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闇に咲く華
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「大丈夫だ。レオンも居るし、何よりレオンが落ち着いているだろう?」
律は暖炉の前で寛ぐレオンを見る。
「…うん」
竹塚は律を置いて階段から二階を見上げた。律の使っている部屋に入ると、本棚を見て眉間に皺を寄せた。
律の云う通り、本棚の本がバラバラに並んで置いてある。この部屋は学生時代に、竹塚が自宅で読み終えた本を持ってきて、本棚に並べたのだ。
「本を並べたときは種類分けしていたんだが。他の親戚でも来たのか?」
数年前に建て替えられたこの別荘は、親戚同士がいつでも使えるようにしていると、夏紀から聞いている。だが、今回竹塚が使うから他の親戚の誰かしらは来ない筈だ。別荘の持ち主は竹塚の母方の祖父。利用したい日を連絡して、他の家族とダブらないように配慮している筈なのだが。
「もし他の親戚が来ても鉢合わせしていると思うしな。」
窓の鍵が掛けられているのを確認し、他の窓の鍵も確認して回った。
「……先生、どうだった?」
「二階の鍵は全部掛かっている」
「勝手口のドアの鍵も掛かってるよ。やっぱり僕の気のせいかな」
「外を念の為見て来よう。律は…何を作るんだ?」
「え? あ、パスタにしようかなって」
「そうか。ならパスタソースは俺が作るから、パスタを茹でて置いてくれ」
「はい」
レオンがむくりと起き出して、竹塚の後を追う。竹塚は建物の周りを一周し、記憶に残る裏庭も見て玄関に戻った。
ふと、竹塚の視界に違和感の感じる物が在った。
タイヤ痕だ。しゃがんで手に触れる。
ーーーまだ新しい。
竹塚の車のタイヤの溝とは違う別のタイヤ痕だ。不意に直子の顔が過ぎったが、まさかと首を振った。だが、あり得るのだ。
『ねえ、あんたゲイだったわよね』
『あの子を監禁して犯して。そうね、写真でも撮ってデーターを私に送りなさいよ。写真を現像して主人に送り付ければ、あの子供を後継者から外すかもしれないじゃない?』
直子の言葉が蘇る。
「クウン」
レオンが竹塚に早く中に入ろうとせがんだ。竹塚はレオンの脚の裏を雑巾で拭き取ると、再び二階へ階段を上がる。もう一度本棚を確認した。何も無いことに安堵しつつも、拭えない不安が胸を過ぎった。
「律」
二階から下りてきた竹塚の手には、二人分の荷物が在った。
「……先生? どうしたの?」
「食事が済んだら後片付けをして俺の家に帰ろう」
律は言葉を失って、震えだした。
「やっぱり何か居るの?」
言葉に出すと余計に怖くなってレオンに抱き付いた。
「いや。何もないよ。仕事を残していたのを忘れていたんだ」
「…はい?」
「今夜は俺の家に泊まって、明日帰宅すれば良い。送って行くから」
そう云って、竹塚はキッチンに立って、トマト缶とトマトジュース、ピーマンにベーコンを冷蔵庫から取り出していた。
ーーー本当はさっさと出て行きたい所だが、律を下手に怖がらせるだけだ。
竹塚は律を視界に入れて、密かに溜め息を零した。
律は暖炉の前で寛ぐレオンを見る。
「…うん」
竹塚は律を置いて階段から二階を見上げた。律の使っている部屋に入ると、本棚を見て眉間に皺を寄せた。
律の云う通り、本棚の本がバラバラに並んで置いてある。この部屋は学生時代に、竹塚が自宅で読み終えた本を持ってきて、本棚に並べたのだ。
「本を並べたときは種類分けしていたんだが。他の親戚でも来たのか?」
数年前に建て替えられたこの別荘は、親戚同士がいつでも使えるようにしていると、夏紀から聞いている。だが、今回竹塚が使うから他の親戚の誰かしらは来ない筈だ。別荘の持ち主は竹塚の母方の祖父。利用したい日を連絡して、他の家族とダブらないように配慮している筈なのだが。
「もし他の親戚が来ても鉢合わせしていると思うしな。」
窓の鍵が掛けられているのを確認し、他の窓の鍵も確認して回った。
「……先生、どうだった?」
「二階の鍵は全部掛かっている」
「勝手口のドアの鍵も掛かってるよ。やっぱり僕の気のせいかな」
「外を念の為見て来よう。律は…何を作るんだ?」
「え? あ、パスタにしようかなって」
「そうか。ならパスタソースは俺が作るから、パスタを茹でて置いてくれ」
「はい」
レオンがむくりと起き出して、竹塚の後を追う。竹塚は建物の周りを一周し、記憶に残る裏庭も見て玄関に戻った。
ふと、竹塚の視界に違和感の感じる物が在った。
タイヤ痕だ。しゃがんで手に触れる。
ーーーまだ新しい。
竹塚の車のタイヤの溝とは違う別のタイヤ痕だ。不意に直子の顔が過ぎったが、まさかと首を振った。だが、あり得るのだ。
『ねえ、あんたゲイだったわよね』
『あの子を監禁して犯して。そうね、写真でも撮ってデーターを私に送りなさいよ。写真を現像して主人に送り付ければ、あの子供を後継者から外すかもしれないじゃない?』
直子の言葉が蘇る。
「クウン」
レオンが竹塚に早く中に入ろうとせがんだ。竹塚はレオンの脚の裏を雑巾で拭き取ると、再び二階へ階段を上がる。もう一度本棚を確認した。何も無いことに安堵しつつも、拭えない不安が胸を過ぎった。
「律」
二階から下りてきた竹塚の手には、二人分の荷物が在った。
「……先生? どうしたの?」
「食事が済んだら後片付けをして俺の家に帰ろう」
律は言葉を失って、震えだした。
「やっぱり何か居るの?」
言葉に出すと余計に怖くなってレオンに抱き付いた。
「いや。何もないよ。仕事を残していたのを忘れていたんだ」
「…はい?」
「今夜は俺の家に泊まって、明日帰宅すれば良い。送って行くから」
そう云って、竹塚はキッチンに立って、トマト缶とトマトジュース、ピーマンにベーコンを冷蔵庫から取り出していた。
ーーー本当はさっさと出て行きたい所だが、律を下手に怖がらせるだけだ。
竹塚は律を視界に入れて、密かに溜め息を零した。
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