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天使は甘いキスが好き
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「大人なんて所詮皆同じなんだ。お父さんも…そうだったんだからっ」
そこで気付いた。恵はおかしくなって笑い出す。平片はゾクリとした。
「なんで…龍之介さんに惹かれたのか解ったよ」
恵は両手で顔を覆う。とんだお笑いだ。情けなさ過ぎて反吐が出る。
「昔のお父さんの面影を追い駆けてたんだ…!」
ーーーきっとそうだ…そうとしか思えない。
恵は思い知らされる。これは愛じゃなかったと。禁忌の恋じゃなかったのだと。そう思う事で、龍之介を記憶から遠ざけ様とする。平片は恵を胸に抱き寄せた。
「大人なんて大嫌いだっ!」
平片に抱き締められてむせび泣く恵を、平片はずっとその背を擦っていた。
「嘘だろう? …ピアス?」
呆然とした龍之介は、伝言とやらを思い出し、寝室のベッド付近を捜した。
「なんで…」
光るダイヤのピアスが眼に映った。龍之介はそれを手にする。迂闊だった。此処に美加を泊めるのではなかった。頭を抱えて壁を殴った。
「くそっ!」
後悔しても遅い。解っている。解っているが。
「携帯電話の位置が変わってたのは、美加が触ったからか!?」
やっと出逢えたと思ったのに。例え相手が同じ男でも、心が惹かれたのだ。ゲイではないと何度も思ったが、眼の裏に浮かぶのは恵だった。龍之介は怒りのまま、美加に電話を掛ける。
【…あら、やっぱり私が恋しくなったの?】
「ふざけるなっピアスをわざと置いて行っただろう!?」
【怒ってるの? 私は心配してあげただけ。未来在るあなたの為に、結婚相手は私だってあの小さな仔猫に教えてあげたのよ?】
電車の音が聞こえる。車内からの声だ。
「俺はお前が浮気した時点で別れた。俺は誰とも結婚などしない。お前とは特にだ! 恵はお前とは違うんだよっ!」
龍之介は叫んで、美加のアドレスを拒否登録に設定した。
「恵…」
龍之介はベッドに腰を下ろす。恵の電話番号を掛ける。が、女性のアナウンスが流れた。
【この電話番号は電源が切られているか、電波の届かない場所に…】
「恵…」
龍之介は携帯電話のフラップを閉じた。龍之介は立ち上がると、鍵を手に玄関へ向かった。
「けいにいちゃん?」
「…なんだ?」
伊吹は帰って来た恵が恋しくて、ハグして欲しくてドアをノックする。ドアを開けて顔を出した恵を見上げて、伊吹は眉根を寄せた。
「ないてたの? どっかいたいの?」
「…え?」
恵は帰って来てから偏頭痛が酷くなり、そのまま自室のベッドで眠っていたのだ。
「大丈夫。なんだ? 一晩俺が居なくて寂しかったか?」
しゃがんで、恵は伊吹を抱き締める。恵は痛む頭を我慢して、深呼吸した。龍之介の事は忘れなければと、考え過ぎての軽い精神的な疲労だ。失恋して解るなんて。滑稽じゃないか。
漸く気付いた盲点に。龍之介の中に昔の太一を探していたんだと。そう思うことにした。
「うん。すごくさみしかったのっけいにいちゃんのベッドかりてねたんだよ?」
「そうか…」
恵は涙の渇いた頬で、伊吹の柔らかな頬に摺り寄せる。その時ドアチャイムの音が聞こえた。
ーーー宅配便だろうか?
十和子は玄関へは行かなかった。もう一度チャイムが鳴る。
「お祖母ちゃんは?」
恵は伊吹を放してから、伊吹に訊く。
「おばあちゃんおかいもの。このじかんはおみせじゅんびちゅうだから」
ーーーそうか。そんな時間なのか。
「伊吹はリビングにでも行ってろ」
「うん」
恵は伊吹をリビングへ促すと、自分は靴を履いて玄関のドアを開けた。
「恵」
恵はびくりとして顔を上げる。インターホンで確認せずに出てしまった事を後悔する。
「…なんで」
龍之介は恵の腕を掴むと、恵を胸に抱き寄せた。
「っ!」
「美加の話は誤解なんだ、ピアスもわざとあいつが置いて行った」
恵はカッとなってを龍之介を睨んだ。
「結婚するんでしょう!?」
そこで気付いた。恵はおかしくなって笑い出す。平片はゾクリとした。
「なんで…龍之介さんに惹かれたのか解ったよ」
恵は両手で顔を覆う。とんだお笑いだ。情けなさ過ぎて反吐が出る。
「昔のお父さんの面影を追い駆けてたんだ…!」
ーーーきっとそうだ…そうとしか思えない。
恵は思い知らされる。これは愛じゃなかったと。禁忌の恋じゃなかったのだと。そう思う事で、龍之介を記憶から遠ざけ様とする。平片は恵を胸に抱き寄せた。
「大人なんて大嫌いだっ!」
平片に抱き締められてむせび泣く恵を、平片はずっとその背を擦っていた。
「嘘だろう? …ピアス?」
呆然とした龍之介は、伝言とやらを思い出し、寝室のベッド付近を捜した。
「なんで…」
光るダイヤのピアスが眼に映った。龍之介はそれを手にする。迂闊だった。此処に美加を泊めるのではなかった。頭を抱えて壁を殴った。
「くそっ!」
後悔しても遅い。解っている。解っているが。
「携帯電話の位置が変わってたのは、美加が触ったからか!?」
やっと出逢えたと思ったのに。例え相手が同じ男でも、心が惹かれたのだ。ゲイではないと何度も思ったが、眼の裏に浮かぶのは恵だった。龍之介は怒りのまま、美加に電話を掛ける。
【…あら、やっぱり私が恋しくなったの?】
「ふざけるなっピアスをわざと置いて行っただろう!?」
【怒ってるの? 私は心配してあげただけ。未来在るあなたの為に、結婚相手は私だってあの小さな仔猫に教えてあげたのよ?】
電車の音が聞こえる。車内からの声だ。
「俺はお前が浮気した時点で別れた。俺は誰とも結婚などしない。お前とは特にだ! 恵はお前とは違うんだよっ!」
龍之介は叫んで、美加のアドレスを拒否登録に設定した。
「恵…」
龍之介はベッドに腰を下ろす。恵の電話番号を掛ける。が、女性のアナウンスが流れた。
【この電話番号は電源が切られているか、電波の届かない場所に…】
「恵…」
龍之介は携帯電話のフラップを閉じた。龍之介は立ち上がると、鍵を手に玄関へ向かった。
「けいにいちゃん?」
「…なんだ?」
伊吹は帰って来た恵が恋しくて、ハグして欲しくてドアをノックする。ドアを開けて顔を出した恵を見上げて、伊吹は眉根を寄せた。
「ないてたの? どっかいたいの?」
「…え?」
恵は帰って来てから偏頭痛が酷くなり、そのまま自室のベッドで眠っていたのだ。
「大丈夫。なんだ? 一晩俺が居なくて寂しかったか?」
しゃがんで、恵は伊吹を抱き締める。恵は痛む頭を我慢して、深呼吸した。龍之介の事は忘れなければと、考え過ぎての軽い精神的な疲労だ。失恋して解るなんて。滑稽じゃないか。
漸く気付いた盲点に。龍之介の中に昔の太一を探していたんだと。そう思うことにした。
「うん。すごくさみしかったのっけいにいちゃんのベッドかりてねたんだよ?」
「そうか…」
恵は涙の渇いた頬で、伊吹の柔らかな頬に摺り寄せる。その時ドアチャイムの音が聞こえた。
ーーー宅配便だろうか?
十和子は玄関へは行かなかった。もう一度チャイムが鳴る。
「お祖母ちゃんは?」
恵は伊吹を放してから、伊吹に訊く。
「おばあちゃんおかいもの。このじかんはおみせじゅんびちゅうだから」
ーーーそうか。そんな時間なのか。
「伊吹はリビングにでも行ってろ」
「うん」
恵は伊吹をリビングへ促すと、自分は靴を履いて玄関のドアを開けた。
「恵」
恵はびくりとして顔を上げる。インターホンで確認せずに出てしまった事を後悔する。
「…なんで」
龍之介は恵の腕を掴むと、恵を胸に抱き寄せた。
「っ!」
「美加の話は誤解なんだ、ピアスもわざとあいつが置いて行った」
恵はカッとなってを龍之介を睨んだ。
「結婚するんでしょう!?」
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