竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる

12.忘却の魔法

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「げほっ、げほっ…はぁっはぁ…はぁ」

オーラから解放された少年はその場に倒れ込み、大きく呼吸をした後に白目をむいて倒れた。少年の友達が「大丈夫か!?」と集まり必死に治癒魔法をかける。

シロは白銀の狼から目を逸らせずにいると、狼の金色の瞳がシロを見た。

「へへっ、早速ケンカかぁ?学校生活楽しんでんなー」

この声は…。

「ルーフさん?」

「あ?ああ、そっか。この姿をお前に見せるのは初めてだったな。格好良いだろ、狼姿のルーフさんは」

ルーフはぐるっと回ってポーズをとった。
白銀の毛並みがフワフワと気持ち良さそうに風に揺れ、見るからに柔らかそうな印象を与える。

「すごい…、カッコいいです!!わぁー…ふわふわだぁ。さ、触っていいですか?」

シロはモフモフしたい欲望で思わず両手を出しながら目を輝かせた。
近くにいた子供達も「わんちゃんだー!!触りたい!!」と言って嬉しそうにルーフに近寄ってきた。
先程まで闇魔力で怯えていた雰囲気は一気に消え、子供達の楽しそうな笑い声が戻ってきた。

「おいっ!やめろ!!俺は犬じゃねぇんだ!!あっち行け!!」

ルーフが唸りながらシロや子供達を追っ払っていると、校舎からアリーが血相を変えて走ってきた。

アリーは今だに気を失っている魔族の少年に駆け寄り「キバ君っ、大丈夫ですか!?」と声を掛け、治癒魔法をかけていた子供に「私が変わります」と言って治癒魔法の処置をした。土色だった少年の顔色は、あっという間に元に戻り呼吸も安定した。

「へぇ、さすが竜人先生様だな」

その様子を見ていたルーフが感心して呟くと、アリーはルーフを睨みつけた。

「竜人は関係ありません。この学校の教師なら治癒魔法くらい普通に使いこなせます。それよりこの騒ぎは一体何ですか?まさかまた貴方の仕業ですか?」

「違います!!これは僕が魔力をコントロール出来なくて…」

シロは慌てて話そうとすると、ルーフがシロの前に立ち「どうだかなぁ。ここで話す必要はないだろ」と笑った。
周りを見れば多くの子供達が興味津々の表情でルーフとアリーの会話に聞き耳を立てている。

アリーは深くため息をついた。

「…そうですね。ではルーフさんは応接室へ来てください。ルカ君、アリスさん、貴方達も顔色が悪いわ。治癒魔法をかけてあげる。」

アリーが治癒魔法をかけるとルカとアリスの顔色もすぐに良くなり怪我も治った。
アリーは立ち上がり「さあ、子供達。この出来事は全て忘れなさい。」と言って学校の敷地内にいた子供たち全員に忘却の魔法をかけた。

暖かな忘却の風が学校中に吹き抜けると、子供たちは無意識に元いた場所に戻り遊び始めた。
ルカとアリスも魔法の練習をしていた場所に戻っていて、何事もなかったようにシロに向かって手招きをしている。

まるで魔族の少年に絡まれる前に時間が戻ったかのようだった。

「先生、これって…」

シロはルカたちに手を振りながらアリーを見上げた。

「貴方が使った闇魔力の記憶を消したのです。その力は…あまり印象が良くありませんからね」

アリーは少し悲しそうな目をして答えた。

ー…『印象が良くない』

その言葉にシロは俯いた。

シロは自分の影から流れ出る闇魔力のオーラに恐怖を感じた。
闇魔力をコントロールする事も止める事もできなかった。もしルーフが来なかったから、あの魔族の少年を殺していたかもしれない。

祖父の言うようにやっぱり自分は「呪われた竜」なのではないだろうか。
こんな自分が空の下で楽しく生きてていいのだろうか。
今まで通り地下室で身を潜め、静かに暮らすべきではないだろうか。

消えたはずの闇魔力のオーラが、今度はシロの心をドロドロと飲み込むように広がっていく気がした。

するとルーフに頭をガシガシと撫でられた。

「そうか?魔族から見りゃ闇魔力は魅力的だぜ。要は使い方だ。シロなら使いこなせるさ。俺様がご指導してやるからよ!」

いつの間にか人の姿に戻っていたルーフは自信満々にガハハっと豪快に笑った。

「ルーフさん…。ふふっ、その自信はどこからくるんですか…」

シロもルーフの笑い声につられてクスクス笑った。シロの心を飲み込もうとしていた闇もルーフの笑い声に吹き飛ばされていった。
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