竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を拾う。

3.シチューとパン

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翌朝ルーフが目を覚ますと、腕の中から赤い瞳が印象的な人間の男の子がこちらをじっと見つめていた。

「…お前、だれ?」

俺は…、ついに子供にも手を出したのか?
いや、流石にそれはありえない。

ルーフは、寝起きで頭が回らない状態で昨日のことをゆっくり思い出す。

「あー、お前、昨日の竜人のガキか。人型になったんだな。」

頭を掻きながらルーフは体を起こして、大きなあくびをした。子供も体を起こし、ルーフの前で正座をした。

「ふぁー…。体調はどうだ?」

「…大丈夫です。」

「そりゃよかったな。熱は下がったか?」

ルーフは子供の額に自分の額を合わせた。

「ん。下がってるみたいだな。じゃあ飯食うか?」

「…え、いいんですか?」

子供は不思議そうに聞いた。

「ああ、昨日買ってきたんだ。それ食ったら病院行くぞ。」

ルーフがキッチンへ行くと、子供はペタペタと後をついてきた。

「あ、あの、昨日は、助けていただき…ありがとうございました…」

「あー、はいはい。でもタダじゃねぇよ?とりあえず貸しにしといてやる。それよりお前はあっちに行ってろ。邪魔」

栄養失調で動けなくなっていた子供が急に動き回ったら危ないだろうと思い、ルーフはシッシッと手を払う仕草をした。

子供は少し悲しそうな顔をして下を向き、言われた通りベッドの前に戻り、ちょこんと座った。

ルーフはシチューとパンを熱魔法で温め、子供の前に「ほらよ」と雑に置いた。

しかし目の前に食事を置かれても、子供は固まったまま動かない。

「早く食えよ。それともシチューは嫌いか?好き嫌いするんじゃねぇよ」

「…!嫌いじゃないです。…ごめんなさい。…いただきます。」

子供はビクビクしながら、スプーンを手に取りシチューを一口食べた。

「…美味しい」

急に顔が綻び、パクパクと食べ出した。

ルーフは頬杖をついて、夢中でシチューを食べている子供の様子を眺めた。

それにしても見窄らしい格好をした竜人の子供だ。
黒い髪はボサボサに伸び、体はガリガリだ。

元々、個体数が少ない竜人にとって子供は貴重な存在だ。
まず捨てられる事などあり得ないし、両親と死別したとしても引き取り先はすぐ決まる。

なぜ森で瀕死の状態で1人でいたのか…。

黒くて長い髪から覗く瞳は真紅色。
スプーンを握る手は細くて色白。

なんとなく昔のことを思い出す。

黒い髪に赤い瞳。
ー…『あの人』に似ているな…。

ルーフは遥か昔にいなくなってしまった、自分の命に変えても守りたかった『魔王あの人』を思い出す。

ルーフは子供の頃、魔王に助けられた縁でずっと魔王に仕えていた。かなり内気で無口な魔王だったが、それなりに信頼関係もあると思っていた。
しかし魔王は、ルーフに何の相談もなく消えてしまった。

もう魔王がいなくなって100年以上経つのに、彼の事を思い出すだけで、いまだに喪失感に襲われる。

この感情は、いつになったら消えてくれるのだろうか。

こんな時は何もかも忘れて発散したい…。



「ごちそうさまでした」

子供の声でルーフは現実に引き戻された。
いつの間にかシチューもパンもしっかり完食していた。

「よし、じゃあ病院行くぞ」

ルーフは立ち上がった。




竜人の子供は、病院のベッドに横になり診察を受けている。

「うむ。だいぶ顔色も良くなったな。魔力も随分回復したな。他に痛いところはないか?」

レニーは子供の頭を撫でながら優しく尋ねたが、子供は目も合わせず小さな声で「…ありません。」と答えた。

「そうか。念の為、栄養価の高い点滴をしとくか。2時間くらいかかるが、寝ていればすぐ終わる。ルーフ、お前はここで待つか?」

診察を待っていたルーフは、少し考えてから「いや、用があるから出掛けてくるよ。終わる頃に迎えにくる」と言ってその場を去った。

竜人の子供は、誰にも聞こえないような小さな声で「置いていかないで…」と呟き、ルーフの後ろ姿を泣きそうな顔で見つめていた。
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