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二章
re.《396》撤退
しおりを挟む目が合ったシアンからはあっさり離れさせてもらう。
逃げちゃダメ?そんな馬鹿なことがあるか。
ここは危険地帯だ。
薄情だろうがなんだろうが、一応は助けてくれたアヴェルのことも無視して撤退させてもらう。
部屋を出ていく瞬間、もう振り返るのはやめて置いた。
ズキズキ胸がいたんだから。
(さっきのは、なに?)
耳を何回も噛まれて、腕は強く掴まれていた。それも、あのヨハネスに。
痛いって、確かに言ったのに、辞めてくれなかった。
(どうして?)
疑問を抱くのと同時に、悲しくてたまらなくなる。
彼に甘えていたのは事実だ。
喋らなくても、ふてぶてしくしても、微笑んで許してくれると分かってたから。
どんな意味が込められているかも分からず、好きだと言い続けてくれていたから。
もう、そんな彼はいなくなってしまったのかもしれない。
外の世界に放り出された雛の気持ちだ。
半べそをかいてる場合じゃない。
誰かに見つかる前に、部屋に戻らないと。
そう、他の人ならともかく、特に、あの大悪魔陛下には絶対に。
そんな思考で埋めつくされていた脳ミソは、突き当たりを曲がった途端、フリーズしたのだった。
───ドンッ。
「キャンっ」
硬い物体にぶつかって、尻もちをつきかけた身体はしかし、何者かに支えられた。
ふわりと舞う華やかな花の香り。そして光ったのは、凹凸の大袈裟な鎖骨を走るネックレス。
「───チル?」
終了のチャイムだ。
今からでもヨハネスのところに戻るか、なんて、無意味な思考。
ハインツェにしっかり腕を掴まれている。その後ろから、黒髪で長身の男が、家臣となにやら話しながらやってくる。ミチルはとうとう泣きそうになりながら絶望を知った。
「·········」
ダリアには叱られて、ハインツェにはいつも通りイチャモンを付けられて虐められるんだ。フルコースじゃないか。
そう思っていたのに───ライムグリーンはこちらを見下ろして、神経質そうな眉を歪めた。
「学ばないヤツ·····」
「·····へ?·····──!」
そのまま、腰に手を回されて身体が宙に浮く。
また、かぐわしい香り。
彼の腕の中に姫抱きされて、景色はすぐに動きだした。
「どこ行きてえの?部屋?」
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