竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

文字の大きさ
72 / 112
竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

46.花火と嫉妬

しおりを挟む
「ユーロンさん、スノウさん!こんばんは。お二人も夏祭りに来たんですか?」

シロが立ち上がって挨拶すると、左頬が赤くなっているユーロンはため息をついた。

「だったら良かったんだがな。夏祭りの警備で駆り出されたんだ。今年はかなり参加者が多いせいで、そこら中でトラブルがあるんだ」

「そうそう。ユーロンさん、さっきも酔っ払い同士の喧嘩に止めに入って殴られちゃったんですよね」

スノウは自分の左頬を指しながらクスクスと笑った。

「ああ、それで赤くなってるんですね。治癒魔法かけなくて大丈夫ですか?」

「そんなヤワじゃない。気にするな。ルーフ、お前も飲み過ぎるなよ」

ユーロンに指摘され、ルーフは「へいへい」と面倒くさそうに返事をした。

すると大きな打ち上げ花火が上がり、辺り一面が花火の光に包まれた。

「お、いよいよ花火が始まりましたね。今年はかなりの数の花火が上がるそうですよ。事故なく無事終わればいいんですけどねぇ」

スノウは少し困った顔をしながら花火を見上げた。

「そうだな。さて、俺たちもそろそろ警備に戻るぞ。これからもっと人が増える。あー…、こりゃ迷子も増えるぞ…」

ユーロンが腕を組んで見つめた先には、魔族の子供が泣きながら1人で歩いている。

「じゃあな、2人共。シロ、お前も迷子になるなよ!」

ユーロンとスノウは子供の方へ足早に向かって行った。

迷子になるなよ…、って。

「…ユーロンさん、俺のこと子供扱いしすぎだと思わない?」

シロは不満気に口を尖らせルーフの隣に座った。

「へへ、何百年も生きてるアイツから見りゃお前なんてまだまだ小さい子供みてぇなモンなんだろ。さて、俺たちもルカの酒場に行こうぜ。あそこの屋上なら人も少ないからな。ほら、行くぞ」

そう言ってルーフは立ち上がり、シロに目線を向ける。
ルーフに見つめられると、シロはいつも満たされた気持ちになる。ああ、幸せだな、とシロが思った瞬間、また大きな花火が上がった。
シロを捉えていた金の瞳は、すぐに花火に向いてしまった。

「おおー、すげぇ」

ルーフの褐色の肌と白銀の髪が、赤い花火の光に包まれた。その姿にシロは美しさと無性の寂しさを感じた。

無意識に動いた体は、ルーフを後ろから抱きしめていた。

「うわっ!なんだよ急に!」

「……別に。ちょっと嫉妬しただけ」

「嫉妬?何に?」

「…花火」

「はー?意味分かんねぇんだけど」

花火が次々と上がり始めたが、ルーフは花火に背を向けて呆れながらシロを見た。シロもルーフをしばらく見つめてから、さらに強く抱きしめた。

「…別に分かんなくてもいいよ」

シロ自身、自分が訳の分からないことを言っている自覚はあった。ただ、ルーフの関心が自分より花火に行ってしまった事が寂しかったのだ。
そしてまた自分に戻ってきた。たったそれだけの事が嬉しくて安心できる。

「なぁ、もしかして拗ねてんの?噛み付いたり拗ねたりお前はやっぱりまだまだ子供だな。それよりもう行こうぜ。人も増えてきたし本当にはぐれそうだな。ほれ、手繋いでやるから付いておいで、お子ちゃまシロ君」

ルーフは揶揄うように笑ってシロの手を繋いだ。
シロはムッとして眉間に皺を寄せた。

「…お子ちゃまじゃない」

「ふーん、じゃあ手は繋がなくていいよな」

ルーフはシロの手をパッと離して歩き出そうとしたが、すぐにシロに手を掴まれた。

「手は…繋ぎたい」

シロの素直な反応に、ルーフは満足気に笑ってシロの頭を撫でた。

「へへっ、俺は素直なシロの方が好きだぞ。自分の気持ちをちゃんと言えて偉いなー。いい子いい子ー」

「もー、子供扱いしないでよ!…でも俺、ルーフに撫でられるのすごい好き。もっと撫でて」

シロがルーフに頭を向けるとパチンと叩かれた。

「いてっ」

「アホか。調子乗んな。俺は早く酒が飲みたいんだからいい加減行くぞ」

「えー、じゃあ俺がルーフを撫でてあげる」

「あははっ、なんだそりゃ。いらねぇよ!」

手を繋いだ2人は、花火の光に次々と照らされる石畳の街を笑いながら歩いて行った。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...