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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
20.初めての夏休み
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「行くぞ、ドグライアス」
家に帰るとルーフは当たり前のように言った。
「へ?」
シロが聞き返すと「だからシロの魔力のコントロールの特訓はドグライアスでやるんだよ。言ってなかったか?」と答えた。
「初耳です…、ところでルーフさん、このお酒ってどうしたんですか?」
テーブルに大量の酒の瓶が置いてある。
「ああ、ドグライアスじゃ美味い酒がねぇんだよ。それに比べて人間の造る酒は最高に美味い。だからこれ全部持っていって向こうで飲むんだ。明日出発するからお前も荷造りしろよ」
急すぎるルーフの指示だったが、シロの荷物は着替え程度なので、すぐに準備は出来る。
しかしどこに泊まるのだろう。
前回は湖の近くの何もない小屋で、一般魔法の練習をした。その時は魚を釣って食べたが、今回も水辺の近くに行くのだろうか。
食材がなければルーフに美味しいご飯が作れない。シロは料理が作れる環境があるのか心配になった。
「えっと…、食料も用意した方がいいですか?」
「あー、食料くらいなら向こうでも揃うけど、つまみは必要だな。買いに行くか」
ルーフはウキウキしながら出かける準備を始めた。まるでルーフの方が遠足前の子供のように楽しんでいる。
「あ、僕も行きます!」
シロは念の為いつも使っている食材を用事したくてルーフの後を付いていくと、ルーフがくるっと振り返った。
「そうだ、お前は菓子買えよ。菓子もこっちの方が美味いからな」
「え、お菓子が必要なんですか?」
「当たり前だろー。子供が遠出する時の持ち物に菓子は必須だろ。あ、あとカードゲームも必要だな!お前にギャンブル教えてやるよ。魔法も大事だが、博打の勝負強さも大事だからな」
「うわっ、すごく楽しそうですね!じゃあ僕、夜はキャンプ飯作ります!この間ルカから教えてもらったんです。人間は焚き火を囲んで料理したりゲームしたりするそうです。」
「へぇ、キャンプ飯か。そりゃいいな。じゃあもう少し酒も買っとくかな」
「はいっ!」
2人は何を買うか話しながら、あかりがポツポツ灯り始めた夕暮れの城下町へ出掛けて行った。
「よしっ。とりあえず、これぐらいでいいかな」
両手いっぱいの酒と肴を買ったルーフは上機嫌で笑った。
「沢山買っちゃいましたけど、これって全部持って行けるんですか?」
シロも両手いっぱいにお菓子の入った袋を持ち、ズボンのポケットには新しいカードゲームが入っている。
「大丈夫、大丈夫。収納カバンはいくらでも入るからな」
「ああ、なるほど」
収納カバンは、たまにルーフが持ち歩いている年季の入った古いカバンだ。どんなに大きくて重いものでもスポスポと収納できる便利な魔法道具だ。
「おーいっ、シロ!!」
遠くから名前を呼ばれてキョロキョロ辺りを見渡せば、人混みをかき分けてルカがやって来た。
「やあ、ルカ」
「よう、シロ!あとルーフも。俺はこれから店の手伝いに行くんだけど、お前らは酒場には寄らないのか?」
「うん、明日から魔法の特訓をするからその買い出しに来ただけなんだ」
「特訓って…そんなに酒とお菓子を買い込んで?まるで遊びに行く準備だな」
ルーフとシロが買ったものを見て、ルカは腕を組んで笑った。
「特訓と言っても息抜きは必要だからな」
ルーフもへへっと笑った。
「ふーん。あ、シロ。そういえばルーフに夏祭りの話したか?」
「えっと、まだ…話してない」
シロは気まずそうに答えた。
ルーフに話そうと思ってはいたが、シロのために特訓の準備をしているルーフの気持ちに水を差すようで言えなかったのだ。
「夏祭り?」
ルーフが聞き返すと、ルカは「そう、ミール王国の夏祭り!ルーフも知ってるだろ?シロとアリスと3人で行きたいんだ!夏休み中は魔法の特訓するって聞いたけど、夏祭りぐらい行ったっていいだろ?」とあっさり話してしまった。
シロは内心ドキドキしながらルーフを見上げた。
「あー、別にいいぞ。行ってこいよ」
ルーフの答えはあっさりしたものだった。
「え、いいんですか?」
「当たり前だろ。つか、そういう予定があるなら早く言えよ。そーいや、イベントで飲み比べ大会があったな。俺が参加したら優勝間違いなしだなっ」
そう言ってルーフは笑いながらシロの頭をぐりぐりと撫でた。
「やったな、シロっ!じゃあ夏祭りの日はうちの酒場に集合な!」
ルカは嬉しそうにシロに飛び付いた。
「うん、分かった!」
シロの胸はドキドキと高鳴った。
夏休みはルーフと一緒に過ごして魔法の特訓。
場所はルーフが生まれ育ったドグライアス。
焚き火をしながら料理をしたりカードゲームも教えてもらう。
楽しく過ごすためのお菓子も用意した。
そして初めて出来た友達と過ごす夏祭り。
どれも考えただけでワクワクする。
地下室にいた頃では想像もつかないほどの楽しいシロの初めての夏休みが始まった。
家に帰るとルーフは当たり前のように言った。
「へ?」
シロが聞き返すと「だからシロの魔力のコントロールの特訓はドグライアスでやるんだよ。言ってなかったか?」と答えた。
「初耳です…、ところでルーフさん、このお酒ってどうしたんですか?」
テーブルに大量の酒の瓶が置いてある。
「ああ、ドグライアスじゃ美味い酒がねぇんだよ。それに比べて人間の造る酒は最高に美味い。だからこれ全部持っていって向こうで飲むんだ。明日出発するからお前も荷造りしろよ」
急すぎるルーフの指示だったが、シロの荷物は着替え程度なので、すぐに準備は出来る。
しかしどこに泊まるのだろう。
前回は湖の近くの何もない小屋で、一般魔法の練習をした。その時は魚を釣って食べたが、今回も水辺の近くに行くのだろうか。
食材がなければルーフに美味しいご飯が作れない。シロは料理が作れる環境があるのか心配になった。
「えっと…、食料も用意した方がいいですか?」
「あー、食料くらいなら向こうでも揃うけど、つまみは必要だな。買いに行くか」
ルーフはウキウキしながら出かける準備を始めた。まるでルーフの方が遠足前の子供のように楽しんでいる。
「あ、僕も行きます!」
シロは念の為いつも使っている食材を用事したくてルーフの後を付いていくと、ルーフがくるっと振り返った。
「そうだ、お前は菓子買えよ。菓子もこっちの方が美味いからな」
「え、お菓子が必要なんですか?」
「当たり前だろー。子供が遠出する時の持ち物に菓子は必須だろ。あ、あとカードゲームも必要だな!お前にギャンブル教えてやるよ。魔法も大事だが、博打の勝負強さも大事だからな」
「うわっ、すごく楽しそうですね!じゃあ僕、夜はキャンプ飯作ります!この間ルカから教えてもらったんです。人間は焚き火を囲んで料理したりゲームしたりするそうです。」
「へぇ、キャンプ飯か。そりゃいいな。じゃあもう少し酒も買っとくかな」
「はいっ!」
2人は何を買うか話しながら、あかりがポツポツ灯り始めた夕暮れの城下町へ出掛けて行った。
「よしっ。とりあえず、これぐらいでいいかな」
両手いっぱいの酒と肴を買ったルーフは上機嫌で笑った。
「沢山買っちゃいましたけど、これって全部持って行けるんですか?」
シロも両手いっぱいにお菓子の入った袋を持ち、ズボンのポケットには新しいカードゲームが入っている。
「大丈夫、大丈夫。収納カバンはいくらでも入るからな」
「ああ、なるほど」
収納カバンは、たまにルーフが持ち歩いている年季の入った古いカバンだ。どんなに大きくて重いものでもスポスポと収納できる便利な魔法道具だ。
「おーいっ、シロ!!」
遠くから名前を呼ばれてキョロキョロ辺りを見渡せば、人混みをかき分けてルカがやって来た。
「やあ、ルカ」
「よう、シロ!あとルーフも。俺はこれから店の手伝いに行くんだけど、お前らは酒場には寄らないのか?」
「うん、明日から魔法の特訓をするからその買い出しに来ただけなんだ」
「特訓って…そんなに酒とお菓子を買い込んで?まるで遊びに行く準備だな」
ルーフとシロが買ったものを見て、ルカは腕を組んで笑った。
「特訓と言っても息抜きは必要だからな」
ルーフもへへっと笑った。
「ふーん。あ、シロ。そういえばルーフに夏祭りの話したか?」
「えっと、まだ…話してない」
シロは気まずそうに答えた。
ルーフに話そうと思ってはいたが、シロのために特訓の準備をしているルーフの気持ちに水を差すようで言えなかったのだ。
「夏祭り?」
ルーフが聞き返すと、ルカは「そう、ミール王国の夏祭り!ルーフも知ってるだろ?シロとアリスと3人で行きたいんだ!夏休み中は魔法の特訓するって聞いたけど、夏祭りぐらい行ったっていいだろ?」とあっさり話してしまった。
シロは内心ドキドキしながらルーフを見上げた。
「あー、別にいいぞ。行ってこいよ」
ルーフの答えはあっさりしたものだった。
「え、いいんですか?」
「当たり前だろ。つか、そういう予定があるなら早く言えよ。そーいや、イベントで飲み比べ大会があったな。俺が参加したら優勝間違いなしだなっ」
そう言ってルーフは笑いながらシロの頭をぐりぐりと撫でた。
「やったな、シロっ!じゃあ夏祭りの日はうちの酒場に集合な!」
ルカは嬉しそうにシロに飛び付いた。
「うん、分かった!」
シロの胸はドキドキと高鳴った。
夏休みはルーフと一緒に過ごして魔法の特訓。
場所はルーフが生まれ育ったドグライアス。
焚き火をしながら料理をしたりカードゲームも教えてもらう。
楽しく過ごすためのお菓子も用意した。
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