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2.婚約破棄まであと5ヶ月
3.悪役令嬢の恋心
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そしてアレンとの約束の日はあっという間に訪れた。
メアリーの指導は相変わらず大変だったが、こういうイベントがあればそれも頑張れた。
髪型、肌ツヤ、化粧、新調したドレス、控えめな香水どれも完璧だ。
アレンと約束した日から準備をしてきた甲斐がある。
自室を出るとすでにジルが控えていた。
「おお、今日は一段と気合が入ってますね。アレン王子とのデートがよほど楽しみだったんですねー。」
「べっ、別にそんなのじゃないわ。王子の婚約者としての最低限のマナーよ。それに私が楽しみなのはアレン様とのデートじゃなくて食事よ。」
ジルに図星を突かれて少し動揺した。
アレンとのデートはかなり久しぶりで、少し、いや、かなり楽しみだった。
婚約破棄の話を聞いてしまった日から彼への想いは薄れていったような気がしていたが、悔しいことに私はまだアレンが好きなのだ。
最近では私にだけ冷たい彼のどこが好きだっかも分からなくなってきたが、それでも目が合えばドキドキするし、一緒に話をするだけで心底嬉しい。
子供の頃からの恋心はそんなに簡単に消えてくれないのだ。
「キーナは俺とのデートより食事の方が楽しみなのか。それは残念だ。」
「え?」
私はその声に凍りついた。
廊下の曲がり角から現れてのは無表情のアレンだった。
「あ、言い忘れましたが、アレン王子がすでにお迎えに来てくださいましたよ。」
後ろでジルが戯けたように付け加えた。
言い忘れるな!!
本当にこいつクビにしてやるっ!
私はジルを睨んで怒りを訴えたが、ジルは笑顔で気付かないフリをしている。
「では、今日は食事より俺とのデートを楽しませる努力をしないといけないな。」
無表情だったアレンは不敵に笑う。
「いや、あの、今のは…その…」
私がパニックになりながら言い訳を考えてると、アレンは私の手を握り「言い訳などするな。さあ、出掛けるぞ。」と笑った。
あ…、久しぶりにアレン様の笑顔をみた。
握られたアレンの手は子供の頃より大きく、ゴツゴツして骨ばった手だった。そして初めて繋いだ時より温かい。
私の心臓が大きく動き出す音がした。
メアリーの指導は相変わらず大変だったが、こういうイベントがあればそれも頑張れた。
髪型、肌ツヤ、化粧、新調したドレス、控えめな香水どれも完璧だ。
アレンと約束した日から準備をしてきた甲斐がある。
自室を出るとすでにジルが控えていた。
「おお、今日は一段と気合が入ってますね。アレン王子とのデートがよほど楽しみだったんですねー。」
「べっ、別にそんなのじゃないわ。王子の婚約者としての最低限のマナーよ。それに私が楽しみなのはアレン様とのデートじゃなくて食事よ。」
ジルに図星を突かれて少し動揺した。
アレンとのデートはかなり久しぶりで、少し、いや、かなり楽しみだった。
婚約破棄の話を聞いてしまった日から彼への想いは薄れていったような気がしていたが、悔しいことに私はまだアレンが好きなのだ。
最近では私にだけ冷たい彼のどこが好きだっかも分からなくなってきたが、それでも目が合えばドキドキするし、一緒に話をするだけで心底嬉しい。
子供の頃からの恋心はそんなに簡単に消えてくれないのだ。
「キーナは俺とのデートより食事の方が楽しみなのか。それは残念だ。」
「え?」
私はその声に凍りついた。
廊下の曲がり角から現れてのは無表情のアレンだった。
「あ、言い忘れましたが、アレン王子がすでにお迎えに来てくださいましたよ。」
後ろでジルが戯けたように付け加えた。
言い忘れるな!!
本当にこいつクビにしてやるっ!
私はジルを睨んで怒りを訴えたが、ジルは笑顔で気付かないフリをしている。
「では、今日は食事より俺とのデートを楽しませる努力をしないといけないな。」
無表情だったアレンは不敵に笑う。
「いや、あの、今のは…その…」
私がパニックになりながら言い訳を考えてると、アレンは私の手を握り「言い訳などするな。さあ、出掛けるぞ。」と笑った。
あ…、久しぶりにアレン様の笑顔をみた。
握られたアレンの手は子供の頃より大きく、ゴツゴツして骨ばった手だった。そして初めて繋いだ時より温かい。
私の心臓が大きく動き出す音がした。
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