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第五章
【第九話】言の葉③(ウルカ・談)
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『俺が言ってもいいのか?』とは、一体どういう意味なのだろうか?
夫であるならば、愛の言葉を贈る行為は大前提ではないの?
それともワタシの考え方が古い?
自分が押し掛け女房なのがまずかった?
それとも目的は変幻自在なこの体だけで、心にまで興味はないとか?
——あぁダメだ。
全てが全て悪い方にしか考えられず、少しの間で色々と深読みし過ぎてしまう。それなのに、浩二さんが次に口にした言葉は、今のワタシには、とても意外なものだった。
「ウルカはサキュバスだから、そういった言葉はうざいんじゃないかと思って避けていたんだが…… 違うのか?」
失敗した!と言いたげに、浩二さんが額を押さえる。
「あー…… ほら、サキュバスといえば淫魔の代表だろう?だから、性には奔放なんだろうと思ってな。いくら夫婦としてウルカの一番近くに居られるとしても、『好きだ』『愛してる』の類は重たいんじゃないかと考えていたんだ」
なんだ…… そうか。
ワタシ達を一般的な視点で見ると、そうだよね、そうだったよね。サキュバスやインキュバスが魔女に呪われていて、もう性に奔放なド変態淫乱淫魔なんかじゃ無いなんて、そもそも彼が知っているはずがなかったんだ。
自分が生まれた時にはもう今みたいに呪われた種族だったから、人間達が抱くサキュバス達への普遍的なイメージの事なんて、すっかり忘れていた。
「欲しいです!『好き』って、『愛してる』って、『お前だけだ』って沢山言われたいです!束縛だってされたいし、いっそ監禁されたってどんとこいってくらいに燃えちゃうし、嫉妬されたりとか、出来ればしたくはないけど嫉妬したりとかだってしちゃうんです!いっそ三人ででも楽しみましょうって気分には、どうしてもなれないんですっ」
喫茶店の中なので出来る限り声は抑えめにしたが、語気だけは強めに伝える。今この勢いで言わないと、きっとワタシはまた怖気付いてしまって、きっと何も言えなくなってしまうだろうから。
「そうなのか?かなり意外、だな」
浩二さんが口元に手を当てて、驚いた様に軽く目を見開いている。今までのワタシの態度も悪かったのだろうが、ちっともそんなふうに考えているとは伝わっていなかったみたいだ。
「ですよね、そうかとは思います。でも、でも今は、そういう種族なんです。その…… 聞いて貰えますか?ワタシ達の昔話を——」
そう言って、浩二さんの返事を聞く前だったのに、無言を肯定とみなしてポツポツとワタシ達の今の実態を伝えていく。
魔女との確執。
呪いの話。
一生に一人の人間しか愛せず、寿命すらも一体となる事など、ワタシは知りうる限りの全てを、浩二さんへ伝えた。
夫であるならば、愛の言葉を贈る行為は大前提ではないの?
それともワタシの考え方が古い?
自分が押し掛け女房なのがまずかった?
それとも目的は変幻自在なこの体だけで、心にまで興味はないとか?
——あぁダメだ。
全てが全て悪い方にしか考えられず、少しの間で色々と深読みし過ぎてしまう。それなのに、浩二さんが次に口にした言葉は、今のワタシには、とても意外なものだった。
「ウルカはサキュバスだから、そういった言葉はうざいんじゃないかと思って避けていたんだが…… 違うのか?」
失敗した!と言いたげに、浩二さんが額を押さえる。
「あー…… ほら、サキュバスといえば淫魔の代表だろう?だから、性には奔放なんだろうと思ってな。いくら夫婦としてウルカの一番近くに居られるとしても、『好きだ』『愛してる』の類は重たいんじゃないかと考えていたんだ」
なんだ…… そうか。
ワタシ達を一般的な視点で見ると、そうだよね、そうだったよね。サキュバスやインキュバスが魔女に呪われていて、もう性に奔放なド変態淫乱淫魔なんかじゃ無いなんて、そもそも彼が知っているはずがなかったんだ。
自分が生まれた時にはもう今みたいに呪われた種族だったから、人間達が抱くサキュバス達への普遍的なイメージの事なんて、すっかり忘れていた。
「欲しいです!『好き』って、『愛してる』って、『お前だけだ』って沢山言われたいです!束縛だってされたいし、いっそ監禁されたってどんとこいってくらいに燃えちゃうし、嫉妬されたりとか、出来ればしたくはないけど嫉妬したりとかだってしちゃうんです!いっそ三人ででも楽しみましょうって気分には、どうしてもなれないんですっ」
喫茶店の中なので出来る限り声は抑えめにしたが、語気だけは強めに伝える。今この勢いで言わないと、きっとワタシはまた怖気付いてしまって、きっと何も言えなくなってしまうだろうから。
「そうなのか?かなり意外、だな」
浩二さんが口元に手を当てて、驚いた様に軽く目を見開いている。今までのワタシの態度も悪かったのだろうが、ちっともそんなふうに考えているとは伝わっていなかったみたいだ。
「ですよね、そうかとは思います。でも、でも今は、そういう種族なんです。その…… 聞いて貰えますか?ワタシ達の昔話を——」
そう言って、浩二さんの返事を聞く前だったのに、無言を肯定とみなしてポツポツとワタシ達の今の実態を伝えていく。
魔女との確執。
呪いの話。
一生に一人の人間しか愛せず、寿命すらも一体となる事など、ワタシは知りうる限りの全てを、浩二さんへ伝えた。
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