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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
21.魔族の国ドグライアス
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シロは目を輝かせながらドグライアスの街を興奮気味に歩いている。
「うわぁ!ここが魔族の国なんですね!すごく格好いい街ですね」
シロは「格好いい街」と言ったが、実際はボロボロの石畳み、廃墟のような建物、空は常に薄暗く、朝から酒場に魔族が集まり罵声や喘ぎ声がそこら中から聞こえてくる。
子供さえ賭博の真似事をした遊びで喧嘩をしている。
ここで生まれ育ったルーフにしてみれば当たり前の日常だが、竜人や人間からしてみれば『治安が悪すぎる街』と言われている。
「へへっ、そうか?そんな事言う竜人はシロぐらいだろうな。相変わらずお前は能天気だな」
2人が街を歩いていると「おい、ルーフじゃねぇか。久しぶりだな」とヒョウ魔族の男が声を掛けてきた。
「ジェス、久しぶりだな」
『本来の姿』をしたヒョウ魔族のジェスは、全身が漆黒の艶やかな毛並みに覆われ、がっしりとした筋肉質な体型で身長もルーフより20センチほど高い。
体中にアクセサリーを付け派手な服装をしているが、黒い毛並みによく似合っている。
綺麗な魔族だな、とシロが見上げているとジェスとバチっと目が合った。
ルーフと同じ金の瞳がシロを捉えてじっと観察する。
「そいつはお前の子供か?」
「いや、違う。でも俺がしばらく預かってるんだ」
「へぇ、魔獣以外も保護してんだな。よぉ、坊主。俺はジェス。ルーフとは…まあ、腐れ縁みてぇなもんだよな」
ジェスは意味ありげな笑みをルーフに向けた。その仕草にルーフは「余計なこと言うな」という風に肩をすくめた。
「僕はシロです」
シロは少し警戒しながら挨拶をした。
ジェスはしゃがんでシロと目線を合わせてニヤニヤした。
「ふーん、可愛いガキじゃん。気に入った。ルーフが嫌になったら俺が面倒見てやるよ。困ったらおいで」
ルーフが嫌になる事なんてあり得ないと思いながらシロは「はぁ」と適当な返事をした。
「お前なぁ、見境なく手出すなよ。シロ、気を付けろよ。こいつ優しそうに見えて、すげぇ鬼畜な奴だから」
「あ?よく言うぜ。ルーフはそんな俺だから好きなんだろ」
ジェスは立ち上がりルーフの肩を組もうとしたが、ルーフは躱して「ないない」と適当にあしらった。
「へへ、素直じゃねぇな。それよりルーフが街に来るなんて珍しいじゃねぇか。お前の大好きな魔王様はもういねぇぞ?」
「うるせぇな。つか、お前こそシロを見て何も感じねぇか?」
「んー?」
2人のやり取りをモヤモヤしながら見ていたシロは、急に2人から注目されて緊張で体を固くさせた。
ジェスはシロの頭を撫でて、シロの体を引き寄せスンスンと匂いを嗅いだ。
さっきまでヘラヘラしていたジェスの表情が急に真剣になりルーフを見た。
「おい、こいつの魔力…まさか継承者か?」
「ああ、一応な。まだ闇魔力のコントロールが出来ないんだ。しばらく城の跡地で練習するつもりだ。お前も興味があれば来いよ」
「…ふーん、まあ、気が向いたらな。ルーフ、お前は相変わらず…いや、まあ、いいさ。じゃあな。」
ジェスはまたヘラヘラした表情に変わり、「シロ坊も頑張れよー」と手を振って去っていった。
「うわぁ!ここが魔族の国なんですね!すごく格好いい街ですね」
シロは「格好いい街」と言ったが、実際はボロボロの石畳み、廃墟のような建物、空は常に薄暗く、朝から酒場に魔族が集まり罵声や喘ぎ声がそこら中から聞こえてくる。
子供さえ賭博の真似事をした遊びで喧嘩をしている。
ここで生まれ育ったルーフにしてみれば当たり前の日常だが、竜人や人間からしてみれば『治安が悪すぎる街』と言われている。
「へへっ、そうか?そんな事言う竜人はシロぐらいだろうな。相変わらずお前は能天気だな」
2人が街を歩いていると「おい、ルーフじゃねぇか。久しぶりだな」とヒョウ魔族の男が声を掛けてきた。
「ジェス、久しぶりだな」
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体中にアクセサリーを付け派手な服装をしているが、黒い毛並みによく似合っている。
綺麗な魔族だな、とシロが見上げているとジェスとバチっと目が合った。
ルーフと同じ金の瞳がシロを捉えてじっと観察する。
「そいつはお前の子供か?」
「いや、違う。でも俺がしばらく預かってるんだ」
「へぇ、魔獣以外も保護してんだな。よぉ、坊主。俺はジェス。ルーフとは…まあ、腐れ縁みてぇなもんだよな」
ジェスは意味ありげな笑みをルーフに向けた。その仕草にルーフは「余計なこと言うな」という風に肩をすくめた。
「僕はシロです」
シロは少し警戒しながら挨拶をした。
ジェスはしゃがんでシロと目線を合わせてニヤニヤした。
「ふーん、可愛いガキじゃん。気に入った。ルーフが嫌になったら俺が面倒見てやるよ。困ったらおいで」
ルーフが嫌になる事なんてあり得ないと思いながらシロは「はぁ」と適当な返事をした。
「お前なぁ、見境なく手出すなよ。シロ、気を付けろよ。こいつ優しそうに見えて、すげぇ鬼畜な奴だから」
「あ?よく言うぜ。ルーフはそんな俺だから好きなんだろ」
ジェスは立ち上がりルーフの肩を組もうとしたが、ルーフは躱して「ないない」と適当にあしらった。
「へへ、素直じゃねぇな。それよりルーフが街に来るなんて珍しいじゃねぇか。お前の大好きな魔王様はもういねぇぞ?」
「うるせぇな。つか、お前こそシロを見て何も感じねぇか?」
「んー?」
2人のやり取りをモヤモヤしながら見ていたシロは、急に2人から注目されて緊張で体を固くさせた。
ジェスはシロの頭を撫でて、シロの体を引き寄せスンスンと匂いを嗅いだ。
さっきまでヘラヘラしていたジェスの表情が急に真剣になりルーフを見た。
「おい、こいつの魔力…まさか継承者か?」
「ああ、一応な。まだ闇魔力のコントロールが出来ないんだ。しばらく城の跡地で練習するつもりだ。お前も興味があれば来いよ」
「…ふーん、まあ、気が向いたらな。ルーフ、お前は相変わらず…いや、まあ、いいさ。じゃあな。」
ジェスはまたヘラヘラした表情に変わり、「シロ坊も頑張れよー」と手を振って去っていった。
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