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第二章

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「そうね。このカフェにいる店員と客、私たちがこの店に入って前後三十分で出入りした客を探って」
「御意」
「リリアは飲んで大丈夫なのか!?」
「耐性がありますし、少量で治癒もしましたから。……狙いはあなたでしょうね。お心当たりは?」
「ない」

まあそうだろう。知らないうちに恨みを買っていた可能性もあるが──その線は薄いだろう。可能性の一つとして考えておかなければいけないが。

(もし、もしも。わたくしの夫となったからユースゼルクの人間に狙われたとしたら?)

結婚を申し込んだのはリュードだし、当然リリアが皇族なのは知らなかったわけだけど。それでも黙っていたリリアにも非があるのはたしかだ。リリアが何も言わず、皇族の一員にしてしまったせいでリュードが命を狙われたとしたら?

リュードに恋情を抱いているわけでも、懐に入れているわけでもなく。ただ夫というだけではあるが。リリアのせいで身近な人が死んでしまうようなことは、リリアはもう耐えられない。またリリーのように失ってしまったら?そう考えると少しだけ気持ちが悪い感じがした。ピリピリするようなよく分からない感じ。それがどういう感情なのかリリアは知らなかった。幾度となく抱いたことのある感情でも、リリアの記憶からは消えてしまっていた。

(『もし』や『たら』は考えるだけ無駄だわ。今はそんなこと考える時じゃない)

「早急に影を付ける必要がありますね。毒耐性についても予定を早めましょう。せっかくのデートでしたがこのようなことになってしまっては仕方ありません。今日はここまでにして帰りましょう?」
「そうだな。教えてくれて助かった」
「いえ」

帰りの馬車で今後の方針をリュードにも意見を聞きつつ決定した。今晩からリュードの食事には毎食毒が盛られる。使用人の目もあるのでしばらくはリュードの私室で二人きりで食事を取ることになった。当初の予定通り口に入れる物以外にも毒には触れる。毒以外にも戦闘訓練や拷問訓練などもすることで決定した。詳しいことはまた追々。


六月中旬。リュードが命を狙われた。犯人は確保。プロの暗殺者だが見込み無しとのことで暗殺。仄暗い夕焼けが見える日のことだった。
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