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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
45.噛み跡
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ミール王国に戻ってきたシロは、早速酒を買いに行ったルーフを待ちながら、目の前を行き交う人々を眺めていた。
「今年は花火の数をかなり増やしたらしい。すごい量の火薬が使われているそうだ」
「まあ、戦争もない今だから火薬も余ってんだろ。平和でいい事じゃねぇか」
「しかし人が多すぎて迷子やトラブルも多いみたいだぞ。騎士団の連中も大忙しさ。竜人騎士様たちも駆り出されてるってよ」
そんな話し声を聞きながらシロは周りを見渡した。
確かに今年は本当に人が多い。
美味しそうな匂いの屋台や色鮮やかな雑貨が並ぶ露店が所狭しと並び、普段は人気のない細い道まで賑わっている。子供連れの家族は迷子にならないよう、子供の手をしっかり握って歩いてる。
道ゆく人々の楽しそうな顔を見ていると、シロもつられて顔がほころんでくる。
(そういえばルカとアリスはちゃんと待ち合わせできたかな。落ち着いた場所で花火見れるといいけど…)
「ほれ」
シロの目の前に紙袋が現れ、顔を上げればルーフがいた。
「なにこれ?」
紙袋を受け取り、中を開ければベーコンと野菜たっぷりのサンドイッチが入っていた。
「…これって…」
「お前それ好きだったろ。ついでに買ってきた」
そう言ってルーフは、シロの隣に座り買ってきた酒を飲んだ。
そのサンドイッチは、シロとルーフが初めて夏祭りに来た時に一緒に食べたサンドイッチだった。
あの時、シロは何度も「美味しい、美味しい」と言って食べていた。たかがサンドイッチを美味しいと感動しながら食べるシロの姿が、ルーフには印象的だった。その店をたまたま見つけたので、懐かしさもあり買ってきたのだ。
しかし紙袋を開けたまま動かないシロを見て「なんだよ、いらねぇなら俺が食うけど…」と紙袋に手を伸ばすと、その手をシロに掴まれ抱き寄せられた。
「…覚えてくれてたんだ。嬉しい。ルーフのそういう所、本当好き…。もー…、大好き」
シロは嬉しくて、ルーフの肩に頭をグリグリと擦り付けた。
あの日、初めての夏祭りは、シロにとって全てが宝物のような思い出だった。まさか、その時のことをルーフも覚えていて、シロの為にサンドイッチまで買ってきてくれた。
気を抜いたら涙が出そうで、シロは必死に堪えながらルーフを抱きしめた。
「サンドイッチぐらいで大袈裟なやつだな。そんなに腹減ってたなら早く食えよ。おい、もう離せ。お前、力強すぎ!」
「やだ。離さない」
「離せっ!暑苦しい!」
「無理」
ルーフはシロの胸板を押すがビクともしない。シロを引き剥がすのを諦め、酒を飲みながら「もー、勝手にしろ」とため息をついた。
酒を嚥下するルーフの喉元を眺めながらシロは思った。
(うう…、このぶっきらぼうな優しさがすごく好きだ。いい加減、俺のものにならなってくれないかな)
「…ねぇ、ルーフ」
「何だよ」
「ちゅーしていい?」
「何でだよ」
「好きだから。していい?」
「だめ」
「……隙あり!」
目も合わせず適当にあしらうルーフが少し憎らしくなって、シロはルーフの首に噛み付いた。
「痛っ!何すんだよ!」
「えへへ、愛情表現?みたいな」
「どこが愛情表現だよ!」
「いてててっ!」
ルーフに頬を引っ張られ、シロはやっと体を離した。
ルーフは「竜人のくせに犬みてぇな奴だな」と文句を言いながら、噛まれた跡を摩っている。
シロは「ごめん、ごめん」と笑いながら、少し赤くなった噛み跡が一生消えなければいいのに、とこっそり願った。
「お前たち、何じゃれあってるんだ?」
「ふふ、相変わらず仲良しですねー」
聞き覚えのある声に2人が顔を上げると、ユーロンとスノウが立っていた。
「今年は花火の数をかなり増やしたらしい。すごい量の火薬が使われているそうだ」
「まあ、戦争もない今だから火薬も余ってんだろ。平和でいい事じゃねぇか」
「しかし人が多すぎて迷子やトラブルも多いみたいだぞ。騎士団の連中も大忙しさ。竜人騎士様たちも駆り出されてるってよ」
そんな話し声を聞きながらシロは周りを見渡した。
確かに今年は本当に人が多い。
美味しそうな匂いの屋台や色鮮やかな雑貨が並ぶ露店が所狭しと並び、普段は人気のない細い道まで賑わっている。子供連れの家族は迷子にならないよう、子供の手をしっかり握って歩いてる。
道ゆく人々の楽しそうな顔を見ていると、シロもつられて顔がほころんでくる。
(そういえばルカとアリスはちゃんと待ち合わせできたかな。落ち着いた場所で花火見れるといいけど…)
「ほれ」
シロの目の前に紙袋が現れ、顔を上げればルーフがいた。
「なにこれ?」
紙袋を受け取り、中を開ければベーコンと野菜たっぷりのサンドイッチが入っていた。
「…これって…」
「お前それ好きだったろ。ついでに買ってきた」
そう言ってルーフは、シロの隣に座り買ってきた酒を飲んだ。
そのサンドイッチは、シロとルーフが初めて夏祭りに来た時に一緒に食べたサンドイッチだった。
あの時、シロは何度も「美味しい、美味しい」と言って食べていた。たかがサンドイッチを美味しいと感動しながら食べるシロの姿が、ルーフには印象的だった。その店をたまたま見つけたので、懐かしさもあり買ってきたのだ。
しかし紙袋を開けたまま動かないシロを見て「なんだよ、いらねぇなら俺が食うけど…」と紙袋に手を伸ばすと、その手をシロに掴まれ抱き寄せられた。
「…覚えてくれてたんだ。嬉しい。ルーフのそういう所、本当好き…。もー…、大好き」
シロは嬉しくて、ルーフの肩に頭をグリグリと擦り付けた。
あの日、初めての夏祭りは、シロにとって全てが宝物のような思い出だった。まさか、その時のことをルーフも覚えていて、シロの為にサンドイッチまで買ってきてくれた。
気を抜いたら涙が出そうで、シロは必死に堪えながらルーフを抱きしめた。
「サンドイッチぐらいで大袈裟なやつだな。そんなに腹減ってたなら早く食えよ。おい、もう離せ。お前、力強すぎ!」
「やだ。離さない」
「離せっ!暑苦しい!」
「無理」
ルーフはシロの胸板を押すがビクともしない。シロを引き剥がすのを諦め、酒を飲みながら「もー、勝手にしろ」とため息をついた。
酒を嚥下するルーフの喉元を眺めながらシロは思った。
(うう…、このぶっきらぼうな優しさがすごく好きだ。いい加減、俺のものにならなってくれないかな)
「…ねぇ、ルーフ」
「何だよ」
「ちゅーしていい?」
「何でだよ」
「好きだから。していい?」
「だめ」
「……隙あり!」
目も合わせず適当にあしらうルーフが少し憎らしくなって、シロはルーフの首に噛み付いた。
「痛っ!何すんだよ!」
「えへへ、愛情表現?みたいな」
「どこが愛情表現だよ!」
「いてててっ!」
ルーフに頬を引っ張られ、シロはやっと体を離した。
ルーフは「竜人のくせに犬みてぇな奴だな」と文句を言いながら、噛まれた跡を摩っている。
シロは「ごめん、ごめん」と笑いながら、少し赤くなった噛み跡が一生消えなければいいのに、とこっそり願った。
「お前たち、何じゃれあってるんだ?」
「ふふ、相変わらず仲良しですねー」
聞き覚えのある声に2人が顔を上げると、ユーロンとスノウが立っていた。
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