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第二章

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「……リューはどうしてほしいとかある?」
「いや、お前の好きにしろ」
「分かった。リリア様、それなら俺はちゃんとした影になりたい」
「…生半可な気持ちでは出来ないわよ。影とは主人の剣であり盾である。同時に目であり耳であり手足でもある。一度なると決めた以上、いつ死んでも文句は言えないわ。そこまでして主人に仕える覚悟はおあり?」

手を止めて微笑みながらも鋭い目でルークを見る。口元は笑っているのに目を見れば背筋が凍り付きそうだ。ルークはゴクっと生唾を飲み込んで答えた。

「──あります。俺は、最初にリュード様に仕えると決めてからこの命は彼のために使うと決めました」
「よろしい。では…ユースゼルク大帝国七大公侯爵が一家、エリスティア公爵家の領地にある影の育成所に入ってもらうわ。影としての筋はいいから直ぐに一人前になれるはず。リリアの名で入りなさい、紹介状を書くわ」
「ありがとうございます」

意外だと思った。ルークがここまで思ってくれているとは知らなかった。

「育成所に入ったら合格して引き抜かれるまで外には出られない。次に育成所に行ったときには合格していることを祈っているわ」
「俺が言うのもなんだが…頑張れよ、ルーク」
「言われるまでもなく」

それなら今日からユースゼルクに向かってちょうだい、と告げるリリアにルークは絶句している。早くとも明日からだと思っていたのだろう。

「いや、今日って…いきなりすぎない?」
「思い至ったら即行動、ついでに周りも巻き込む。それが姫ですからね~」
「周りも巻き込むは余計だわ」

リリアには悪いがアイの言う通り、即行動で周りも当たり前のように巻き込んでいっている。

「それでひとつご報告があるのですが~。急遽きゅうきょ、皇帝皇后両陛下と旦那様と奥様と王太子殿下との会議の予定が入りました~!今晩になりますが心話の加護で繋げとのことで~す」
「何の会議?」
「それは分からないです~」
「分かったわ。はい、リュード様。完成しましたがいかがです?」

わざわざ姿を見せたのはそのことを伝えるためだったのか。茶々を入れるためかと思った…
そしてやっぱり早いし上手いな。ここまで繊細な刺繍作品は初めて見た。この城が程よく再現されていて飾ればそれだけで部屋が華やかになること間違いなしだ。ついでにリュードの心も華やかになることだろう。

会議に関してはリュードは不参加のようで、詳細はリリアが教えてくれるらしい。「皇族のみの会議の内容を教えられるくらいには信用されていますのよ。リュード様が信用に足る人物かどうかはみんな確認済みですからね」だそうだ。最初は信用などゼロどころかマイナスに等しかったがそれくらいは認めてくれるようになったらしい。
 リリアからの信頼は義姉の件で上昇したのだと。それでもまだまだ低いですから是非とも信頼構築してくださいまし、と付け加えられると撃沈したが。

彼女の言う通り信頼構築に励もうと思います……
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