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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を拾う。
1.ある日、森の中で
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天空には竜人の国『アスディア』があり、地底には魔族の国『ドグライアス』がある。
そして地上には、人間の国が数多く点在している。
竜人と人間は、古くから助け合い暮らしていたが、共存を嫌う魔族とは度々衝突していた。
そして今から200年以上前、当時の魔王の力によって魔族たちの暴走が始まった。
人間を襲い、街を破壊し、殺戮を繰り返した。
竜人は人間を守るため、そして魔族の暴走を止めるため、竜人と魔族の100年にわたる戦争が始まったのだ。
誰もが終わらない戦争だと諦めそうになった時、突然魔王の消息が絶たれ、魔王の力を失った魔族たちは一気に弱体化し呆気なく終戦した。
終戦からさらに100年以上が経ち、現在では、竜人、魔族、人間は共に暮らす平和な世界へと変わりつつあった。
しかし今でも一部の地域では、差別が色濃く残っている。
人間の国『ミール王国』の森に魔獣が迷い込んだと話を聞き、オオカミ魔族のルーフは森へと向かった。
魔族は『本来の姿』と『人間の姿』になる事が出来るため、皆それぞれ自分の好きな姿で暮らしている。
ルーフの『本来の姿』は、二足歩行をした狼の姿で身長が2メートル近くあり、見事な白銀の毛並みとガタイのいい体が自慢だ。
しかし普段は地上で暮らしているため『人間の姿』をしている。
『人間の姿』のルーフは、白銀の髪に金の瞳で肌は滑らかな褐色をしている。身長は175センチほどで、スラっとした体格に程よい筋肉が付いている。
森の奥へ入っていくと微かに魔獣の血の匂いがした。
おそらく人間の「正当防衛」という理由で一方的に攻撃でもされたのだろう。血の匂いから怒りと恐怖が伝わってくる。
つくづく理不尽な世界だと思いつつ、血の匂いがする方へ進んでいった。
しばらく歩くと、フーッフーッと苦しそうな息遣いが聞こえてきた。
草むらを覗けば、足を負傷した小さなクマ魔獣がうずくまっていた。
「なんだ、まだ子供じゃないか。」
治癒魔法をかければ傷はすぐ治った。
「お前、親はいるのか?」
子グマ魔獣の頭を撫でると、魔族の国ドグライアスの森で子どもを探す親グマ魔獣の姿がイメージで伝ってきた。
「よし、じゃあそこに転移魔法かけてやる。もう人間の国には来るなよ。」
ルーフは指を鳴らして子グマ魔獣を親の元へ転移させた。
街へ戻ろうと踵を返そうとすると、ガサ、ガサッと、少し離れた茂みから音がした。
魔獣の気配ではなさそうだ。辺りを注意深く見回すと、真っ黒いトカゲのような生き物が現れた。
「魔獣…ではないな。魔族でもなさそうだし、地上の動物か?」
ルーフはそのトカゲをまじまじと観察した。
「へぷしゅっ!!」
くしゃみをしたトカゲは、勢いよく小さい炎を吹き出し、その反動で黒い翼が広がった。
「げっ…もしかして竜か?」
黒い体に黒い羽、目はルビーのような鮮やかな真紅色。体はかなり小さいが立派な竜の子供だった。
そして地上には、人間の国が数多く点在している。
竜人と人間は、古くから助け合い暮らしていたが、共存を嫌う魔族とは度々衝突していた。
そして今から200年以上前、当時の魔王の力によって魔族たちの暴走が始まった。
人間を襲い、街を破壊し、殺戮を繰り返した。
竜人は人間を守るため、そして魔族の暴走を止めるため、竜人と魔族の100年にわたる戦争が始まったのだ。
誰もが終わらない戦争だと諦めそうになった時、突然魔王の消息が絶たれ、魔王の力を失った魔族たちは一気に弱体化し呆気なく終戦した。
終戦からさらに100年以上が経ち、現在では、竜人、魔族、人間は共に暮らす平和な世界へと変わりつつあった。
しかし今でも一部の地域では、差別が色濃く残っている。
人間の国『ミール王国』の森に魔獣が迷い込んだと話を聞き、オオカミ魔族のルーフは森へと向かった。
魔族は『本来の姿』と『人間の姿』になる事が出来るため、皆それぞれ自分の好きな姿で暮らしている。
ルーフの『本来の姿』は、二足歩行をした狼の姿で身長が2メートル近くあり、見事な白銀の毛並みとガタイのいい体が自慢だ。
しかし普段は地上で暮らしているため『人間の姿』をしている。
『人間の姿』のルーフは、白銀の髪に金の瞳で肌は滑らかな褐色をしている。身長は175センチほどで、スラっとした体格に程よい筋肉が付いている。
森の奥へ入っていくと微かに魔獣の血の匂いがした。
おそらく人間の「正当防衛」という理由で一方的に攻撃でもされたのだろう。血の匂いから怒りと恐怖が伝わってくる。
つくづく理不尽な世界だと思いつつ、血の匂いがする方へ進んでいった。
しばらく歩くと、フーッフーッと苦しそうな息遣いが聞こえてきた。
草むらを覗けば、足を負傷した小さなクマ魔獣がうずくまっていた。
「なんだ、まだ子供じゃないか。」
治癒魔法をかければ傷はすぐ治った。
「お前、親はいるのか?」
子グマ魔獣の頭を撫でると、魔族の国ドグライアスの森で子どもを探す親グマ魔獣の姿がイメージで伝ってきた。
「よし、じゃあそこに転移魔法かけてやる。もう人間の国には来るなよ。」
ルーフは指を鳴らして子グマ魔獣を親の元へ転移させた。
街へ戻ろうと踵を返そうとすると、ガサ、ガサッと、少し離れた茂みから音がした。
魔獣の気配ではなさそうだ。辺りを注意深く見回すと、真っ黒いトカゲのような生き物が現れた。
「魔獣…ではないな。魔族でもなさそうだし、地上の動物か?」
ルーフはそのトカゲをまじまじと観察した。
「へぷしゅっ!!」
くしゃみをしたトカゲは、勢いよく小さい炎を吹き出し、その反動で黒い翼が広がった。
「げっ…もしかして竜か?」
黒い体に黒い羽、目はルビーのような鮮やかな真紅色。体はかなり小さいが立派な竜の子供だった。
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