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31話 番外編①
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ロレッタ視点
「やっぱりバーバラが作った野菜のサンドイッチは格別ね!」
中庭で開かれる恒例のお茶会の日が来て、私は両手にサンドイッチを掴んで頬張った。
親友のカトリーヌも「すごく美味しい!」と絶賛する。隣で見ていたバーバラは、そんな私たちの反応を見て嬉しそうに微笑んだ。
「そう言ってくれると嬉しいわ。今年はハタマ村で採れる野菜が豊作なのよ!」
ハタマ村の領主でありながら、自分でも畑を耕して美味しい野菜を作れるから本当に凄い。
「でも、結構忙しくてね……出来れば男手が欲しいのよね~」
バーバラは軽く肩を回して首を鳴らした。確かにあの村に住む方はご高齢だから大変そうね……ちょうど良い男手はいなかったかな?
「それにしても、随分と大きくなってきたわね」
カトリーヌはポッコリと膨らんだ私のお腹を撫でて目を細める。
「ふふっ、この子のためにも、たくさん食べなくちゃね! フィリップはもうすぐお兄さんになるのよ」
日に日に成長する第一子のフィリップは、フカフカのクッションの上で白猫のシャーロットと戯れていた。
以前のシャーロットは、目を離すとすぐ何処かに行ってしまったけど、フィリップが生まれてからは、常に側にいて見守ってくれるようになった。
それに尻尾を掴まれても怒らないし、危ない事をしようとしたら止めに入ってくれる。シャーロットも立派なお母さんね。
「ねぇ、ロレッタ、体調は大丈夫?」
「うん、平気だよ。カトリーヌが作ってくれたお薬がよく効いているみたい!」
初めて妊娠した時は、食欲が無くて食べ物の事を考えるだけで吐き気がして大変だった。でも、今回は違う。それも全部カトリーヌのおかげである。
魔法医療学校に通い、日々勉強に励むカトリーヌが調合してくれたお薬のおかげで、つわりが改善されて食欲も凄くある。
「ねぇ、またもらいに行っても良いかしら?」
「もちろんよ。準備しておくね!」
その後も近況報告や雑談が続き、気がつくと今回も日が暮れ始めていた。
* * *
ライアン視点
(カトリーヌさえ、いなければ、ボクが一番優秀なのに……)
カトリーヌと同じクラスのライアンは、不機嫌そうな表情で授業を受けていた。
「劇薬よりも大体10倍効力が強いものが毒であり……どちらも危険である事には変わりないため、充分注意するように!」
一番前の席にいるカトリーヌは、相変わらず真剣に話を聞いてノートをとっている。
(クソ! ボクより優秀なんて許せない!)
1番優秀な生徒になって卒業して、それを売りにして薬の商売をして大儲けをする。そして貴族のように贅沢三昧をする。それがボクの夢だった。
まともに薬品について知らない庶民には『魔法医療学校で1番優秀なボクが作ったのだから間違いない!』とか言っておけばいい。無駄に苦い薬草と華々しい肩書きがあれば簡単に騙せる。
だからボクより優秀なカトリーヌのことが許せなかった……
「では、今日はここまで」
授業が終わり、みんな教科書を片付けて楽しそうに話し始める。勉強一筋で友達が1人もいないボクは、そっと席を立つと目的もなく廊下をぶらついた。
「なぁ、知ってるか? カトリーヌの作った薬が好評で、あのロレッタ妃も気に入ってるらしいぜ」
「知ってる。やっぱり学年1位は違うな~」
廊下ですれ違った男子生徒が何やらカトリーヌの事を話していた。
「俺も早く研究室が使いたいよ!」
「いやいや、俺たちには無理だろ、あの場所を使えるのは上位成績者の特権だからな……」
「それもそうだな~」
男子生徒たちはケラケラと笑いながらボクの横を通り過ぎていく。なるほど、ロレッタ妃はカトリーヌの薬を気に入っているのか……だったらもし薬の中に劇薬が混じっていたらどうなるんだ?
作り手は間違いなく罰せられる。もしかしたら王妃に対する反逆行為とみなされて退学になるかもしれない。そしたらボクが一番優秀に成り上がる!
「カトリーヌ……お前はもう終わりだ!」
ボクは誰にも見つからないように警戒しながら研究室に向かった。優秀な生徒には研究室を使う権利が与えられる。だからみんな必死になって勉強に励んでいた。
ここが使えるのはボクとカトリーヌと隣のクラスの数名だけ……でも隣のクラスは薬草を取りに出かけているから、邪魔は入らない!
「さてと……どこにあるんだ?」
ボクは血眼になってカトリーヌの作業台を漁った。
「これだ!」
小さなビンのなかに透明な液体が入っている。ラベルには『つわりの改善』と書かれていた。ロレッタ妃は今、妊娠している。おそらくこの薬を渡しているはずだ!
「ふふふっ、カトリーヌ、お前は反逆者の汚名を被ってこの学校から出ていけ!」
ボクは自分の作業スペースから粉状の劇薬を取り出すと、薬の中に入れてよく混ぜた。後は誰にも見つからないようにこの場を離れて……
「ここが私が使っている研究室なの。どうぞ中に入って」
ふと廊下の方からカトリーヌの声が聞こえて来た。まずい、ここでバレたら計画が台無しだ!
ボクは慌ててロッカーに隠れて息をひそめた。
「やっぱりバーバラが作った野菜のサンドイッチは格別ね!」
中庭で開かれる恒例のお茶会の日が来て、私は両手にサンドイッチを掴んで頬張った。
親友のカトリーヌも「すごく美味しい!」と絶賛する。隣で見ていたバーバラは、そんな私たちの反応を見て嬉しそうに微笑んだ。
「そう言ってくれると嬉しいわ。今年はハタマ村で採れる野菜が豊作なのよ!」
ハタマ村の領主でありながら、自分でも畑を耕して美味しい野菜を作れるから本当に凄い。
「でも、結構忙しくてね……出来れば男手が欲しいのよね~」
バーバラは軽く肩を回して首を鳴らした。確かにあの村に住む方はご高齢だから大変そうね……ちょうど良い男手はいなかったかな?
「それにしても、随分と大きくなってきたわね」
カトリーヌはポッコリと膨らんだ私のお腹を撫でて目を細める。
「ふふっ、この子のためにも、たくさん食べなくちゃね! フィリップはもうすぐお兄さんになるのよ」
日に日に成長する第一子のフィリップは、フカフカのクッションの上で白猫のシャーロットと戯れていた。
以前のシャーロットは、目を離すとすぐ何処かに行ってしまったけど、フィリップが生まれてからは、常に側にいて見守ってくれるようになった。
それに尻尾を掴まれても怒らないし、危ない事をしようとしたら止めに入ってくれる。シャーロットも立派なお母さんね。
「ねぇ、ロレッタ、体調は大丈夫?」
「うん、平気だよ。カトリーヌが作ってくれたお薬がよく効いているみたい!」
初めて妊娠した時は、食欲が無くて食べ物の事を考えるだけで吐き気がして大変だった。でも、今回は違う。それも全部カトリーヌのおかげである。
魔法医療学校に通い、日々勉強に励むカトリーヌが調合してくれたお薬のおかげで、つわりが改善されて食欲も凄くある。
「ねぇ、またもらいに行っても良いかしら?」
「もちろんよ。準備しておくね!」
その後も近況報告や雑談が続き、気がつくと今回も日が暮れ始めていた。
* * *
ライアン視点
(カトリーヌさえ、いなければ、ボクが一番優秀なのに……)
カトリーヌと同じクラスのライアンは、不機嫌そうな表情で授業を受けていた。
「劇薬よりも大体10倍効力が強いものが毒であり……どちらも危険である事には変わりないため、充分注意するように!」
一番前の席にいるカトリーヌは、相変わらず真剣に話を聞いてノートをとっている。
(クソ! ボクより優秀なんて許せない!)
1番優秀な生徒になって卒業して、それを売りにして薬の商売をして大儲けをする。そして貴族のように贅沢三昧をする。それがボクの夢だった。
まともに薬品について知らない庶民には『魔法医療学校で1番優秀なボクが作ったのだから間違いない!』とか言っておけばいい。無駄に苦い薬草と華々しい肩書きがあれば簡単に騙せる。
だからボクより優秀なカトリーヌのことが許せなかった……
「では、今日はここまで」
授業が終わり、みんな教科書を片付けて楽しそうに話し始める。勉強一筋で友達が1人もいないボクは、そっと席を立つと目的もなく廊下をぶらついた。
「なぁ、知ってるか? カトリーヌの作った薬が好評で、あのロレッタ妃も気に入ってるらしいぜ」
「知ってる。やっぱり学年1位は違うな~」
廊下ですれ違った男子生徒が何やらカトリーヌの事を話していた。
「俺も早く研究室が使いたいよ!」
「いやいや、俺たちには無理だろ、あの場所を使えるのは上位成績者の特権だからな……」
「それもそうだな~」
男子生徒たちはケラケラと笑いながらボクの横を通り過ぎていく。なるほど、ロレッタ妃はカトリーヌの薬を気に入っているのか……だったらもし薬の中に劇薬が混じっていたらどうなるんだ?
作り手は間違いなく罰せられる。もしかしたら王妃に対する反逆行為とみなされて退学になるかもしれない。そしたらボクが一番優秀に成り上がる!
「カトリーヌ……お前はもう終わりだ!」
ボクは誰にも見つからないように警戒しながら研究室に向かった。優秀な生徒には研究室を使う権利が与えられる。だからみんな必死になって勉強に励んでいた。
ここが使えるのはボクとカトリーヌと隣のクラスの数名だけ……でも隣のクラスは薬草を取りに出かけているから、邪魔は入らない!
「さてと……どこにあるんだ?」
ボクは血眼になってカトリーヌの作業台を漁った。
「これだ!」
小さなビンのなかに透明な液体が入っている。ラベルには『つわりの改善』と書かれていた。ロレッタ妃は今、妊娠している。おそらくこの薬を渡しているはずだ!
「ふふふっ、カトリーヌ、お前は反逆者の汚名を被ってこの学校から出ていけ!」
ボクは自分の作業スペースから粉状の劇薬を取り出すと、薬の中に入れてよく混ぜた。後は誰にも見つからないようにこの場を離れて……
「ここが私が使っている研究室なの。どうぞ中に入って」
ふと廊下の方からカトリーヌの声が聞こえて来た。まずい、ここでバレたら計画が台無しだ!
ボクは慌ててロッカーに隠れて息をひそめた。
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