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32話 番外編②
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ロレッタ視点
「へぇ~ ここがカトリーヌが使っている研究室か~」
私はざっと全体を見渡した。なんだか理科室に来た気分だ。ビーカーや薬草が綺麗に棚に整理されている。
「なんだか変な臭いがしますね」
一緒についてきたユーゴが顔を顰める。確かに薬品の独特な香りがする。
「別に私1人でも良かったのに……」
「それはダメです。ロレッタ姉さんは妊娠中なのですから」
元々は不良で、そのあと私の子分になって、今では近衛兵にまで成り上がったユーゴは、いつも目を光らせて私に危険がないか警戒してくれる。
気持ちは嬉しいけど、あまり無理をしてほしくない。
「お待たせ、これがお薬よ」
カトリーヌはビンに入ったお薬を持ってきてくれた。コレのおかげで本当に快適なのよね~
「待って下さい、ロレッタ姉さん、毒味をします」
「えっ? でもいつも飲んでいるから平気よ」
「念のためです!」
ユーゴは私からお薬を取り上げると、ひとくち口に含んだ。心配性ね……
「こっこれは……」
ユーゴは何故か顔を顰めると、無理やり飲み込んだ。えっ、何その反応?
「その……少し苦いな……もう少しマイルドな味に調整して欲しい」
「えっそうなの? 変ね……いつもと同じ物なのに……ごめんねロレッタ、また明日でも大丈夫かしら?」
「うん、いいよ。ねぇ、今日は体調がいいし、久しぶりにみんなで出かけない?」
「いいわね。そうしましょ!」
カトリーヌはパァッと笑みを浮かべて賛成する。でも……
「すみません、俺は少し用事があるので、お2人で楽しんできて下さい。それでは!」
ユーゴは随分と慌てた様子で教室を飛び出して行った。なんだか変ね……
「何かあったのかな?」
「あの慌て様は異様ね……」
* * *
ユーゴ視点
「ハァ……ハァ……ハァ……っ!!」
俺は充分2人から距離をとると、不意に込み上げてきた吐き気に襲われて嘔吐した。その後、激しい頭痛と体が捻れるような腹の痛みが訪れた。
あまり詳しくない俺でもよく分かる。これは毒だ……
「ハァ……ハァ……誰だこんな真似をしやがったのは……」
俺は朦朧とする意識の中、必死に頭を動かした。カトリーヌがこんな真似をするはずがない。
毒味をした時に異変は感じていた。口に含んだ瞬間、身体中の全細胞が今すぐそれを吐き出せと訴えていた。
でも、そんな事をしたら……カトリーヌが疑われてしまう!
毒入りの薬を渡したとなれば、たとえ親しい中でも王妃に対する反逆行為として罰が与えられる。
少なくとも2人の間に亀裂が生まれてしまう。そんな事は絶対に許せない!
「でも……少し無茶しすぎたな……」
さっきまで燃えるように体が暑かったのに、今度は凍えるように寒い。これはやばいかもな……俺はこのまま死ぬのか?
「ユーゴ、どうしたの? しっかりして!」
誰かに呼ばれて重たい瞼を持ち上げると、カトリーヌとロレッタが青ざめた表情で走って来た。
「コレは一体どういう事なの⁉︎」
ロレッタ姉さんが狼狽しながら俺に尋ねる。隣にいたカトリーヌはカバンから薬草を取り出して慣れた手つきで調合を始めた。
「コレを飲んで。この症状はおそらく毒よ!」
カトリーヌの作ってくれた薬のおかげで、死にそうだった苦しみが少し治った気がした。でもその代わりに猛烈な眠気がやって来た。
「副作用で眠くなると思うから、無理しないで休んで」
カトリーヌが何か言っているが、最後の方はよく聞こえなかった。やばい、眠い……いよいよ意識が朦朧とした時だった……
「うぁあああああ!!!」
教室から謎の叫び声が聞こえてきた。今度は一体なんだ?
「ロレッタ、ユーゴの様子を見ていてもらえる? 私は一度研究室に戻るわ」
「分かった。でも1人で大丈夫?」
「えぇ、平気よ。ユーゴを事をお願いね」
カトリーヌはそう言い残すと、研究室の方に戻って行った。
* * *
ライアン視点
「おかしいな……確かに劇薬を混ぜたはずなのに……」
ボクはカトリーヌが渡そうとした薬をジィーと見つめた。昔から一度気になると試さないと気が済まない。毎回そのせいで酷い目に会うのだが、好奇心には勝てなかった。
ボクは慎重に薬の蓋を開けると、一口飲んでみた。そして自分の好奇心を呪った。
「うぁあああああ!!!」
舌が痺れるような感覚がして勢いよく吐き出した。うっ……気持ち悪い……
「クソ、あの男……痩せ我慢しやがって……やっぱり劇薬が入っているじゃないか!」
騙された怒りに任せて激しく毒づいていたら、扉の前に女性が立っていた。
「やっぱり劇薬が入っている? コレはあなたの仕業なのね!」
その女性……カトリーヌは目を釣り上げると、怒りを露わにしてボクを見ていた。
「へぇ~ ここがカトリーヌが使っている研究室か~」
私はざっと全体を見渡した。なんだか理科室に来た気分だ。ビーカーや薬草が綺麗に棚に整理されている。
「なんだか変な臭いがしますね」
一緒についてきたユーゴが顔を顰める。確かに薬品の独特な香りがする。
「別に私1人でも良かったのに……」
「それはダメです。ロレッタ姉さんは妊娠中なのですから」
元々は不良で、そのあと私の子分になって、今では近衛兵にまで成り上がったユーゴは、いつも目を光らせて私に危険がないか警戒してくれる。
気持ちは嬉しいけど、あまり無理をしてほしくない。
「お待たせ、これがお薬よ」
カトリーヌはビンに入ったお薬を持ってきてくれた。コレのおかげで本当に快適なのよね~
「待って下さい、ロレッタ姉さん、毒味をします」
「えっ? でもいつも飲んでいるから平気よ」
「念のためです!」
ユーゴは私からお薬を取り上げると、ひとくち口に含んだ。心配性ね……
「こっこれは……」
ユーゴは何故か顔を顰めると、無理やり飲み込んだ。えっ、何その反応?
「その……少し苦いな……もう少しマイルドな味に調整して欲しい」
「えっそうなの? 変ね……いつもと同じ物なのに……ごめんねロレッタ、また明日でも大丈夫かしら?」
「うん、いいよ。ねぇ、今日は体調がいいし、久しぶりにみんなで出かけない?」
「いいわね。そうしましょ!」
カトリーヌはパァッと笑みを浮かべて賛成する。でも……
「すみません、俺は少し用事があるので、お2人で楽しんできて下さい。それでは!」
ユーゴは随分と慌てた様子で教室を飛び出して行った。なんだか変ね……
「何かあったのかな?」
「あの慌て様は異様ね……」
* * *
ユーゴ視点
「ハァ……ハァ……ハァ……っ!!」
俺は充分2人から距離をとると、不意に込み上げてきた吐き気に襲われて嘔吐した。その後、激しい頭痛と体が捻れるような腹の痛みが訪れた。
あまり詳しくない俺でもよく分かる。これは毒だ……
「ハァ……ハァ……誰だこんな真似をしやがったのは……」
俺は朦朧とする意識の中、必死に頭を動かした。カトリーヌがこんな真似をするはずがない。
毒味をした時に異変は感じていた。口に含んだ瞬間、身体中の全細胞が今すぐそれを吐き出せと訴えていた。
でも、そんな事をしたら……カトリーヌが疑われてしまう!
毒入りの薬を渡したとなれば、たとえ親しい中でも王妃に対する反逆行為として罰が与えられる。
少なくとも2人の間に亀裂が生まれてしまう。そんな事は絶対に許せない!
「でも……少し無茶しすぎたな……」
さっきまで燃えるように体が暑かったのに、今度は凍えるように寒い。これはやばいかもな……俺はこのまま死ぬのか?
「ユーゴ、どうしたの? しっかりして!」
誰かに呼ばれて重たい瞼を持ち上げると、カトリーヌとロレッタが青ざめた表情で走って来た。
「コレは一体どういう事なの⁉︎」
ロレッタ姉さんが狼狽しながら俺に尋ねる。隣にいたカトリーヌはカバンから薬草を取り出して慣れた手つきで調合を始めた。
「コレを飲んで。この症状はおそらく毒よ!」
カトリーヌの作ってくれた薬のおかげで、死にそうだった苦しみが少し治った気がした。でもその代わりに猛烈な眠気がやって来た。
「副作用で眠くなると思うから、無理しないで休んで」
カトリーヌが何か言っているが、最後の方はよく聞こえなかった。やばい、眠い……いよいよ意識が朦朧とした時だった……
「うぁあああああ!!!」
教室から謎の叫び声が聞こえてきた。今度は一体なんだ?
「ロレッタ、ユーゴの様子を見ていてもらえる? 私は一度研究室に戻るわ」
「分かった。でも1人で大丈夫?」
「えぇ、平気よ。ユーゴを事をお願いね」
カトリーヌはそう言い残すと、研究室の方に戻って行った。
* * *
ライアン視点
「おかしいな……確かに劇薬を混ぜたはずなのに……」
ボクはカトリーヌが渡そうとした薬をジィーと見つめた。昔から一度気になると試さないと気が済まない。毎回そのせいで酷い目に会うのだが、好奇心には勝てなかった。
ボクは慎重に薬の蓋を開けると、一口飲んでみた。そして自分の好奇心を呪った。
「うぁあああああ!!!」
舌が痺れるような感覚がして勢いよく吐き出した。うっ……気持ち悪い……
「クソ、あの男……痩せ我慢しやがって……やっぱり劇薬が入っているじゃないか!」
騙された怒りに任せて激しく毒づいていたら、扉の前に女性が立っていた。
「やっぱり劇薬が入っている? コレはあなたの仕業なのね!」
その女性……カトリーヌは目を釣り上げると、怒りを露わにしてボクを見ていた。
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