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11話 浮気者のアランを論破する②

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前書き

今回もざぁ回です!


──────

ロレッタ視点

「幼馴染のシリア? どう言う事よ⁉︎」

 アラン様の結婚相手であるキャトラ様は、目を釣り上げて詰め寄る。

「しっ知らないよ、そんなの、おい! 適当な事を言うなよ!」

 アラン王子は目を泳がせながら必死に誤魔化そうとする。そろそろ大詰めね。でも何か物的証拠があればいいんだけど……

 優秀な子分たちの働きでここまでの事は分かっていた。でも幼馴染のシリアと付き合っていたという物的証拠は見つからなかった。それさえあれば完全勝利なのに……

 最後の落とし所をどう持っていくか考えていると、私の足元に何かが寄り添ってきた。

「ひゃぁ! びっくりした~ 今までどこにいたの?」

 私は腰を下ろすと、足元に寄り添ってきた白猫のシャーロットを抱き抱えて頭を撫でてあげた。相変わらず2色の瞳が神秘的で美しい。

「にゃぁ~ にゃぁ~」

 シャーロットは喉をゴロゴロと鳴らして目を細めた。ここが気持ちいいのかな?

「おい、なんだ、その猫は! 今すぐ出せ!

 アラン様が怒鳴り声を上げると、気持ち良さそうにしていたシャーロットが「シャァー‼︎」っと威嚇をして、アラン様の顔に飛びついた。

「おい、やめろ! ボクは第一王子なんだぞ! こんな事して許されると思うのか!」

 アラン様の顔は一瞬で傷だらけになってしまった。シャーロットはプイッとそっぽを向くと、窓を飛び越えて外に行ってしまった。

「まったく……何あんだこのバカ猫は!」

 アラン様はポケットからハンカチを取り出して顔に当てる。そこには金色の糸でと書かれていた。

「ちょっと、何よそれ!」

 結婚相手のシャトラ様も気づいた様で鋭い目で睨む。すぐにアラン王子は何事もなかったかの様にポケットに戻そうとしたが、それよりもシャトラ様の手が早かった。

「痛い、痛い、離せよ!」

「だったらそのスカーフを見せなさい!」

 ハンカチに見えたそれはどうやらスカーフだった。しかも浮気相手の名前入りである。まさかこんな形で物的証拠が見つかるとは思わなかった。

「あれ? それはなんですか? どうしてそんな物をお持ちなのですか?」

「これはその……」

「浮気相手と縁を切るために送った物ですよね?」

「…………」

 アラン王子は肩を振るわせて歯軋りをすると、殺意のこもった目で私を睨みつけた。

「よくも……よくもこのボクをこんな目に……ロレッタ! お前は死刑だ! 殺してやる!」

 アラン王子は腰に差した剣を抜いて私に向けた。会場からは悲鳴が上がり皆んな一斉に離れていく。

「ロレッタ!」

「大丈夫。カトリーヌは危ないから下がっていて!」

 私はカトリーヌを守る様に一歩前に出た。こちらは素手。しかもドレスを着ているから上手く動けない。だいぶ不利な状況だ……それでも親友を守るために覚悟を決めると、またあの人が助けに来てくれた。

「いい加減にしろクソ兄貴!」

 アラン王子が振り下ろした剣は第二王子のクリフト様によって受け止められた。そして無駄のない剣捌きでアラン王子を圧倒した。

「クリフト様!」

「ロレッタ殿、お怪我はありませんか」

 クリフト様は私の顔を見て優しく微笑む。やばい、今日もメチャクチャかっこいい!

「邪魔をするなクリフト! そこをどけ!」

「断る! まさか御令嬢に剣を向けるとは……お前は王子失格だ。その王冠をおいて出て行け!」

「うるさい! ボクは第一王子なんだぞ! お前なんかよりもよっぽど偉いんだ! 指図をするな!」

 アラン王子は剣を拾うとまた襲いかかって来た。でもクリフト様はため息をつくと、赤子の手をひねる様に軽々と跳ね除けた。そしてアラン王子の首元に剣を突きつけた。

「国の税金を私利私欲のために使い、浮気をして、挙句の果てにはロレッタ殿に剣を抜くとは……このろくでなしを連れて行け!」

 クリフト様の命令で後ろに控えていた兵士がアラン王子を連れていく。

「クソ! おい、やめろ! 離せぇぇええええ!!!」

 アラン王子は子供の様に喚いて駄々を捏ねたが、兵士たちに身柄を拘束されて連れて行かれた。

「ロレッタ殿、馬鹿兄貴がとんだ失礼をした。申し訳ない」

「いえ、いえ、私の方こそ少々言い過ぎてしまいました。あれでも一応、王族なのに……」

 つい親友のカトリーヌの事だったため熱くなってしまった。それに優秀な子分たちの情報のおかげで想像以上に問い詰めてしまった。

 シャーロットにも後で感謝しておかなくちゃ。今度、美味しいお魚でもあげようかな? 

「それにしても本当に見ていて胸がスッキリしました。言い逃れだけは一流の兄貴をあそこまで徹底的に言い負かしたのはロレッタ殿が初めてです」

 クリフト様は私の手を繋いで優しく引き寄た。そして声優顔負けの素晴らしい声で「ありがとうロレッタ」っと言われた。

 周りに聞かせないためか、普段よりも低くて色気のある声に心臓がバクバクする。それに呼び捨ての破壊力がやばい! 

「ちょっ、ちょっと飲み物を取ってきますね!」

 私は恥ずかしさを紛らわすためにテーブルにあったドリンクを一気飲みした。やばい何だか頭がクラクラしてくる。

「ロレッタ殿、それはお酒ですよ!」

「えっ……お酒?」

 どっ、どうしよう……今度は意識が朦朧としてきた。足元がフラついて上手く立っていられない。

「いかん、ロレッタ殿を王宮の客室まで運んでくれ」

 ぼんやりと話し声が聞こえたけど、私はそのままクリフト様にもたれかかると、あろうことか寝落ちしてしまった。
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