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第1章
2「友人」
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初めて【香り】を放ったその翌日。
夾は早速 酪農地域のかかりつけ医におおまかな事情を話し、そしてたしかに【香り】を放てるようになったらしいと診断された。
男性オメガでありながら一度も【香り】を放ったことがなかった夾はその妙な体質というのが長年の悩みの種であったわけだが、しかしなんとも不思議なことに、たった1人のアルファとの出会いによってそれが突然改善の兆しを見せたのだ。
どうやらその引き金となったのは、あの『セン』と呼ばれていた赤銅色の髪の男を誤解によって激怒させてしまったことのようだ。
通常、【香り】というのは喜びや愛おしさといった感情を元に発散されるものなのだが、激怒したアルファというのはその香りを『辛さ』が感じるようなものに変化させることが知られている。
それは滅多に放たれることのない珍しいものだ。
しかし、夾はまさにその激怒したアルファが放つ【香り】を至近距離で直接香ったのである。
これまでの人生で顔を合わせたことのあるアルファ達とは言わずもがなそんな状況になったことはなく、さらに言えば普通の【香り】ですらもそのようにはっきりと香ったことがなかった夾にとっては、それは体に変化を起こすほど大きな衝撃を与える出来事だったのだろう。
事の詳細を医師に話すのは少々気が引けた夾は『ある人が去った後にその【香り】を香ったところ、自分からオメガの【香り】がし始めた』というような主旨の話をしたのだが、医師は「その体験がとても大きく作用したのでしょうね」と分析した。
「それが大きなきっかけとなったのはほぼほぼ間違いないでしょう。でも初めてそうしてアルファの【香り】を感じたにしても…これまで一切発現する気配がなかったオメガ性を目覚めさせたわけですから、もしかするとその【香り】の持ち主であるアルファの方と君はとても相性がいい、ということなのかもしれません」
「相性がいい?」
「そうです。本来【香り】は『番を探すための手段』なんですが、それと同時に『番を惹きつけるためのもの』でもあるわけです。アルファやオメガは【香り】を利用して将来を共にする番を探し、その相手との仲を深めることで心身の結びつきを強めようとしているんです。今まで君のオメガ性は発現していませんでしたけど、それが『相性のいい人が見つからず、誰かを惹きつけようとする必要がなかったから』なんだとしたら…オメガ性が発現したのは『惹きつけたい相手が見つかったから』ともとれるのではないでしょうか?」
医師は「それも推測にすぎませんけどね」と肩をすくめながらも「とにかく無事にオメガ性が発現して良かったです」と微笑む。
同年代でもあるその医師は夾のことを以前からとても気にかけていたので、喜びもひとしおらしい。
「昨夜君が飲んだ緊急用の抑制薬はまだオメガ性が発現したばかりで安定していない体には強く効き過ぎているようですから、また後日 抑制薬の効果が切れた頃に改めて確認してみて、それから 君個人に適した抑制薬の処方を作っていきましょう。念のため周りには気をつけてくださいね、いくら力があっても万が一のことが起きては大変ですから…」
医師の言う『万が一のこと』というのを聞いて夾が真っ先に思い浮かべたのは、あの赤銅色の髪の男のことだ。
夾はあの一件以降も食堂【柳宿の器】に通って夕食を食べている。
もちろんあんなことがあった以上 赤銅色の髪の男と顔を合わせるのは忍びなく、彼は【柳宿の器】に通うのも止めたほうがいいだろうと思っていたのだが、しかしあの夜以降ぱたりとその姿が隣の酒場の方からも消えていたので食堂の方には通い続けていたのだ。
それとなく【柳宿の器】の主である青年に訊ねてみたところ「あぁ、彼ならしばらく裏での仕事に専念することになってるんですよ」という答えが返ってきた。
「ここはゆくゆくは今 仕事の手伝いをしているあの若い兄弟が主になることになってるんですけど、そろそろ仕事を一通りできるようになってきたみたいなので こっちに出てする仕事も任せていこうということになりまして。もう結構前からそういう話にはなってたんですよ、まず何事もやってみないことには身につきませんからね…といってもまだ完全には任せられないので僕は変わらず表に出てきて仕事しますけど。あっ、もしかして うちの弟に何かご用でも?今も裏の調理場で料理してますから 呼んできましょうか」
話の流れから【柳宿の器】の主である青年にそう提案された夾は、この青年と『セン』が兄弟なのだと理解しつつ、慌てて「いえ!そうではなくただ最近見かけないのでどうしたのかと…それだけなので大丈夫です」と断り、とにかく顔を合わせる心配はなさそうだと再確認まで済ませていた。
ーーーーーー
それから数日後のこと。
ちょうど仕事が休みの日にあの夜服用した抑制薬の効果が完全に切れた夾はあらためて医師の元へと向かい、そして【香り】の調節を自ら行えるかなどの確認を行なった。
まずは弱く【香り】を放ってみて、それをきちんと止めることが出来るかを試すのだ。
彼は【香り】の調節をするのはまったく初めてのことだったのだが、しかしそのやり方などについては学び舎に通っていた頃にきちんと予習をつんでいたこともあり、初めてでも比較的きちんと【香り】の調節をすることが出来る。
医師も「…うん、きちんと発散を止められましたね」と確認を済ませて頷いた。
「初めてでも立派に出来ていますし、普段から抑制薬を飲む必要はないと思いますよ。でも念のためにしばらくはごく弱い効き目のものをお守りとして処方しておきましょうか?」
「そう…ですね」
「分かりました、ではすぐに用意します」
医師は処方を書き留めるとすぐそばにある薬草棚の引き出しからいくつかの薬草を取り出し始める。
それらはどれも【香り】の抑制に効果があるものらしいが、素人目には何がなんだかさっぱり分からない。
それにたとえ薬草に詳しい人物でもその薬棚から目的の薬草を取り出すのは不可能だろう。棚の引き出しには一切表示の類がないからだ。
きっとその棚を管理する医師にしか全貌が分からないようになっているに違いない。
夾はそうして迷いなく一つ一つ取り出される薬草達を眺めていたのだが…医師は「それにしても、やはり君はその特定の人にしか【香り】を放とうとしていないようですね」と手を動かしながら話しかけてきた。
「君が飲んだあの抑制薬の効果は完全に切れているはずです。でも今【香り】を放とうとしたらあまり上手くいきませんでしたよね?むしろ止める時の方がずっと簡単なように見受けられました」
「たしかにそう、ですね」
「君が思い浮かべた人というのは君が思っている以上に特別な人なのかもしれません」
そう。医師の言う通り、実は夾は先ほど【香り】を止められるかを試した際、初めに【香り】を放たなければならないのになかなかそれができずにいたのだった。
それこそ通常は何か胸が高鳴ることなどを思い浮かべたりすれば自然と発散されるものなのだが…むしろ夾にはどうすれば【香り】が出るのかも分からず戸惑ってばかりで、見兼ねた医師に『この間【香り】を放った時のことを考えてみてはいかがですか?』と助言されたことで ようやくふんわりと甘い花のような【香り】を放つことができたのだ。
もちろん、彼が思い浮かべたのは赤銅色の髪や青みがかった灰色の瞳、そしてあの針葉樹林のような【香り】である。
医師はそれこそが鍵だと思っているらしい。
「番のいる方であれば【香り】はその相手以外には作用しないように変化しているはずなので、きっと君が逢った人はまだ誰とも番っていない人なのだと思います。君は今後その人とどうなりたいのかをよく考えてみてもいいかもしれませんね、まずは話をしてみる…とか」
「は、話…を……」
「相手の方にも関係することですからなんとも言えませんが、しかし【香り】によって本能的に惹き寄せられた相手というのはなんにおいても相性が良いものなんですよ。そんな相手に出逢えること自体がとても貴重なので、可能なのであれば少しだけでもその方と話をしてみたらいいと思います。…あっ、でも【香り】の発散には気をつけてくださいね、やはりアルファの方と一緒にいるとどうしても【香り】が…」
医師のその話を聞きながら、夾は(そうは言っても…あの人から見た俺は印象が悪すぎるのに)と複雑な思いを抱く。
医師には告げていないが、なにしろ夾は誤解によるものだとはいえ『セン』から辛い【香り】を引き出すほどにまで激怒させてしまっていたのだ。
いくら相性が良い(かもしれない)相手であったとしても、今更どうやって話しかけたりすればいいというのだろうか。
話しかけてみる、などということは…到底彼にはできそうもない。
(たしかにあの人はすごく綺麗な人で格好良くて、そして素敵だった。【香り】もすごく良いと思ったわけだし…先生の言う通りきちんと話をして互いについてを知ることができたら良いかもしれない。でもそんな人だからこそ初めの印象はよくしなきゃいけないんだよな。俺はせっかくの機会をふいにしたんだ、それはもう取り返しがつかないことで…)
本来 夾は過ぎたことはあまり気にしないという性格をしているのだが、しかし【香り】の相性のことが絡んでいると思うとどうしても気にせずにはいられず 悶々としてしまう。
そうしたことを考えながら気付かれないように小さくため息をついた夾。
医師はほとんどの材料を集め終えたようだが、そのうちの1種類の必要量が不足していたらしく「すみません、ちょっと隣の倉庫から取ってくるので待っててくださいね」と声をかけて通用口から出て行った。
静かな診療所で1人になった夾はなんとなく自身のオメガ性について考えを巡らせ始め、それこそ『番となる相手とはどのように交流するべきなのか』などといったことについてはなにも知らずにいたのだと痛感する。
彼は以前工芸地域にいた際に当時のかかりつけ医から『他の男性オメガに会ってみてはどうか』と勧められたこともあったのだが、すでにその数人の男性オメガ達には番がいるとも聞いていたので、『普通に【香り】を放てるような人達に会ったところで何かの解決になるわけでもあるまいし』『その人達と自分の違いを思い知って、かえって惨めな思いをするだけだろう』と断っていたのだ。
当時は本当にそう思っていたのである。
しかしやはり今になってみると同じ男性オメガから色々な話を訊いてみても良かったのではないかとも思うのだ。
今からでもかかりつけ医にそう相談してみようかと考えながら、待っている間に医学書などが並んだ棚を何気なく眺めていた夾。
するとその時、診療所の戸が叩かれて1人の男が「すみません、こんにちは~…」と外から顔をのぞかせてきた。
「ちょっと切り傷用の軟膏がほしくて…ってあれ、先生って今いらっしゃらないんですか?」
診療所内に夾しかいないらしいと見て訊ねるその男。
夾はその男に目を丸くした。
その人はあの夜酔っていた小柄な男だったのだ。しかもなんとその首には…『うなじあて』が着けられている。
『うなじあて』とはオメガがアルファと 番になる際、アルファにつけられたうなじにある咬み痕を隠すため 身に着けるものだ。
つまりそれを着けているということは必然的に彼はオメガだということになる。
まさか、と思いながら夾は「先生は…今、奥の方に行っています、けど……」と胸をドキドキさせながら言った。
「あ、あの…失礼ですがあなたは…そのうなじあてって…」
「うん?あぁ、そうそう、僕は男性オメガなんです。珍しいでしょ?あははっ」
「男性オメガ…本当に……」
あっけらかんとして返ってきたその答えに夾はさらに目を丸くしてしまう。
するとその様子がどうもただ珍しがっているというわけではないらしいと気づいたのか、その小柄な男も「えっと…もしかしてなんだけど、君も?」と訊ねてきた。
夾ははっきりと頷いて応えた。
ーーーーー
「いや~今日がいい天気でよかったよ!ほら見て、鴨達も元気一杯に遊びまわってる」
「みんな機嫌がいいと尾っぽをプルプル震わせるんだけど、もう…それがものすんごく可愛いんだよね」
酪農地域内の鴨達が飼育されている区画。
彼は診療所で出会った小柄な男に誘われて散歩がてらここを訪れていた。
自らを『琥珀』だと名乗り、そしてあらためて男性オメガであることも明かしてくれたその小柄な男は、倉庫から診療所へと戻ってきた医師に『コウちゃんの薬と一緒に僕の切り傷用の軟膏も作っておいてよ、先生』と依頼すると、夾に 薬が出来上がるまでの時間を可愛い鴨達でも眺めて過ごさないか と誘ってくれたのだ。
この区画にいる鴨達はみな水田などで虫取り要員として活躍する鴨であり、ここの管理と飼育を行うのが琥珀の仕事なのだという。
鴨達はとても人懐っこくて人の姿を見るとワラワラと集まってくるが、夾は初めて会った自分以外の男性オメガである琥珀に対して緊張気味であり、それどころではなかった。
「あの、琥珀さん」
「うん?」
「その…すみませんでした、本当に男性オメガが自分以外にもいるだなんて思ってもなくて…それもこんな近くに」
夾はあの夜、琥珀がまさか同じ男性オメガであるとは思わずに『番だ』と言っていたのも戯言だろうと思ってしまっていたことを心の中で心苦しく感じながら詫びる。
すると琥珀は「いいよ、僕は全然気にしてないもん。だって珍しいことには変わりないからね」と朗らかに言った。
「僕もね、実は他の男性オメガに会うのって君が初めてなんだ。昔近所にオメガのおじいさんがいたらしいんだけど…僕自身は会った記憶がないし。ふふっ、自分が男のオメガだからたしかに男性オメガが存在するってのは分かるけど、そうじゃなかったら本当にいるのか疑わしくなっちゃうよね、あまりにも少なくて」
クスクスと笑う琥珀は「でもまさか診療所でこんな出会いがあるなんて」と鴨がのんびり昼寝などをして過ごしている放牧場の中へ夾を招き、端の方に設けられている木製の長いすへと腰掛ける。
「コウちゃんって、いつも【柳宿の器】でご飯を食べてるよね?たまに見かけてたんだけどその度に綺麗な黒髪をしてる人だなって思ってたんだ」
「そうだったんですか」
「こんなことならもっと早く話しかけてたら良かったなぁ」
この琥珀という男性オメガはとても気さくな人で、それから夾が気になっていることを何でも臆せず答えてくれた。
童顔で夾と同い年、もしくは年下にも見えるくらいなのに歳は夾のちょうど10歳上だということ。
彼の番はあの夜も隣にいた男、『黒耀』であること。
彼らの間には8歳のアルファの男の子と7歳のオメガの女の子がいること。
子供達が通っている学び舎が長期休み中なので、ついこの間まで黒耀の実家の農作業を家族4人泊まり込みで手伝いに行っていたのだが、それが一段落したので自分と黒耀だけ一足先に帰ってきたのだということ。
そして黒耀との出逢いには『仔犬と鴨』が関係していたこと…などだ。
「僕達の出逢いのきっかけは仔犬と鴨だったんだ。ふふっ…懐かしいなぁ、上の子が生まれる3年くらい前のことだからもう11年前になるかな?」
「11年前…ということは今の俺の歳の頃にはもうお2人は出逢っていたんですね」
「うん。僕が21歳になる年で、5歳年下の黒耀は16歳だったかな。黒耀は猟犬と一緒に畑に近づいてくる野生動物を追い払う仕事に憧れて 生まれ育った農業地域からこの酪農地域に引っ越してきてたんだ。猟犬って特に賢いからさ、一緒に仕事をするにはとにかく信頼関係を築かなきゃいけないんだけどそれがものすごく大変で…初めはひたすら犬達の世話をして接し方とかを学ぶんだよ。でも性格も気難しいのが多いからってそこで挫折する人も多いみたい。そんな中でも黒耀は根気強く世話をしながら着々と犬達を従えるようになっていっててね、鴨の区画で働いてた僕にもその評判が聞こえてくるくらいだったんだ。時々僕も水汲み場とかで黒耀の姿を見かけたりしてたんだけど『16歳にしてはすごくしっかりしてるかっこいい男の子だな…』って感じだったなぁ」
琥珀は足元に寄って来た1羽の鴨を抱き上げると、布切れを敷いた膝の上に乗せてそっと撫でつつ話し続ける。
「黒耀のことはそうして前から知ってはいたけど特に接点もないままだったから、特に気にはしてなかったんだ。でもその年の秋の儀礼の日に僕の班が担当してた区画で鴨が何羽か逃げ出しちゃってさ、ほとんどはすぐに捕まえて戻せたんだけど1羽どうしても捕まらずに外へ出ていっちゃって…僕がその子の行方を追ったの。で、追っかけていった先でばったり黒耀と出逢ったんだ。僕は道中で見つけた仔犬を、黒耀は僕が追いかけてた鴨をそれぞれ抱っこしてて…お互いに『あっ』ってなってね」
その時、黒耀の方は遊び場の柵の下を掘って逃げ出した一匹の仔犬を追ってきていたらしく、彼らは偶然互いに探していた子犬と鴨をそれぞれで保護していたのだった。
動物達が引き寄せたその出逢い方に素敵だなと夾が思っていると、琥珀は夾にも膝にかける布切れを渡し、そして撫でていた鴨をも渡そうとしながら「…ここだけの話なんだけど」と声を潜める。
「実は僕、その時たくさんお見合いの話をもらっててさ…それこそ番のこととかについてよく考えてるときだったんだ」
「えっ、お見合いですか」
「うん。…ほら、普通は第2性別ってあんまりべらべらとは明かさないものだけど、でも学び舎とかで同じオメガの女の子とかと一緒にいればなんとなく分かるものでしょ?それに僕の一家はずっと昔から鴨の飼育を担当しててこの辺りではちょっと有名だから、じいちゃんばあちゃんや父さん母さんの顔も広くてね。本当に色んなアルファの男の子達やその子の家から『ぜひどうですか』って話が来てたんだ」
琥珀は夾の膝の上に大人しく座ったまま撫でられている鴨にふふっと微笑みかけながら言う。
「その時にはもう兄さんも姉さんも結婚して子供がいたし、家の仕事も義姉さんや義兄さん含むみんなでやってたからさ。父さん達は僕が良いなと思った人と一緒になれば良いよって言ってくれたんだけど…でもなんとなく『この人がいい』と思えるような人がいなくて、結構悩んでたんだ。で、そんな時に会ったのが…」
「黒耀さん…だったんですね」
「ふふっ、そうそう!元々遠目から見てもアルファっぽい人だなとは思ってたんだけど、抱っこしてる仔犬と鴨を交換しようとしたらちょっと手が触れ合っちゃってさ、その時に黒耀からふわっとアルファの【香り】がして確信したんだ。『あっ、やっぱりこの人アルファなんだ』って」
後から聞いたところによると、以前から琥珀のことを見初めていた黒耀は偶然道で会ったばかりか手まで触れ合ってしまったことに激しく照れながら動揺し、思わず【香り】を放ってしまったのだそうだ。
その時の黒耀の照れた真っ赤な顔を琥珀は今でも鮮明に覚えているという。
いつもひたむきに仕事をしている大人びた黒耀が、純粋無垢な様子で頬を染め、照れながら【香り】を放っているというその姿がとても魅力的に感じた琥珀。
黒耀の放った【香り】を心地良いと思ったときには、琥珀も【香り】で応えていた。
「素敵な人だなぁと思ったら僕も自然と【香り】を放っててね、黒耀は僕がオメガだとは知らなかったみたいですごくびっくりしてた。びっくりしてたけどやっぱり嬉しそうで照れてたよ。それをきっかけに2人でよく話すようになって付き合い始めて…それで番になったんだ」
そうして詳しく誰かの番になるまでの話を聞いたことがなかった夾は羨望の眼差しで「とても素敵ですね」と口にする。
すると琥珀は「でもそれこそ番になるまでには色々あったんだよ」と苦笑した。
「付き合い始めたら黒耀はオメガの僕を心配してずっとそばにいたがるようになってさ。猟犬を従えての仕事がしたくて酪農地域まで来たのに、そうやって僕のそばにばっかりいたんじゃ全然その仕事ができないでしょ?せっかくそれまでの仕事と頑張りが認められて猟犬を連れて農業地域まで狩りの仕事をしに行けるくらいにまでなったのに、って…だから一時はもう別れちゃった方がお互いのためになるんじゃないか、なんて思ったりもした。そしたら黒耀も滅多なことを言うなって怒っちゃってさ。僕だって黒耀以外の人なんて考えられなかったんだけど、でも彼の事が大切だからこそ昔からの彼の夢を邪魔したくなかったってのもあってそれから結構深刻に話し合ったんだ。そもそも黒耀はまだ20歳にもないくらいで若かったってのもあるけどね。で、結局それから丸2年くらい黒耀がきちんと本来の夢である仕事をして経験を積んだ後、酪農地域内で猟犬を育成する仕事に切り替えたのを転機に番になることをちゃんと考え始めたんだ」
「まぁお互いに想い合ってのことだっていうのは分かってたし、不仲になってたってわけでもないんだけどね。なにより今、黒耀と番になれて本当によかったって思えてるしさ」
回想しながら琥珀は微笑む。
だが夾はそんな琥珀の体験談を聞いてから自身の状況について考えると、また少々暗い気持ちになってしまったのだった。
初めから想い合っている同士でもやはりいろいろなことがあるのだ。
出逢いの印象が悪すぎた自分にはもうどうすることもできないと思えてならない。
「………」
するとそんな落ち込んだような様子の夾を見た琥珀は「大丈夫だよ、コウちゃん。そんなに心配しないで」と優しく温かな声をかけた。
「心配なことや不安なことはたくさんあると思う。でも、なんだかんだ言って物事は良い方に向かっていくものなんだ。そう言われたって信じられないかもしれないけど…でも本当のことだよ。コウちゃんとは知り合ったばかりだけど、僕には君がすごく素敵な人だってことが分かる。素敵な人には素敵な未来が引き寄せられるものなんだ。だから悲観することはないからね、大丈夫だよ」
『琥珀』という愛称の通りの琥珀色をした温もりのある瞳でそう言われると、どういうわけか暗澹としていた気分がすっと軽くなって、夾も微笑みを浮かべながら「…ありがとうございます、琥珀さん」と小さく頭を下げる。
それこそまだ知り合って間もない間柄なのだが夾は最大の理解者を得たようで嬉しかった。
ふくふくとした気分で笑みを交わし合う2人。
そんな夾に撫でられていた鴨はぐわぐわと鳴いて『もっと頭を撫でろ』と言わんばかりに手のひらへとすり寄ってくる。
琥珀は笑いながら「ほら、この子もコウちゃんは素敵な人だって言ってる!」と鴨のくちばしを人差し指で撫でた。
「あははっ、いいね!なんだかすごく懐いてる!…あっ、ねぇねぇコウちゃん、そろそろ先生に頼んでおいた薬もできる頃だろうしさ、薬を受け取ったらそのまま僕と【觜宿の杯】でご飯食べない?ちょっと早いけど、いいでしょ?」
「えっと…【觜宿の杯】というのは?」
「あぁ、ほらコウちゃんがいつもご飯食べてる【柳宿の器】の隣にある酒場のことだよ!今日は早めに仕事が終わる黒耀とそこで待ち合わせることになってるんだ、ご飯を食べて帰るつもり。けどまだ黒耀が来るまで時間があると思うからさ、僕の話し相手になってよ!ね、ほら行こ!」
半ば強引に鴨の飼育場から連れ出され、手も洗わされ、そしてその【觜宿の杯】へと連れて行かれる夾。
しかしその酒場というのはまさにあの『セン』という男がいる場所なのである。
最近は裏での仕事に専念しているとはいっても、彼の領域であるその酒場へと足を踏み入れる勇気がない夾は「あの、俺は酒はちょっと……」などと理由をつけて断ろうとしたのだが、それでも「大丈夫だよ!お酒が飲めなくったって料理だけ食べてもいいんだから!」と琥珀の足は止まらない。
「僕達もね、すごくたま~にしかお酒は頼まないんだ。それに料理は隣の柳宿と共同だからコウちゃんも食べ慣れてる味なんだよ、だから気にすることないって!ね、ほら行こ行こ!」
有無を言わせずに「今日の献立は何だろうね~、コウちゃんはどんな料理が好きなの?」とニコニコ話す琥珀に対してそれ以上断ることはできず、夾は診療所に寄った後そのまま【觜宿の杯】へと向かったのだった。
まだ【觜宿の杯】は開いたばかりで人がおらず、琥珀と夾が一番乗りで席に着く。
夾は琥珀と黒耀がよく座っているという席の隣の、誰の定位置にもなっていないらしい席へと腰を下ろした。
【觜宿の杯】というこの酒場は深みのある色をした木材によって壁や床が落ち着いた雰囲気に仕立てられており、まさに『大人の酒場』といった感じがする。
酒瓶がたくさん並んだ壁一面の棚はそれ自体が芸術作品のように美しく、酒の種類などはさっぱり分からない夾も眺めているだけで充分楽しめるくらいだ。
「…ね、結構いいところでしょ」と囁いた琥珀に夾は頷いて応える。
「いらっしゃい。今日は随分と早くに来た、んだな……」
酒場の雰囲気にそわそわとしながら辺りを見回していた夾は、真正面の長机の向こう側から聞こえてきた声に気付くと、身が縮こまるような思いがして思わず固まってしまった。
その声は…あきらかにあの時、間近で聞いたものと同じだったのだ。
こうして顔を合わせるのは気まずくてたまらないが、そう思っているのは相手も同じらしい。
「あっ、セン!そうそう、今日は黒耀とここで待ち合わせることになってるんだ、だから早めに来たんだよ」
朗らかに言う琥珀に、『セン』という男は「いや…そいつ…な、なんで……」と動揺したように言う。
「なんでそいつとあんたが……」
「なに、『そいつ』って。失礼な。この子はコウちゃんだよ、僕の友達!」
「はぁ?友達?何言ってんだ」
「それはこっちの台詞だよ、セン。まさか僕に友達はいないとでも?コウちゃんは僕の友達でね、今日はこっちの觜宿の方で一緒にご飯を食べようと思って誘ったんだ。ね!コウちゃん」
「は…はぁ?」
訳が分からないというように怪訝そうな声を出す『セン』にますます委縮してしまう夾。
すると琥珀は声を潜めて《ごめんね、コウちゃん》と話しかけてきた。
《この人は『セン』っていうんだ、この觜宿を取り仕切ってる人だよ。仕事ができる良い子なんだ》
《…でも勘違いとかでつっぱしるところがあってね、本当は良い子なんだけどさ、うん……もし何か言ってても気にすることはないからね、悪い子じゃないから大丈夫。本当は良い子なんだよ、本当に。ほんとに良い子なんだけど…》
琥珀がからかうようにしながらあまりにも何度もそう言うので、『セン』も「おい!聞こえてるぞ!」と口を挟んでくる。
琥珀はあははっと笑いながら「まぁまぁ、とにかく仲良くしてよ!」と夾に肩を寄せると、それから今日用意されているという献立に目を通していくつかの料理を注文した。
料理が奥の調理場から運ばれてくる頃には琥珀の番だという『黒耀』もこの觜宿の杯にやって来た。
琥珀に《コウちゃんのこと…僕と一緒だって、黒耀に言ってもいいかな…?》と訊ねられた夾が頷いて応えると、琥珀は黒耀に「この子はコウちゃん。僕と同じなんだ、それで仲良くなったんだよ」と夾を紹介する。
それだけで夾が男性オメガであると察したらしい黒耀は「初めまして、コウ君」と穏やかに歓迎してくれたのだった。
以前からそうして過ごしたことがあったかのように、すぐに打ち解けて和気藹々と食事をした3人。
時々夾がちらりと視線を奥の方に向けてみるとそこには狐につままれたような表情でこちらの様子を伺う『セン』がいて、彼はなぜだか分からないまま、その姿を見る度 ひそかに心を解されていたのだった。
夾は早速 酪農地域のかかりつけ医におおまかな事情を話し、そしてたしかに【香り】を放てるようになったらしいと診断された。
男性オメガでありながら一度も【香り】を放ったことがなかった夾はその妙な体質というのが長年の悩みの種であったわけだが、しかしなんとも不思議なことに、たった1人のアルファとの出会いによってそれが突然改善の兆しを見せたのだ。
どうやらその引き金となったのは、あの『セン』と呼ばれていた赤銅色の髪の男を誤解によって激怒させてしまったことのようだ。
通常、【香り】というのは喜びや愛おしさといった感情を元に発散されるものなのだが、激怒したアルファというのはその香りを『辛さ』が感じるようなものに変化させることが知られている。
それは滅多に放たれることのない珍しいものだ。
しかし、夾はまさにその激怒したアルファが放つ【香り】を至近距離で直接香ったのである。
これまでの人生で顔を合わせたことのあるアルファ達とは言わずもがなそんな状況になったことはなく、さらに言えば普通の【香り】ですらもそのようにはっきりと香ったことがなかった夾にとっては、それは体に変化を起こすほど大きな衝撃を与える出来事だったのだろう。
事の詳細を医師に話すのは少々気が引けた夾は『ある人が去った後にその【香り】を香ったところ、自分からオメガの【香り】がし始めた』というような主旨の話をしたのだが、医師は「その体験がとても大きく作用したのでしょうね」と分析した。
「それが大きなきっかけとなったのはほぼほぼ間違いないでしょう。でも初めてそうしてアルファの【香り】を感じたにしても…これまで一切発現する気配がなかったオメガ性を目覚めさせたわけですから、もしかするとその【香り】の持ち主であるアルファの方と君はとても相性がいい、ということなのかもしれません」
「相性がいい?」
「そうです。本来【香り】は『番を探すための手段』なんですが、それと同時に『番を惹きつけるためのもの』でもあるわけです。アルファやオメガは【香り】を利用して将来を共にする番を探し、その相手との仲を深めることで心身の結びつきを強めようとしているんです。今まで君のオメガ性は発現していませんでしたけど、それが『相性のいい人が見つからず、誰かを惹きつけようとする必要がなかったから』なんだとしたら…オメガ性が発現したのは『惹きつけたい相手が見つかったから』ともとれるのではないでしょうか?」
医師は「それも推測にすぎませんけどね」と肩をすくめながらも「とにかく無事にオメガ性が発現して良かったです」と微笑む。
同年代でもあるその医師は夾のことを以前からとても気にかけていたので、喜びもひとしおらしい。
「昨夜君が飲んだ緊急用の抑制薬はまだオメガ性が発現したばかりで安定していない体には強く効き過ぎているようですから、また後日 抑制薬の効果が切れた頃に改めて確認してみて、それから 君個人に適した抑制薬の処方を作っていきましょう。念のため周りには気をつけてくださいね、いくら力があっても万が一のことが起きては大変ですから…」
医師の言う『万が一のこと』というのを聞いて夾が真っ先に思い浮かべたのは、あの赤銅色の髪の男のことだ。
夾はあの一件以降も食堂【柳宿の器】に通って夕食を食べている。
もちろんあんなことがあった以上 赤銅色の髪の男と顔を合わせるのは忍びなく、彼は【柳宿の器】に通うのも止めたほうがいいだろうと思っていたのだが、しかしあの夜以降ぱたりとその姿が隣の酒場の方からも消えていたので食堂の方には通い続けていたのだ。
それとなく【柳宿の器】の主である青年に訊ねてみたところ「あぁ、彼ならしばらく裏での仕事に専念することになってるんですよ」という答えが返ってきた。
「ここはゆくゆくは今 仕事の手伝いをしているあの若い兄弟が主になることになってるんですけど、そろそろ仕事を一通りできるようになってきたみたいなので こっちに出てする仕事も任せていこうということになりまして。もう結構前からそういう話にはなってたんですよ、まず何事もやってみないことには身につきませんからね…といってもまだ完全には任せられないので僕は変わらず表に出てきて仕事しますけど。あっ、もしかして うちの弟に何かご用でも?今も裏の調理場で料理してますから 呼んできましょうか」
話の流れから【柳宿の器】の主である青年にそう提案された夾は、この青年と『セン』が兄弟なのだと理解しつつ、慌てて「いえ!そうではなくただ最近見かけないのでどうしたのかと…それだけなので大丈夫です」と断り、とにかく顔を合わせる心配はなさそうだと再確認まで済ませていた。
ーーーーーー
それから数日後のこと。
ちょうど仕事が休みの日にあの夜服用した抑制薬の効果が完全に切れた夾はあらためて医師の元へと向かい、そして【香り】の調節を自ら行えるかなどの確認を行なった。
まずは弱く【香り】を放ってみて、それをきちんと止めることが出来るかを試すのだ。
彼は【香り】の調節をするのはまったく初めてのことだったのだが、しかしそのやり方などについては学び舎に通っていた頃にきちんと予習をつんでいたこともあり、初めてでも比較的きちんと【香り】の調節をすることが出来る。
医師も「…うん、きちんと発散を止められましたね」と確認を済ませて頷いた。
「初めてでも立派に出来ていますし、普段から抑制薬を飲む必要はないと思いますよ。でも念のためにしばらくはごく弱い効き目のものをお守りとして処方しておきましょうか?」
「そう…ですね」
「分かりました、ではすぐに用意します」
医師は処方を書き留めるとすぐそばにある薬草棚の引き出しからいくつかの薬草を取り出し始める。
それらはどれも【香り】の抑制に効果があるものらしいが、素人目には何がなんだかさっぱり分からない。
それにたとえ薬草に詳しい人物でもその薬棚から目的の薬草を取り出すのは不可能だろう。棚の引き出しには一切表示の類がないからだ。
きっとその棚を管理する医師にしか全貌が分からないようになっているに違いない。
夾はそうして迷いなく一つ一つ取り出される薬草達を眺めていたのだが…医師は「それにしても、やはり君はその特定の人にしか【香り】を放とうとしていないようですね」と手を動かしながら話しかけてきた。
「君が飲んだあの抑制薬の効果は完全に切れているはずです。でも今【香り】を放とうとしたらあまり上手くいきませんでしたよね?むしろ止める時の方がずっと簡単なように見受けられました」
「たしかにそう、ですね」
「君が思い浮かべた人というのは君が思っている以上に特別な人なのかもしれません」
そう。医師の言う通り、実は夾は先ほど【香り】を止められるかを試した際、初めに【香り】を放たなければならないのになかなかそれができずにいたのだった。
それこそ通常は何か胸が高鳴ることなどを思い浮かべたりすれば自然と発散されるものなのだが…むしろ夾にはどうすれば【香り】が出るのかも分からず戸惑ってばかりで、見兼ねた医師に『この間【香り】を放った時のことを考えてみてはいかがですか?』と助言されたことで ようやくふんわりと甘い花のような【香り】を放つことができたのだ。
もちろん、彼が思い浮かべたのは赤銅色の髪や青みがかった灰色の瞳、そしてあの針葉樹林のような【香り】である。
医師はそれこそが鍵だと思っているらしい。
「番のいる方であれば【香り】はその相手以外には作用しないように変化しているはずなので、きっと君が逢った人はまだ誰とも番っていない人なのだと思います。君は今後その人とどうなりたいのかをよく考えてみてもいいかもしれませんね、まずは話をしてみる…とか」
「は、話…を……」
「相手の方にも関係することですからなんとも言えませんが、しかし【香り】によって本能的に惹き寄せられた相手というのはなんにおいても相性が良いものなんですよ。そんな相手に出逢えること自体がとても貴重なので、可能なのであれば少しだけでもその方と話をしてみたらいいと思います。…あっ、でも【香り】の発散には気をつけてくださいね、やはりアルファの方と一緒にいるとどうしても【香り】が…」
医師のその話を聞きながら、夾は(そうは言っても…あの人から見た俺は印象が悪すぎるのに)と複雑な思いを抱く。
医師には告げていないが、なにしろ夾は誤解によるものだとはいえ『セン』から辛い【香り】を引き出すほどにまで激怒させてしまっていたのだ。
いくら相性が良い(かもしれない)相手であったとしても、今更どうやって話しかけたりすればいいというのだろうか。
話しかけてみる、などということは…到底彼にはできそうもない。
(たしかにあの人はすごく綺麗な人で格好良くて、そして素敵だった。【香り】もすごく良いと思ったわけだし…先生の言う通りきちんと話をして互いについてを知ることができたら良いかもしれない。でもそんな人だからこそ初めの印象はよくしなきゃいけないんだよな。俺はせっかくの機会をふいにしたんだ、それはもう取り返しがつかないことで…)
本来 夾は過ぎたことはあまり気にしないという性格をしているのだが、しかし【香り】の相性のことが絡んでいると思うとどうしても気にせずにはいられず 悶々としてしまう。
そうしたことを考えながら気付かれないように小さくため息をついた夾。
医師はほとんどの材料を集め終えたようだが、そのうちの1種類の必要量が不足していたらしく「すみません、ちょっと隣の倉庫から取ってくるので待っててくださいね」と声をかけて通用口から出て行った。
静かな診療所で1人になった夾はなんとなく自身のオメガ性について考えを巡らせ始め、それこそ『番となる相手とはどのように交流するべきなのか』などといったことについてはなにも知らずにいたのだと痛感する。
彼は以前工芸地域にいた際に当時のかかりつけ医から『他の男性オメガに会ってみてはどうか』と勧められたこともあったのだが、すでにその数人の男性オメガ達には番がいるとも聞いていたので、『普通に【香り】を放てるような人達に会ったところで何かの解決になるわけでもあるまいし』『その人達と自分の違いを思い知って、かえって惨めな思いをするだけだろう』と断っていたのだ。
当時は本当にそう思っていたのである。
しかしやはり今になってみると同じ男性オメガから色々な話を訊いてみても良かったのではないかとも思うのだ。
今からでもかかりつけ医にそう相談してみようかと考えながら、待っている間に医学書などが並んだ棚を何気なく眺めていた夾。
するとその時、診療所の戸が叩かれて1人の男が「すみません、こんにちは~…」と外から顔をのぞかせてきた。
「ちょっと切り傷用の軟膏がほしくて…ってあれ、先生って今いらっしゃらないんですか?」
診療所内に夾しかいないらしいと見て訊ねるその男。
夾はその男に目を丸くした。
その人はあの夜酔っていた小柄な男だったのだ。しかもなんとその首には…『うなじあて』が着けられている。
『うなじあて』とはオメガがアルファと 番になる際、アルファにつけられたうなじにある咬み痕を隠すため 身に着けるものだ。
つまりそれを着けているということは必然的に彼はオメガだということになる。
まさか、と思いながら夾は「先生は…今、奥の方に行っています、けど……」と胸をドキドキさせながら言った。
「あ、あの…失礼ですがあなたは…そのうなじあてって…」
「うん?あぁ、そうそう、僕は男性オメガなんです。珍しいでしょ?あははっ」
「男性オメガ…本当に……」
あっけらかんとして返ってきたその答えに夾はさらに目を丸くしてしまう。
するとその様子がどうもただ珍しがっているというわけではないらしいと気づいたのか、その小柄な男も「えっと…もしかしてなんだけど、君も?」と訊ねてきた。
夾ははっきりと頷いて応えた。
ーーーーー
「いや~今日がいい天気でよかったよ!ほら見て、鴨達も元気一杯に遊びまわってる」
「みんな機嫌がいいと尾っぽをプルプル震わせるんだけど、もう…それがものすんごく可愛いんだよね」
酪農地域内の鴨達が飼育されている区画。
彼は診療所で出会った小柄な男に誘われて散歩がてらここを訪れていた。
自らを『琥珀』だと名乗り、そしてあらためて男性オメガであることも明かしてくれたその小柄な男は、倉庫から診療所へと戻ってきた医師に『コウちゃんの薬と一緒に僕の切り傷用の軟膏も作っておいてよ、先生』と依頼すると、夾に 薬が出来上がるまでの時間を可愛い鴨達でも眺めて過ごさないか と誘ってくれたのだ。
この区画にいる鴨達はみな水田などで虫取り要員として活躍する鴨であり、ここの管理と飼育を行うのが琥珀の仕事なのだという。
鴨達はとても人懐っこくて人の姿を見るとワラワラと集まってくるが、夾は初めて会った自分以外の男性オメガである琥珀に対して緊張気味であり、それどころではなかった。
「あの、琥珀さん」
「うん?」
「その…すみませんでした、本当に男性オメガが自分以外にもいるだなんて思ってもなくて…それもこんな近くに」
夾はあの夜、琥珀がまさか同じ男性オメガであるとは思わずに『番だ』と言っていたのも戯言だろうと思ってしまっていたことを心の中で心苦しく感じながら詫びる。
すると琥珀は「いいよ、僕は全然気にしてないもん。だって珍しいことには変わりないからね」と朗らかに言った。
「僕もね、実は他の男性オメガに会うのって君が初めてなんだ。昔近所にオメガのおじいさんがいたらしいんだけど…僕自身は会った記憶がないし。ふふっ、自分が男のオメガだからたしかに男性オメガが存在するってのは分かるけど、そうじゃなかったら本当にいるのか疑わしくなっちゃうよね、あまりにも少なくて」
クスクスと笑う琥珀は「でもまさか診療所でこんな出会いがあるなんて」と鴨がのんびり昼寝などをして過ごしている放牧場の中へ夾を招き、端の方に設けられている木製の長いすへと腰掛ける。
「コウちゃんって、いつも【柳宿の器】でご飯を食べてるよね?たまに見かけてたんだけどその度に綺麗な黒髪をしてる人だなって思ってたんだ」
「そうだったんですか」
「こんなことならもっと早く話しかけてたら良かったなぁ」
この琥珀という男性オメガはとても気さくな人で、それから夾が気になっていることを何でも臆せず答えてくれた。
童顔で夾と同い年、もしくは年下にも見えるくらいなのに歳は夾のちょうど10歳上だということ。
彼の番はあの夜も隣にいた男、『黒耀』であること。
彼らの間には8歳のアルファの男の子と7歳のオメガの女の子がいること。
子供達が通っている学び舎が長期休み中なので、ついこの間まで黒耀の実家の農作業を家族4人泊まり込みで手伝いに行っていたのだが、それが一段落したので自分と黒耀だけ一足先に帰ってきたのだということ。
そして黒耀との出逢いには『仔犬と鴨』が関係していたこと…などだ。
「僕達の出逢いのきっかけは仔犬と鴨だったんだ。ふふっ…懐かしいなぁ、上の子が生まれる3年くらい前のことだからもう11年前になるかな?」
「11年前…ということは今の俺の歳の頃にはもうお2人は出逢っていたんですね」
「うん。僕が21歳になる年で、5歳年下の黒耀は16歳だったかな。黒耀は猟犬と一緒に畑に近づいてくる野生動物を追い払う仕事に憧れて 生まれ育った農業地域からこの酪農地域に引っ越してきてたんだ。猟犬って特に賢いからさ、一緒に仕事をするにはとにかく信頼関係を築かなきゃいけないんだけどそれがものすごく大変で…初めはひたすら犬達の世話をして接し方とかを学ぶんだよ。でも性格も気難しいのが多いからってそこで挫折する人も多いみたい。そんな中でも黒耀は根気強く世話をしながら着々と犬達を従えるようになっていっててね、鴨の区画で働いてた僕にもその評判が聞こえてくるくらいだったんだ。時々僕も水汲み場とかで黒耀の姿を見かけたりしてたんだけど『16歳にしてはすごくしっかりしてるかっこいい男の子だな…』って感じだったなぁ」
琥珀は足元に寄って来た1羽の鴨を抱き上げると、布切れを敷いた膝の上に乗せてそっと撫でつつ話し続ける。
「黒耀のことはそうして前から知ってはいたけど特に接点もないままだったから、特に気にはしてなかったんだ。でもその年の秋の儀礼の日に僕の班が担当してた区画で鴨が何羽か逃げ出しちゃってさ、ほとんどはすぐに捕まえて戻せたんだけど1羽どうしても捕まらずに外へ出ていっちゃって…僕がその子の行方を追ったの。で、追っかけていった先でばったり黒耀と出逢ったんだ。僕は道中で見つけた仔犬を、黒耀は僕が追いかけてた鴨をそれぞれ抱っこしてて…お互いに『あっ』ってなってね」
その時、黒耀の方は遊び場の柵の下を掘って逃げ出した一匹の仔犬を追ってきていたらしく、彼らは偶然互いに探していた子犬と鴨をそれぞれで保護していたのだった。
動物達が引き寄せたその出逢い方に素敵だなと夾が思っていると、琥珀は夾にも膝にかける布切れを渡し、そして撫でていた鴨をも渡そうとしながら「…ここだけの話なんだけど」と声を潜める。
「実は僕、その時たくさんお見合いの話をもらっててさ…それこそ番のこととかについてよく考えてるときだったんだ」
「えっ、お見合いですか」
「うん。…ほら、普通は第2性別ってあんまりべらべらとは明かさないものだけど、でも学び舎とかで同じオメガの女の子とかと一緒にいればなんとなく分かるものでしょ?それに僕の一家はずっと昔から鴨の飼育を担当しててこの辺りではちょっと有名だから、じいちゃんばあちゃんや父さん母さんの顔も広くてね。本当に色んなアルファの男の子達やその子の家から『ぜひどうですか』って話が来てたんだ」
琥珀は夾の膝の上に大人しく座ったまま撫でられている鴨にふふっと微笑みかけながら言う。
「その時にはもう兄さんも姉さんも結婚して子供がいたし、家の仕事も義姉さんや義兄さん含むみんなでやってたからさ。父さん達は僕が良いなと思った人と一緒になれば良いよって言ってくれたんだけど…でもなんとなく『この人がいい』と思えるような人がいなくて、結構悩んでたんだ。で、そんな時に会ったのが…」
「黒耀さん…だったんですね」
「ふふっ、そうそう!元々遠目から見てもアルファっぽい人だなとは思ってたんだけど、抱っこしてる仔犬と鴨を交換しようとしたらちょっと手が触れ合っちゃってさ、その時に黒耀からふわっとアルファの【香り】がして確信したんだ。『あっ、やっぱりこの人アルファなんだ』って」
後から聞いたところによると、以前から琥珀のことを見初めていた黒耀は偶然道で会ったばかりか手まで触れ合ってしまったことに激しく照れながら動揺し、思わず【香り】を放ってしまったのだそうだ。
その時の黒耀の照れた真っ赤な顔を琥珀は今でも鮮明に覚えているという。
いつもひたむきに仕事をしている大人びた黒耀が、純粋無垢な様子で頬を染め、照れながら【香り】を放っているというその姿がとても魅力的に感じた琥珀。
黒耀の放った【香り】を心地良いと思ったときには、琥珀も【香り】で応えていた。
「素敵な人だなぁと思ったら僕も自然と【香り】を放っててね、黒耀は僕がオメガだとは知らなかったみたいですごくびっくりしてた。びっくりしてたけどやっぱり嬉しそうで照れてたよ。それをきっかけに2人でよく話すようになって付き合い始めて…それで番になったんだ」
そうして詳しく誰かの番になるまでの話を聞いたことがなかった夾は羨望の眼差しで「とても素敵ですね」と口にする。
すると琥珀は「でもそれこそ番になるまでには色々あったんだよ」と苦笑した。
「付き合い始めたら黒耀はオメガの僕を心配してずっとそばにいたがるようになってさ。猟犬を従えての仕事がしたくて酪農地域まで来たのに、そうやって僕のそばにばっかりいたんじゃ全然その仕事ができないでしょ?せっかくそれまでの仕事と頑張りが認められて猟犬を連れて農業地域まで狩りの仕事をしに行けるくらいにまでなったのに、って…だから一時はもう別れちゃった方がお互いのためになるんじゃないか、なんて思ったりもした。そしたら黒耀も滅多なことを言うなって怒っちゃってさ。僕だって黒耀以外の人なんて考えられなかったんだけど、でも彼の事が大切だからこそ昔からの彼の夢を邪魔したくなかったってのもあってそれから結構深刻に話し合ったんだ。そもそも黒耀はまだ20歳にもないくらいで若かったってのもあるけどね。で、結局それから丸2年くらい黒耀がきちんと本来の夢である仕事をして経験を積んだ後、酪農地域内で猟犬を育成する仕事に切り替えたのを転機に番になることをちゃんと考え始めたんだ」
「まぁお互いに想い合ってのことだっていうのは分かってたし、不仲になってたってわけでもないんだけどね。なにより今、黒耀と番になれて本当によかったって思えてるしさ」
回想しながら琥珀は微笑む。
だが夾はそんな琥珀の体験談を聞いてから自身の状況について考えると、また少々暗い気持ちになってしまったのだった。
初めから想い合っている同士でもやはりいろいろなことがあるのだ。
出逢いの印象が悪すぎた自分にはもうどうすることもできないと思えてならない。
「………」
するとそんな落ち込んだような様子の夾を見た琥珀は「大丈夫だよ、コウちゃん。そんなに心配しないで」と優しく温かな声をかけた。
「心配なことや不安なことはたくさんあると思う。でも、なんだかんだ言って物事は良い方に向かっていくものなんだ。そう言われたって信じられないかもしれないけど…でも本当のことだよ。コウちゃんとは知り合ったばかりだけど、僕には君がすごく素敵な人だってことが分かる。素敵な人には素敵な未来が引き寄せられるものなんだ。だから悲観することはないからね、大丈夫だよ」
『琥珀』という愛称の通りの琥珀色をした温もりのある瞳でそう言われると、どういうわけか暗澹としていた気分がすっと軽くなって、夾も微笑みを浮かべながら「…ありがとうございます、琥珀さん」と小さく頭を下げる。
それこそまだ知り合って間もない間柄なのだが夾は最大の理解者を得たようで嬉しかった。
ふくふくとした気分で笑みを交わし合う2人。
そんな夾に撫でられていた鴨はぐわぐわと鳴いて『もっと頭を撫でろ』と言わんばかりに手のひらへとすり寄ってくる。
琥珀は笑いながら「ほら、この子もコウちゃんは素敵な人だって言ってる!」と鴨のくちばしを人差し指で撫でた。
「あははっ、いいね!なんだかすごく懐いてる!…あっ、ねぇねぇコウちゃん、そろそろ先生に頼んでおいた薬もできる頃だろうしさ、薬を受け取ったらそのまま僕と【觜宿の杯】でご飯食べない?ちょっと早いけど、いいでしょ?」
「えっと…【觜宿の杯】というのは?」
「あぁ、ほらコウちゃんがいつもご飯食べてる【柳宿の器】の隣にある酒場のことだよ!今日は早めに仕事が終わる黒耀とそこで待ち合わせることになってるんだ、ご飯を食べて帰るつもり。けどまだ黒耀が来るまで時間があると思うからさ、僕の話し相手になってよ!ね、ほら行こ!」
半ば強引に鴨の飼育場から連れ出され、手も洗わされ、そしてその【觜宿の杯】へと連れて行かれる夾。
しかしその酒場というのはまさにあの『セン』という男がいる場所なのである。
最近は裏での仕事に専念しているとはいっても、彼の領域であるその酒場へと足を踏み入れる勇気がない夾は「あの、俺は酒はちょっと……」などと理由をつけて断ろうとしたのだが、それでも「大丈夫だよ!お酒が飲めなくったって料理だけ食べてもいいんだから!」と琥珀の足は止まらない。
「僕達もね、すごくたま~にしかお酒は頼まないんだ。それに料理は隣の柳宿と共同だからコウちゃんも食べ慣れてる味なんだよ、だから気にすることないって!ね、ほら行こ行こ!」
有無を言わせずに「今日の献立は何だろうね~、コウちゃんはどんな料理が好きなの?」とニコニコ話す琥珀に対してそれ以上断ることはできず、夾は診療所に寄った後そのまま【觜宿の杯】へと向かったのだった。
まだ【觜宿の杯】は開いたばかりで人がおらず、琥珀と夾が一番乗りで席に着く。
夾は琥珀と黒耀がよく座っているという席の隣の、誰の定位置にもなっていないらしい席へと腰を下ろした。
【觜宿の杯】というこの酒場は深みのある色をした木材によって壁や床が落ち着いた雰囲気に仕立てられており、まさに『大人の酒場』といった感じがする。
酒瓶がたくさん並んだ壁一面の棚はそれ自体が芸術作品のように美しく、酒の種類などはさっぱり分からない夾も眺めているだけで充分楽しめるくらいだ。
「…ね、結構いいところでしょ」と囁いた琥珀に夾は頷いて応える。
「いらっしゃい。今日は随分と早くに来た、んだな……」
酒場の雰囲気にそわそわとしながら辺りを見回していた夾は、真正面の長机の向こう側から聞こえてきた声に気付くと、身が縮こまるような思いがして思わず固まってしまった。
その声は…あきらかにあの時、間近で聞いたものと同じだったのだ。
こうして顔を合わせるのは気まずくてたまらないが、そう思っているのは相手も同じらしい。
「あっ、セン!そうそう、今日は黒耀とここで待ち合わせることになってるんだ、だから早めに来たんだよ」
朗らかに言う琥珀に、『セン』という男は「いや…そいつ…な、なんで……」と動揺したように言う。
「なんでそいつとあんたが……」
「なに、『そいつ』って。失礼な。この子はコウちゃんだよ、僕の友達!」
「はぁ?友達?何言ってんだ」
「それはこっちの台詞だよ、セン。まさか僕に友達はいないとでも?コウちゃんは僕の友達でね、今日はこっちの觜宿の方で一緒にご飯を食べようと思って誘ったんだ。ね!コウちゃん」
「は…はぁ?」
訳が分からないというように怪訝そうな声を出す『セン』にますます委縮してしまう夾。
すると琥珀は声を潜めて《ごめんね、コウちゃん》と話しかけてきた。
《この人は『セン』っていうんだ、この觜宿を取り仕切ってる人だよ。仕事ができる良い子なんだ》
《…でも勘違いとかでつっぱしるところがあってね、本当は良い子なんだけどさ、うん……もし何か言ってても気にすることはないからね、悪い子じゃないから大丈夫。本当は良い子なんだよ、本当に。ほんとに良い子なんだけど…》
琥珀がからかうようにしながらあまりにも何度もそう言うので、『セン』も「おい!聞こえてるぞ!」と口を挟んでくる。
琥珀はあははっと笑いながら「まぁまぁ、とにかく仲良くしてよ!」と夾に肩を寄せると、それから今日用意されているという献立に目を通していくつかの料理を注文した。
料理が奥の調理場から運ばれてくる頃には琥珀の番だという『黒耀』もこの觜宿の杯にやって来た。
琥珀に《コウちゃんのこと…僕と一緒だって、黒耀に言ってもいいかな…?》と訊ねられた夾が頷いて応えると、琥珀は黒耀に「この子はコウちゃん。僕と同じなんだ、それで仲良くなったんだよ」と夾を紹介する。
それだけで夾が男性オメガであると察したらしい黒耀は「初めまして、コウ君」と穏やかに歓迎してくれたのだった。
以前からそうして過ごしたことがあったかのように、すぐに打ち解けて和気藹々と食事をした3人。
時々夾がちらりと視線を奥の方に向けてみるとそこには狐につままれたような表情でこちらの様子を伺う『セン』がいて、彼はなぜだか分からないまま、その姿を見る度 ひそかに心を解されていたのだった。
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