竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

文字の大きさ
上 下
43 / 112
竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

17.夏休みの計画

しおりを挟む
家に帰ってきたルーフが玄関の扉を開けると三つ指ついたシロが待っていた。

「おかえりなさい!!」

「うわっ!!…って、なんだシロか。なんのマネだよ、それは。心臓に悪いからやめろ」

「あ、すみません。いや、でも今日は本当に色々すみませんでしたっ」

「んー。…まあ、いいさ。気にすんな」

ルーフがそう言って部屋に入っていくとシロもその後を付いてきた。

「でも僕、ルーフさんに助けてもらったのに生意気な事まで言ってしまって…」

「生意気な事…?お前なんか言ったっけ?」

ルーフは全然思い出せず、腕を組んで天井を見上げた。確かにシロとの別れ際に何か言われたような気がするが、その後ユーロンに懇懇と説教されたせいであまり覚えていない。

「あ、覚えていないなら良かったです…。そのまま忘れてください」

「ん。それよりなんか良い匂いするな。夕飯作ってたのか?」

「はい。今日は色々ご迷惑掛けてしまったのでビーフシチューの煮込みハンバーグにしました」

「おー、いいじゃん。俺それ好きなんだよ」

良い匂いと好きなメニューを聞いて、少し不機嫌だったルーフの気持ちも戻り始めた。

「す、好きっ!?」

シロはその言葉に過剰反応して、顔を真っ赤にしてその場に固まった。
そんなシロの様子には気付かないルーフはキッチンに向かって鍋の蓋を取った。

「おー、すげぇ美味そう!早速食おうぜ」

ルーフの機嫌は完全に直り、嬉しそうにシロに笑いかけた。

「っっっ!!」

シロがさらに真っ赤になって心臓を抑えたが、ルーフはそれも気付かずに鼻歌を歌いながら食事の準備を始めた。





「美味い!シロ、お前料理上手くなったよ」

ルーフはバクバクとハンバーグを食べ始めた。

「へ!?そ、そうですか?よ、よ、良かったです!!」

シロはぎこちない仕草でシチューをスプーンで掬って口に入れたが、顔が熱すぎて味がまともに分からない。それに相変わらずバクバクと動く心臓がうるさくてルーフの顔をまともに見れない。

「つか、お前顔赤くね?大丈夫か?」

「だっ、大丈夫ですっ!」

「あそ。まあ、風邪じゃねぇなら別にいいけど。それより来週から学校は夏休みなんだろ?」

「ああ、そうですね。なので僕は午前中からレニー先生の所で働かせてもらおうと思っていて…」

夏休みの話はレニーにはしてあるので、ルーフの許可を貰えれば働こうと思っていた。

「いや、働かなくていい。レニーじいさんにも話はつけといた。それより魔力のコントロールの仕方教えてやるよ。お前は闇魔力に特化してるから学校じゃ教えられないんだとよ」

「え、ルーフさんが教えてくれるんですか?」

「まあな。俺の魔力は氷属性だが魔力は多い方だし、お前程度の闇魔力なら暴走しても止められる。とにかく、休み中に徹底的に魔力コントロールを覚えるんだ。俺がみっちり指導してやる」

ルーフは持っていたスプーンをビシっとシロに向け「覚悟しとけよ」と言って笑った。

「はいっ!ありがとうございますっ。僕、がんばりますっ!」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

処理中です...