夏花

八花月

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14.訪問者たち

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「いえ、山名さんは良いでしょうけど、僕はここで寝るわけにいかないじゃないですか。どの部屋で寝たらいい、とかあれば武音さんに教えていただきたいな、と……」

「何を言ってるんですの? 萩森さんにはここに居ていただかなくては困ります」

 雅樂がピシャリと言った。

「何のために自分がここにいるとお思いですの?」
「な、何のためって……何のためなんですか?」

「ねぇ雅樂ちゃん。そもそもなんではぎもっちゃんここに残したり、雅樂ちゃん自ら荷物持ってここに来たりしたの?」

 乙女の言を聞くと、雅樂は眉間に皺を寄せ、難しい顔になる。

「そ、それは、なんと言いますか、その、およばずながらですね……」

 しばらくあたふたしていたが、

「あの、簡単に言いますと、乙女様のボディガードですわ」
と、観念して言った。

「ボディガード?」
「……って?」

 怪訝な様子の乙女と萩森を見て、雅樂は首を振る。

「乙女様はともかく……萩森さんは無神経すぎますわ」

「ど、どういうことですか?」

 雅樂は、心底呆れたと言いたそうに、深くため息をつく。

「まったく、みなまで言わせないでくださいませ。……乙女様は女性ですのよ? しかもとびきり麗しい妙齢の。いくらお客様とはいえ、その、男性二人を一つ屋根の下で一緒にするというのは……」

「ああ、そういう。でも彼らそういう悪い人間には見えませんが」
「結果論ですわ」

「っていうか、僕も男なんですけど……」
「萩森さんは大丈夫です」 

 きっぱりと、雅樂は言い切った。

「信用されてんじゃん」

 ハハハ、とのんきに笑っている乙女を、雅樂はキッと厳しい目で見つめる。

「乙女様。わたくし、乙女様を心の底から信頼しておりますし、あまりのことでなければ、反対もいたしませんが……ご自分のことはもっと大切にしてくださいませ。あまりに不用心と申しますか……」

「ああ、いや、し、心配してくれんのは嬉しいよ。素直に。ホント。ありがとね」

 乙女は慌てて笑顔で取り繕った。
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