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二章
re.《309》視線
しおりを挟む軽々しく発せられた予測は、予想もしないことだった。
しかし、否定できない。
ダリアがいかに合理的で冷酷な男かは、自分がよく理解している。
血魔術を解くには代償が必要になる。
「心配しないでよ」
彼は口元を拭って立ち上がった。
かなり沢山持ってきたパンは、既に半分以上無くなっている。
男らしく引き締まって、しかし青年前の細身にも見えるあの腹のどこに食材が消えたのかは謎だ。
「僕に考えがあるんだ。あなたは大変な思いしないで彼を助けてあげられるよ」
ミチルは近づいてくる彼を見上げた。
解除には代償が必要になると聞いた。
血魔術に必要な代償は生命力。その価値が高ければ高いほど、大きな魔術を作動させることが出来るという。
名前の通り彼は己の血を使っていた。
悪魔界の皇族という、絶対的な力を持つそれだ。
(それは、どれだけの負担なんだろう?)
分からない。
けれど感じる違和感を無視したら、なんだか大変なことになる気がする。
「作戦会議しよう」
楽しそうに言いながら、彼はパンと両手を叩いた。
手を取られてベットの上に座る。
子供部屋で、秘密基地の設計図を囲む少年になった気分だ。
「レイモンドって言ったっけ?あいつの呪いを解くには、どうしても時間が必要だから·····皇帝には、禁話の魔術を解くために最低十日間かかると説明して」
二人きりの時しか口が聞けない魔術は、既に解けているという。
全く分からなかった。
「そのあいだ、僕はできるだけマナを温存させるよ。流石にこれだけ短期間で、"自分だけ"の血を使うのは初めてだから·····やれる所までやってみるけど、あなたにもちょっと協力して欲しいんだ」
独り言みたいに呟いた時、また、あの危うさが覗く。
「何をしたらいいの?」
「·····ん~·····?」
ふと、ローゼがこちらを見つめる。
ギクリとして身を強ばらせる。
ダイヤよりも美しく光る瞳だ。透き通った桜色はいっそ青くも見える。
長い指が自身の唇をなぞりながら、視線はこちらの全身をなぞった。
それに当てられたように、体の節々がひりつく。
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