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第二章 将軍様のお家に居候!
第28話 飛竜の授業はためになる
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【拗ねるな。愛嬌があるのは良い事だ】
『嬉しくねぇ・・・』
【はて、それで何の話をしていたかな】
ちょっと睨んだら、デュマンが誤魔化すように話題を変えてきた。
悔しいけど、ここで掘り下げても自分の馬鹿味を説明されるだけな気がして、素直にデュマンの話題に乗ることにした。
『えーっと、俺が異世界から来たってのはバルギー達には話さないってやつと・・・・あ、だから魔法の話だよ。それが聞きたかったんだ』
【あぁ、そうだった。話がだいぶ逸れてしまったな】
『とりあえず、俺が魔法の事全然分からないってのは伝わったよな』
【あぁ、よく分かった。それならば基本からだな】
再びデュマンの前に座って、マンツーマンの授業が再開される。
【まず、魔法と言うのは様々な属性の魔力を操り具現化する事を言う】
『うん』
【属性の種類は実に多く多種多様だ】
『火属性とか水属性とか?』
【そうだ、その辺は基本的な属性だな。火・水・土・風・雷。この辺りは自然の中に多くある属性だから、人間達も得意な魔法属性だ】
『へぇー。光とか闇とかの属性もあったりして?』
ゲームに出てくるような魔法を思い浮かべる。
【あぁ、それもあるな。その辺りの属性は人間には扱いが難しいようで、使える人間は少ないな。人間の使う治癒魔法も光属性だが、扱いが下手だから効果は弱い】
『人によって、使える属性って違うの?』
【違うな。それぞれ相性の良い属性があって、大体は住む環境で決まってくる】
『じゃあ、頑張れば使いたい魔法を使えるって訳じゃ無いんだな』
流石に、ゲームみたいにレベルあげれば何でも使えるようになるって訳にはいかないか。
【そうだ。人間に限らず魔法が使える生物は皆、自分にあった属性の魔法しか使えない】
『複数の属性は使えるの?』
【それは出来る。相性の良い属性が複数あればその魔法も使える。だが火や水といった反する属性は相性が悪いから、中々同時には習得する事が出来ないな。反属性の魔法の習得は複雑すぎて人間には無理だ】
『あ、駄目なんだ』
【魔法は自分の中に溜めた魔力を使って発動させるものだ。反属性の魔力は相殺しあってしまうから両方を溜め込むのは難しいし、人間が溜められる魔力の量は微々たるものだ。複数の属性の魔力を溜めるとなると、それぞれを少しずつしか溜めておけないから、発動できる魔法の種類が増えたところで中途半端な威力にしかならない】
『つまり効率が悪いんだな』
【そうだ。だから人間は自分に最もあった属性の魔法だけを使うのが一般的だ。複数の属性を使う場合も2種類が限界だな】
『特化型なんだなー』
って事は、バルギーは火属性だな。
『人間以外の生き物はどうなんだ?』
【そうだな。まず元々魔法が使える生物と、魔物化して魔法が使えるようになる生物の2種類に別れるが、元々魔法が使える者達は種族毎で使える魔法が決まっていたりする。水辺に生きる者達は水属性、土の中にいるものは土属性といった感じに棲息する場所に合わせた魔法を使う】
『色々と使える人間とは違うのか』
【あぁ。魔力は体内では生成できないから、自然の中にあるものを取り込んで溜め込むものだ。土の側なら土属性・水の側なら水属性の魔力を溜めやすいので、決まった場所に生きている者はどうしてもその場に合わせた属性に偏ってしまう。人間は行動範囲が広いから、その分取り込める魔法属性も多く、使える種類も増えるのだ】
『なーるほどね』
【人間も住む地域ごとに扱える魔力の属性に偏りは出るな。水辺に住んでいる人間達は水属性や風属性が得意だし、砂漠の方だと土属性・火属性の得意な人間が多い】
『竜は?』
【同じだ。やはり住んでいる地域や行動範囲で得意な属性が決まってくる。だが我々地上の竜は殆ど魔法は使えない。魔法よりも身体能力に特化した進化をしているからな。我々が魔力を使うのは身体能力の強化だ。例えば私たち飛竜は空を自在に飛ぶために風属性の魔力を纏っている】
『へー、じゃあ馬竜は?』
【馬竜は土属性だな。どんな土地でも難なく走る事ができる。】
『じゃぁ、浪竜は水か』
【その通り。なんだ知らない割には魔法への理解が早いではないか】
『うーん、俺の世界でも魔法って概念はあったから。空想上の概念だけどね』
なんか聞いた感じは、ゲームとかファンタジー映画とかの世界と同じような理解でいけそうだな。
【魔法が無いのに、その存在を想像するのか。面白いな】
『夢物語だからな。神様と一緒だよ。実在するかは分からないけど想像はする』
【成る程な】
納得したように頷きながら、デュマンが目を細める。
『神島の竜はどうなんだ?魔法が強いって言ってただろう』
【島の竜は特別だ。生まれ方を説明しただろう】
『うん、魔力の塊なんだよな』
【そうだ。存在自体が魔力の塊だから、溜められる魔力量も桁違いだな。基本的に人間を含めた他の生物はそれぞれが自分にあった魔力を溜める器を持っている】
『器?』
【そうだ。人間が使う水飲み用の容器を想像すればいい】
コップのことか?
【皆、自分にあった大きさの容器を持っていて、そこに入れられる分だけの水を泉から汲んで溜めておき、必要な時に飲んで消費する様なものだ】
『神島の竜の器は超でかいってことか』
【いや、島の竜のそれはもはや器ではない。存在自体が泉そのものだ。もちろん泉の大きさは竜によって異なるが、たとえ小さくても泉は泉だ。他の生物が持つ器に入る水の量とは比べ物にならない。大竜に至っては泉どころか海だな】
『なんか壮大な話だな』
【島の竜というのはそう言うものなのだ。恐ろしいのはその泉を満たしてもなお余る、あの島の魔力量だがな】
『おぉ。確かに』
【神島の竜達になると、様々な属性の魔力も余裕で溜めこめるから、扱える魔法の種類も多い。もちろん得意な属性や苦手な属性もあるがな】
『神島の竜も住んでいる環境で得意な属性が変わるのか?』
【住んでいる環境というよりも、生まれた環境だな。どのような環境の魔力が固まって出来たかで得意な属性が決まる。水辺に生まれれば、大体が水属性の魔力が固まって生まれた竜だから水属性の魔法に強い。だが、長く生きているうちに様々な属性の魔力も取り込んで溜めていけるから、扱える属性はどんどん増えていくな】
『ほんと神島の竜は特別なんだな。もはやチートじゃん』
【ちーととは何だ?】
『んー、決まり事を無視したイカサマ行為かな。もう神島の竜は設定がイカサマ』
【な・・・なんという事を言うんだ・・・】
『だって、絶対他の生き物じゃ勝てないじゃん』
【だから人間は、神の使いだのと島の竜達を神格化して畏怖するのだろう。それをお前はイカサマの一言で片付けるのか・・・・やはり物事の捉え方が雑すぎる】
えぇー、そうかぁ?
皆思うと思うけどなぁ。
デュマンの呆れたような声に、ちょっと納得いかない気持ちだ。
『ありがとうデュマン。すっごい参考になったし面白かった』
まだ時間はありそうだけど、これ以上新しい情報を聞いても忘れてしまいそうだから、今日はこれくらいで授業を終える事にした。
【私も楽しかった、お前の考え方は斬新で予想外でとても面白い。また何時でも来るといい。異世界から来たことについても、機会を見て大竜に聞きに行ってこよう】
『ありがとうな。なんか面倒掛けちゃうけど、よろしく』
【いや、私も気になる話だ。是非大竜の知識を借りたいところだ】
デュマンが機嫌良さそうに尻尾で地面を叩いた。
俺はデュマンに別れを告げて、そのまま馬軍の訓練場へ戻った。
途中でカルシクとハガンに会うかと思ったけど、そんな事も無く訓練場に着いてしまった。
訓練の時間外なのか兵士達は居なくて、馬用の広場では馬竜達が集まって昼寝をしている。
よく見れば馬竜の群れの中にジャビとラビクも居た。
『ラビクー、ジャビー』
馬の集団に近寄って行けば、寝ていた馬たちが一斉に首を上げた。
【おぉケイタが来たぞ】
【おいで、おいで】
【デュマンのところに行っていたのだろう?用は済んだのか?】
皆が口ぐちに話しかけてくる。
『うん。すげぇ楽しかった』
寝転がっている馬達の巨体を掻き分けて、中心近くにいるラビクに近づいていく。
【ケイタ、久しぶりだ】
ジャビが俺の腹に頭を擦り付けてくる。
【デュマンに用があったのか?】
ラビクも挨拶するように大きな顔を近づけてきて、匂いを嗅いでくる
『おう。デュマンに色々と教えてもらってた』
【そうか、デュマンは博識だ。あれの話はためになる】
『うん、人間の先生の話よりも分かりやすかった』
俺の言葉に馬達が一斉に笑った。
【人間の知識などアテにならんからな、人間社会の事以外は我々に聞いた方が良いぞ】
膝を折って寝ていたラビクの横に腰を下ろして、大きな馬体に寄りかかる。
特に避けられる事もなく、ラビクは許してくれた。
ラビクの体は暖かくて、呼吸をする度に大きく上下する腹に寄っかっていると、なんだか眠くなってくる。
竜達のそばは居心地が良い。
言葉が100%通じるし、皆優しいから妙に安心感があるのだ。
【何だケイタ、眠いのか】
『うーん・・・・なんかここ気持ちいいからさー』
【我々も昼寝の最中だ、お前も一緒に寝ていれば良い】
『うん、そうしようかな・・・・』
馬達が再び寝初めて静かになると、俺もあっという間に意識を飛ばした。
「ひっ・・・・・なんてとこにっ・・・」
どれくらいの時間寝ていたのか。
大きく口を開けて気持ち良く爆睡していたら、引き攣ったような小さな悲鳴で目が覚めた。
『・・んぁ?』
「ケイタ、ばか。そのまま静かにしていろっ」
目を擦り、ついでに垂れていた涎を手の甲で拭き取っていたら、馬達の向こうでカルシクが青ざめながら手の平を前に出すようなジェスチャーをしている。
「あ、カルシクー」
カルシクに手を振りながら、欠伸ついでに大きく寝起きの伸びをすれば、カルシクが更に慌てふためく。
「ば、ばか。大きな声を出すなっ、動くなっ」
小さな声で必死に何か言っているけど、小さすぎて何を言っているか分からない。
「えっ?何っ?」
思わず大きめの声で聞き返したら、カルシクがぎぇともぎぁとも言えない変な悲鳴を上げた。
【ん、迎えか?】
俺とカルシクが騒いでいたから、ラビクも目を開けて首を上げる。
『あー、そうかも』
とりあえずカルシクの元に行こうと立ち上がるけど、何故か来た時よりも馬の密集率が上がってて足の踏み場が無い。
『すまんー通してくれー』
【んー・・・動くのが面倒だ。上を通っていいぞ】
道を開けてくれないか頼んだけど、寝転ぶ馬達は半分眠っているのか動く気が無さそうだ。
『じゃ、遠慮なくー。重かったらごめんな』
仕方なく寝ている馬達の体に乗り上げてワキワキと虫みたいに移動する。
なるべく重さが掛からないように慎重に動くけど、馬竜達にとっては俺の体重なんて何でも無いらしい。
【ふはは、ケイタくすぐったい】
【ん?なんか通ったか?】
「うわぁぁっっー!」
くすぐったがる馬や、俺が通った事にすら気づかない馬、そして叫ぶカルシク。
どうしたカルシク。情緒不安定か。
なーんてな、分かってるって。
多分、馬に攻撃されないか心配してるんだろう。
大丈夫大丈夫。ちゃんと馬達に許可もらってっから。
『嬉しくねぇ・・・』
【はて、それで何の話をしていたかな】
ちょっと睨んだら、デュマンが誤魔化すように話題を変えてきた。
悔しいけど、ここで掘り下げても自分の馬鹿味を説明されるだけな気がして、素直にデュマンの話題に乗ることにした。
『えーっと、俺が異世界から来たってのはバルギー達には話さないってやつと・・・・あ、だから魔法の話だよ。それが聞きたかったんだ』
【あぁ、そうだった。話がだいぶ逸れてしまったな】
『とりあえず、俺が魔法の事全然分からないってのは伝わったよな』
【あぁ、よく分かった。それならば基本からだな】
再びデュマンの前に座って、マンツーマンの授業が再開される。
【まず、魔法と言うのは様々な属性の魔力を操り具現化する事を言う】
『うん』
【属性の種類は実に多く多種多様だ】
『火属性とか水属性とか?』
【そうだ、その辺は基本的な属性だな。火・水・土・風・雷。この辺りは自然の中に多くある属性だから、人間達も得意な魔法属性だ】
『へぇー。光とか闇とかの属性もあったりして?』
ゲームに出てくるような魔法を思い浮かべる。
【あぁ、それもあるな。その辺りの属性は人間には扱いが難しいようで、使える人間は少ないな。人間の使う治癒魔法も光属性だが、扱いが下手だから効果は弱い】
『人によって、使える属性って違うの?』
【違うな。それぞれ相性の良い属性があって、大体は住む環境で決まってくる】
『じゃあ、頑張れば使いたい魔法を使えるって訳じゃ無いんだな』
流石に、ゲームみたいにレベルあげれば何でも使えるようになるって訳にはいかないか。
【そうだ。人間に限らず魔法が使える生物は皆、自分にあった属性の魔法しか使えない】
『複数の属性は使えるの?』
【それは出来る。相性の良い属性が複数あればその魔法も使える。だが火や水といった反する属性は相性が悪いから、中々同時には習得する事が出来ないな。反属性の魔法の習得は複雑すぎて人間には無理だ】
『あ、駄目なんだ』
【魔法は自分の中に溜めた魔力を使って発動させるものだ。反属性の魔力は相殺しあってしまうから両方を溜め込むのは難しいし、人間が溜められる魔力の量は微々たるものだ。複数の属性の魔力を溜めるとなると、それぞれを少しずつしか溜めておけないから、発動できる魔法の種類が増えたところで中途半端な威力にしかならない】
『つまり効率が悪いんだな』
【そうだ。だから人間は自分に最もあった属性の魔法だけを使うのが一般的だ。複数の属性を使う場合も2種類が限界だな】
『特化型なんだなー』
って事は、バルギーは火属性だな。
『人間以外の生き物はどうなんだ?』
【そうだな。まず元々魔法が使える生物と、魔物化して魔法が使えるようになる生物の2種類に別れるが、元々魔法が使える者達は種族毎で使える魔法が決まっていたりする。水辺に生きる者達は水属性、土の中にいるものは土属性といった感じに棲息する場所に合わせた魔法を使う】
『色々と使える人間とは違うのか』
【あぁ。魔力は体内では生成できないから、自然の中にあるものを取り込んで溜め込むものだ。土の側なら土属性・水の側なら水属性の魔力を溜めやすいので、決まった場所に生きている者はどうしてもその場に合わせた属性に偏ってしまう。人間は行動範囲が広いから、その分取り込める魔法属性も多く、使える種類も増えるのだ】
『なーるほどね』
【人間も住む地域ごとに扱える魔力の属性に偏りは出るな。水辺に住んでいる人間達は水属性や風属性が得意だし、砂漠の方だと土属性・火属性の得意な人間が多い】
『竜は?』
【同じだ。やはり住んでいる地域や行動範囲で得意な属性が決まってくる。だが我々地上の竜は殆ど魔法は使えない。魔法よりも身体能力に特化した進化をしているからな。我々が魔力を使うのは身体能力の強化だ。例えば私たち飛竜は空を自在に飛ぶために風属性の魔力を纏っている】
『へー、じゃあ馬竜は?』
【馬竜は土属性だな。どんな土地でも難なく走る事ができる。】
『じゃぁ、浪竜は水か』
【その通り。なんだ知らない割には魔法への理解が早いではないか】
『うーん、俺の世界でも魔法って概念はあったから。空想上の概念だけどね』
なんか聞いた感じは、ゲームとかファンタジー映画とかの世界と同じような理解でいけそうだな。
【魔法が無いのに、その存在を想像するのか。面白いな】
『夢物語だからな。神様と一緒だよ。実在するかは分からないけど想像はする』
【成る程な】
納得したように頷きながら、デュマンが目を細める。
『神島の竜はどうなんだ?魔法が強いって言ってただろう』
【島の竜は特別だ。生まれ方を説明しただろう】
『うん、魔力の塊なんだよな』
【そうだ。存在自体が魔力の塊だから、溜められる魔力量も桁違いだな。基本的に人間を含めた他の生物はそれぞれが自分にあった魔力を溜める器を持っている】
『器?』
【そうだ。人間が使う水飲み用の容器を想像すればいい】
コップのことか?
【皆、自分にあった大きさの容器を持っていて、そこに入れられる分だけの水を泉から汲んで溜めておき、必要な時に飲んで消費する様なものだ】
『神島の竜の器は超でかいってことか』
【いや、島の竜のそれはもはや器ではない。存在自体が泉そのものだ。もちろん泉の大きさは竜によって異なるが、たとえ小さくても泉は泉だ。他の生物が持つ器に入る水の量とは比べ物にならない。大竜に至っては泉どころか海だな】
『なんか壮大な話だな』
【島の竜というのはそう言うものなのだ。恐ろしいのはその泉を満たしてもなお余る、あの島の魔力量だがな】
『おぉ。確かに』
【神島の竜達になると、様々な属性の魔力も余裕で溜めこめるから、扱える魔法の種類も多い。もちろん得意な属性や苦手な属性もあるがな】
『神島の竜も住んでいる環境で得意な属性が変わるのか?』
【住んでいる環境というよりも、生まれた環境だな。どのような環境の魔力が固まって出来たかで得意な属性が決まる。水辺に生まれれば、大体が水属性の魔力が固まって生まれた竜だから水属性の魔法に強い。だが、長く生きているうちに様々な属性の魔力も取り込んで溜めていけるから、扱える属性はどんどん増えていくな】
『ほんと神島の竜は特別なんだな。もはやチートじゃん』
【ちーととは何だ?】
『んー、決まり事を無視したイカサマ行為かな。もう神島の竜は設定がイカサマ』
【な・・・なんという事を言うんだ・・・】
『だって、絶対他の生き物じゃ勝てないじゃん』
【だから人間は、神の使いだのと島の竜達を神格化して畏怖するのだろう。それをお前はイカサマの一言で片付けるのか・・・・やはり物事の捉え方が雑すぎる】
えぇー、そうかぁ?
皆思うと思うけどなぁ。
デュマンの呆れたような声に、ちょっと納得いかない気持ちだ。
『ありがとうデュマン。すっごい参考になったし面白かった』
まだ時間はありそうだけど、これ以上新しい情報を聞いても忘れてしまいそうだから、今日はこれくらいで授業を終える事にした。
【私も楽しかった、お前の考え方は斬新で予想外でとても面白い。また何時でも来るといい。異世界から来たことについても、機会を見て大竜に聞きに行ってこよう】
『ありがとうな。なんか面倒掛けちゃうけど、よろしく』
【いや、私も気になる話だ。是非大竜の知識を借りたいところだ】
デュマンが機嫌良さそうに尻尾で地面を叩いた。
俺はデュマンに別れを告げて、そのまま馬軍の訓練場へ戻った。
途中でカルシクとハガンに会うかと思ったけど、そんな事も無く訓練場に着いてしまった。
訓練の時間外なのか兵士達は居なくて、馬用の広場では馬竜達が集まって昼寝をしている。
よく見れば馬竜の群れの中にジャビとラビクも居た。
『ラビクー、ジャビー』
馬の集団に近寄って行けば、寝ていた馬たちが一斉に首を上げた。
【おぉケイタが来たぞ】
【おいで、おいで】
【デュマンのところに行っていたのだろう?用は済んだのか?】
皆が口ぐちに話しかけてくる。
『うん。すげぇ楽しかった』
寝転がっている馬達の巨体を掻き分けて、中心近くにいるラビクに近づいていく。
【ケイタ、久しぶりだ】
ジャビが俺の腹に頭を擦り付けてくる。
【デュマンに用があったのか?】
ラビクも挨拶するように大きな顔を近づけてきて、匂いを嗅いでくる
『おう。デュマンに色々と教えてもらってた』
【そうか、デュマンは博識だ。あれの話はためになる】
『うん、人間の先生の話よりも分かりやすかった』
俺の言葉に馬達が一斉に笑った。
【人間の知識などアテにならんからな、人間社会の事以外は我々に聞いた方が良いぞ】
膝を折って寝ていたラビクの横に腰を下ろして、大きな馬体に寄りかかる。
特に避けられる事もなく、ラビクは許してくれた。
ラビクの体は暖かくて、呼吸をする度に大きく上下する腹に寄っかっていると、なんだか眠くなってくる。
竜達のそばは居心地が良い。
言葉が100%通じるし、皆優しいから妙に安心感があるのだ。
【何だケイタ、眠いのか】
『うーん・・・・なんかここ気持ちいいからさー』
【我々も昼寝の最中だ、お前も一緒に寝ていれば良い】
『うん、そうしようかな・・・・』
馬達が再び寝初めて静かになると、俺もあっという間に意識を飛ばした。
「ひっ・・・・・なんてとこにっ・・・」
どれくらいの時間寝ていたのか。
大きく口を開けて気持ち良く爆睡していたら、引き攣ったような小さな悲鳴で目が覚めた。
『・・んぁ?』
「ケイタ、ばか。そのまま静かにしていろっ」
目を擦り、ついでに垂れていた涎を手の甲で拭き取っていたら、馬達の向こうでカルシクが青ざめながら手の平を前に出すようなジェスチャーをしている。
「あ、カルシクー」
カルシクに手を振りながら、欠伸ついでに大きく寝起きの伸びをすれば、カルシクが更に慌てふためく。
「ば、ばか。大きな声を出すなっ、動くなっ」
小さな声で必死に何か言っているけど、小さすぎて何を言っているか分からない。
「えっ?何っ?」
思わず大きめの声で聞き返したら、カルシクがぎぇともぎぁとも言えない変な悲鳴を上げた。
【ん、迎えか?】
俺とカルシクが騒いでいたから、ラビクも目を開けて首を上げる。
『あー、そうかも』
とりあえずカルシクの元に行こうと立ち上がるけど、何故か来た時よりも馬の密集率が上がってて足の踏み場が無い。
『すまんー通してくれー』
【んー・・・動くのが面倒だ。上を通っていいぞ】
道を開けてくれないか頼んだけど、寝転ぶ馬達は半分眠っているのか動く気が無さそうだ。
『じゃ、遠慮なくー。重かったらごめんな』
仕方なく寝ている馬達の体に乗り上げてワキワキと虫みたいに移動する。
なるべく重さが掛からないように慎重に動くけど、馬竜達にとっては俺の体重なんて何でも無いらしい。
【ふはは、ケイタくすぐったい】
【ん?なんか通ったか?】
「うわぁぁっっー!」
くすぐったがる馬や、俺が通った事にすら気づかない馬、そして叫ぶカルシク。
どうしたカルシク。情緒不安定か。
なーんてな、分かってるって。
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