闇に咲く華

吉良龍美

文字の大きさ
34 / 54

闇に咲く華

しおりを挟む
「大丈夫だ。レオンも居るし、何よりレオンが落ち着いているだろう?」
 律は暖炉の前で寛ぐレオンを見る。
「…うん」
 竹塚は律を置いて階段から二階を見上げた。律の使っている部屋に入ると、本棚を見て眉間に皺を寄せた。
 律の云う通り、本棚の本がバラバラに並んで置いてある。この部屋は学生時代に、竹塚が自宅で読み終えた本を持ってきて、本棚に並べたのだ。
「本を並べたときは種類分けしていたんだが。他の親戚でも来たのか?」
 数年前に建て替えられたこの別荘は、親戚同士がいつでも使えるようにしていると、夏紀から聞いている。だが、今回竹塚が使うから他の親戚の誰かしらは来ない筈だ。別荘の持ち主は竹塚の母方の祖父。利用したい日を連絡して、他の家族とダブらないように配慮している筈なのだが。
「もし他の親戚が来ても鉢合わせしていると思うしな。」
 窓の鍵が掛けられているのを確認し、他の窓の鍵も確認して回った。
「……先生、どうだった?」
「二階の鍵は全部掛かっている」
「勝手口のドアの鍵も掛かってるよ。やっぱり僕の気のせいかな」
「外を念の為見て来よう。律は…何を作るんだ?」
「え? あ、パスタにしようかなって」
「そうか。ならパスタソースは俺が作るから、パスタを茹でて置いてくれ」
「はい」
 レオンがむくりと起き出して、竹塚の後を追う。竹塚は建物の周りを一周し、記憶に残る裏庭も見て玄関に戻った。
 ふと、竹塚の視界に違和感の感じる物が在った。
 タイヤ痕だ。しゃがんで手に触れる。
 ーーーまだ新しい。
 竹塚の車のタイヤの溝とは違う別のタイヤ痕だ。不意に直子の顔が過ぎったが、まさかと首を振った。だが、あり得るのだ。
『ねえ、あんたゲイだったわよね』
『あの子を監禁して犯して。そうね、写真でも撮ってデーターを私に送りなさいよ。写真を現像して主人に送り付ければ、あの子供を後継者から外すかもしれないじゃない?』
 直子の言葉が蘇る。
「クウン」
 レオンが竹塚に早く中に入ろうとせがんだ。竹塚はレオンの脚の裏を雑巾で拭き取ると、再び二階へ階段を上がる。もう一度本棚を確認した。何も無いことに安堵しつつも、拭えない不安が胸を過ぎった。


「律」
 二階から下りてきた竹塚の手には、二人分の荷物が在った。
「……先生? どうしたの?」
「食事が済んだら後片付けをして俺の家に帰ろう」
 律は言葉を失って、震えだした。
「やっぱり何か居るの?」
 言葉に出すと余計に怖くなってレオンに抱き付いた。
「いや。何もないよ。仕事を残していたのを忘れていたんだ」
「…はい?」
「今夜は俺の家に泊まって、明日帰宅すれば良い。送って行くから」
 そう云って、竹塚はキッチンに立って、トマト缶とトマトジュース、ピーマンにベーコンを冷蔵庫から取り出していた。
 ーーー本当はさっさと出て行きたい所だが、律を下手に怖がらせるだけだ。
 竹塚は律を視界に入れて、密かに溜め息を零した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...