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外伝
『いたずら』後編
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自然の力とはやはり驚異的なものだ。
嵐がおさまってから外に出てみると、畑の方の被害は最小限にとどまってはいたものの、激しい雨風と雷によって近くの古びた作業小屋が崩れたり、大木が幹から折れたり、枝葉が辺りに散乱したりとそれなりに大きな被害があちこちに出ていた。
霙と冴はその辺りでは特に若く貴重な労働力ということでその片付けを連日 率先して行い、しばらくの間 筋肉痛になったお互いの疲れを癒やしながら寄り添って眠るだけの日々を送った。
だが、そんな日々でさえも冴にとってはとても楽しいものだった。
なにより懸命に片付けをする冴の姿は近所(といっても隣家とはそれなりの距離があるが)の人々を老若男女問わず ほわほわとした気分にさせるものであり、「本当に働き者だな」「今日の炊き出しはこういうものなんだけど、こういう味は好き?」などといつも会話の中心に立たされていたのだ。
元々冴は姉やその友達の賑やかな輪に入って同じように話をすることも多く、それでいて男友達とも会話を合わせるのが得意な性格をしているため、その人気のあり様は凄まじかった。
ただ ちやほや されているのとは違い、純粋にその人柄で人々を惹き寄せる冴。
その気さくさは近所の人達や作業小屋の修理などに来た工芸地域の人達の心をすっかり捉え、一瞬にして友人にしてしまったほどだ。
沢山の人と賑やかに過ごした数日は忙しく大変ではあったが、冴をとても楽しませた。
そしてその忙しかった日々が過ぎ、片付けも一段落したある日。
冴と霙のもとにはようやく余裕のある夜が戻ってきていた。
ーーーーーーーーー
静かで落ち着いた夜。
その穏やかな雰囲気が嬉しいらしい冴は、湯浴み上がりのまだぬくぬくとした体を寝台の上に横たえ、満足そうな笑みを浮かべていた。
温かな体をひんやりとした敷き具で冷やし、そこがふんわりと温かくなったらまた冷えたところへ転がって移る。
そうしてゴロゴロと寝台の上を端から端まで転がる冴に、霙は「何してるんだ」と呆れたように言って乾いた浴布を手に近づいてきた。
「髪がまだ濡れてるのに…」
「ううん、もうほとんど乾いてるよ」
「ほら、『ほとんど』だろ。ちゃんと乾かさないとだめだ、風邪をひくから」
「えぇ?これくらいじゃ風邪なんかひかないよ」
「だめだって」
湿り気を帯びた髪を乾かさせようと浴布を手渡してくる霙に、冴は「じゃあ霙がやってよ」と起き上がって髪を差し出す。
「はい霙。乾かして」
「…なんで俺が」
「いいでしょ?ほら、やってよ やってよ」
ニコニコと上目遣いで見つめられた霙は結局 仕方がないというように冴の髪を浴布で丁寧に乾かし始めた。
大人しく髪を乾かされている冴はいつも纏っている大人びた雰囲気が失せ、なんだか幼い子供のようだ。
霙はふと(子供の頃の冴はこんな感じだったのだろうか)と思いつつ髪を拭ってやった。
「…よし、乾いたよ」
「乾いた?」
「あぁ」
「もういい?」
「いいよ」
髪を乾かし終えて浴布を軽く畳もうとすると、冴は「ありがと」と言いながら霙に飛びつき、そのまま寝台へと倒れ込んだ。
突然姿勢を崩されたことで驚いた霙は「あ、危ないだろ!」と叱りつけたが、それ以上はもうなにも言うことができない。
なぜなら冴が「んー、霙~」と嬉しそうな声を上げて自らの胸に顔を埋めていたからだ。
鼻先を擦り寄せた後に今度は頬をぴったりとくっつけてくる冴。
霙はこの数日の間、冴がどれだけ大変な思いをしつつ作業にあたっていたかを間近で見てきた。
慣れないことばかりの中、1人ひっそりと疲れ切っていたこともよく知っている。
そのため、こうした極端な甘え方をしてくる冴のこともじっと受け止めてやろうと思ったのだ。
「霙~、これ、すごくホッとする」
「…それは良かったな、冴」
「ん~…」
胸元でひとしきり霙の体温を感じた冴は顔をあげて唇を軽く突き出し、口づけをせがんでくる。
霙がそれに応じてやると、冴は一層美しい笑顔を見せながら伸び上がり、霙の腕を枕にして寄り添ってきた。
霙の手を取り、指を絡めるようにして手を握ると、その感触を確かめたりするように何度もぎゅっ、ぎゅっ、と握り直しては「霙の手って、おっきいよね」とくすくす笑う冴。
「ねぇねぇ、小屋の片付けをしてる時にさ、工芸地域から来た職人さんに『1人で3人分の仕事をしてる』『頼りになる』って言われてたでしょ?それを聞いて…なんだか僕もすごく嬉しかった。霙が褒められてるとね、僕も嬉しくなるんだよ。『こんな風に頼りにされてる人が、僕のことを好きでいてくれてるんだ』って思うから」
屈託なく笑う冴は繋いだ霙の手にそっと軽く口づけて「働き者の手~」と嬉しそうに目を細める。
すると霙は繋いだままの手の親指と人差し指で冴の頬をそっとつまみ、「お前こそ」と言い返した。
「やっぱり、どこでも人気者なんだな」
その言葉に「ん?もしかして、妬いた?」と目を輝かせる冴。
霙が「そうじゃないけど」と言うと冴は「そうじゃない『けど』~?」とさらに顔を近づけてくる。
明らかにはしゃいでいる冴のその姿に、霙は心をほぐされながら言った。
「…沢山の人に囲まれながらよく笑う姿は、とても綺麗だった」
少し照れたような様子の霙から聞かされた素直なその言葉に冴は目を丸くして驚いたが、これはたしかに霙の本心だ。
いつも穏やかな笑みを浮かべ、話す時は表情豊かに、そして時にはおどけてみせて周りの雰囲気を明るくしてしまう冴の姿のなんと魅力的なことか。
霙はそうした人の輪には自ら積極的に入っていこうとはしない性格のため、少し離れたところから静かにその様子を見守っていたのだが、心の中では先ほどの冴が言ったように(あの人が、あんなにも美しい人が自らのそばにいてくれているとは)と温かな気持ちになっていた。
「冴には…人を惹きつける才能がある」
「……」
「とても素晴らしくて、素敵な才能だ」
ゆったりと甘く囁かれた冴が「なに…いきなり……」と恥ずかしそうに俯くと、霙はそんな冴の顎に手を添えて上向かせ、そっと、労るような優しさで唇を食んだ。
じっくりと時間をかけて互いの口内のすべてをも味わい尽くした後、冴は「霙だって…優しさの塊じゃん」と静かに笑う。
「自分だって疲れてるのに…寝る前、僕の筋肉痛が和らぐようにって足とかを揉んでくれたりした」
「それは…まぁ」
「ふふっ、僕は霙が僕のことを気遣ってくれたっていうのがすごく嬉しくて、それだけで筋肉痛なんかどうってことないなって思ってたんだけど…でも次の日には本当に体が軽くなってた。不思議と…本当に、なんともなくなってたんだよ。…ありがとう、霙」
しっかりと目を合わせながら微笑む冴に引き寄せられ、霙は髪を撫でながら「お疲れ」と労う。
「随分と忙しかったな」
「うん…霙もお疲れ様」
「あぁ」
しばらく言葉もないままにじっと見つめ合った後。
冴は髪を撫でていた霙の手を止めさせると、その指先を舌でチロリと舐めてから咥えて吸い付く。
それが意味するところは明らかだ。
「…いいのか?疲れてるんだろ」
片眉を上げた霙に冴は言う。
「やっとなのに…しないなんて、嘘でしょ?」
ーーーーーーーー
「んっ…んん……」
静けさの中に木々のざわめきが混ざる夜。
冴と霙は寝台の上で悩ましげな表情を浮かべながら、どちらも舌が絡まってほどけないというような激しい口づけを交わしていた。
体のあちこちを撫で回しながら夢中になって口づけているため、すでに唇はジンジンとし始めている。
ようやく少し顔が離れたところで、冴が「霙…もう、シよ…?」と上気した声で囁くと、頷いて応えた霙はどこからか帯状の布を取り出し、冴の両手首をまとめると、固い結び目を作ってしまった。
少しの抵抗もみせず大人しく手首を拘束された冴は「へぇ…?」とやけにニコニコとする。
「もしかして…僕に『いたずら』、してくれるの~?」
「…こういうのがしたかったんだろ」
「ふふっ…したかったのは霙の方でしょ」
冴は拘束された手首を振ってほどけないことを確認させると、「これから…何されちゃうのかな、僕」といたずらっぽく言った。
「縛りつけて、動けなくさせて…前に僕にされたことの仕返しでもする?」
「…さぁな」
「ふふふっ…なにを企んでるの?」
からかおうとするのを止めない冴にやれやれと首を振った霙は、冴の両手首を頭上に上げさせると、拘束している布の長く余った端を寝台の柱に括りつけた。
後ろ手に縛られていた霙とは異なり、冴は寝台に横たわったままいくらか動ける余地がある。
それでもまったく抵抗できない状態の冴は右横から抱きしめてくる霙がわざと脇腹の敏感な辺りに鼻先を押しつけてくることに耐えきれず、くすぐったさのあまりわずかに身を捩らせた。
「く、くすぐったいよ、霙…」
「だめ、逃げないで」
「でも…そう言われても、くすぐったいものはくすぐったいんだ…」
なおも逃げようとする冴。
すると霙は冴の左胸を衣の上から手で覆い、その下にある敏感な部分にはっきりとした『形』を浮き上がらせるために刺激し始めた。
ゆっくりと、円を描くように、手のひらで。
そのじんわりとした刺激はくすぐったさと共に冴の気持ちを昂ぶらせ「霙…」という熱っぽい声を引き出す。
「霙、もうそれ…やめて……」
「やめる?…勃ってるのに?」
「だってそれは…こんなことされたら…んんっ…」
さらに身を捩ったことで冴の上衣が乱れ、ちょうど腹のあたりが露わになる。
その少しだけ覗く素肌があまりにも強烈に欲情を煽ったため、霙はそこから手を差し込むと、直接冴の胸を揉みしだき始めた。
冴の乳首はすでにぷっくりと立ちあがり、下の肉棒と同じようにその存在感を確かなものにしている。
片胸を激しく、容赦なく愛撫される冴は腰を浮かせるなどしながら逃れることのできないじわじわとした快楽に追い詰められ、「霙…お願い…」と甘ったるい声で懇願する。
「お願い…脱がしてよ、霙…衣が…邪魔……っ」
「上を?下を?」
「うぅ…どっちも、どっちも…っ」
落ち着きなく腰と足をばたつかせる冴。
霙はその望み通りに衣の紐を解くと、下衣を素早くつま先から抜き去り、完全には脱がすことのできない上衣の前を開け放った。
興奮でほのかに紅く色づいた胸やスラリとした腹、ヒクヒクと動く肉棒が霙の眼前に晒しだされる。
冴の体はどこもかしこも『触ってくれ』といわんばかりに霙を誘っていて、艶めかしいことこの上ない。
だが霙はそのどこにも触れようとはせず、寝台の端にある包みから何かを取り出すと「なぁ、1つ約束してくれ」と手に持っているものを冴にかざして見せた。
「この先は冴が約束してからじゃないと進まないからな」
「ん……ふふふっ、なんだ…霙もそれが気になってたんじゃん…?」
「…いいから、聞いて」
霙が手にしていたのは例の『金属の棒』だ。
それを見せながら霙は言う。
「今日限り、2度とこれを使わないと俺に約束するんだ」
その言葉は力強い。
だが冴は「今日限り…2度と…?」と怪訝に言って唇を尖らせる。
「その約束…やだなぁ…」
「冴」
「だってさ…それ、挿れるとすっごく気持ちいいんだよ……」
「だめだ、冴。約束して」
「ん……」
渋る冴に霙は「約束しないと今日はこのままだ」と耳元に囁く。
「どれだけ触ってくれって言っても、このままにするからな」
「ん…でも、どうせ霙の方が我慢できなくなっちゃうでしょ」
「どうかな」
冴は本当に約束するつもりがないらしい。
霙は拘束された冴の裸体のあちこちを吐息がかかるほど近くで見つめながらも、決して触れずにじっくりと焦らす。
時々冴は身をヒクつかせて霙の唇に触れようとするが、その度に霙は飛び退いて触れるのを避けた。
やがてその繰り返しに堪えられなくなった冴は「霙…いじわる」と泣きだしそうになりながら訴える。
「シてよ、霙…もう触ってほし……」
「なら約束しないと」
「うぅ…っ」
「約束したら…最後にこれを使ってやるから」
「ほん、と…?」
潤んだ瞳の冴。
霙は「本当だ」と目で頷きながら人差し指で冴の肉棒を根本から先端までなぞりあげる。
「これを最後にするんだ、冴」
「ん…うん…」
「約束できるな?」
「うん…」
「…破るなよ、この約束を」
焦れったく念を捺す霙に、冴は足を曲げ伸ばしながら「約束…約束する、約束するから…!」と大きな声をあげた。
「触って…触っていっぱい気持ちく…気持ちよくさせて、霙っ…」
冴から『その1言』を引き出した霙はすぐさま冴に覆いかぶさると、濃厚な口づけをしつつ手探りで包みの中の小瓶を取り出し、清潔な手巾にその中身を染み込ませる。
瓶の中身は傷口の消毒などに使われる強力な蒸留酒だ。
蒸留酒が染み付いた手巾で金属の棒を隅々まで拭った霙はそれを乾かす間に、潤滑剤となる油を冴の下腹部や鈴口にたっぷりと塗りつける。
冴が「っ……準備、してたんだ?」と目を細めると、油の入った小瓶に栓をしながら「当たり前だろ」と少々ぶっきらぼうに言う霙。
実は霙はすでに今夜のこの状況を予測していて、冴が湯浴みをしている間に金属の棒を煮沸し、石の棒の方の手入れまで済ませていたのだ。
これが以前好き勝手にされたことの仕返しなのか、それとも連日疲れ果てるまで率先して作業をこなしていた冴への褒美なのか…それは定かではない。
ただ霙には今夜の自分のするべきことがはっきりとしていた。
軽く冴の肉棒を扱いてしっかりと固く勃たせた霙は、準備の整った金属の棒の先端を鈴口にあてがい、つぷっとそこに突き立てる。
「う…んんっ……」
冴の様子を窺いながら金属の棒をさらに中へと進めていく霙。
至近距離で見せつけられた時のあの光景を思い出しつつ金属の棒から手を離すと、棒は自重でするすると冴の中へと入り込んでいき、あっという間に全体のうちの3分の2ほどが眼前から姿を消した。
「い…っ、やぁ……っ!」
「痛むか?」
「う…ううん、そ、そうじゃ……そうじゃなく、て………っ」
冴はキツく眉根を寄せているものの、止めてほしがっているようにはみえない。
霙は様子を見つつ、握っている冴の肉棒の角度を変えさせた。
ゆっくりと、倒したり起こしたり。
すると金属の棒がかすかに動き、少し押し込むようにしただけでなんと棒の飾りの部分以外がすんなりと冴の肉棒の中へ消えていってしまった。
すべてを前の方に呑み込んだ冴は腰をガクガクと震わせ、ほとんど声にもならないような声を喉奥から響かせる。
それは霙が棒をわずかに抜き挿しし始めたことでより一層大きくなっていく。
「うっ、ううっ!!」
「痛いか、気持ちいいか?言ってみろよ冴」
「~~~っ!!」
言葉にならない代わりに、霙が「気持ちいいのか?うん?」と問いかけると冴は必死に何度も頷いて応える。
霙は冴を傷つけないように最大限の注意を払いつつ抜き挿しを繰り返し、冴をさらなる快楽の渦に溺れさせていった。
「い…いいっ…きもちい、これ…きもちい…っ」
「イきたいのか、冴」
「んんっ、んうぅっ!!」
冴のすらりとした腕に筋肉の筋が浮き出し、手首を拘束している布がギシギシと音を立てる。
明らかに絶頂が近づいていると悟った霙はそこで一切から手を引き、刺激するのを止めた。
あとほんの少しで絶頂を迎えるところだった冴が苦しさと焦れったさから不満げにすると、霙は石の棒に油をたっぷりと塗りつけて「うつ伏せに」と指示をする。
「うつ伏せになって、こっちに尻を差し出して」
すでに石の棒が用意されているのを見た冴は「ん…後ろも一緒にすんの…?」と熱っぽく言いながらなんとか身を翻してうつ伏せになる。
すると霙は冴の腰を抱きかかえあげてさらに尻を突き出させると、金属の棒が抜け出ないように前を握りながら秘部に石の棒をあてがった。
まだ指を一本も入れていないというのにすっかりやわらかくなっているそこ。
「なんだ…もうほぐれてるのか?」
霙が訊ねると冴は「ははっ…」と小さく笑いを交えて言った。
「洗う時に…もう弄っちゃった。すぐにでも霙にいっぱい…してほしかったから」
その妖艶な声に触発され、霙はすぐさま石の棒を冴の秘部にねじ込み始める。
そのまま突き刺すにはやはり中の抵抗があるため、石の棒を左右にグリグリと回しながら力を込めていく霙。
だがその秘部は今までにも何度もそうして石の棒を咥えてきた上、今夜すでに冴自身によって随分とほぐされていたのだ。
棒の半分ほどまでが呑み込まれたその先は、もはや何の抵抗もなく、なめらかなものだった。
上半身を伏せて尻を突き出した格好の冴は前に金属の棒を、そして後ろには石の棒をしっかりと呑み込んでそれぞれを抜き挿しされている。
押し寄せてくる快楽が一体前と後ろのどちらからのものなのかもはっきりとせず、ただただ喘ぐ冴。
時々棒が同時に挿し込まれると体内の弱い一点が挟み込まれる。
それは息も絶え絶えになるような、苦しいほどの刺激だ。
それになにより前に挿し込まれている棒はまるで射精を制限しているかのように作用している。
今までに感じたことのないその強烈な刺激には冴も耐え切れず、足の先に至るまでビクつかせながら「ぬ…抜いて、抜いて!」と懇願した。
「も…無理っ、これ…これっ、抜いて!射精したいのに、これじゃ…ううっ、抜いてみぞれ!いやぁぁっ!」
「後ろを?前を?それじゃどっちのことか分からないな、冴」
「まえ!まえのこれ…これ、ぬいて!ぬいて、ぬいてぇっ!!!」
「本当に抜いていいのか?冴。これを使うのはこれが最後だって約束しただろ、今抜いたらもう二度と無しなんだぞ」
「うううっ…もう、苦しいか…ら…いいっ!」
「そう言って、また手を出すんじゃないか?うん?俺に隠れて使ったり、隠してあるのをわざわざ探し出して使うくらいなんだから。俺とするよりもずっと気持ちいいから使ってるんだろ?どうせ約束なんて、この場限りしとけばいいって思ってるんだろ」
「ち…違っ…」
「どうだかな」
どれだけ懇願しても手を止めることのない霙。
後ろを石の棒で激しく突かれているために体勢を変えることもできず、両手を拘束されているために霙の腕にすがることもできない。
あまりの苦しさに、冴は「お願いだから、お願いだからぁっ!!」とほとんど叫ぶようにして霙に訴えた。
「これ、もう使わないから!!!お願いだから抜いて!抜いて射精させて!お願い、お願いぃっ!!いやぁぁあっ!」
それからすぐ、金属の棒がゆっくりと引き抜かれると同時に強い射精感がもたらされ、一際大きく喘いだ冴。
ほどなくして後ろを石の棒で突かれながら勢いよく射精した冴は膝の力を失って寝台に突っ伏し、荒い呼吸を整えるかのようにぐったりと目を閉じた。
体内の一点はジンジンと燃えるように熱く、その位置を知らしめてきている。
霙は石の棒を奥深くまで挿し込んだまま冴の隣に横たわり、その汗ばんだ髪を横に撫でつけた。
薄目を開けて霙を見つめた冴は はぁはぁ という荒い呼吸を繰り返しながら呟く。
「ぐちゃぐちゃで、おかしくて…辛くて…壊れちゃうかと…思った…」
「…痛い?」
「ううん…だけど、今のはもう……耐えられない…2度とできそうにない…」
「2度と使わない約束だろ」
「うん…約束した…そうする、そうするよ、霙……」
冴がか細い声で「抱きしめて…」とねだるので、霙は真横からしっかりと肌と肌をくっつけるようにして抱きしめてやった。
その温もりに安心したらしい冴は霙と口づけを交わすと、柔らかく微笑んでから石の棒が挿入ったままの尻をあげて催促を始める。
「霙…僕、ちゃんと霙にシてほしい…」
「疲れたんじゃないのか?」
「んん……だって前の方じゃなくて…霙のおっきくて熱いやつで…気持ちよくなりたいんだもん…」
妖艶な笑みに焚きつけられた霙は再び冴の腰を高く掲げさせると、石の棒をさらに深くまで挿し込んだり、縁が拡がるように大きく円を描いて動かしだした。
「そんなのしなくても…もうほぐれてるのに」と笑う冴に霙は「いや、まだ足りない」と念入りにほぐしていく。
孔を限界まで拡げるようにされているせいでグプグプという音までしだしている秘部。
その感覚と音から体の中まで覗かれていると分かる冴は恥ずかしさと高揚感に激しく興奮し、さらに自ら尻を突き出した。
こんなにも大胆なことをするようになるとは、冴自身も思ってもみなかったことだ。
こうして秘部を自ら差し出し、さらにその奥の、体の中まで晒けだしてしまうとは…石の棒を持っているところを見られたのだけでも信じられないほど羞恥していた頃からはまったく考えられない。
だが冴は霙と共に数々の夜を明かしてきたことで徐々に悟ったのだ。
羞恥を感じるのはもちろんだが、だからといって隠したりするのは非常にもったいないことなのだと。
すべてを捧げ、包み隠さず、正直に。
そうして愛し合うことの素晴らしさは何物にも代えがたいものである、と。
「…挿れるぞ」
「ん…きて、霙……」
霙の声掛けに(いよいよ待ち望んでいた瞬間が訪れる)という期待感に胸を高鳴らせる冴。
熱く、硬く、わずかに反っている霙の肉棒は石の棒などとは比べ物にならないほど良いものであり、それが中に挿入ってくるのを想像しただけでも軽く絶頂してしまいそうになるほどだ。
秘部を疼かせながら従順に待つ冴のいじらしさは何とも言えない愛らしさと妖艶さに満ちている。
霙は衣を脱ぎ捨て、冴の真後ろに位置取った。
だが、ふぅっ…と息を吐いて力を抜いていた冴は、そこで想定していたものとはまったく異なる状況が自らの後ろで起こっていることに気づく。
「……っ!?ま、待って、霙、なに…なにしてるの!?」
突然、冴はそれまでの夢見心地から一気に目を覚まさせられて声をあげた。
「う、うそでしょ霙!」
「…そのまま動くなよ、冴」
「いっ…む、無理だよ霙!無理…無理だっ…てば!!」
何とか身を捩って逃れようとする冴を押さえつけるようにして阻みながら、霙はその硬く張り詰めた切っ先を冴の秘部に押し当てる。
なんと霙は石の棒を抜かないまま、自身の肉棒を冴に挿入しようとしていた。
あまりの衝撃に思わず拘束されている腕に力を入れる冴。
「大丈夫…挿入《はい》るよ」
だがその言葉は冴には届いていない。
たしかに石の棒は霙の肉棒よりも細く、その上 冴の秘部は幾度となく霙の肉棒でほぐされてきた豊富な経験の持ち主だ。
しかし、だからといってこんなことに耐えられるとは到底思えない。
実際冴は秘部が強引に、いまだかつてないほどあらゆる方向に押し拡げられていく感覚に目を白黒させながら『これには耐えられない』と感じていた。
「だめ、だめだよっ、裂けちゃうって…!!」
「っ…もう少しだから」
「壊れる…壊れるって、霙…!僕のお尻、壊れちゃうから…っ!!!」
いくら声をあげても霙のゆっくりと肉棒を挿し込む動きは止まらず、冴はあまりにも強い異物感に息を呑む。
秘部のフチはジンジンと熱くなり、本当に裂けてしまっているのではないかとさえ思えるほどだ。
やがて霙の腰がぴったりと冴の尻にくっつき、挿入が済む。
霙の体に押されて寝台の上に突っ伏した冴は、荒い呼吸のまま後ろから体全体でのしかかってくる霙の口づけを頬と首筋とに嫌というほど浴びた。
「冴…分かるか?今お前の中に2本挿入ってる…どっちもちゃんと、全部呑み込んでるぞ」
「…うぅっ…ぅ…」
「うん?すごいな…裂けずに2本も挿入るだなんて」
腹部の圧迫感は尋常ではなく、もはや快感どころの話ではない。
呼吸を保つのに忙しい冴に対して霙はさらに囁く。
「ほら…『もう一人の俺』ともヤリたかったんだろ。これでどうだ?2本挿れられて、満足したか」
その声音はだいぶ暗いもののようで、かすかに怒りさえ思わせてくるものだ。
冴はわずかに顔をあげると、絶え絶えになりながら「おこ…ってるの?」と口にした。
「この前のこと…怒って、るんでしょ…」
すると霙は「さぁ…どうかな」と冴の耳朶に噛り付いて答える。
「俺一人じゃ足りないって言うからな、冴が」
「~っ、怒ってる……っ」
「いや?俺はただ冴の望み通りにしたいだけだ」
冴はもう話しているのも辛くてたまらない状況であり、はぁはぁと息をつきながらなんとか顔を霙の方に向けて「これ…も、もうやめて、お願い…」と訴えかけた。
「お腹とお尻…おかしくなっちゃう…苦しい、苦しいから…もうやめて…霙のじゃなきゃ、意味ない…」
「うん?」
「棒なんかじゃダメ、2人なんかじゃなくていい…霙1人に愛してほしいよ…」
「………」
「霙…霙だけに愛してほしいんだ……もう意地悪は止めて、ちゃんと愛して……霙ので、僕を気持ちよくさせてよ……」
しっとりとした睫毛を震わせる冴のその喉の奥から絞り出すような声に口づけで応えた霙は、身を起こすと自らの肉棒をゆっくりと引き抜く。
冴の秘部を見てみると、霙が強引に肉棒をねじ込ませたために石の棒は霙の手を離れて完全にそのすべてを冴の体内に埋めてしまっていた。
もはや指で掴みだすことができないほど奥に挿入ってしまった石の棒。
霙は「冴、棒を抜かないとだめだ」と冴の尻の肉を両手で左右に大きく開く。
「…棒が中に入り込んでる、腹に力を入れて自分で出して」
「…っう…ううっ…」
「…そうだ、その調子」
霙が片手を腹部に添えると、冴は懸命に腹と尻に力を入れ、中の奥深くに入り込んでしまっていた石の棒を外へと押し出した。
ぬるりとした感覚の後に完全に抜け落ちた石の棒はすぐさま寝台の端に追いやられ、まだ秘部が閉じきっていない冴は仰向けにされるやいなや霙の肉棒をずっぽりと根元まで呑み込まされる。
間髪入れずに始まった激しい抽挿。
冴の体内はつい今さっきまであんなにも手ひどく拡げられていたというのにすでに霙の肉棒に吸いつき、キュウキュウと締め付け、激しくうねっていた。
「冴…中が熱くて……っ、すごいな」
「あぁっ…あっ、きもち…きもちいよ、みぞれ…すっごく…あんっ、うあぁ…!!」
「あぁ、俺も…すごく…気持ちいいよ…っ」
霙は腰を打ち付けている最中に冴の両手を拘束していた布の結び目を解き、全ての拘束を解いてやる。
両手が自由になったとみるや、冴は霙に抱きついて一層激しく喘ぎ声を響かせた。
四肢を使って霙にしがみつきながら快感をむさぼる冴。
その姿はとんでもなく淫らなものであることは間違いないのに、やはり美しかった。
ーーーーーーーー
「僕の後ろ…血、出ちゃってない…?」
真夜中に差し掛かる頃になってようやく大人しく会話ができるまでになった2人は、寝台の上で身を寄せ合いながら小声で囁くように言葉を交わす。
胸元で心配そうに聞いてくる冴に、霙は「いや、大丈夫」と答えた。
「裂けてないよ。ただ…痛かったよな」
「ん…それはいいんだけど…それよりさ、あんなことして僕の中が弛んじゃったら…どうするの?拡げられたまま戻らなくなっちゃったら、締まらなくなっちゃったら…霙のこと気持ちよくできなくなっちゃうよ」
「…そんなことなかったけど?」
「………」
「その後すぐでもキツすぎて、俺のも千切られそうに…」
「何言ってるの、もう…」
霙はギュッと抱きついて胸に顔を埋めてくる冴の背や腰を優し擦りながら「意地悪が過ぎたな」と詫びの言葉を口にする。
「苦しい思いをさせて、悪かった」
「ほんとに…前も後ろも、いっぱいいじめられた」
「うん…そうだな」
「いっぱいいじめられて苦しかった、けど…好き」
「好き?」
「うん…なんか…ちょっと、こういうの…いいかも…なんて」
足を動かし、太ももを擦り寄せながら上目遣いになって笑みを見せる冴。
だが霙は「もう今夜みたいなことは2度と無しだ」とはっきりと言って聞かせる。
「いくらなんでもやりすぎただろ。…なぁ冴、今夜約束したことはきちんと守ってくれよ」
「ん…」
「ちゃんと約束したからな」
素肌の擦れ合う心地良い音が響く中、冴は霙に「約束する」と言って伸び上がり、誓いの口づけとばかりに唇を重ね合わせた。
それからしばらくそうして唇を食み合うと、冴はうっとりとしたような瞳を霙に向けて囁く。
「今夜はもう…しないの?」
「あぁ」
「嘘…2回じゃおさまんないくせに…」
「充分だよ、冴」
「ふふっ…」
下の方に手を伸ばそうとする冴を霙は「いいから」と制す。
「こうして2人で眠るのが…良いんだろ?」
「ん…でも足りないでしょ…」
「…いいや、射精せなくなるまでしないと満足しないってわけじゃない。1日に1度でも冴と愛し合えたら、俺はもうそれで充分だから」
霙はそうして冴の髪と頬とを優しく手のひらで撫でると「愛してるよ、冴」とまっすぐに言った。
その甘さは冴の心を溶かすのに充分すぎる。
「僕も…僕もすっごく、すっごく愛してるよ、霙」
裸のまま、足先までをも絡めて抱きしめ合う2人。
その寝台は目も当てられないほど乱れきっているが、なんとも言えない幸福感に満ちている。
互いの身体を隅々まで少しの隙間もなく くっつけながら、目を合わせ、口づけては微笑むというこの時間のなんと尊いことか。
「冴、湯で体を流してから眠ろうか。いくらなんでもこのままじゃ…寝具も寝間着も替えないと」
「ん…でも、もうちょっとだけこのまま…」
起き上がろうとしたところを冴に全身を使って引き留められた霙は「…分かったよ、そうしようか」と小さく困ったような笑みを浮かべ、再び寝台に横たわった。
嵐がおさまってから外に出てみると、畑の方の被害は最小限にとどまってはいたものの、激しい雨風と雷によって近くの古びた作業小屋が崩れたり、大木が幹から折れたり、枝葉が辺りに散乱したりとそれなりに大きな被害があちこちに出ていた。
霙と冴はその辺りでは特に若く貴重な労働力ということでその片付けを連日 率先して行い、しばらくの間 筋肉痛になったお互いの疲れを癒やしながら寄り添って眠るだけの日々を送った。
だが、そんな日々でさえも冴にとってはとても楽しいものだった。
なにより懸命に片付けをする冴の姿は近所(といっても隣家とはそれなりの距離があるが)の人々を老若男女問わず ほわほわとした気分にさせるものであり、「本当に働き者だな」「今日の炊き出しはこういうものなんだけど、こういう味は好き?」などといつも会話の中心に立たされていたのだ。
元々冴は姉やその友達の賑やかな輪に入って同じように話をすることも多く、それでいて男友達とも会話を合わせるのが得意な性格をしているため、その人気のあり様は凄まじかった。
ただ ちやほや されているのとは違い、純粋にその人柄で人々を惹き寄せる冴。
その気さくさは近所の人達や作業小屋の修理などに来た工芸地域の人達の心をすっかり捉え、一瞬にして友人にしてしまったほどだ。
沢山の人と賑やかに過ごした数日は忙しく大変ではあったが、冴をとても楽しませた。
そしてその忙しかった日々が過ぎ、片付けも一段落したある日。
冴と霙のもとにはようやく余裕のある夜が戻ってきていた。
ーーーーーーーーー
静かで落ち着いた夜。
その穏やかな雰囲気が嬉しいらしい冴は、湯浴み上がりのまだぬくぬくとした体を寝台の上に横たえ、満足そうな笑みを浮かべていた。
温かな体をひんやりとした敷き具で冷やし、そこがふんわりと温かくなったらまた冷えたところへ転がって移る。
そうしてゴロゴロと寝台の上を端から端まで転がる冴に、霙は「何してるんだ」と呆れたように言って乾いた浴布を手に近づいてきた。
「髪がまだ濡れてるのに…」
「ううん、もうほとんど乾いてるよ」
「ほら、『ほとんど』だろ。ちゃんと乾かさないとだめだ、風邪をひくから」
「えぇ?これくらいじゃ風邪なんかひかないよ」
「だめだって」
湿り気を帯びた髪を乾かさせようと浴布を手渡してくる霙に、冴は「じゃあ霙がやってよ」と起き上がって髪を差し出す。
「はい霙。乾かして」
「…なんで俺が」
「いいでしょ?ほら、やってよ やってよ」
ニコニコと上目遣いで見つめられた霙は結局 仕方がないというように冴の髪を浴布で丁寧に乾かし始めた。
大人しく髪を乾かされている冴はいつも纏っている大人びた雰囲気が失せ、なんだか幼い子供のようだ。
霙はふと(子供の頃の冴はこんな感じだったのだろうか)と思いつつ髪を拭ってやった。
「…よし、乾いたよ」
「乾いた?」
「あぁ」
「もういい?」
「いいよ」
髪を乾かし終えて浴布を軽く畳もうとすると、冴は「ありがと」と言いながら霙に飛びつき、そのまま寝台へと倒れ込んだ。
突然姿勢を崩されたことで驚いた霙は「あ、危ないだろ!」と叱りつけたが、それ以上はもうなにも言うことができない。
なぜなら冴が「んー、霙~」と嬉しそうな声を上げて自らの胸に顔を埋めていたからだ。
鼻先を擦り寄せた後に今度は頬をぴったりとくっつけてくる冴。
霙はこの数日の間、冴がどれだけ大変な思いをしつつ作業にあたっていたかを間近で見てきた。
慣れないことばかりの中、1人ひっそりと疲れ切っていたこともよく知っている。
そのため、こうした極端な甘え方をしてくる冴のこともじっと受け止めてやろうと思ったのだ。
「霙~、これ、すごくホッとする」
「…それは良かったな、冴」
「ん~…」
胸元でひとしきり霙の体温を感じた冴は顔をあげて唇を軽く突き出し、口づけをせがんでくる。
霙がそれに応じてやると、冴は一層美しい笑顔を見せながら伸び上がり、霙の腕を枕にして寄り添ってきた。
霙の手を取り、指を絡めるようにして手を握ると、その感触を確かめたりするように何度もぎゅっ、ぎゅっ、と握り直しては「霙の手って、おっきいよね」とくすくす笑う冴。
「ねぇねぇ、小屋の片付けをしてる時にさ、工芸地域から来た職人さんに『1人で3人分の仕事をしてる』『頼りになる』って言われてたでしょ?それを聞いて…なんだか僕もすごく嬉しかった。霙が褒められてるとね、僕も嬉しくなるんだよ。『こんな風に頼りにされてる人が、僕のことを好きでいてくれてるんだ』って思うから」
屈託なく笑う冴は繋いだ霙の手にそっと軽く口づけて「働き者の手~」と嬉しそうに目を細める。
すると霙は繋いだままの手の親指と人差し指で冴の頬をそっとつまみ、「お前こそ」と言い返した。
「やっぱり、どこでも人気者なんだな」
その言葉に「ん?もしかして、妬いた?」と目を輝かせる冴。
霙が「そうじゃないけど」と言うと冴は「そうじゃない『けど』~?」とさらに顔を近づけてくる。
明らかにはしゃいでいる冴のその姿に、霙は心をほぐされながら言った。
「…沢山の人に囲まれながらよく笑う姿は、とても綺麗だった」
少し照れたような様子の霙から聞かされた素直なその言葉に冴は目を丸くして驚いたが、これはたしかに霙の本心だ。
いつも穏やかな笑みを浮かべ、話す時は表情豊かに、そして時にはおどけてみせて周りの雰囲気を明るくしてしまう冴の姿のなんと魅力的なことか。
霙はそうした人の輪には自ら積極的に入っていこうとはしない性格のため、少し離れたところから静かにその様子を見守っていたのだが、心の中では先ほどの冴が言ったように(あの人が、あんなにも美しい人が自らのそばにいてくれているとは)と温かな気持ちになっていた。
「冴には…人を惹きつける才能がある」
「……」
「とても素晴らしくて、素敵な才能だ」
ゆったりと甘く囁かれた冴が「なに…いきなり……」と恥ずかしそうに俯くと、霙はそんな冴の顎に手を添えて上向かせ、そっと、労るような優しさで唇を食んだ。
じっくりと時間をかけて互いの口内のすべてをも味わい尽くした後、冴は「霙だって…優しさの塊じゃん」と静かに笑う。
「自分だって疲れてるのに…寝る前、僕の筋肉痛が和らぐようにって足とかを揉んでくれたりした」
「それは…まぁ」
「ふふっ、僕は霙が僕のことを気遣ってくれたっていうのがすごく嬉しくて、それだけで筋肉痛なんかどうってことないなって思ってたんだけど…でも次の日には本当に体が軽くなってた。不思議と…本当に、なんともなくなってたんだよ。…ありがとう、霙」
しっかりと目を合わせながら微笑む冴に引き寄せられ、霙は髪を撫でながら「お疲れ」と労う。
「随分と忙しかったな」
「うん…霙もお疲れ様」
「あぁ」
しばらく言葉もないままにじっと見つめ合った後。
冴は髪を撫でていた霙の手を止めさせると、その指先を舌でチロリと舐めてから咥えて吸い付く。
それが意味するところは明らかだ。
「…いいのか?疲れてるんだろ」
片眉を上げた霙に冴は言う。
「やっとなのに…しないなんて、嘘でしょ?」
ーーーーーーーー
「んっ…んん……」
静けさの中に木々のざわめきが混ざる夜。
冴と霙は寝台の上で悩ましげな表情を浮かべながら、どちらも舌が絡まってほどけないというような激しい口づけを交わしていた。
体のあちこちを撫で回しながら夢中になって口づけているため、すでに唇はジンジンとし始めている。
ようやく少し顔が離れたところで、冴が「霙…もう、シよ…?」と上気した声で囁くと、頷いて応えた霙はどこからか帯状の布を取り出し、冴の両手首をまとめると、固い結び目を作ってしまった。
少しの抵抗もみせず大人しく手首を拘束された冴は「へぇ…?」とやけにニコニコとする。
「もしかして…僕に『いたずら』、してくれるの~?」
「…こういうのがしたかったんだろ」
「ふふっ…したかったのは霙の方でしょ」
冴は拘束された手首を振ってほどけないことを確認させると、「これから…何されちゃうのかな、僕」といたずらっぽく言った。
「縛りつけて、動けなくさせて…前に僕にされたことの仕返しでもする?」
「…さぁな」
「ふふふっ…なにを企んでるの?」
からかおうとするのを止めない冴にやれやれと首を振った霙は、冴の両手首を頭上に上げさせると、拘束している布の長く余った端を寝台の柱に括りつけた。
後ろ手に縛られていた霙とは異なり、冴は寝台に横たわったままいくらか動ける余地がある。
それでもまったく抵抗できない状態の冴は右横から抱きしめてくる霙がわざと脇腹の敏感な辺りに鼻先を押しつけてくることに耐えきれず、くすぐったさのあまりわずかに身を捩らせた。
「く、くすぐったいよ、霙…」
「だめ、逃げないで」
「でも…そう言われても、くすぐったいものはくすぐったいんだ…」
なおも逃げようとする冴。
すると霙は冴の左胸を衣の上から手で覆い、その下にある敏感な部分にはっきりとした『形』を浮き上がらせるために刺激し始めた。
ゆっくりと、円を描くように、手のひらで。
そのじんわりとした刺激はくすぐったさと共に冴の気持ちを昂ぶらせ「霙…」という熱っぽい声を引き出す。
「霙、もうそれ…やめて……」
「やめる?…勃ってるのに?」
「だってそれは…こんなことされたら…んんっ…」
さらに身を捩ったことで冴の上衣が乱れ、ちょうど腹のあたりが露わになる。
その少しだけ覗く素肌があまりにも強烈に欲情を煽ったため、霙はそこから手を差し込むと、直接冴の胸を揉みしだき始めた。
冴の乳首はすでにぷっくりと立ちあがり、下の肉棒と同じようにその存在感を確かなものにしている。
片胸を激しく、容赦なく愛撫される冴は腰を浮かせるなどしながら逃れることのできないじわじわとした快楽に追い詰められ、「霙…お願い…」と甘ったるい声で懇願する。
「お願い…脱がしてよ、霙…衣が…邪魔……っ」
「上を?下を?」
「うぅ…どっちも、どっちも…っ」
落ち着きなく腰と足をばたつかせる冴。
霙はその望み通りに衣の紐を解くと、下衣を素早くつま先から抜き去り、完全には脱がすことのできない上衣の前を開け放った。
興奮でほのかに紅く色づいた胸やスラリとした腹、ヒクヒクと動く肉棒が霙の眼前に晒しだされる。
冴の体はどこもかしこも『触ってくれ』といわんばかりに霙を誘っていて、艶めかしいことこの上ない。
だが霙はそのどこにも触れようとはせず、寝台の端にある包みから何かを取り出すと「なぁ、1つ約束してくれ」と手に持っているものを冴にかざして見せた。
「この先は冴が約束してからじゃないと進まないからな」
「ん……ふふふっ、なんだ…霙もそれが気になってたんじゃん…?」
「…いいから、聞いて」
霙が手にしていたのは例の『金属の棒』だ。
それを見せながら霙は言う。
「今日限り、2度とこれを使わないと俺に約束するんだ」
その言葉は力強い。
だが冴は「今日限り…2度と…?」と怪訝に言って唇を尖らせる。
「その約束…やだなぁ…」
「冴」
「だってさ…それ、挿れるとすっごく気持ちいいんだよ……」
「だめだ、冴。約束して」
「ん……」
渋る冴に霙は「約束しないと今日はこのままだ」と耳元に囁く。
「どれだけ触ってくれって言っても、このままにするからな」
「ん…でも、どうせ霙の方が我慢できなくなっちゃうでしょ」
「どうかな」
冴は本当に約束するつもりがないらしい。
霙は拘束された冴の裸体のあちこちを吐息がかかるほど近くで見つめながらも、決して触れずにじっくりと焦らす。
時々冴は身をヒクつかせて霙の唇に触れようとするが、その度に霙は飛び退いて触れるのを避けた。
やがてその繰り返しに堪えられなくなった冴は「霙…いじわる」と泣きだしそうになりながら訴える。
「シてよ、霙…もう触ってほし……」
「なら約束しないと」
「うぅ…っ」
「約束したら…最後にこれを使ってやるから」
「ほん、と…?」
潤んだ瞳の冴。
霙は「本当だ」と目で頷きながら人差し指で冴の肉棒を根本から先端までなぞりあげる。
「これを最後にするんだ、冴」
「ん…うん…」
「約束できるな?」
「うん…」
「…破るなよ、この約束を」
焦れったく念を捺す霙に、冴は足を曲げ伸ばしながら「約束…約束する、約束するから…!」と大きな声をあげた。
「触って…触っていっぱい気持ちく…気持ちよくさせて、霙っ…」
冴から『その1言』を引き出した霙はすぐさま冴に覆いかぶさると、濃厚な口づけをしつつ手探りで包みの中の小瓶を取り出し、清潔な手巾にその中身を染み込ませる。
瓶の中身は傷口の消毒などに使われる強力な蒸留酒だ。
蒸留酒が染み付いた手巾で金属の棒を隅々まで拭った霙はそれを乾かす間に、潤滑剤となる油を冴の下腹部や鈴口にたっぷりと塗りつける。
冴が「っ……準備、してたんだ?」と目を細めると、油の入った小瓶に栓をしながら「当たり前だろ」と少々ぶっきらぼうに言う霙。
実は霙はすでに今夜のこの状況を予測していて、冴が湯浴みをしている間に金属の棒を煮沸し、石の棒の方の手入れまで済ませていたのだ。
これが以前好き勝手にされたことの仕返しなのか、それとも連日疲れ果てるまで率先して作業をこなしていた冴への褒美なのか…それは定かではない。
ただ霙には今夜の自分のするべきことがはっきりとしていた。
軽く冴の肉棒を扱いてしっかりと固く勃たせた霙は、準備の整った金属の棒の先端を鈴口にあてがい、つぷっとそこに突き立てる。
「う…んんっ……」
冴の様子を窺いながら金属の棒をさらに中へと進めていく霙。
至近距離で見せつけられた時のあの光景を思い出しつつ金属の棒から手を離すと、棒は自重でするすると冴の中へと入り込んでいき、あっという間に全体のうちの3分の2ほどが眼前から姿を消した。
「い…っ、やぁ……っ!」
「痛むか?」
「う…ううん、そ、そうじゃ……そうじゃなく、て………っ」
冴はキツく眉根を寄せているものの、止めてほしがっているようにはみえない。
霙は様子を見つつ、握っている冴の肉棒の角度を変えさせた。
ゆっくりと、倒したり起こしたり。
すると金属の棒がかすかに動き、少し押し込むようにしただけでなんと棒の飾りの部分以外がすんなりと冴の肉棒の中へ消えていってしまった。
すべてを前の方に呑み込んだ冴は腰をガクガクと震わせ、ほとんど声にもならないような声を喉奥から響かせる。
それは霙が棒をわずかに抜き挿しし始めたことでより一層大きくなっていく。
「うっ、ううっ!!」
「痛いか、気持ちいいか?言ってみろよ冴」
「~~~っ!!」
言葉にならない代わりに、霙が「気持ちいいのか?うん?」と問いかけると冴は必死に何度も頷いて応える。
霙は冴を傷つけないように最大限の注意を払いつつ抜き挿しを繰り返し、冴をさらなる快楽の渦に溺れさせていった。
「い…いいっ…きもちい、これ…きもちい…っ」
「イきたいのか、冴」
「んんっ、んうぅっ!!」
冴のすらりとした腕に筋肉の筋が浮き出し、手首を拘束している布がギシギシと音を立てる。
明らかに絶頂が近づいていると悟った霙はそこで一切から手を引き、刺激するのを止めた。
あとほんの少しで絶頂を迎えるところだった冴が苦しさと焦れったさから不満げにすると、霙は石の棒に油をたっぷりと塗りつけて「うつ伏せに」と指示をする。
「うつ伏せになって、こっちに尻を差し出して」
すでに石の棒が用意されているのを見た冴は「ん…後ろも一緒にすんの…?」と熱っぽく言いながらなんとか身を翻してうつ伏せになる。
すると霙は冴の腰を抱きかかえあげてさらに尻を突き出させると、金属の棒が抜け出ないように前を握りながら秘部に石の棒をあてがった。
まだ指を一本も入れていないというのにすっかりやわらかくなっているそこ。
「なんだ…もうほぐれてるのか?」
霙が訊ねると冴は「ははっ…」と小さく笑いを交えて言った。
「洗う時に…もう弄っちゃった。すぐにでも霙にいっぱい…してほしかったから」
その妖艶な声に触発され、霙はすぐさま石の棒を冴の秘部にねじ込み始める。
そのまま突き刺すにはやはり中の抵抗があるため、石の棒を左右にグリグリと回しながら力を込めていく霙。
だがその秘部は今までにも何度もそうして石の棒を咥えてきた上、今夜すでに冴自身によって随分とほぐされていたのだ。
棒の半分ほどまでが呑み込まれたその先は、もはや何の抵抗もなく、なめらかなものだった。
上半身を伏せて尻を突き出した格好の冴は前に金属の棒を、そして後ろには石の棒をしっかりと呑み込んでそれぞれを抜き挿しされている。
押し寄せてくる快楽が一体前と後ろのどちらからのものなのかもはっきりとせず、ただただ喘ぐ冴。
時々棒が同時に挿し込まれると体内の弱い一点が挟み込まれる。
それは息も絶え絶えになるような、苦しいほどの刺激だ。
それになにより前に挿し込まれている棒はまるで射精を制限しているかのように作用している。
今までに感じたことのないその強烈な刺激には冴も耐え切れず、足の先に至るまでビクつかせながら「ぬ…抜いて、抜いて!」と懇願した。
「も…無理っ、これ…これっ、抜いて!射精したいのに、これじゃ…ううっ、抜いてみぞれ!いやぁぁっ!」
「後ろを?前を?それじゃどっちのことか分からないな、冴」
「まえ!まえのこれ…これ、ぬいて!ぬいて、ぬいてぇっ!!!」
「本当に抜いていいのか?冴。これを使うのはこれが最後だって約束しただろ、今抜いたらもう二度と無しなんだぞ」
「うううっ…もう、苦しいか…ら…いいっ!」
「そう言って、また手を出すんじゃないか?うん?俺に隠れて使ったり、隠してあるのをわざわざ探し出して使うくらいなんだから。俺とするよりもずっと気持ちいいから使ってるんだろ?どうせ約束なんて、この場限りしとけばいいって思ってるんだろ」
「ち…違っ…」
「どうだかな」
どれだけ懇願しても手を止めることのない霙。
後ろを石の棒で激しく突かれているために体勢を変えることもできず、両手を拘束されているために霙の腕にすがることもできない。
あまりの苦しさに、冴は「お願いだから、お願いだからぁっ!!」とほとんど叫ぶようにして霙に訴えた。
「これ、もう使わないから!!!お願いだから抜いて!抜いて射精させて!お願い、お願いぃっ!!いやぁぁあっ!」
それからすぐ、金属の棒がゆっくりと引き抜かれると同時に強い射精感がもたらされ、一際大きく喘いだ冴。
ほどなくして後ろを石の棒で突かれながら勢いよく射精した冴は膝の力を失って寝台に突っ伏し、荒い呼吸を整えるかのようにぐったりと目を閉じた。
体内の一点はジンジンと燃えるように熱く、その位置を知らしめてきている。
霙は石の棒を奥深くまで挿し込んだまま冴の隣に横たわり、その汗ばんだ髪を横に撫でつけた。
薄目を開けて霙を見つめた冴は はぁはぁ という荒い呼吸を繰り返しながら呟く。
「ぐちゃぐちゃで、おかしくて…辛くて…壊れちゃうかと…思った…」
「…痛い?」
「ううん…だけど、今のはもう……耐えられない…2度とできそうにない…」
「2度と使わない約束だろ」
「うん…約束した…そうする、そうするよ、霙……」
冴がか細い声で「抱きしめて…」とねだるので、霙は真横からしっかりと肌と肌をくっつけるようにして抱きしめてやった。
その温もりに安心したらしい冴は霙と口づけを交わすと、柔らかく微笑んでから石の棒が挿入ったままの尻をあげて催促を始める。
「霙…僕、ちゃんと霙にシてほしい…」
「疲れたんじゃないのか?」
「んん……だって前の方じゃなくて…霙のおっきくて熱いやつで…気持ちよくなりたいんだもん…」
妖艶な笑みに焚きつけられた霙は再び冴の腰を高く掲げさせると、石の棒をさらに深くまで挿し込んだり、縁が拡がるように大きく円を描いて動かしだした。
「そんなのしなくても…もうほぐれてるのに」と笑う冴に霙は「いや、まだ足りない」と念入りにほぐしていく。
孔を限界まで拡げるようにされているせいでグプグプという音までしだしている秘部。
その感覚と音から体の中まで覗かれていると分かる冴は恥ずかしさと高揚感に激しく興奮し、さらに自ら尻を突き出した。
こんなにも大胆なことをするようになるとは、冴自身も思ってもみなかったことだ。
こうして秘部を自ら差し出し、さらにその奥の、体の中まで晒けだしてしまうとは…石の棒を持っているところを見られたのだけでも信じられないほど羞恥していた頃からはまったく考えられない。
だが冴は霙と共に数々の夜を明かしてきたことで徐々に悟ったのだ。
羞恥を感じるのはもちろんだが、だからといって隠したりするのは非常にもったいないことなのだと。
すべてを捧げ、包み隠さず、正直に。
そうして愛し合うことの素晴らしさは何物にも代えがたいものである、と。
「…挿れるぞ」
「ん…きて、霙……」
霙の声掛けに(いよいよ待ち望んでいた瞬間が訪れる)という期待感に胸を高鳴らせる冴。
熱く、硬く、わずかに反っている霙の肉棒は石の棒などとは比べ物にならないほど良いものであり、それが中に挿入ってくるのを想像しただけでも軽く絶頂してしまいそうになるほどだ。
秘部を疼かせながら従順に待つ冴のいじらしさは何とも言えない愛らしさと妖艶さに満ちている。
霙は衣を脱ぎ捨て、冴の真後ろに位置取った。
だが、ふぅっ…と息を吐いて力を抜いていた冴は、そこで想定していたものとはまったく異なる状況が自らの後ろで起こっていることに気づく。
「……っ!?ま、待って、霙、なに…なにしてるの!?」
突然、冴はそれまでの夢見心地から一気に目を覚まさせられて声をあげた。
「う、うそでしょ霙!」
「…そのまま動くなよ、冴」
「いっ…む、無理だよ霙!無理…無理だっ…てば!!」
何とか身を捩って逃れようとする冴を押さえつけるようにして阻みながら、霙はその硬く張り詰めた切っ先を冴の秘部に押し当てる。
なんと霙は石の棒を抜かないまま、自身の肉棒を冴に挿入しようとしていた。
あまりの衝撃に思わず拘束されている腕に力を入れる冴。
「大丈夫…挿入《はい》るよ」
だがその言葉は冴には届いていない。
たしかに石の棒は霙の肉棒よりも細く、その上 冴の秘部は幾度となく霙の肉棒でほぐされてきた豊富な経験の持ち主だ。
しかし、だからといってこんなことに耐えられるとは到底思えない。
実際冴は秘部が強引に、いまだかつてないほどあらゆる方向に押し拡げられていく感覚に目を白黒させながら『これには耐えられない』と感じていた。
「だめ、だめだよっ、裂けちゃうって…!!」
「っ…もう少しだから」
「壊れる…壊れるって、霙…!僕のお尻、壊れちゃうから…っ!!!」
いくら声をあげても霙のゆっくりと肉棒を挿し込む動きは止まらず、冴はあまりにも強い異物感に息を呑む。
秘部のフチはジンジンと熱くなり、本当に裂けてしまっているのではないかとさえ思えるほどだ。
やがて霙の腰がぴったりと冴の尻にくっつき、挿入が済む。
霙の体に押されて寝台の上に突っ伏した冴は、荒い呼吸のまま後ろから体全体でのしかかってくる霙の口づけを頬と首筋とに嫌というほど浴びた。
「冴…分かるか?今お前の中に2本挿入ってる…どっちもちゃんと、全部呑み込んでるぞ」
「…うぅっ…ぅ…」
「うん?すごいな…裂けずに2本も挿入るだなんて」
腹部の圧迫感は尋常ではなく、もはや快感どころの話ではない。
呼吸を保つのに忙しい冴に対して霙はさらに囁く。
「ほら…『もう一人の俺』ともヤリたかったんだろ。これでどうだ?2本挿れられて、満足したか」
その声音はだいぶ暗いもののようで、かすかに怒りさえ思わせてくるものだ。
冴はわずかに顔をあげると、絶え絶えになりながら「おこ…ってるの?」と口にした。
「この前のこと…怒って、るんでしょ…」
すると霙は「さぁ…どうかな」と冴の耳朶に噛り付いて答える。
「俺一人じゃ足りないって言うからな、冴が」
「~っ、怒ってる……っ」
「いや?俺はただ冴の望み通りにしたいだけだ」
冴はもう話しているのも辛くてたまらない状況であり、はぁはぁと息をつきながらなんとか顔を霙の方に向けて「これ…も、もうやめて、お願い…」と訴えかけた。
「お腹とお尻…おかしくなっちゃう…苦しい、苦しいから…もうやめて…霙のじゃなきゃ、意味ない…」
「うん?」
「棒なんかじゃダメ、2人なんかじゃなくていい…霙1人に愛してほしいよ…」
「………」
「霙…霙だけに愛してほしいんだ……もう意地悪は止めて、ちゃんと愛して……霙ので、僕を気持ちよくさせてよ……」
しっとりとした睫毛を震わせる冴のその喉の奥から絞り出すような声に口づけで応えた霙は、身を起こすと自らの肉棒をゆっくりと引き抜く。
冴の秘部を見てみると、霙が強引に肉棒をねじ込ませたために石の棒は霙の手を離れて完全にそのすべてを冴の体内に埋めてしまっていた。
もはや指で掴みだすことができないほど奥に挿入ってしまった石の棒。
霙は「冴、棒を抜かないとだめだ」と冴の尻の肉を両手で左右に大きく開く。
「…棒が中に入り込んでる、腹に力を入れて自分で出して」
「…っう…ううっ…」
「…そうだ、その調子」
霙が片手を腹部に添えると、冴は懸命に腹と尻に力を入れ、中の奥深くに入り込んでしまっていた石の棒を外へと押し出した。
ぬるりとした感覚の後に完全に抜け落ちた石の棒はすぐさま寝台の端に追いやられ、まだ秘部が閉じきっていない冴は仰向けにされるやいなや霙の肉棒をずっぽりと根元まで呑み込まされる。
間髪入れずに始まった激しい抽挿。
冴の体内はつい今さっきまであんなにも手ひどく拡げられていたというのにすでに霙の肉棒に吸いつき、キュウキュウと締め付け、激しくうねっていた。
「冴…中が熱くて……っ、すごいな」
「あぁっ…あっ、きもち…きもちいよ、みぞれ…すっごく…あんっ、うあぁ…!!」
「あぁ、俺も…すごく…気持ちいいよ…っ」
霙は腰を打ち付けている最中に冴の両手を拘束していた布の結び目を解き、全ての拘束を解いてやる。
両手が自由になったとみるや、冴は霙に抱きついて一層激しく喘ぎ声を響かせた。
四肢を使って霙にしがみつきながら快感をむさぼる冴。
その姿はとんでもなく淫らなものであることは間違いないのに、やはり美しかった。
ーーーーーーーー
「僕の後ろ…血、出ちゃってない…?」
真夜中に差し掛かる頃になってようやく大人しく会話ができるまでになった2人は、寝台の上で身を寄せ合いながら小声で囁くように言葉を交わす。
胸元で心配そうに聞いてくる冴に、霙は「いや、大丈夫」と答えた。
「裂けてないよ。ただ…痛かったよな」
「ん…それはいいんだけど…それよりさ、あんなことして僕の中が弛んじゃったら…どうするの?拡げられたまま戻らなくなっちゃったら、締まらなくなっちゃったら…霙のこと気持ちよくできなくなっちゃうよ」
「…そんなことなかったけど?」
「………」
「その後すぐでもキツすぎて、俺のも千切られそうに…」
「何言ってるの、もう…」
霙はギュッと抱きついて胸に顔を埋めてくる冴の背や腰を優し擦りながら「意地悪が過ぎたな」と詫びの言葉を口にする。
「苦しい思いをさせて、悪かった」
「ほんとに…前も後ろも、いっぱいいじめられた」
「うん…そうだな」
「いっぱいいじめられて苦しかった、けど…好き」
「好き?」
「うん…なんか…ちょっと、こういうの…いいかも…なんて」
足を動かし、太ももを擦り寄せながら上目遣いになって笑みを見せる冴。
だが霙は「もう今夜みたいなことは2度と無しだ」とはっきりと言って聞かせる。
「いくらなんでもやりすぎただろ。…なぁ冴、今夜約束したことはきちんと守ってくれよ」
「ん…」
「ちゃんと約束したからな」
素肌の擦れ合う心地良い音が響く中、冴は霙に「約束する」と言って伸び上がり、誓いの口づけとばかりに唇を重ね合わせた。
それからしばらくそうして唇を食み合うと、冴はうっとりとしたような瞳を霙に向けて囁く。
「今夜はもう…しないの?」
「あぁ」
「嘘…2回じゃおさまんないくせに…」
「充分だよ、冴」
「ふふっ…」
下の方に手を伸ばそうとする冴を霙は「いいから」と制す。
「こうして2人で眠るのが…良いんだろ?」
「ん…でも足りないでしょ…」
「…いいや、射精せなくなるまでしないと満足しないってわけじゃない。1日に1度でも冴と愛し合えたら、俺はもうそれで充分だから」
霙はそうして冴の髪と頬とを優しく手のひらで撫でると「愛してるよ、冴」とまっすぐに言った。
その甘さは冴の心を溶かすのに充分すぎる。
「僕も…僕もすっごく、すっごく愛してるよ、霙」
裸のまま、足先までをも絡めて抱きしめ合う2人。
その寝台は目も当てられないほど乱れきっているが、なんとも言えない幸福感に満ちている。
互いの身体を隅々まで少しの隙間もなく くっつけながら、目を合わせ、口づけては微笑むというこの時間のなんと尊いことか。
「冴、湯で体を流してから眠ろうか。いくらなんでもこのままじゃ…寝具も寝間着も替えないと」
「ん…でも、もうちょっとだけこのまま…」
起き上がろうとしたところを冴に全身を使って引き留められた霙は「…分かったよ、そうしようか」と小さく困ったような笑みを浮かべ、再び寝台に横たわった。
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英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き
メグエム
BL
伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
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