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第五話 ナターシャの提案
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「レイモンド殿下、アイシャ様。私の話に乗ってくださいませんか?」
「なんだ?ナターシャ、困ったことがあるのならいつでも頼ってくれよ」
「そうよ、あなたは私のことを思ってあの場所に連れて行ってくれたんだから。酷いわ、何も知らない人が悪意を持って言いふらしているのよ。どれだけ弁明しても誰も聞き入れてくれないわ」
定期的に開かれるお茶会の場で、レイモンド殿下とアイシャ様に相談を持ちかけた。あらぬ噂に憤慨しているお二人はやはり優しい。私は本題を切り出した。
「私はレイモンド殿下とアイシャ様に幸せになってほしいです。だから、この噂を利用しようと思うのです」
「どういうことだい?」
「私はこれから王太子殿下の婚約者として相応しくない振る舞いを続けます。王妃教育を真面目に受けず、アイシャ様に押し付けます。人目があるところではアイシャ様に嫉妬している振りをします。アイシャ様は私のことについて何を問われても困った笑みを浮かべてください。それだけで周囲は勝手に色々な推測を広げてくれるでしょう」
「そんな…」
「アイシャ様、私とこっそりマナを扱う練習をしましょう。大丈夫です、もう森には入りません。アイシャ様がマナを上手に扱えるようになり、私の評判が地に落ちた頃、レイモンド殿下は私との婚約を破棄し、アイシャ様を新たな婚約者に据えてください」
「ナターシャ、そんな…君だけを悪者にするなんて僕にはできない」
「いいのです。お二人には幸せになってほしいのです。心から想い合うお二人に結ばれてほしいのです」
「だがっ、それじゃあナターシャの…」
ナターシャの幸せは?
レイモンド殿下は恐らくそう言おうとしたのだろうが、俯いて口を固く引き結んだ。レイモンド殿下は揺れていた。私の提案により、アイシャ様との諦めていた未来に光が差したのだ。だけど、その未来を手にするには私を犠牲にせねばならない。
「いいのです。私はお二人が大好きです。お二人が幸せになるのが私の幸せです」
私は朗らかに微笑んだ。レイモンド殿下とアイシャ様も笑っていただろうか。あまりはっきりと覚えていない。
「なんだ?ナターシャ、困ったことがあるのならいつでも頼ってくれよ」
「そうよ、あなたは私のことを思ってあの場所に連れて行ってくれたんだから。酷いわ、何も知らない人が悪意を持って言いふらしているのよ。どれだけ弁明しても誰も聞き入れてくれないわ」
定期的に開かれるお茶会の場で、レイモンド殿下とアイシャ様に相談を持ちかけた。あらぬ噂に憤慨しているお二人はやはり優しい。私は本題を切り出した。
「私はレイモンド殿下とアイシャ様に幸せになってほしいです。だから、この噂を利用しようと思うのです」
「どういうことだい?」
「私はこれから王太子殿下の婚約者として相応しくない振る舞いを続けます。王妃教育を真面目に受けず、アイシャ様に押し付けます。人目があるところではアイシャ様に嫉妬している振りをします。アイシャ様は私のことについて何を問われても困った笑みを浮かべてください。それだけで周囲は勝手に色々な推測を広げてくれるでしょう」
「そんな…」
「アイシャ様、私とこっそりマナを扱う練習をしましょう。大丈夫です、もう森には入りません。アイシャ様がマナを上手に扱えるようになり、私の評判が地に落ちた頃、レイモンド殿下は私との婚約を破棄し、アイシャ様を新たな婚約者に据えてください」
「ナターシャ、そんな…君だけを悪者にするなんて僕にはできない」
「いいのです。お二人には幸せになってほしいのです。心から想い合うお二人に結ばれてほしいのです」
「だがっ、それじゃあナターシャの…」
ナターシャの幸せは?
レイモンド殿下は恐らくそう言おうとしたのだろうが、俯いて口を固く引き結んだ。レイモンド殿下は揺れていた。私の提案により、アイシャ様との諦めていた未来に光が差したのだ。だけど、その未来を手にするには私を犠牲にせねばならない。
「いいのです。私はお二人が大好きです。お二人が幸せになるのが私の幸せです」
私は朗らかに微笑んだ。レイモンド殿下とアイシャ様も笑っていただろうか。あまりはっきりと覚えていない。
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