悪役令嬢vs腹黒王子〜時々性悪ヒロインと毒舌執事〜

そら。

文字の大きさ
上 下
36 / 38
3.夜の出会い

7.悪役令嬢と毒舌執事の報告会

しおりを挟む
屋敷に戻り、着替えを済ませてから私とジルは、お茶を飲みながら情報共有をした。

「はぁ!?じゃあアレン王子に接触しちゃったんですか!?いや、そもそも怪しい人物がいても絶対に手を出さないでくださいって言いましたよね!?危険な目に遭いそうなったら警告灯を上げてくださいって言いましたよねっ!!?」

ジルは顔を真っ赤にして責め立ててきた。
ここまで怒るジルも珍しい。まあ、それだけ危なかったってことかしら。でも過ぎてしまった事はしょうがない。

「もー、うるさいわよ。そんな事してる余裕なかったの。正体もバレなかったし、大事にもならなかったからいいじゃない」


「はあー…まじでこの令嬢ありえねぇ…。今日の事が旦那様にバレたら、俺の首が吹っ飛びますよ」

ジルは頭を抱えてソファに倒れ込んだ。

「だから、ごめんって。これでも心から反省しているのよ。次回からもっと慎重に行動するわ」

私はジルの背中を優しく撫でながら笑顔で謝罪した。するとジルは軽蔑するような顔で私を睨みつけた。

「…はぁ?次回?」

「ええ、話したでしょ?刺客のボスが学生寮に潜入してるって。明日、またキースの姿になって学生寮に潜入しようと思ってるの。ボスのライアンとやらをとっ捕まえてやるわ!」

「…それ、俺が『分かりました、協力します』って言うと思ってるんですか?…いや、答えなくていいです。そんな計画は断固反対です。もう二度と異性転換薬は使用しないでください。夜の外出も禁止です。もし、それでも出掛けるっていうならキーナ様をロープで吊し上げます」

目が据わったジルは早口で淡々と答えた。

うーん…、これは本気で怒ってるわ。こういう時のジルの意思は固い。
ジルの協力がなければ学生寮への潜入も難しい…。
でもジルの攻略方法は意外と簡単なのよね。

「そうよね…、迷惑かけてごめんなさい。ところで今日のお茶は珍しい味だけど美味しいわ。どこで購入したの?」

「ああ、それはさっき露店街で買ったんです。異国の茶葉を取り扱っている店があったので」

ジルはぶすっとした表情で答えた。

「そうなのね。でもさすがジルの選んだお茶だわ。香りも味もすごく良い。やっぱりジルは、そこら辺の貴族よりすごくセンスがいいわ」

「…まあ、キーナ様やハンドリー家の皆様の好みは把握していますし、…貴族教育も独学で学んでますし、日頃から情報収集もしてますし、これくらい朝飯前と言っても過言ではないというか…」

お、ジルの機嫌が良くなってきた。というか、調子に乗ってきたわね。

「わぁー、自慢の執事だわぁ。本当にジルは才能がある上に勤勉家ね。私も見習わないと。ところで、その懐中時計も素敵ね。初めて見るけど、前から持っていたの?」

「ああ、これも露店街で購入したんです!異国で有名な彫刻家の作品だそうです。思わず一目惚れしちゃって!それからこの万年筆も見てください!書きやすいのにこの美しい細工っ。これも同じ彫刻家の作品なんですよ!ひとつひとつ手作りなので同じ物はないんですよ!実はかなりの出費になっちゃいましたが、後悔はしてませんよー!」

ジルはキラキラした目で嬉しそうに購入品紹介を始めた。ああ、ジル、貴方はなんてチョロい執事なの。

「あら、素敵!!…そういえばハンドリー家従事者規程10ヶ条の第4条は覚えてる?」

「もちろんです!第4条、ハンドリー家使用人は従事中に私用の買い物をした場合は、物品の没収及び減給…、あ…。」

ジルの顔は真っ青になり固まった。

「あらあら。ジルったら従事中に購入したのね。残念だけど、お父様に報告しなくちゃ…」

「…くっ。さすが悪役令嬢…。執事イジメもお手の物ですね!!」

「別に虐めてないでしょ。ていうか、露店街の調査をお願いしたのに買い物を楽しんでる貴方が悪いのよ。お父様には黙っててあげるから貴方も私に協力してよ」

「言っときますけど、俺はちゃんと調査を終わらせてから買い物しましたからね!ベリー王国の刺客だって6人捕まえて駐屯地に置いてきましたしね!」

「あら、すごいじゃない。さすが自慢の執事だわ。お礼に今日の購入品の代金は私が全部支払うわ。その代わり明日もよろしくね」

私は財布から札束を取り出して、にっこり微笑んでジルに渡した。

「…はい、喜んで」

全然納得していない表情のジルだけど、手は素直に札束を受け取った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

処理中です...