竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人の子、旅立つ

12.アスディアへ

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「やめろ!!離せっ!!」

ルーフの怒鳴り声に、シロはハッとして振り向いた。
ありえない光景にシロは言葉を失った。

スノウが拘束魔法を使って、ルーフを捕らえていたのだ。

「スノウさん!何してるんですか!?」

シロが慌てて駆け寄るが、ルーフも拘束魔法から逃れようとオオカミ姿になって必死に抗っている。
しかしスノウは、更に拘束魔法を強めた。

「離せっ!!」

ルーフは怒鳴り声と共に、スノウに向かって攻撃魔法を放った。スノウは冷静に攻撃魔法を交わし、睡眠魔法をルーフにかけた。
一瞬で体の力が抜け、眠りに落ちたルーフの体をシロがすぐに支えた。

「スノウさん、どういうつもりですかっ!?」

スノウを睨み上げたシロの足元には、闇魔力のオーラが浮かび上がる。
しかしスノウの辛そうな表情を見て、シロは嫌な予感がした。

スノウは、シロの腕の中で気を失ったように眠るルーフに近づき、左目の傷跡を撫でた。

「…聖剣の傷跡が、ルーフさんの生気を奪い始めている」

「え…」

シロの嫌な予感は的中し、闇魔力のオーラが、スッと消えた。不安と恐怖で心臓を刺すような痛みが走った。

「そんなっ…。生気を奪い始めているって…、どうすれば…」

以前、竜人のルイから聞いた言葉が蘇る。

ー…『対魔族用の聖剣は致命傷を与えなくても、傷口から徐々に魔力や生命力を奪っていく可能性がある。数年後、数十年後に体に影響を及ぼす場合がある』

ルーフの左目の上には、いまも聖剣の傷跡がくっきりと残っている。

(この傷跡が…、ルーフの生命力を奪っている…)

ルーフを助けたいのに助ける術が分からない。
ルーフを抱くシロの手は震え、周りの音が遠退き、呼吸は乱れ、思考回路も鈍くなる。


「…ロ君!シロ君!しっかりして!ルーフさんは大丈夫だから!」

パニックになりかけたシロの背中を、スノウが優しく撫でた。

「ほら、ゆっくり深呼吸して。大丈夫、大丈夫。ルーフさんは必ず助かるから」

スノウの穏やかな声と温かい手が、シロを少しずつ落ち着かせ、深呼吸をして呼吸を整える。

「…はぁ…。すみません…、取り乱してしまって」

「ううん、気にしないで。僕の言い方が悪かった。ごめんね。ルーフさんは、すぐに治療すれば問題ないよ。でもアスディアにある施設じゃないと治療ができないんだ。かなり遠いけど、…シロ君も一緒に行くかい?」

そんな事、聞かれるまでもない。
シロはルーフを強く抱きしめて頷いた。

「もちろんです!」






ー…もう半日以上、飛行しているだろうか。

シロはスノウの後に付いて、アスディアに向かって飛んでいた。
はるか上空に浮かぶ竜人の国アスディアは、思った以上に遠い場所にあるらしい。

「シロ君!あと少しで着くけど、まだ頑張れそう?」

スノウが振り返り、シロを気遣う。

「はい。俺は大丈夫です。スノウさんも絶対無理しないでくださいね」

「あはは、分かってるよ。何しろ僕の背中には、君の大好きな人を乗せてるからね」

ルーフはスノウの背中で、気持ち良さそうに眠っている。
スノウに睡眠魔法をかけられた時は、驚いてしまったが、竜人嫌いのルーフが大人しくアスディアに行くわけがない。きっと大暴れして治療さえも拒むだろう。
スノウの咄嗟の判断は間違っていなかった。
それにシロは、傷跡の異変にも気付けなかった。

ルーフを守りたいなんて思っていたのに…。
自分はなんて不甲斐ないんだろう。
スノウがいなければ、最悪、手遅れになっていたかもしれない…。

シロは悔しさとやるせない気持ちで、小さく「ごめんなさい…」と呟いた。
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