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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー
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後から来た秋元が鈴を促す。
「じゃ、よろしくお願いします」
「はい。任せて下さい」
隼人の声に、秋元が爽やかな笑顔で答えた。
「若先生、お客様です」
患者が一旦引いたのを確認したのか、受付の女性が診察室に顔を出した。
「?」
カルテを閉じて、午前中の最後の患者にお大事にと告げる。入れ替わりに山野井あずさが入って来た。
「…先輩」
「こんにちは」
淡い青紫色のワンピースを着たあずさが、はにかんだ様子で椅子に座る。
「若先生、私たちお昼行ってきますね!」
気を利かせたつもりなのか、スタッフが三人、きゃいきゃい騒ぎながら行ってしまった。
「すみません騒がしくて」
「いえ。とても素敵な病院スタッフさん達ですね」
「処で、今日は?」
「…お話は…婚約の事です。形だけでもいいんです。父を少しの間安心させたいの」
「それは」
「解っています。鈴君、でしょう?」
「…」
「あなたの鈴君を見る眼は、他の方を見る眼と違うわ。まさかと思うけれど、私の勘違いなら良いの。薫さんの大事な息子さんなんですわよね?」
「…何を云いたいんです」
刹那、底冷えのする視線があずさを捉えた。
「…変わっていないのね。大学の頃のあなた、今の様な眼をしていたわ。でも不思議とあなたに惹かれて…」
「終わったんです。昔の『俺』じゃない」
「あの子が原因?」
「お帰り頂けますか」
底冷えのする冷めた声に、あずさはピクっと肩を震わせた。
「一度…」
「?」
「一度でいいの。外で会って。それを最後にするから」
泣きそうな顔で俯くあずさに、隼人は深い溜息を零した。
「……一度だけですよ?」
あずさは双眸を見開き、微笑んだ。
「ありがとう」
「こちらカメラマンのジン・イムホテップ」
鈴音に紹介された男を見上げて、鈴は首を傾げた。何処かの記憶に引っ掛かりを覚えた。
ーーー誰?
「初めまして…えぇと、前のカメラマンさんは?」
素朴な疑問に問うと、ジンが無愛想に鈴を見た。
「俺では不服か?」
鈴は慌てて首を横に振る。
ーーーうっ怖い。
「そういう訳じゃ」
「なら良い」
なんだろう。ちょっと苦手かも。彼は背が凄く高くて、碧い瞳が綺麗。
初めて会った気がしないのは何故だろう。と鈴は記憶に引っ掛かる何かを手繰り寄せる。
「じゃ、よろしくお願いします」
「はい。任せて下さい」
隼人の声に、秋元が爽やかな笑顔で答えた。
「若先生、お客様です」
患者が一旦引いたのを確認したのか、受付の女性が診察室に顔を出した。
「?」
カルテを閉じて、午前中の最後の患者にお大事にと告げる。入れ替わりに山野井あずさが入って来た。
「…先輩」
「こんにちは」
淡い青紫色のワンピースを着たあずさが、はにかんだ様子で椅子に座る。
「若先生、私たちお昼行ってきますね!」
気を利かせたつもりなのか、スタッフが三人、きゃいきゃい騒ぎながら行ってしまった。
「すみません騒がしくて」
「いえ。とても素敵な病院スタッフさん達ですね」
「処で、今日は?」
「…お話は…婚約の事です。形だけでもいいんです。父を少しの間安心させたいの」
「それは」
「解っています。鈴君、でしょう?」
「…」
「あなたの鈴君を見る眼は、他の方を見る眼と違うわ。まさかと思うけれど、私の勘違いなら良いの。薫さんの大事な息子さんなんですわよね?」
「…何を云いたいんです」
刹那、底冷えのする視線があずさを捉えた。
「…変わっていないのね。大学の頃のあなた、今の様な眼をしていたわ。でも不思議とあなたに惹かれて…」
「終わったんです。昔の『俺』じゃない」
「あの子が原因?」
「お帰り頂けますか」
底冷えのする冷めた声に、あずさはピクっと肩を震わせた。
「一度…」
「?」
「一度でいいの。外で会って。それを最後にするから」
泣きそうな顔で俯くあずさに、隼人は深い溜息を零した。
「……一度だけですよ?」
あずさは双眸を見開き、微笑んだ。
「ありがとう」
「こちらカメラマンのジン・イムホテップ」
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ーーー誰?
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鈴は慌てて首を横に振る。
ーーーうっ怖い。
「そういう訳じゃ」
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初めて会った気がしないのは何故だろう。と鈴は記憶に引っ掛かる何かを手繰り寄せる。
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