39 / 49
35話 建国祭①
しおりを挟む
ロレッタ視点
「うぅ……痛い……」
私は自分の部屋のベットでうずくまると、小さな唸り声を上げた。隣にいる夫のクリフトが、心配そうな表情で私のお腹を撫でる。
「ロレッタ……できる事なら僕が変わってあげたいよ……」
クリフトは無力な自分を呪うように唇を噛み締める。でも私としては側にいてくれるだけでもとても心強い。
「はぁ……はぁ……うぅ……っ‼︎」
ズキズキとした痛みが徐々に増していく。これはいよいよかもしれない……
「クリフト! お医者様を呼んで!」
私は額に脂汗を浮かべながら叫んだ。この痛みは今までと違う。間違いない!
ハンマーで体を殴られた様な激しい痛みに襲われて、悲痛な叫びが部屋に響く。クリフトはすぐに部屋を飛び出すと、お医者様をつれて来た。
「ロレッタ様、大きく息を吸って下さい!」
お医者様の指示にしたがって、私は激痛に耐えながら息を吸ってお腹に力を入れた。
周期的に訪れる痛みは徐々に増していき、いよいよ限界に達した。焼け付くような痛みに涙が溢れ出る。でもついに終わりを迎えた。
「おぎゃー! おぎゃぁ!!」
生まれたての赤ちゃんは元気よく泣くと、大切に毛布に包まれて私に渡された。
「おめでとうございます! 可愛い女の子ですよ!」
お医者様の明るい声がぼんやりと聞こえる。隣で見守っていたクリフトは、私と赤ちゃんの無事を確認すると安堵のため息をついた。
「よかった……本当に良かった……お疲れ様、ロレッタ」
「………ありがとう……ねぇ、見て……凄く可愛い……」
まだ生まれてまもないけど、この子は顔が綺麗に整っている。大きくなったら間違いなく美人さんになるわね。
「ねぇ、クリフト……名前なんだけど……シャルルはどうかしら?」
「シャルル、いい名前だね!」
クリフトは生まれてきた娘を抱きしめると、耳元で何度も名前を囁いた。シャルルもその名前を気に入ってくれたようで、ニコッと微笑んだ様な気がした。
生まれてきた子を慈しむクリフトを見ていると、なんだか感動してしまって目元が熱くなる。でも……
「ごめんクリフト……少し休ませて……」
何時間にも及ぶ激痛のせいでもう体力が残っていない……流石に疲れた……私はベットに身を任せると、死んだように眠りについた。
ジャングラー視点
「いいか、建国祭まであまり時間がない。準備を急ぐぞ!」
ガレル王国のジャングラー王子は、ロレッタ達が住んでいるペルシス王国を手に入れるために作戦を練っていた。
「例の物は手に入ったか?」
「はい、準備が整いました」
ジャングラーの部下が悪そうな笑みを浮かべて木箱を持ってくる。その中には大量の火薬が入っていた。
「いいか、お前達は曲芸師として堂々と侵入すればいい。そして火薬を国中にばら撒いて混乱させる。後は俺がロレッタ妃の子供を誘拐する。どうだ? 完璧な作戦だろ?」
俺はペルシス王国を手に入れたところを想像して、ニヤッと笑みを浮かべた。あの王国は周辺国よりも広大で栄えている。ここを抑えれば野望に大きく近づく。
俺は選ばれた人間だ! 必ず世界を統一して頂点に立つ! 待っていろよロレッタ!
ロレッタ視点
「かっ可愛い~!」
「あっ、笑った! 可愛い~」
毎度お馴染みのお茶会の日がきて、私はバーバラとカトリーヌにシャルルをお披露目していた。2人は目をキラキラと輝かせて見つめる。
「ねっ、可愛いでしょ?」
シャルルは何をしても可愛かった。『目に入れても痛くない』とはまさにこれ。私って親バカなのかしら?
「え~ん! えぇ~ん!!!」
みんなでシャルルの事を話していたら、クッションの上でお座りしていたフィリップが突然泣き出した。もしかしてヤキモチを妬いたのかな?
「ミャ~」
白猫のシャーロットは、慰めるようにフィリップの顔を舐めると、体をすり寄せた。本当に出来たお母さんね。
「ところで……2人は気になってる人を建国祭に誘えたの?」
カトリーヌは私の近衛兵でもあるユーゴと、バーバラは劇薬事件の後、ハタマ村で働くライアンといい感じになっている。二人は恥ずかしそうに俯くと、小さく頷いた。
「私はユーゴと一緒にお祭りを見て回ろうと思うの。それでタイミングを見計らって……」
カトリーヌは何か言おうとしたが、恥ずかしそうに手で顔を隠した。
「私はライアンと屋台を開こうと思うの。ハタマ村でとれた野菜を使った料理を出すから楽しみにしていてね!」
バーバラが作った野菜の料理はどれも絶品。これは是非とも行かなくちゃ!
「ロレッタはどうするの?」
「えっ、私? 私はそうね……久しぶりにクリフトをデートに誘ってみようかな?」
ここ最近、出産に向けて絶対安静な生活をしていたから、しばらくクリフトと出かけていない。それに妊娠中の私を気遣ってなのか、夜一緒に寝る時も軽めのスキンシップしかなかった。
以前のようにだいぶ体力も戻ってきたし、せっかくの機会だから2人きりのデートも悪くないわね。
「うぅ……痛い……」
私は自分の部屋のベットでうずくまると、小さな唸り声を上げた。隣にいる夫のクリフトが、心配そうな表情で私のお腹を撫でる。
「ロレッタ……できる事なら僕が変わってあげたいよ……」
クリフトは無力な自分を呪うように唇を噛み締める。でも私としては側にいてくれるだけでもとても心強い。
「はぁ……はぁ……うぅ……っ‼︎」
ズキズキとした痛みが徐々に増していく。これはいよいよかもしれない……
「クリフト! お医者様を呼んで!」
私は額に脂汗を浮かべながら叫んだ。この痛みは今までと違う。間違いない!
ハンマーで体を殴られた様な激しい痛みに襲われて、悲痛な叫びが部屋に響く。クリフトはすぐに部屋を飛び出すと、お医者様をつれて来た。
「ロレッタ様、大きく息を吸って下さい!」
お医者様の指示にしたがって、私は激痛に耐えながら息を吸ってお腹に力を入れた。
周期的に訪れる痛みは徐々に増していき、いよいよ限界に達した。焼け付くような痛みに涙が溢れ出る。でもついに終わりを迎えた。
「おぎゃー! おぎゃぁ!!」
生まれたての赤ちゃんは元気よく泣くと、大切に毛布に包まれて私に渡された。
「おめでとうございます! 可愛い女の子ですよ!」
お医者様の明るい声がぼんやりと聞こえる。隣で見守っていたクリフトは、私と赤ちゃんの無事を確認すると安堵のため息をついた。
「よかった……本当に良かった……お疲れ様、ロレッタ」
「………ありがとう……ねぇ、見て……凄く可愛い……」
まだ生まれてまもないけど、この子は顔が綺麗に整っている。大きくなったら間違いなく美人さんになるわね。
「ねぇ、クリフト……名前なんだけど……シャルルはどうかしら?」
「シャルル、いい名前だね!」
クリフトは生まれてきた娘を抱きしめると、耳元で何度も名前を囁いた。シャルルもその名前を気に入ってくれたようで、ニコッと微笑んだ様な気がした。
生まれてきた子を慈しむクリフトを見ていると、なんだか感動してしまって目元が熱くなる。でも……
「ごめんクリフト……少し休ませて……」
何時間にも及ぶ激痛のせいでもう体力が残っていない……流石に疲れた……私はベットに身を任せると、死んだように眠りについた。
ジャングラー視点
「いいか、建国祭まであまり時間がない。準備を急ぐぞ!」
ガレル王国のジャングラー王子は、ロレッタ達が住んでいるペルシス王国を手に入れるために作戦を練っていた。
「例の物は手に入ったか?」
「はい、準備が整いました」
ジャングラーの部下が悪そうな笑みを浮かべて木箱を持ってくる。その中には大量の火薬が入っていた。
「いいか、お前達は曲芸師として堂々と侵入すればいい。そして火薬を国中にばら撒いて混乱させる。後は俺がロレッタ妃の子供を誘拐する。どうだ? 完璧な作戦だろ?」
俺はペルシス王国を手に入れたところを想像して、ニヤッと笑みを浮かべた。あの王国は周辺国よりも広大で栄えている。ここを抑えれば野望に大きく近づく。
俺は選ばれた人間だ! 必ず世界を統一して頂点に立つ! 待っていろよロレッタ!
ロレッタ視点
「かっ可愛い~!」
「あっ、笑った! 可愛い~」
毎度お馴染みのお茶会の日がきて、私はバーバラとカトリーヌにシャルルをお披露目していた。2人は目をキラキラと輝かせて見つめる。
「ねっ、可愛いでしょ?」
シャルルは何をしても可愛かった。『目に入れても痛くない』とはまさにこれ。私って親バカなのかしら?
「え~ん! えぇ~ん!!!」
みんなでシャルルの事を話していたら、クッションの上でお座りしていたフィリップが突然泣き出した。もしかしてヤキモチを妬いたのかな?
「ミャ~」
白猫のシャーロットは、慰めるようにフィリップの顔を舐めると、体をすり寄せた。本当に出来たお母さんね。
「ところで……2人は気になってる人を建国祭に誘えたの?」
カトリーヌは私の近衛兵でもあるユーゴと、バーバラは劇薬事件の後、ハタマ村で働くライアンといい感じになっている。二人は恥ずかしそうに俯くと、小さく頷いた。
「私はユーゴと一緒にお祭りを見て回ろうと思うの。それでタイミングを見計らって……」
カトリーヌは何か言おうとしたが、恥ずかしそうに手で顔を隠した。
「私はライアンと屋台を開こうと思うの。ハタマ村でとれた野菜を使った料理を出すから楽しみにしていてね!」
バーバラが作った野菜の料理はどれも絶品。これは是非とも行かなくちゃ!
「ロレッタはどうするの?」
「えっ、私? 私はそうね……久しぶりにクリフトをデートに誘ってみようかな?」
ここ最近、出産に向けて絶対安静な生活をしていたから、しばらくクリフトと出かけていない。それに妊娠中の私を気遣ってなのか、夜一緒に寝る時も軽めのスキンシップしかなかった。
以前のようにだいぶ体力も戻ってきたし、せっかくの機会だから2人きりのデートも悪くないわね。
応援ありがとうございます!
18
お気に入りに追加
365
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる