悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《397》へんなもの

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「どこ行きてえの?部屋?」

「ぇ」


角を曲がったおかげで、遠くのダリアはすぐに見えなくなる。
階段を上がる間、緊張でバクバクうるさかった心臓は落ち着いていった。
一体、どういう状況だ?

気がつけば自室の前にたどり着いて、扉を開けると、そっと腕の中から降ろされた。
恐る恐る引き下がると、彼も部屋に入り込む。しかし扉は完全に閉められないから、長居はしないみたいだ。

(もしかして·····)

匿ってくれたのだろうか。

(分かんない)

彼が何を考えているのか謎だ。
そっと見上げたら、角張った指が濃いライラック色の髪をかきあげた所だった。

まるで、なにか思うところがあるような、何から話そうかと考えるような、それなのに冷めた眼差し。
言葉もなく視界だけで分かるのは、何度確認したってとんでもない美形だということだけだ。


「ぁ、の」


そういえば、自分から彼に話しかけたことが、何度あっただろうか。
いつも振り回されて、何もしなくても勝手に絡まれるから、考えたこともなかった。
いつもの毒々しい笑みが無いハインツェは、少し寂しい感じがする。
変な感じだった。


「欲しいもの、決まった?」


彼は小さい子に問うように告げた。
突拍子も無い質問に、ややあってから前回の会話を思い出す。

前もそんなことを言っていた。
けれど、どうしてそんなこと聴くんだろう。
何か意図があるのか?
自分に、なにか望んでいることがあるのか?



人間界そっちでは、結婚した日にプレゼントを渡すんだとか」


流れるような眼差しと見つめあって、魅惑的な唇が紡いだ言葉を、数秒かけて理解する。

ミチルはややあってから首を振った。

やめておいた方がいい。
欲しいものなんてない。
何かを欲したら、代価を求められるかもしれない。

しかし相手がまた眉を顰めるから、答えは間違いだったと知る。
モノなんて分からない。

彼に望むもの。
ミチルは口ごもってから、そっと告げた。


「演奏·····」

「演奏?」


随分前の記憶だ。

横暴を振るう彼からは想像もできない優しい音色を覚えている。
あのピアノの演奏をまた聴いてみたい。

また目が合った美男子は、なんだか変なものを見る顔をしていた。


「なんで?」











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