足も手もいつも通りどころかむしろ軽くなっていて、彼は笑みをこぼす。
(熊のおかげだな…俺、本当に熊に何でもしてもらってばっかりだ。なにか俺も1つくらいしてあげられたらいいんだけど。でも料理…は自信ないな。自信なくても作ってみるべきか?だけどなぁ…)
横になったまましばらく考え込んでいると、微かに『熊』が動き、薄目を開けた。
「ん…あさ…?」
「うん…熊、おはよう」
「おはよ…」
「…なぁ、今日はどうするんだ」
「何もしない…」
「いいのか、それで」
「うん…もう明後日には食堂が始まるから…雪もまた降ってるみたいだし…」
もぞもぞと寝具に包まりながら話す『熊』の話をまとめると、1度きちんと雪を除けているため慌てて作業しなくても後でまたすれば良いということのようだ。
「でもこんな…寝たまんまでいいのかなぁ」
「たまには何もしない日があっても…いいんじゃないの…」
「だけどそのうち…なんか食べたくなったりはするだろ」
「お腹…すいたの…?」
「いや、まだそんなに」
「ん…それじゃまだこうしてよう…あとでまた考えればいいから…」
寝台から身を起こそうとしていた彼は『熊』に抱きしめられて身動きが取れなくなり、結局そのまま再び眠りに落ちていった。
それから2人が目覚めたのは、昼になってからのことだ。
空腹によって寝台から引き剥がされなければ、きっともっと長く眠っていただろう。
「この作り置きの料理をそろそろ食べきらないといけないけど、何品かは作ろうか。何が食べたい?」
「うーん…なぁ、卵ってある?」
「うん、いくつかあるよ。卵料理がいい?」
「あっ、えっと…卵焼きって、どうやって作るんだ…?」
「卵焼き?簡単だよ。見てて、今作ってあげる」
『熊』は手際よく材料や調理器具を揃えると、卵を割り、調味料を入れ、あっという間に美しい焼き目の卵焼きを作り上げる。
焼き上がったばかりの卵焼きはとてもふっくらとしている上に良い香りをさせていて、長時間かけて丹念に作られた菓子のようだ。
「ほら、ね?」
「うん…なぁ、俺もやってみたいんだけど、いい?」
「もちろん。今使ったばかりで熱くなっているから、気をつけて」
彼に場所を譲ると、『熊』は彼の『やってみたい』という気持ちを尊重してか、横からじっと見守り、口を出すのは注意点やコツを教える最小限にとどめる。
彼も先程見た『熊』の動きや作り上げられていく卵焼きの様子を思い出しながら慎重に調理を進めた。
そうして出来上がった卵焼きは『熊』が作ったものと比べると少し見劣りするものだったが、『熊』は「かなり上出来だ」と感心して褒める。
「とても手際が良かったよ、僕が作って見せるまでもなかったね」
「いや…見様見真似…だから」
「見様見真似でも、なかなかこんな綺麗には作れないよ」
よしよし、と頭を撫でてくる『熊』に向かって、彼は「これ…熊に…」と焼き上がったばかりの卵焼きが乗った皿を差し出した。
驚いて固まったまま動かない『熊』に、彼は肩をすくめながら続ける。
「いつもしてもらってばっかりで…俺、なんかお返ししたかったから…」
「……」
「料理が得意な熊にこんなの渡すのって、ちょっと自分でもどうかと思うけど…」
『熊』は彼の手から皿を受け取ると「僕の…ために…?」と半ば信じられないような様子で呟いた。
「僕のために…作ろうって…?」
「そうだよ、熊のため。もうちょっとちゃんとしたのも、そのうち皆から習ったりしてみる…からさ」
「お返しって…」
「熊はいつも俺のために色々してくれるでしょ。料理もそうだし、戸締まり…とか、気を遣ってもらうことが多いじゃん。昨日だって熊が足とか手を揉んでくれたから、俺はこうして動き回れてるんだしさ」
「そんな…それは当たり前のことなのに」
『熊』は受け取った皿の上にある卵焼きに目を落としたままだ。
「僕はただ…君がそばにいてくれるだけで充分で…お返しなんて考えなくても…君が毎日笑顔でいてくれたらそれで…」
「…熊、泣いてるのか?」
「ううん…」
「泣いてるじゃん」
「泣いてない…」
「じゃあなんで声が震えてるんだ?ほらほら、もう泣くなよ、熊」
「泣いてないから…」
泣いていないと頑なに言い張る『熊』を席につかせ、彼はいくつかのおかずを盛った皿とお茶とを用意する。
あの慌ただしかった数日間に皆で拵えた料理はどれも底が見えていて、中にはすでに空になったものもあった。
「なぁ、いつまで見てるつもりなんだよ。それ、一応食べ物なんだけど」
「うん…」
「まったく、ただでさえ仕上がりの良くない卵焼きなんだぞ。冷えたらもっと味が落ちるんだから、早く食べよう」
「…いただきます」
「うん。いただきます」
ようやく『熊』が卵焼きをただ見つめているのをやめたところで、彼も食事を始める。
彼の前には『熊』が焼いた卵焼きがあるが、それは焼き上がってから多少時間が経ってしまっているにもかかわらずふっくらとしていて美味しそうだ。
素朴でありながらも卵の風味を存分に味わえるこの卵焼きは彼の好物の1つであり、彼は1切れを口に運びこむやいなや自然と笑顔になる。
「美味っ…!やっぱりこれだよ、ふわふわしててさ。俺のは…」
「あっ」
「うーん、あんなに色々教えてもらったのになんか違うんだよな?なんでふわふわしてないんだ?」
自分が焼いた卵焼きの1切れを『熊』の前からとって食べた彼は、その違いに首を傾げ、さらにもう1切れとろうとして『熊』に皿ごと避けられてしまう。
「だめ」
「いや…そこまでしなくても」
「これは僕がもらった僕の卵焼き。味見は1切れだけ、他はあげない」
卵焼きの皿を体に寄せて守りながら言う『熊』の姿に、彼は思わず笑い声をあげた。
ーーーーーー
「なぁ熊ぁ。俺、全然寝れそうにないよ」
「うん、そうだね。今日は半日くらい寝てから」
その日の夜、暇を持て余した彼は寝台の縁に腰掛け、戸締まりする『熊』の背中に声をかける。
「ちっとも眠くないんだけど」
「それじゃあ本でも読む?君の興味がありそうなのは…これはどうかな、飾り切りのやり方。もうずっと前からここにある本なんだけど、面白いよ」
「へぇ…そんなのがあるのか」
『熊』は他にも本を薦めてきたが、それらはどれも料理に関するものばかりだ。
「これは…あまり興味がわかないかもしれない」と呟きながら本棚を見ているところを見ると、やはりこの部屋には物語といった類のものはないらしい。
「明日はなんかするのか?」
「うーん…また少し雪を除けるくらいかな。明後日から広場の雪を除ける人達のために食堂が開くんだけど、皆や食材の配達が来れるように前をまた少し除けておくんだ」
「じゃあ、雪が降っててもやるのか?」
「そうだね、あんまり大雪でなければ。でもそんなに大変じゃないから大丈夫だよ、通りとかの道は全部酪農地域から牛とかが来てまとめてやってくれるんだし」
「そっか…」
彼は少し考え込むと、両手を広げて「熊」と呼びかけた。
「何?どうしたの?」
そう言いながらも『熊』は彼のそばへと寄っていき、寝台に腰掛けたままの彼をそっと抱きしめる。
彼が抱きしめ返すと、両腕はちょうど『熊』の腰辺りに落ち着いた。
「体が冷えちゃってる、風邪をひいたらどうするの?寝台にいるなら掛け具をきちんとかけて暖かくしないと」
「ん…熊が温かいからいい…」
「どうしたの、本当に。今日の君は随分と甘えてくるね?」
「そうか…?いつもと変わんないと思うけど…?」
「ううん、僕に卵焼きを作ってくれたでしょ。朝も僕とずっと眠ったし、今日の君は…ちょっと待って、離してくれる?掛け具を…」
「いい。このままで」
「いや、僕が…じゃなくて、このままだと冷えるから、ね?」
肩に手を置いて身を離そうとする『熊』を、彼はより一層力を入れて引き留める。
腰の辺りを抱きしめている彼の口元はちょうど『熊』の下腹部付近にあり、話すたび、呼吸をするたびに『熊』は妙な感覚が広がっていくのを感じていた。
「えっと…その…シたいなら僕を寝台の上にいかせてくれない…かな」
「んん…」
彼が下衣の上から『熊』のものに口づけると、想像していた以上に強い力と声で「だめ」と制止される。
「分かったから、もう横になろう。これはだめ、やめて」
「嫌だって言ったら…?」
「やめる他に選択肢はないよ。こんなことをしなくても僕が『その気』になるって知ってるでしょ。とにかく離して、ほら」
「嫌だ」
「『嫌』じゃない、離して。僕が怒らないとでも思ってるの?…ねぇ、本気で言ってるんだよ、離してって」
いくらか本当に怒気を孕んだ声を聞き、彼は『熊』の顔を見上げた。
「俺が咥えさせられてるのを見たからか?それを思い出すからだめだって言ってんのか」
「……」
「なぁ答えろよ、熊。今、俺はお前のに口づけ『させられた』んじゃない、『やりたくてやった』んだ。お前が見た前の俺と同じか?」
「……僕がその気になると思う?君が苦しむ姿を見て。ありえない」
「想像で話をするなよ、熊。見てろ、俺が本当に苦しむかどうか」
彼は再び顔を下げると、ほんの少し身をかがめて『熊』の敏感な部分に口づける。
大人しくおさまっているその部分は彼が温かな舌で舐めたことで、ようやくわずかに反応を見せた。
それから、彼は時間をかけて下衣の上から舐めたり、口づけたり、吐息を吹きかけて徐々に『熊』のものが形を現し始めるのを待つ。
唾液による染みが大きくなり、吹きかける吐息に合わせてビクビクと動き出したところで、彼はついに『熊』の下衣をはだけさせた。
「よく見てろよ、熊…」
(大丈夫…俺は熊を満足させてやれるはずだ。優しく、ゆっくり…)
先端に口づけ、歯が当たってしまわないよう注意しながら舌の上を滑らせて『熊』のものを口内へと導く。
まだ充分に反応しきっていないにもかかわらず存在感を示しているそれは、きっと喉奥まで挿れると苦しくてたまらなくなるはずだ。
彼はまず中ほどまで挿れては抜き出し、それ以上の深さは最後にとっておくことにした。
「…だめだよやっぱり…離して…」
「どうして…?俺は苦しそうにしてるか?お前のここもすっごく硬くなってきてるけど…?」
「うぅっ…」
片手で根元の袋を包み込み、下腹部や根元を舐めたり、咥えこんだまま舌だけを動かしたりすることで『熊』は漏らす声を増やしていく。
さらにわざと音を立ててしゃぶると、先端から少しの白濁が溢れてきた。
「う、う…んん…」
『熊』の固く握りしめられた手を取り、彼は自らの頬へと当てさせる。
頬の内側を擦るように抜き差しすると、その動きがつぶさに伝わり、『熊』は戸惑いと快感とが入り混じった表情を浮かべた。
(そろそろかな…大丈夫、こいつのは俺を傷つけるものじゃない。きちんと、奥まで受け入れてやれる…)
彼は再び両腕を『熊』の腰に回すと、数回深く呼吸をしてから、勢いよく根元までを口内におさめる。
喉奥にとどく先端は多少の苦しさをもたらすものの、嫌悪感は一切ない。
むしろゆっくりするのではもどかしく、繰り返し何度も頭を動かして喉奥を突かせる。
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一際大きな喘ぎ声が上がり、ついに彼の喉奥には熱いものが放出された。
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(熊…お前、すごく沢山出したな。知ってるか?俺はお前を愛してるから、こんなこともできるんだ…)
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「の、飲ん…!?」
「あっははは…!驚きすぎだよ、お前がくれたものを俺が吐くわけないだろ」
「でもそんなのを…」
彼は寝台の奥へと上がり、『熊』の手をひいて自らを押し倒させると「まだ…できるよな?」と囁いた。
「1人だけ満足して終わるなんて嘘だろ?早く俺のことも気持ちよくさせてよ…な?」
「……」
「なんだ、熊。まさか俺の口が良すぎてこっちじゃ物足りないなんて言わないよな?いくら今のが気に入ったって、まずは比べてみたほうがいいと思うけど…」
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素肌を『熊』の吐息が撫でたすぐ次の瞬間には胸へと吸いつかれ、彼は熱い吐息をもらした。
「あぁ…いいね、熊…お前は俺が好きなこと全部知ってるよ…んっ…他はどうだ、うん?俺が『どこ』を『どう』されるのが好きか、分かるよな?」
「……」
胸をしきりに舐める『熊』の手はすでに彼の下衣に伸びていて、その期待通りの行動に彼は満ち足りた気分になる。
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「んっ…なぁ熊、早くシようよ…俺、さっきから…」
軽く腰を浮かせてせっついていると、『熊』の手が彼の腰を掴んできた。
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だが、次に起こったのは彼の期待していたものとは違うものだった。
なんと『熊』は彼の中に挿れるのではなく、腰を高く抱え上げたのだ。
「く、熊?何してるんだ…!?」
『熊』は驚きと戸惑いに混乱する彼に構わず、立膝になってしっかりと抱え込んだ彼の腰とその上にある尻に顔を近づけた。
「は、おい、う、嘘だろ熊!やめろ、そんなことするな!」
彼からはほとんど真上にある自らの股と、抱え込む『熊』の腕、そしてその先で見え隠れする『熊』の頭しか見えない。
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「お、おいおい!どうしちゃったんだ!?そ、そんな…や、やめろって言ってるだろ!」
尻の肉の上を舌がなぞっていく感覚が絶えずする中、彼は懸命に身を捩って抗議するものの、まったくうまくいかない。
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突然暴かれた彼の秘部はヒクヒクとしていて、全く初めてのことに動揺しているようだ。
「な、なぁ熊!聞いてんのか!なんで何も言わないんだよ!は、恥ずかしいって!一旦話そう、な?」
なんとか手を伸ばして『熊』の足を叩くと、ようやく尻の感覚はおさまった。
「なぁ、なにがしたいんだ、うん?」
「…ほぐしてる」
「い、いや、熊、これはやめよう、な?俺がどれだけ恥ずかしがるか、お前だって分かってるだろ?これはだめだ、やめよう、な?」
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「い、いや、それとこれとは…お、怒ってるのか?悪かった、悪かったよ!俺が悪かったって…!あっ、や、やめろって…く、熊!熊ぁ!」
懇願する彼の声も虚しく、『熊』の舌は彼の秘部を這い、その味わったことのない感覚に激しい羞恥がわきあがった彼はただ後ろに力を入れて耐え忍ぼうとする。
だが皺の1本1本、穴の中心から周辺に至るまで丹念に舐めるそれは執拗に繰り返され、ついに力を入れ続けていられなくなった彼は力を入れ直すためにふと息を吐いた。
「はぅっ…!!!」
それは一瞬の出来事だった。
彼の力が抜けて秘部が無防備になったのと『熊』が舌を突き刺すのが重なり、なんと彼の中に舌が入り込んできたのだ。
「あ、あぁ…うわ…」
彼は呆然とするあまり力を入れることも忘れ、本当に今起こっていることが現実なのかと目を白黒させる。
しかし、いくら考えても中を動いているのは指でもあのそり勃つものでもない。
『熊』が何をしているのか、何をしようとしているのか、はっきりと見えないことがより一層感覚を鋭敏にさせた。
(う、嘘だこんなこと…現実なわけないよな?い、今俺の中…見られるどころかこんな…しかも…さっきから微妙なところばっかり…)
「んんっ……」
舌は彼の中の敏感な1点ではなく、そのほど近いところばかりを刺激してくる。
彼は抵抗する力も気力も失い、いつしかあの敏感な部分をいじってほしいという願いに支配されていた。
だが、自分から言い出すのはさらに羞恥を重ねることになりそうで、言い出すことができない。
「はぁ、あっ……んん…」
(あぁもう、挿れて突いてほしい…もう言っちゃおうかな…こんなことまでされて、もう恥ずかしいも何もあったもんじゃないよな…だけど今のこいつちょっと…何されるかわかんないし…あと少しだけ待ってみて、それでもこのままだったら…)
だが、一向に『熊』の動きは止まる気配がない。
彼がいよいよ堪えられなくなり「く、くまぁ…」と口を開くと、突然『熊』の片手は尻から離れて彼の硬くなったものを包み込んだ。
「う、うぁぁ…!!」
彼は思うように身動きが取れない中、体全体を大きく震わせる。
中の方に気を取られていたところへ突然前のの強烈な刺激が加わり、彼は激しく反応してしまう。
「はぁ、あっ、ああっ!!ん、んぅ…」
すぐにでも放出してしまいそうになるのをなんとか抑え込もうと、彼は頭を右に左にと振る。
しかし、そこでついに尻から舌が離れ、彼が当初 望んでいた通り中の敏感な1点が強く刺激された。
どうやら『熊』はもう片方の手を使い、彼の中を指で弄り始めたようだ。
腰を高く抱え上げられていて多少の苦しさもあるこの体勢は、彼の真上に自分のものがあって、いやがおうにも擦られ続けるそれをまざまざと見せつけられてしまう。
扱われているのが自分とは信じがたいようなその光景と、執拗に責められ続ける後ろの感覚に彼は何も考えられなくなっていく。
「うぅん…くま…あっ、おれ…あぁ、でちゃう、でちゃうよ…あっ…」
半ばうわ言のように「くま、くま」と呼びかけながら、彼は放った。
強い快感が全身を駆け巡り、ようやく迎えた絶頂に体はぐったりとして力が抜けてしまう。
勢いよく放たれた白濁は彼の頬にぱたぱたと滴り落ちていて、自らのものをこんな形で受けてしまうのは屈辱にも似た感情がわいてしかるべきだが、今の彼はとてもそんなことを気にしている場合ではなかった。
「はぁ…あ、はぁ…」
荒い息を繰り返す彼は抱え上げられていた腰を下ろされると、すぐさま身を捩って体の前面を『熊』から隠すように横になる。
それは彼によるせめてもの抵抗だった。
「……」
『熊』の目の前には艶めかしさの塊のような愛する人がいる。
起伏を繰り返す胸。
滑らかな腹。
放ったばかりの陰茎。
ヒクヒクと開閉する蕾。
そして、白濁を浴びた美しく色づく頬。
上衣を脱ぎ捨てた『熊』は彼に覆い被さると、彼の頬の白濁を丁寧に舐め取り始めた。
「な…なにしてる…」
「綺麗にしてる」
「やめろ…そんなこと…するな…」
「君だって僕のを飲んだ」
「んん…っ…」
元々、彼は今日はこれで充分だと思っていたのだが、彼の耳にはすぐ近くからの淫靡な音が響いてきて、それは首筋にまでかかる吐息や頬を撫でる舌の動きと共に再び『欲』を掻き立ててくる。
それは『熊』も同じようで、彼の体の側面には硬いものが押し当てられていた。
(シたい…けど恥ずかしくってもうだめだ…充分気持ちよかったし、すっかり疲れきっちゃっててこれ以上は…)
彼は本当にこれでおしまいにするつもりで、『熊』へなんと切り出そうかと考える。
しかし、話を切り出す前に『熊』は彼の右足をつかんだ。
「あっ、く、くま…!だめだ、もう今日は…」
「…足りないでしょ」
「いや、でもちょっと待って…あ、あぅ…!!」
『熊』は彼の左足の上に跨り、右足を胸元に抱きよせて自らのものを彼の入り口にあてがった。
恥ずかしい思いを散々させられてしまった彼は真正面から向き合うことができず、顔を伏せ、中を擦られたことで出る叫びのような喘ぎ声をすべて寝具へと吐き出す。
くぐもった喘ぎ声は直接辺りに響くよりも数倍淫らに思えるものだ。
『熊』は抱えた彼の足を折り曲げてより深く腰を打ち付けると、耳元に唇を寄せて囁く。
「なにしてるの…こっちを見て」
「う、あ、あぁ…っ」
「君が言ったんでしょ…顔を見ながらしてほしいって。ほら、僕を見て…君を抱いてるのは誰?君を愛してるのは誰?」
声は極めて優しいものの、動きはまったく容赦がない。
この体勢は正面から抱き合うよりも深く挿し込まれているようで、彼は息も絶え絶えになりながら少しだけ顔を『熊』に向けると、うなじに片腕を回し、深く口づけてから応える。
「くま…くまだよ…おれがこんななるの…くまだけ…」
「うん」
「あっ、あぁくま…おれ、おかしくなっちゃうよ…これ、きもちい…きもちよすぎるの…あぁ…あっ、あっ、うぁ…!!!」
何度か立て続けに大きな喘ぎ声をあげた後、彼は上半身を反らせて果てた。
ーーーーーー
長い間軋んでいた寝台はようやく静かになり、上で抱き合う2人の呼吸もそのうち落ち着きをみせ始める。
「…ごめん、大丈夫…?」
「ん…」
「ついこんな…その、湯を浴びようか。まだ温かいはずだから、とにかく…」
彼は離れていこうとする『熊』を正面から抱き寄せ、掠れた声で囁く。
「うごけない…おれ…」
「…うん、僕が抱きかかえてあげる。その、ごめん…」
「ん…あやまんなよ、くま…おれたち、すごく…きもちよかったじゃん…」
その言葉は『熊』を危険なほどにくすぐってきたが、結局『熊』は軽く頷くだけにとどめ、彼の中から自らのものを抜き去った。
やはり、彼の中からは白濁が流れ出してくる様子はない。
『熊』は彼が浴室へ向かうまでに体を冷やしてしまわないようにと、端の方でぐちゃぐちゃになっていた寝間着を着せる。
だが、彼は大人しく袖を通させるだけで、決して顔をあげようとはしない。
「あのさ…おれたち、いっしょに湯を浴びないか…」
「え…」
突然の申し出に目を丸くする『熊』へ彼は続ける。
「おれが出てからじゃ湯も冷えるし…いくら話しながらっていっても、1人にするのは心配…だろ」
「だけど、君は嫌なんじゃ…」
「う…そりゃあ恥ずかしいけど、でもさっきのに比べたら…それに俺、本当に腰が抜けてて…しばらくちゃんと歩けそうに…なくて…」
「…分かった」
「うん…」
そっと横抱きに抱え上げられた彼は両腕を『熊』の首に回してしっかりと掴まると、「1つだけ頼みがある」と付け足した。
「その…俺を先にして、熊は少し後から入ってきてくれないかな…俺ちょっと、先に洗わして…頼む…これだけは本当に…頼む…」
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