竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人の子、旅立つ

20.川に落ちる

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家を飛び出したルーフは、街中を歩いていた。

シロが自分から離れていく。
いつかそんな日が来ることは分かっていたはずなのに。
騎士学校へ行きたいと言ったシロを思い出すと、心臓を掴まれるような痛みが走る。

(ー…くそっ、なんで胸が痛ぇんだよ)

痛みから逃げたくて、歩く速度はどんどん速くなる。

「待ってよー!」

聞こえてきた声に思わず振り返ると、声の主は知らない女性。恋人らしき男性を追いかけて、じゃれながら手を繋ぐ。

楽しそうに笑い合う2人に、自分とシロの姿を重ねてしまう。

「……っくそ!」

行き場のない感情に襲われ、ルーフは走り出した。
行き交う人の肩に当たり、暴言を吐かれても無視して走った。
しかし入院生活で鈍った足がもつれてバランスを崩し、勢いあまって街中を流れる浅瀬の川に転げ落ちた。

盛大に水しぶきをあげて落ちたルーフに、野次馬が集まりだす。

「おいおい、酔っ払いが落ちたってよー!見てみろよ!」

「本当だっ、だぜぇな!何やってんだよ」

「馬鹿だなぁ、お前!あはははっ、大丈夫かー?」

普段ならすぐに言い返すルーフは、川に落ちたまま下を向いていた。
周りの声など聞こえていなかった。

頭に響くのは、先ほどジェスに言われた言葉。

ー…『シロ坊が決めた事を何故お前が否定するんだ?お前に何の権利がある?シロ坊の人生はシロ坊のもんだ。それをお前が否定する方がおかしいだろう』

本当にその通りだ。
シロは一時的に預かってるつもりだったのに。
シロの『好きだ』と言う言葉を信じて、いつの間にか、これからも一緒に暮らしてやろう、なんて思ってしまっていた。

魔王が消えた日、もう二度と誰かと生きていこうなんて希望を持たない、と決めていたのにー…。


「ー…はは、情けねぇな」

目に水が入り、景色が歪む。
顔にかかった水を拭き取ろうと顔を拭うと、その腕を掴まれた。

「酔っ払いが川に落ちたと聞いて来たが、お前のことか、ルーフ。ー…ん?でも今日は珍しく酒臭くないな」

腕を掴んだのは、ユーロンだった。

「…離せよ」

ルーフは静かな声で腕を振り解いたが、今度はユーロンの小脇に抱えられ、川から引き上げられた。
ユーロンは野次馬を追っ払い、おせっかいにも浄化と乾燥の魔法をルーフにかけて、濡れた体を乾かした。
腹が立つほど、心地良く気持ちの良い、優しい魔法がルーフを包み込む。

「どうした、ルーフ。随分静かだな」

「…別に。俺は助けてくれなんて頼んでないから、お礼は言わねぇぞ?」

「はは、そんな事、お前に期待していない。それより、どうだ。ちょっと付き合わないか?奢るぞ」

ユーロンは片手で飲むポーズをした。
竜人こんな奴と一緒に飲む気分ではないが、タダ酒が飲めるのは魅力的だ。
ルーフは少し悩んで、「…行く」と答えた。
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