竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

文字の大きさ
46 / 112
竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

20.初めての夏休み

しおりを挟む
「行くぞ、ドグライアス」

家に帰るとルーフは当たり前のように言った。

「へ?」

シロが聞き返すと「だからシロの魔力のコントロールの特訓はドグライアスでやるんだよ。言ってなかったか?」と答えた。

「初耳です…、ところでルーフさん、このお酒ってどうしたんですか?」

テーブルに大量の酒の瓶が置いてある。

「ああ、ドグライアスじゃ美味い酒がねぇんだよ。それに比べて人間の造る酒は最高に美味い。だからこれ全部持っていって向こうで飲むんだ。明日出発するからお前も荷造りしろよ」

急すぎるルーフの指示だったが、シロの荷物は着替え程度なので、すぐに準備は出来る。

しかしどこに泊まるのだろう。
前回は湖の近くの何もない小屋で、一般魔法の練習をした。その時は魚を釣って食べたが、今回も水辺の近くに行くのだろうか。

食材がなければルーフに美味しいご飯が作れない。シロは料理が作れる環境があるのか心配になった。

「えっと…、食料も用意した方がいいですか?」

「あー、食料くらいなら向こうでも揃うけど、つまみは必要だな。買いに行くか」

ルーフはウキウキしながら出かける準備を始めた。まるでルーフの方が遠足前の子供のように楽しんでいる。

「あ、僕も行きます!」

シロは念の為いつも使っている食材を用事したくてルーフの後を付いていくと、ルーフがくるっと振り返った。

「そうだ、お前は菓子買えよ。菓子もこっちの方が美味いからな」

「え、お菓子が必要なんですか?」

「当たり前だろー。子供が遠出する時の持ち物に菓子は必須だろ。あ、あとカードゲームも必要だな!お前にギャンブル教えてやるよ。魔法も大事だが、博打の勝負強さも大事だからな」

「うわっ、すごく楽しそうですね!じゃあ僕、夜はキャンプ飯作ります!この間ルカから教えてもらったんです。人間は焚き火を囲んで料理したりゲームしたりするそうです。」

「へぇ、キャンプ飯か。そりゃいいな。じゃあもう少し酒も買っとくかな」

「はいっ!」

2人は何を買うか話しながら、あかりがポツポツ灯り始めた夕暮れの城下町へ出掛けて行った。





「よしっ。とりあえず、これぐらいでいいかな」

両手いっぱいの酒と肴を買ったルーフは上機嫌で笑った。

「沢山買っちゃいましたけど、これって全部持って行けるんですか?」

シロも両手いっぱいにお菓子の入った袋を持ち、ズボンのポケットには新しいカードゲームが入っている。

「大丈夫、大丈夫。収納カバンはいくらでも入るからな」

「ああ、なるほど」

収納カバンは、たまにルーフが持ち歩いている年季の入った古いカバンだ。どんなに大きくて重いものでもスポスポと収納できる便利な魔法道具だ。

「おーいっ、シロ!!」

遠くから名前を呼ばれてキョロキョロ辺りを見渡せば、人混みをかき分けてルカがやって来た。

「やあ、ルカ」

「よう、シロ!あとルーフも。俺はこれから店の手伝いに行くんだけど、お前らは酒場うちには寄らないのか?」

「うん、明日から魔法の特訓をするからその買い出しに来ただけなんだ」

「特訓って…そんなに酒とお菓子を買い込んで?まるで遊びに行く準備だな」

ルーフとシロが買ったものを見て、ルカは腕を組んで笑った。

「特訓と言っても息抜きは必要だからな」

ルーフもへへっと笑った。

「ふーん。あ、シロ。そういえばルーフに夏祭りの話したか?」

「えっと、まだ…話してない」

シロは気まずそうに答えた。
ルーフに話そうと思ってはいたが、シロのために特訓の準備をしているルーフの気持ちに水を差すようで言えなかったのだ。

「夏祭り?」

ルーフが聞き返すと、ルカは「そう、ミール王国の夏祭り!ルーフも知ってるだろ?シロとアリスと3人で行きたいんだ!夏休み中は魔法の特訓するって聞いたけど、夏祭りぐらい行ったっていいだろ?」とあっさり話してしまった。

シロは内心ドキドキしながらルーフを見上げた。

「あー、別にいいぞ。行ってこいよ」

ルーフの答えはあっさりしたものだった。

「え、いいんですか?」

「当たり前だろ。つか、そういう予定があるなら早く言えよ。そーいや、イベントで飲み比べ大会があったな。俺が参加したら優勝間違いなしだなっ」

そう言ってルーフは笑いながらシロの頭をぐりぐりと撫でた。

「やったな、シロっ!じゃあ夏祭りの日はうちの酒場に集合な!」

ルカは嬉しそうにシロに飛び付いた。

「うん、分かった!」

シロの胸はドキドキと高鳴った。

夏休みはルーフと一緒に過ごして魔法の特訓。
場所はルーフが生まれ育ったドグライアス。
焚き火をしながら料理をしたりカードゲームも教えてもらう。
楽しく過ごすためのお菓子も用意した。
そして初めて出来た友達と過ごす夏祭り。

どれも考えただけでワクワクする。

地下室にいた頃では想像もつかないほどの楽しいシロの初めての夏休みが始まった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。

生贄傷物令息は竜人の寵愛で甘く蕩ける

てんつぶ
BL
「僕を食べてもらっても構わない。だからどうか――」 庶子として育ったカラヒは母の死後、引き取られた伯爵家でメイドにすら嗤われる下働き以下の生活を強いられていた。その上義兄からは火傷を負わされるほどの異常な執着を示される。 そんなある日、義母である伯爵夫人はカラヒを神竜の生贄に捧げると言いだして――? 「カラヒ。おれの番いは嫌か」 助けてくれた神竜・エヴィルはカラヒを愛を囁くものの、カラヒは彼の秘密を知ってしまった。 どうして初対面のカラヒを愛する「フリ」をするのか。 どうして竜が言葉を話せるのか。 所詮偽りの番いだとカラヒは分かってしまった。それでも――。

悪役令息の花図鑑

蓮条緋月
BL
公爵令息シュヴァリエ・アクナイトはある日、毒にあたり生死を彷徨い、唐突に前世を思い出す。自分がゲームの悪役令息に生まれ変わったことに気づいたシュヴァリエは思った。 「公爵家の力を使えば世界中の花を集めて押し花が作れる!」  押し花作りが中毒レベルで趣味だったシュヴァリエはゲームのストーリーなどお構いなしに好き勝手動くことに決め行動が一変。その変化に周囲がドン引きする中、学園で奇妙な事件が発生!現場に一輪の花が置かれていたことを知ったシュヴァリエはこれがゲームのストーリーであることを思い出す。花が関わっているという理由で事件を追うことにしたシュヴァリエは、ゲームの登場人物であり主人公の右腕となる隣国の留学生アウル・オルニスと行動を共にするのだが……? ※☆はR描写になります ※他サイトにて重複掲載あり  

処理中です...