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第四話 噂
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「う、ん…私は…?」
「アイシャ様っ!よかった…うっ、ごめんなさい。ごめんなさい…」
「ナターシャ…泣かないで」
「でもっ、でも…うっうっ」
アイシャ様が死んでしまっていたら、そう思うと急に背筋が冷たくなり、恐怖で涙が流れて止まらなくなった。そんな私をアイシャ様は優しく抱きしめてくれた。
「ナターシャ様ー!アイシャ様ー!!」
その時、お城の方からたくさんの大人が走ってきた。姿を消した私たちを血眼になって探していたらしい。
こんなにも多くの人に迷惑をかけたのかと、私はますます反省して小さくなった。
「アイシャ…!」
大人たちをかき分けて、レイモンド殿下がアイシャ様に駆け寄った。
「ナターシャも。無事でよかった」
「レイモンド殿下、ごめんなさい。私のせいで…」
私たちの無事を確認してほっと安心した様子のレイモンド殿下に、私はただ謝るしかできなかった。怪訝な顔をするレイモンド殿下に、慌ててアイシャ様が弁明してくれた。
「違うんです。ナターシャは私を森の奥の泉まで連れて行ってくれただけで…」
ざわり
その言葉に周囲の大人たちが騒ついた。
この森の奥深くは精霊界と繋がっており、精霊界は聖域とされていた。そして人間が聖域に足を踏み入れることはもってのほか。ましてやマナの扱いが苦手な人間はマナの濃い場所に行くだけで命が危ぶまれる。これはさっきシルフィード様に教えてもらったことだけど、流石に大人たちは知っていたようだ。
後から知ったことだが、学園に入って精霊学でまず始めに学ぶことらしい。私が入学するのはこの四年後、十二歳になってからだ。
この日から私はあらぬ噂に晒されることとなった。どこをどう解釈してそうなったのか、最終的な噂話の内容はこうだ。
『王太子殿下と仲睦まじいアイシャ様に嫉妬したナターシャ様が、聖域にアイシャ様を連れて行き亡き者にしようとした』
この噂に激怒したのは当のアイシャ様とレイモンド殿下だった。だけど、私はこの噂を利用してやろうと考えた。
「アイシャ様っ!よかった…うっ、ごめんなさい。ごめんなさい…」
「ナターシャ…泣かないで」
「でもっ、でも…うっうっ」
アイシャ様が死んでしまっていたら、そう思うと急に背筋が冷たくなり、恐怖で涙が流れて止まらなくなった。そんな私をアイシャ様は優しく抱きしめてくれた。
「ナターシャ様ー!アイシャ様ー!!」
その時、お城の方からたくさんの大人が走ってきた。姿を消した私たちを血眼になって探していたらしい。
こんなにも多くの人に迷惑をかけたのかと、私はますます反省して小さくなった。
「アイシャ…!」
大人たちをかき分けて、レイモンド殿下がアイシャ様に駆け寄った。
「ナターシャも。無事でよかった」
「レイモンド殿下、ごめんなさい。私のせいで…」
私たちの無事を確認してほっと安心した様子のレイモンド殿下に、私はただ謝るしかできなかった。怪訝な顔をするレイモンド殿下に、慌ててアイシャ様が弁明してくれた。
「違うんです。ナターシャは私を森の奥の泉まで連れて行ってくれただけで…」
ざわり
その言葉に周囲の大人たちが騒ついた。
この森の奥深くは精霊界と繋がっており、精霊界は聖域とされていた。そして人間が聖域に足を踏み入れることはもってのほか。ましてやマナの扱いが苦手な人間はマナの濃い場所に行くだけで命が危ぶまれる。これはさっきシルフィード様に教えてもらったことだけど、流石に大人たちは知っていたようだ。
後から知ったことだが、学園に入って精霊学でまず始めに学ぶことらしい。私が入学するのはこの四年後、十二歳になってからだ。
この日から私はあらぬ噂に晒されることとなった。どこをどう解釈してそうなったのか、最終的な噂話の内容はこうだ。
『王太子殿下と仲睦まじいアイシャ様に嫉妬したナターシャ様が、聖域にアイシャ様を連れて行き亡き者にしようとした』
この噂に激怒したのは当のアイシャ様とレイモンド殿下だった。だけど、私はこの噂を利用してやろうと考えた。
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