上 下
100 / 112
竜人の子、旅立つ

27.愛情表現

しおりを挟む
ピンポーン。

再び玄関のチャイムが鳴りシロが出ると、訪ねてきたのはユーロンだった。

「勉強は捗っているか?近くに来たから食事を買ってきたんだ。スノウとルーフの分もあるぞ」

そういってユーロンは弁当の入った袋をシロに渡した。

「ありがとうございます。上がっていきますか?シャオルさんも来てますよ」

「な、シャオルの奴…!あいつ、またスノウに会いに…。はあー、だからさっき色々聞いてきたのか。迷惑かけてすまないな、シロ」

ユーロンは呆れ気味にブツブツ言いながら「じゃあ少し寄らせてもらおうか」と言って部屋に入った。


リビングではシャオルがスノウを熱っぽく見つめている。

「あのー…、シャオル君?そんなに見つめられると食べにくいんだけど…」

そう言いつつもスノウはドーナツに口を付ける。

「久しぶりに会えたんだから、少しくらい見つめさせてください」

シャオルがスノウの唇に手を伸ばそうとした時、ユーロンのゲンコツがシャオルの頭に直撃した。

ガツンッ!!「痛っ!!」

両手で頭を押さえるシャオルの耳をユーロンが引っ張る。

「シャオル!お前はまたスノウを困らせているのかっ。というかシロの勉強の邪魔になるだろう!!」

「ち、父上!?痛い痛い痛いっ!俺だって今来た所だし、すぐ帰りますよ。それにスノウさんと全然会えないんですもん!大目に見てください!」

「見るか!何が会えないんですもん、だ!スノウはお前の相手をするほど暇じゃない。お前だって学校の課題が山ほど出ているだろう!」

ユーロンとシャオルの親子らしいやり取りにシロは思わず笑った。
初めてシャオルと会った時は物静かで大人なイメージだったが、こんな子供らしい一面も残っているんだと可笑しくなった。となりでスノウもクスクスと笑っている。

「シャオルさんって意外と子供っぽい一面があるんですね」

シロが話しかけると、スノウは「ね、ああいうところが可愛いよね」と愛おしそうに笑った。
シロは少し考えてから「…俺は別に可愛いとは思わなかったですけど、スノウさんってシャオルさんが好きなんですか?」と聞いた。

「へ?え!?いや、そういう意味じゃなくて…!!や、やだなーシロ君!変な事言わないでよ!」

顔を赤くして誤魔化すスノウを無視してシロは続けた。

「でもシャオルさんもスノウさんの事が大好きですよね。わざわざスノウさんの好きなドーナツ買ってきたり、忙しくても合間を縫って会いにきたり。なんか愛って感じでキュンとしました。すごく勉強になります」

シロもルーフに対して愛情表現をもっと分かりやすく伝えていこうと思った。
時間がないとか、ルーフがそっけないとか言い訳なんてしていられない。騎士学校に進学したら、最低3年間は会えなくなるんだ。だったら今出来る事を最大限にするべきだ。

「ちょ…ちょっとシロ君。僕とシャオル君は別に…その、何もないからね?ね、聞いてる?」


ガチャ…。

扉が開く音がして振り返ると、眉間に皺を寄せたルーフが帰ってきた。

「おいおい、いつから俺の家は竜人の溜まり場になったんだ」

「ルーフ!おかえり!!」

シロはルーフに飛びついた。

「重い!なんだよ急に!!」

怒るルーフの頬にシロはキスをした。

「愛情表現!大好きだよ、ルーフ!」

シロの熱烈な歓迎にルーフは呆れながらも「うぜぇほど知ってるよ」と笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

恋のキューピットは歪な愛に招かれる

春於
BL
〈あらすじ〉 ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。 それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。 そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。 〈キャラクター設定〉 美坂(松雪) 秀斗 ・ベータ ・30歳 ・会社員(総合商社勤務) ・物静かで穏やか ・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる ・自分に自信がなく、消極的 ・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子 ・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている 養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった ・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能 二見 蒼 ・アルファ ・30歳 ・御曹司(二見不動産) ・明るくて面倒見が良い ・一途 ・独占欲が強い ・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく ・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる ・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している ・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った 二見(筒井) 日向 ・オメガ ・28歳 ・フリーランスのSE(今は育児休業中) ・人懐っこくて甘え上手 ・猪突猛進なところがある ・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい ・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた ・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている ・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している ・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた ※他サイトにも掲載しています  ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です

うさキロク

雲古
BL
サイコパス鬼畜サボり魔風紀委員長に馬車馬の如く働かされながらも生徒会長のお兄ちゃんに安らぎを得ながらまぁまぁ平和に暮らしていた。 そこに転校生が来て平和な日常がちょっとずつ崩れていくーーーーーーーー

瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜

Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、…… 「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」 この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。 流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。 もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。 誤字脱字の指摘ありがとうございます

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで

橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。 婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、 不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。 --- 記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘! 次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。 --- 記憶は戻りますが、パッピーエンドです! ⚠︎固定カプです

処理中です...