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雑談
ずっとこういう関係でいたい
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1日が終わり、寮の自室で今日の課題をこなしている彼、元地ハルイの携帯が鳴る。デフォルトのままの着信音が部屋に響いた。画面には電話番号だけが表示されていて、連絡先に登録されていない事を示していた。
ハルイはシャーペンを置き、携帯を取って耳に当てる。
『ハルイ?いつもの公園来て』
電話の相手はそれだけ言って通話を切った。名前も名乗られなかったが、ハルイには相手が誰なのか分かっている。数え切れないほど性別問わずに遊んだが、今の彼氏と付き合い始めてから全て関係は切り、電話番号もメールアドレスも変えた。しかし唯一、先程の電話の相手だけは今のハルイの番号もアドレスも知っているのだ。それにはきちんと理由があった。
マフラーを巻いて、厚手のアウターを羽織り、寮長に見つからないようにこっそり寮を出た。
「もう12時回りそうなんですけど」
「ごめんって」
呼び出された公園に行くと、ブランコに相手が座っていた。彼はハルイの言葉を聞いて笑って口だけの謝罪を言う。
森学は生徒会長が7人いる。長、というのは名前だけで、中等部3学科の3人、高等部3学科の3人、そしてその1番上の1人。学科のトップだから「長」とつくだけで、その7人で生徒会を回していた。
そして彼は森学高等部普通科生徒会長、伊藤真弥だった。
ハルイとの関係は中等部の頃。彼とは付き合っていたのだが、ハルイが真弥の邪魔をしたくない、と適当に嘘をついて別れたのだった。
中等部から一目置かれていた真弥はいい意味でも悪い意味でも目立っていたため、男と付き合っているということが大っぴらになるのを恐れたのだ。
今は今の彼氏、東野逢羅が大切だが、そういう恋情ではなく、ハルイは今も真弥が好きだった。
だから今日も、呼び出されてこうして寒い中寮を抜け出してきているのだ。
「ハルイは最近どう?音楽科の事は全然分からねぇからさ」
真弥は煙草に火をつける。mgの高い少しいい煙草のようだ。ハルイは顔を顰めて数歩距離をとる。
「やめてよ。このアウター学校にも着てくんだから」
「俺が吸うの知ってて着てくるお前が悪い」
彼はこう見えて生徒会長という名と、ここらのチンピラを束ねるリーダーという名の二足のわらじを履いている。顔の脇に分けられた長い前髪で隠れているが右の頬から首にかけて十字架のタトゥーが入っている。チームの証だ。
正直、よくバレないな、とハルイは常々思っていた。まさか学園を束ねる者が不良どもまで束ねているとは思わないのだろう。
真弥は味わうようにゆっくりと煙を吸い込みながらハルイを見上げる。
「お前も吸う?」
「もう煙草やめたし、声楽選択してるから無理」
真弥はそうだったなと意地悪に笑った。
今まで別れてから一度もハルイから連絡したことはないが、こうして真弥の方から電話が来ることによって一種の安心感を得ていた。真弥もこういうハルイを理解しているからこそ、定期的に呼び出してくれるのかもしれない。
電話番号を登録していないのは、あるとハルイから連絡してしまうから。自分から離れておいて連絡する権利などない。しかも今は恋人がいるから、尚更。
「...元気そうで良かった」
「センパイも、元気で良かったですね」
「なんでそんな他人事なの」
他愛もない会話をしながら、時間を過ごす。明日も学校はあるが、それより2人で話がしたかった。
昔とは違う、気の許せる友人として。
ハルイはシャーペンを置き、携帯を取って耳に当てる。
『ハルイ?いつもの公園来て』
電話の相手はそれだけ言って通話を切った。名前も名乗られなかったが、ハルイには相手が誰なのか分かっている。数え切れないほど性別問わずに遊んだが、今の彼氏と付き合い始めてから全て関係は切り、電話番号もメールアドレスも変えた。しかし唯一、先程の電話の相手だけは今のハルイの番号もアドレスも知っているのだ。それにはきちんと理由があった。
マフラーを巻いて、厚手のアウターを羽織り、寮長に見つからないようにこっそり寮を出た。
「もう12時回りそうなんですけど」
「ごめんって」
呼び出された公園に行くと、ブランコに相手が座っていた。彼はハルイの言葉を聞いて笑って口だけの謝罪を言う。
森学は生徒会長が7人いる。長、というのは名前だけで、中等部3学科の3人、高等部3学科の3人、そしてその1番上の1人。学科のトップだから「長」とつくだけで、その7人で生徒会を回していた。
そして彼は森学高等部普通科生徒会長、伊藤真弥だった。
ハルイとの関係は中等部の頃。彼とは付き合っていたのだが、ハルイが真弥の邪魔をしたくない、と適当に嘘をついて別れたのだった。
中等部から一目置かれていた真弥はいい意味でも悪い意味でも目立っていたため、男と付き合っているということが大っぴらになるのを恐れたのだ。
今は今の彼氏、東野逢羅が大切だが、そういう恋情ではなく、ハルイは今も真弥が好きだった。
だから今日も、呼び出されてこうして寒い中寮を抜け出してきているのだ。
「ハルイは最近どう?音楽科の事は全然分からねぇからさ」
真弥は煙草に火をつける。mgの高い少しいい煙草のようだ。ハルイは顔を顰めて数歩距離をとる。
「やめてよ。このアウター学校にも着てくんだから」
「俺が吸うの知ってて着てくるお前が悪い」
彼はこう見えて生徒会長という名と、ここらのチンピラを束ねるリーダーという名の二足のわらじを履いている。顔の脇に分けられた長い前髪で隠れているが右の頬から首にかけて十字架のタトゥーが入っている。チームの証だ。
正直、よくバレないな、とハルイは常々思っていた。まさか学園を束ねる者が不良どもまで束ねているとは思わないのだろう。
真弥は味わうようにゆっくりと煙を吸い込みながらハルイを見上げる。
「お前も吸う?」
「もう煙草やめたし、声楽選択してるから無理」
真弥はそうだったなと意地悪に笑った。
今まで別れてから一度もハルイから連絡したことはないが、こうして真弥の方から電話が来ることによって一種の安心感を得ていた。真弥もこういうハルイを理解しているからこそ、定期的に呼び出してくれるのかもしれない。
電話番号を登録していないのは、あるとハルイから連絡してしまうから。自分から離れておいて連絡する権利などない。しかも今は恋人がいるから、尚更。
「...元気そうで良かった」
「センパイも、元気で良かったですね」
「なんでそんな他人事なの」
他愛もない会話をしながら、時間を過ごす。明日も学校はあるが、それより2人で話がしたかった。
昔とは違う、気の許せる友人として。
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