図書塔の2人~オメガバース編~

蓬屋 月餅

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樫と蔦、そして笹について

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 陸国のちょうど真ん中にあって、各地域をつないでいる【中央広場】。
 その中の工芸地域よりの端には、ぽつんと一軒の家が建っている。
 整然と並んだ石積みによって がっちりとした印象を受ける外観とは異なり、内部は隅の隅まで丁寧に造りこまれた木の床や壁、柱があしらわれていて、ある程度の年月を経た柔らかな風合いが感じられるこの家。
 そこにはとある一組の番とその一人息子が住んでいる。
 番のアルファの名は『 かし
    オメガの名は『 つた』だ。
 樫は図書塔で司書として本の複製や修復、管理等を務め、蔦は主に本の挿絵等の複製を担当しているのだが、2人は共に家からも見える距離にある図書塔とその隣にある小屋で、ほぼほぼ片時も離れることなく肩を並べて作業している。

 蔦は幼い頃からどんなに対策をしても『昼夜が逆転してしまう』という特殊体質を持っていたのだが、樫と出逢い、同じ屋根の下で暮らし始めたことで、不思議なことに自然と夜に眠って朝を迎えることができるようになったのだ。(ただし、その体質が完全に改善されたわけではないようである。)
 ちなみに、樫は樫で幼い頃から『本』や『字(字体・書体)』にばかり夢中になっていて、学び舎へ行ってはいたものの、基本的に外へ出る時というのは陸国に存在する本がほぼほぼ集まっている図書塔か紙の工房へ向かう時くらいだったようだ。
 
 元々は蔦の特殊体質が少なからず関係して出逢い、惹かれ合った樫と蔦。
 相手の第2性別が互いに番になれる性であったことや、それぞれが放つ【香り】の相性がとても良かったということもあって、2人は早々に番になることを決め、それからというもの こうしていつも一緒にいるのが当たり前になっている。

 そんな2人の間に産まれたのが、アルファの男の子『 ささ』だ。
 すでに6歳になっている笹。
 笹は日中忙しくしている両親のことを自ら進んで手伝おうとする子で、アルファの中でも活発さよりは地頭の良さ、優れた社交性などが目立つ性格をしている。

 『いつも騒いで賑やか』というわけではないが、笹は樫に似て本を読むことを好むため、夕食の後や眠る前などは3人で好きな本を読んだり、感想を言い合ったりとそれなりに賑やかな一時を過ごす。
 さらに、笹が興味を示した時には樫や蔦が本の複製をするために必要な技術(原本をそっくりそのまま再現して書く、描く技術)を見せたり、笹が真似しようとするのをそばで見守りながら教えることもある。
 なんでもそつなくこなすというアルファの特性に加え、手先の器用な両親の血を引いた笹は、かなり飲み込みのいい方だと言えるようだ。
 笹のものの考え方や行動の仕方などは どちらかというと樫よりは蔦の方に似ているようで、手伝いなどをしていても特に蔦とは通じ合う部分が多いと感じているらしい。
 さらに、目の形も蔦にそっくりである。


※こちらは『図書塔の2人』のオメガバース編であり、設定上 本編とは多少異なる部分があります。
※全部で3つほどのエピソード更新を予定しています。
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